「・・・それで、アツヤは何をお願いしたんですか?」
「アツヤ君の願いは、君への手紙を書くことだったよ」
「・・・あれは、そういうことだったんですね」
保健室には西日が差し込み、椅子に座って対面していた二人を、淡く照らしていた
「アツヤが急に駆け出してった翌日に渡されましたよ。誰にも見せないことを条件にして」
「他には何か言ってたかい?」
「「この中には、僕とシオリが追い求めていたものの答えが書いている。だけど、これを読むには相当の覚悟がいる。だから、何があってもいいと思うなら、この手紙を読んでほしい。でも、そんな得体のしれないものは信じられないと思うのなら、この手紙の件は無かったことにして欲しい」と言ってました。・・・そういわれてなくとも、俺だったら絶対に読むだろうとは思わなかったんですかね?」
そう言いつつ少年は頭をガリガリと掻く
恥ずかしくなった場合、いつも照れ隠しとしてワタルは頭を掻いていた
「手紙の中身は流石に教えてくれないよね」
「当たり前じゃないですか!たとえ、シオリちゃんに言われたとしても、中身は絶対に見せませんよ。何せ、あんまり人や自分のことを語らないあいつが、俺やシオリちゃんへの思いや、あいつ自身のことをしっかりと書き込んでいるんですから」
「それなら、尚更内容を知りたくなってしまうな・・・」
校長は苦笑いを浮かべる
「・・・いや、やめとこう。私たちに語りたいことは、本人たちの口や遺書からしっかりと聞いたから、余計な詮索は無粋だものね。シオリちゃんが書いた手紙も結局読めなかったし」
「え!シオリちゃん、あいつに手紙渡してるんですか!」
驚いて聞き返してきたワタルに校長はニヤリと笑う
「そうだよー。もしかしたら、ラブレターだったのかもねー。」
「うわぁ・・・、結局、俺振られてたっぽいなこれ・・・」
「うふふふ・・・」
意気消沈するような動きをするワタルに、校長は笑いをかみ殺せていなかった
「・・・最後に、アツヤは何て言ったんですか?」
「ん?アツヤ君かい」
一通り話題が尽き、西日も沈み始めてきたところで、ワタルは静かに訪ねた
きっとこれが最後の問いかけになるだろうと、覚悟を決めた表情だった
「・・・アツヤ君は、最後まで私たちに感謝してくれていたよ。「過去何があったのか思い出すことは出来なかったけれど、きっと、自分の人生の中でも、非常に楽しい時間だったと思います。ありがとうございました。」・・・そう言って転校していったよ」
「・・・そうなんですね。ありがとうございます」
校長は解せない顔でワタルを見る
「どうして、君たちは私たちの言葉に嘘偽りが無いと思うんだい?」
「そうですね・・・」
少しばかり悩んだのち、満面の笑みを浮かべてワタルは答えた
「長年生きてきた、年寄りの経験則ですかね?」
「・・・そうか、参考になったよ」
校長は寂し気な笑みをして立ち上がった
「さて、お迎えが来たみたいだよ」
「お、漸く来ましたか!」
勢いよく椅子から立ち上がって、ドアへとワタルは向き直った
「さて、あいつらはきっと、あっちでイチャイチャしてんだろうから、俺がお邪魔虫になって遊んでやろうかな」
時計の針は今にも六時を指そうとしていた
「俺からも最後に・・・」
「はい」
「お世話になりました!むこうでも頑張ってきます!」
そう元気よく挨拶すると、光射す扉の向こうへと駆け出して行く
「どうか、あちらでもお元気で」
その後ろ姿に校長は静かに声を掛けた
こうして、卒業アルバムには、また一人、新しい生徒の名前が書き足された
どうも、佐之亜里須です。
この小説は『自分だけがはっきりとした人格を持つ物語』という題材で、友人たちと共に、文化祭で出した作品の完成品となります。
ジャンルは群像、青春、SF、ミステリ・・・となるのでしょうか?
ミステリ系統の本をよく読むせいで、そちら方面の路線に、ガッツリと通っているような作品となってます。
近い未来、このような出来事が起こるかもしれないと思うと、こんな未来は嫌だなと感じながら書き進めていました(笑)
書くにつれて、自分の文章力のなさを実感する、いい機会となりました。
また友人たちと話し合って、同一題材で作品を作ってみたいですね。
私が書いたこの小説で、読者様が何かしらの物を見つけられたら幸いです。
それでは、より良い日々を・・・
Wrap up the lord of knightの方も、閲覧よろしくお願いします(小声)