修理のタイミングの良さ、何度破損しても必ず蘇るその様子から、「不死鳥」と呼ばれた、1隻の駆逐艦の物語である。
それは、終戦の歓喜か、戦争の悲しみか。または・・・
ーーーーー絶望と後悔か。
私の名前は響。
暁型駆逐艦の二番艦、そして特型駆逐艦の二十二番艦。1930年2月21日生まれ。
私の長女である暁は、第十駆逐隊に編成されている。
1933年になり、私は第六駆逐隊に編成された。
1934年11月。第六駆逐隊に、私の妹である雷と電が編入した。
「響、これからよろしく頼むわね!」
「よろしく、なのです!」
「こちらこそよろしく、雷、電」
1939年。ついに暁が第六駆逐隊に編入された。これで暁型がそろった。
「あら、響。あなたもこの隊に入っているのね。これからよろしく頼むわ!」
「よろしく、暁」
まず、なぜこの隊に入ったのかを聞いてみた。そしたら、第十駆逐隊が解隊されて、自分は第六駆逐隊に編入されたと言った。
第六駆逐隊が結成してから3年後、第三次ソロモン海戦が始まった。第六駆逐隊から参加した艦は、私を除いた全員。私は参加できなかった。私はその時、護衛任務を全うしていた。
任務の合間に、通信機(画面付き)を使ってみんなの様子を確認する。
(よかった、まだ残っている)
その時、暁が探照灯を敵の・・・軽巡洋艦だろうか、軽巡洋艦に向けて照らした。それに気づいた敵艦が・・・
(っ!)
暁に向けて一斉に砲撃。
『うわぁぁ!』
(暁!)
暁は・・・もうだめだった。足からゆっくりと沈んでいく。
「暁、聞こえる?」
『ひび・・・き?』
「よかった。早く離脱を・・・」
『響・・・私、もう・・・だめみたい・・・』
やっぱり、だめだった。
「そんな・・・」
『でも、私は、一人前のレディとして・・・一生懸命、がんばったわ・・・でも・・・それは・・・みんなのおかげだから・・・』
「暁・・・」
『ありがとう・・・響・・・』
私は、立ち直れそうになかった。涙目になった。でも、数週間もしたら、身体が軽くなった。これも、暁の天真爛漫さが移ってしまった証なのだろうか。
その2年後、雷が、運送船「山陽丸」と共に、サイパン島に向かった。
私は護衛任務に就いていたが、これがかなり忙しかった。なので、私は、通信機で確認する暇がなかった。
何故だろう。何か、悪い予感がする。雷の身に何か・・・
ーーーーその予感は、当たってしまった。
雷が、敵の潜水艦からの魚雷に被弾、沈没してしまったそうだ。
私は、また心が深く深く海のように沈んでしまった。残ったのは私と電だけ・・・
1944年5月3日。私は電と共に、マニラに向かった。
同年5月9日。マニラに到着。護衛任務を開始する。
5月11日。マニラを出港し、バリクパパンに向かう。
14日。私は電と位置を交代する。
「電。今度は私がそっちに行く。交代だ」
「了解なのです!」
ーーー今思えば、あの時私と電が交代していなかったら、私はどうなっていたのだろう。
交代をしてから少し時間が経った。遠くから煙が見える。一体何が起きたんだ?敵か?味方か?それとも・・・
ーーーーーーまさか。
私は、急いで電に近づく。電が倒れこんでいる。
やっぱり・・・電が・・・そんな・・・
私は、電を抱き抱える。
「電、大丈夫?」
「あ・・・れ・・・響・・・お姉ちゃん・・・」
よかった、まだ意識はあるみたいだ。
「何があったんだ」
「私にも・・・よくわからないよ・・・」
「今すぐ助ける。早く救助を・・・」
「お姉ちゃん・・・もう・・・いいよ・・・」
「諦めたらだめだ。私たち第六駆逐隊のルールは、みんなを笑顔にすることなんだ。それは、暁や雷だけじゃない、私達もなんだ。私達4人がいて、初めて第六駆逐隊が成り立つんだ。そうだよね、電・・・」
「・・・」
「えっ・・・」
遅かった。電は真ん丸な瞳を閉じている。声も聞こえない。
「電・・・?」
身体を揺さぶっても、ピクリとも動かない。
私は、泣きそうだった。だって、1人になってしまったから。だって、みんながいなくなったから。だって、生まれて初めて、『目の前で』大切なものを失ったから。
「っ・・・うっ・・・くっ・・・」
私は泣いてしまった。頬に涙が滴る。
「なんで・・・どうして・・・」
私は、電を強く抱きしめた。まるで我が子を愛でる母のように。そして、私は電の耳元で、こう囁いた。
「ありがとう、電・・・みんなの分も、がんばるから・・・」
1945年1月25日。私は、第七駆逐隊に編入。メンバーは、潮、霞、そして私。多分、彼女達も壮絶な人生を歩んできたのだろう。
同年8月15日。天皇陛下の玉音放送が流れる。戦争が終わったのだ。私達は負けた。でも、涙は流さなかった。何故だろう・・・何故・・・泣けないのだろう・・・
戦後、1947年7月5日。私は、ソ連に賠償艦として引き渡される。
同年7月5日。私に新しい名前がついた。
名前は
1948年7月5日。私は、砲や魚雷などを外し、練習艦に生まれ変わった。それと同時に、また名前が変わった。
ーーーそして時は流れ、1970年代。ついに私にも、終わりのときがやってきた。海軍航空隊の標的艦として処分されるのだ。
標的艦、その名の通り、ただの『的』だ。
当日。私は航空隊の攻撃を受け、沈んだ。でも、今まで沈んできた姉妹達に比べれば、なんてことはない。
(みんな、
ーーーーさようなら。
おまけ:「夢」
私は戦争が終わった後、少しだけ休みをもらったので、とある人に会いに行った。そのとある人は、埼玉県川口市に住んでいる。
午前11時30分。私は、そのとある人が住んでいる家の扉にノックした。しばらくして、中から声が聞こえた。
「は〜い」
「工藤さん、響だよ」
「おぉ、響か。お入り。歓迎するよ」
鍵が開いた音がした。
「ありがとう、工藤さん。お邪魔します」
私は扉を開けて、中に入った。そこには、懐かしい人、工藤俊作さんがいた。
「久しぶり、響」
「お久しぶり、工藤さん」
「とりあえず、椅子にお座り。何か飲むかい?」
私は、椅子に座った。思ったより高い。どうやら、工藤さんの背丈に合わせてあるらしい。足が付きそうで付かない。
さて、何を飲もうか。今の季節は夏。やっぱり麦茶かな。
「麦茶をお願いするよ」
すると、私が頼んだはずの麦茶が3秒で置かれた。
「・・・早いね」
「あぁ、ごめんね。それは私のだよ。私も麦茶が飲みたかったからね」
「なんだ、そうだったのか」
「今入れるから、待ってなさい」
しばらくして、私の麦茶が置かれた。
「ありがとう」
「どういたしまして」
工藤さんも椅子に座った。ここで私は、あの事を話した。
「工藤さん、雷のことなんだけど・・・」
「大丈夫、言わなくても分かるよ」
上司か部下から言われたのだろうか?『雷が沈んだ』と。
「他の人から聞かされたの?」
「いいや、聞いていない」
「えっ、どうして雷のことを・・・」
「夢に出てきたんだ。雷が」
「夢に・・・どういうことなの?」
「私が家で寝ている時に、雷が夢の中に出てきたんだ」
「どんな夢だったの?」
「私が艦長をしていて、雷がいて、私の部下がいて・・・」
「それで・・・?」
工藤さんはすこし戸惑いながらも、口を開いた。
「雷とその部下が、スゥーっと消えていったんだ。」
「消え・・・た・・・?」
まさか・・・そんな・・・
私は、工藤さんにこう話した。言いたくは無かった、答えを聞きたく無かったが・・・
「・・・その夢を見たのは、いつ?」
「何故だろう、まだ覚えているよ。
・・・『1944年4月13日』だよ」
「・・・」
私も覚えている。いや、絶対に忘れられない。
「雷が、沈んだ日・・・」
「そう。その日の夜に、夢を見た」
こんなの、偶然なんかじゃない。雷は、工藤さんにだけ見せられる何かで、自らが沈むことを伝えたかったんだ。
それが、工藤さんが見た『夢』だったのだ。
「いや〜、あの時は驚いたよ。私なんか、飛び起きて、汗でびしょ濡れだったよ」
私は、思わず涙目になってしまった。電が沈んだ、あの時のように。
工藤さんは、そんな私を心配してくれた。
「響、大丈夫?」
「うん・・・大丈夫だよ。ちょっと、感動して・・・」
工藤さんは、とても優しかった。
「なんか、ごめんね。でも、本当は悲しかったんだろう。私には分かる」
「・・・全部、分かっているんだね」
「当たり前だよ。私と響は、今となっては切っても切れない仲だからね。もし響がいなくなっても、絶対に忘れないよ」
私は、工藤さんに嘘がばれたことに安心して、工藤さんに静かに抱きついた。そして、静かに泣いた。
「ごめん、工藤さん・・・感動もしたけど、反省のほうが大きかった・・・私が、皆を守っていれば・・・ずっと一緒にいられたのに・・・」
工藤さんは、何も言わずに、私の銀色の髪を優しく撫でた。
「気にしないで。私も少し話しすぎた。嫌な思いをさせてしまったね。」
「大丈夫・・・工藤さんは、優しいんだね。私が嘘を言っていたのに・・・」
「『友は絶対に傷つけない』私が皆に言った言葉だ。もちろん、響にも」
「覚えているよ。あの時は、本当に嬉しかった」
いつの間にか、涙が止まっていた。工藤さんが私にかけた、おまじないだろうか。
「今日は本当にありがとう」
私は、去り際に工藤さんに言った。
「こちらこそ。私の話に付き合ってくれて、ありがとう」
私は、決心した。
「また、いつか来るよ」
「それは嬉しいな。それじゃあ、いつ来るんだい。」
「それは・・・」
「それは?」
「『いつかまた』だよ、工藤さん。私が沈んだときかもしれないし、工藤さんがいなくなったときかもしれない。でも、私たちは、永遠に繋がっているんだ。」
「これは、哲学というやつだな〜。私には分かりにくいな」
「多分、分からなくてもいいと思う。分かると、悲しくなるし」
「そうか・・・」
「さようなら、工藤さん」
「またいつでも来いよ〜」
それ以来、私がソ連に行くまで、1ヶ月に1回は工藤さんに会うようにしている。そうしないと、だめな気がするからだ。
ーーーー私は、あの人を尊敬している。あの人が好きだ。そして・・・
私は、あの人を愛している。
私が第六駆逐隊の中で1番好きな艦は、やはり響です。もちろん、他の艦の人生も壮絶なものでしたが、響の人生には特に感動しました。
彼女の人生を一言で表せば、「繋がり合う心」と言えます。
普段はクール、泣く時は泣く、落ち込んでもすぐに立ち直れる、みんなから頼りにされる。何でしょうか、何か共通点が・・・そんな感じです。
おまけはどんな感じでしょうか?
オリジナル設定&セリフ多めですみません。
ご感想、誤字などあれば、コメントよろしくお願いします。
ご愛読、ありがとうございました。