捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編 作:ローリング・ビートル
「ほら、沼津もなかなかいいでしょ?」
「おお⋯⋯」
少し移動して到着したのは沼津仲見世商店だ。休日ということもあり、たくさんの人で賑わっている。
「何か食べる?ここおいしい店ばかりなんだよ」
「⋯⋯じゃあ、案内料と言っちゃなんだが、たこ焼きくらい奢る」
「え?いいよ、案内するって連れ出したの私なんだし」
「いや、実際案内してもらって助かったのは事実だ。だからその分の借りは消す。俺は養われる気はあっても施しを受ける気はない」
「いきなり変なプライドをアピールする理由は謎だけど……じゃあお言葉に甘えちゃおうかな」
俺と松浦はたこ焼き屋の前まで行き、店の前に置かれた看板に張られたメニューを見た。
そこそこ種類があるので松浦に決めてもらおうかと思ったが、ジェスチャーで俺が選ぶよう指示してくる。
まあ、あまり時間をかけても仕方ないので、ここはシンプルに特製ソースにしておこう。
「お、いいチョイスだね」
「初めてだからな。定番のやつにしとく」
先に松浦にトレイを手渡そうとすると、彼女はそのまま爪楊枝を使い、器用にたこ焼きを口に運んだ。
まだ出来たての熱さに少し眉を寄せたが、それでも何とか飲み込んだ。
「ん⋯⋯まだ結構熱いけど美味しい」
「⋯⋯俺はもう少し冷ましてからにするわ」
「え〜、出来立てのほうがおいしくない?」
「猫舌なんだよ」
「あ、そうなんだ。じゃあ先にもう一ついただきま〜す」
松浦はたこ焼きをもう一つひょいとつまんだ。
その際に思ったよりも顔が近くに来て、鼓童が跳ねるのを感じた。特に意識していないからこその距離感だろうが、こちらとしてはうっかり勘違いしないように注意しなければならないので、表情の管理に困る。中学時代なら勘違いして告白してふられていたことだろう。ふられちゃうのかよ。
「う〜ん、おいしい。ん?どうしたの?そんな遠い過去に思いを馳せるような顔して」
「⋯⋯いや、何でもない。そろそろ食おうかと思ってたところだ」
いかん。過去を振り返り、変な表情になっていたようだ。
誤魔化すようにたこ焼きを頬張ると、まだ中は熱々で猫舌の自分には少々しんどいが、うまいのはうまいので、何とか飲み込めた。
「だ、大丈夫?」
「ああ、てかうまいなこれ」
「そっか、じゃあよかった。ふふっ、私がたこ焼き冷ましてあげよっか」
「い、いや、それは遠慮しとく⋯⋯」
「はいはい。ほら、次行こ♪」
松浦は数歩前でこちらを振り返り、悪戯っぽい笑みを見せた。
さっきのはこちらをただからかっていたのだろう。こいつ、共学通ってたら絶対ファンクラブできてたな。
俺は早足で彼女の隣に並び、彼女の商店街解説に耳を傾けた。
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「これ、デートなのかな?」
「う〜ん、どうだろ?」
「距離感がいまいちわからないわね」