銀河彼方での物語   作:秋鹿

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<前編>
第1話 荒れ果てた街


真南に位置する宇宙港から真っ直ぐ北へと伸びる大通り。テレスト通りである。

そしてテレスト通りの突き当たりには、この街を建設した人物の子孫が代々治めているエルカスト城がある。

クワイ=ガンの第一の目的は、この城を訪れ当主に話を聞くこと。王からジェダイ評議会に援助要請が入ったからだ。

城に向かいながら街の様子を窺う。

大通りの両脇に佇む店々は昼間だというのにシャッターを下ろし、シンと静まり返っている。逆にその店の前で商いを行う露天商の方が、まだ賑わっている。

露天商の扱う物は主に武器。

ブラスターはともかく、小型なキャノン砲、振動ナイフ(バイブロブレード)熱爆弾(サーマル・デトネーター)等、様々な武器が広げられているのだ。

中古ばかりではない。新品な武器も揃えられ、この街でのこれら武器の需要性が高いことを示していた。

このテレスト通りはこの街クテーラを東西に分つ分岐点である。

東西に分かれて争うこの街での唯一の保護区域であるため、露天商も安心して商いができるのだ。しかし、夜になればその限りでないが。

そのため、昔からこの通りに店を持つ者は恐れて店開きをしようとしない。何が起こるかわからないからだ。

だから、この街は露天商だけが賑わう一風変わった都市となっていた。

 

いくら保護区域とは言え、戦いの名残はここにもあちこちと残っている。

今にも崩れそうな店。爆風が襲ったと思われる家々の破片。焼けた煤がこびりつく壁。

(ひどい状態だ)

顔をしかめながら歩く。通りを同じく行き交う、大通りにしては少ない通行人にも生気が余り感じられない。

長引く争いで精神的にも肉体的にも疲れ果てているのだろう。

(まずはこの争いの元凶をつきとめ解決しなければ。このままではいずれ遠からず、この街は廃墟と化すだろう)

思案しつつ北に向かっていると、突然、前方左側から轟音が鳴り響き、地面が激しく揺れた。

(爆発か!?ここからそんなに遠くはない)

クワイ=ガンは駆け出した。巨大な炎が上がる場所に向けて。

 

地獄のようだった。

燃え上がる炎。赤々と照らされ崩れ落ちる石造りのかなり大きな建物。巨大な固まりや破片が散乱している。

その周りには呻き声を上げる怪我人。ピクリとも動かぬ人々。泣き叫ぶ子供の声。足元に転がる肉片。

騒ぎを嗅ぎつけ、警備ドロイド(パトロール・ドロイド)消火活動ドロイド(ファイアファイティング・ドロイド)が数多く集まり、個々の職分を勤めている。

クワイ=ガンは身近に居た親子に急ぎ足で近づいた。

まだ幼き子供が動かぬ親にすがりついて泣いている。

「ママッ、ママッ、おきてよ。ねぇ!」

クワイ=ガンはしゃがみ込むと、倒れている女性の呼吸の有無を確認する。そして、泣きじゃくる子供を痛ましそうに見つめた。何を言ったわけではないが、子供は察したらしい。

「いや、うそでしょ。ママ、ママーーーー!!」

クワイ=ガンはそっと、その子供に暖かなフォースを送り少しでも落ちつかせると、唇を噛み締め沈痛な面持ちで立ちあがった。

(こんな争いは止めさせねばならない。一刻も早く)

 

遠くから低い轟音を撒き散らし何かが近づいてくる。

瞳を凝らすと、それは7台のスピーダーバイクとわかった。

それらは現場に土煙を撒いて止まると、先頭の明らかに改造されたとわかるスピーダーに乗っていた者が、後方のスピーダーに向けて叫んだ。

「ロイは医療所(メディカル・ステーション)に行って、搬送車(ホバーカー)を3・・・いや4台連れてこい。ディルとクーンは消火活動を手伝えっ。残りの者は救助活動を行う!!まだ奴らが潜んでいるかもしれないからな。注意して作業に当たれ!!」

テキパキと手馴れたように指令を出すと一斉に散った。

彼らのおかげで怪我人は一か所にまとめられ、燃え盛っていた炎の鎮火も早かった。

ホバーカーが到着するまで、クワイ=ガンは怪我人の手当てを持っていた薬で行う。

しばらくして着いたホバーカーが怪我人を医療所(メディカル・ステーション)に配送すると、クワイ=ガンは燻った煙をまだ漂わせている廃墟に歩み寄った。

 

「全く、ひどいもんだ」

先頭のスピーダーに乗っていた者が、何時の間にか傍にいて同じく建物の跡を眺め、そう吐き捨てる。

「ここには何があったのだ?」

静かにクワイ=ガンが訊ねると

「ただの遊技場さ」

遣り切れない怒りを込めた言葉が返ってくる。

「遊技場?何故そんな所が爆発したのか?」

驚きの表情を浮かべるクワイ=ガンに、その者は言った。

「人が多く死ねばいいんだろう、テラフの奴らは・・・っ」

「テラフ・・・」

その呟きに、ふと不信感を覚えたのかもしれない。その者はクワイ=ガンに向き直りじっと見つめた。

「あんた・・・この街のもんじゃないね。何者なんだ?」

「私は商人だ。薬の商いを行っている。この星には先ほど来たばかりなのだ」

持っていた薬で手当てを行うクワイ=ガンの姿は見ていたはずだ。でも、納得がいかないらしい。

「ふ~ん、商人ね。それにしては、全く隙がないが」

「いろいろな星に行っているからな。自然に用心深くなろうというものだ」

その者はクワイ=ガンを探るように見つめている。ヘルメットを被っているため相手の表情は窺い知れない。

「ま、いいさ。気に入らない応えだが、信用してやろう。悪いことを企んでいる奴には、そんな澄んだ目の奴はいないからな」

そう言って被っていたヘルメットを取った。

鮮やかなオレンジ色のウェーブがかった髪がヘルメットから零れ落ちる。

「あたしの名はベレルガ。あんたは?」

まだ若き女性とは思わず意表をつかれたクワイ=ガンだったが、そんなことは面にも出さず

「クワイ=ガン・ジンだ」

と穏やかに応える。

「驚かないんだね。ますますあんたに興味が沸いたよ。この街は初めてなんだろ?商人の組合を紹介してやろうか」

「いや、ありがたいが、今は急いでいるのだ。用事があってな」

「ふ~ん?」

ベレルガは再び茶色の瞳で探るように見つめた後

「わかった。また縁があったら会おう、商人さんよ」

最後の商人を何故か強調させ、ベレルガは仲間の所に駆け寄っていく。

 

スピーダー達が去っていくと、後には廃墟と化した建物とクワイ=ガンだけが取り残された。

気がつけばドロイド達の姿も見えなくなっている。

そして、この騒ぎを見に来る野次馬もいない。爆発なんて日常ありふれたことなのだろうか。

この星にオビ=ワンを連れてこなくて正解だったと、しみじみ実感するクワイ=ガンだった。

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