瞬間、クワイ=ガンは身をかがめ左へと走りながら、セーバーを右から横薙にした。
腹を切り裂かれた2体のドロイドが倒れる。
左目に姿を捉えると、すかさずセーバー持つ手を返し、左下段から右に切りあげる。
右上から跳躍し飛び込んできたドロイドの腹部にセーバーを突き刺すと、それを左に勢い良く振り払い奥にいる奴等にぶつける。
その勢いをかって、左から襲ってきたドロイド数体の鎌と首を一瞬に切り落とす。
と同時に前方に駆け出した。
体を横に一回転させて勢いをつけると右下から切り上げ、正面に立っているドロイドの頭上からセーバーを切り降ろす。
するとドロイドの群れに隙間ができた。
バイクが1台通ることができるぐらいの間が。
「行けっ!!」
クワイ=ガンの合図により、バイクが轟音を立てて1台また1台と駆け抜ける。
ドロイドを牽制し、向かってくる物は切り捨てつつ、彼は5台全てが通り過ぎるまで待ち、通過した直後、彼もドロイドの輪から抜け出た。
しかし、まだドロイドの群れに対峙している。
「クワイ=ガン、あんたも早くっ!!」
15mほど向こうからベレルガが叫ぶ。
ジェダイ・マスターは静かに言った。
「いや。このドロイドをこのまま放置する訳にはいかない。私達が立ち去れば、他の者を襲うだろう」
彼が輪から抜け出たのは、周囲から向かってくる敵と闘うより、前方だけに集中すれば良い戦法を選んだがためだった。
ドロイドも侮りがたい敵と見たのか、容易には攻撃をしかけてこなくなった。
このまま睨み合いが続くかと思われたその時。
クワイ=ガンは突然危険を察知し、右横へ跳ぶように転がった。
つい一瞬前まで彼がいた空間を裂くように、巨大な光線が尾を引いてドロイド達に炸裂する。
一発ニ発三発と。
飛び散る破片をフォースで遮り、辺りが静かになったと見るやクワイ=ガンは体を起した。
キャノン砲に爆撃されたドロイド達は跡形もなく瓦礫と化している。
「大丈夫かい?クワイ=ガン」
近寄ってきたベレルガがニッコリ笑いかけた。
少し唖然としていたクワイ=ガンだったが、吐息とともに苦笑する。
「ずいぶん派手だな。私に当たることは考えなかったのか?」
「それは全く考えなかったさ。だってジェダイだろ?」
再びクワイ=ガンは苦笑するしかなかった。
「あれの」
とベラルガは後方にある、愛車に付いている改造型キャノン砲を指差し
「使用には二つ難点があってね。一つは敵が近距離にいたら使えない。自分も巻き添えを食うからね。もう一つはエネルギーを大量に消費するんだ。あまり使うとバイクが走らなくなっちまう」
「クワイ=ガン、あんた、すごいんだなっ」
駆け寄ってきたジョンが目を輝かせる。
「ばか。偉大なジェダイだぞ。敬意を払うんだ」
次男のディルに頭をこづかれ、ジョンは舌を出した。
「しかし、あなたがいれば
ロイが勝ち誇った笑みを浮かべると、皆がそれに呼応し志気が高まった。
ただ一人、無言で眉をしかめるジェダイ・マスター以外は。
「ただ言っておくが」
ややあって溜め息をつくと、クワイ=ガンは皆の喜びに水を差した。
「私はどちら側にもつかない。中立な立場をとらなくてはならないのだ、ジェダイとして」
「だけど、あんたは王に招かれたって言ったじゃないか。あれは本当なんだろう?」
ベレルガが食い下がった。
「確かに王に招かれた。しかし、それはこの街の争いをなくすよう要請を受けたからだ。それ以外の何物でもない」
クワイ=ガンの返答に今度はロイが切り返した。
「争いはなくなるでしょう。貴方がこちら側についてくれれば。
「それでは根本的な解決にならない。
「
「ベレルガ。君はどう思うのだ?」
俯いてやり取りを聞いていた彼女に、クワイ=ガンは声をかけた。
「あたしは・・・争いがなくなればそれでいいと思ってる。争いがなくなり
「簡単には行かないだろう。だが、終わらせなくてはならない。こんな無意味な争いは」
押し黙ったままのベレルガ達を一通り見渡すと、クワイ=ガンは再び口を開いた。
「それにあのドロイド達は、私を倒すために送られてきた可能性もある。結果的には君達を助けたことになったが、ジェダイにとって危険にさらされている人々がいれば助けるのは当たり前のこと。それによって
「そうでも・・・ないんだ。ほら」
苦笑を浮かべたベレルガが上を指さした。
クワイ=ガンは見あげて呆然とする。
周囲の建物のニ階から、この騒ぎを見ていた多くの人々の顔が覗いていたからだ。
彼らの表情から期待と興奮と優越感がひしひしとうかがえる。
(やっかいなことになったな・・・)
クワイ=ガンは溜め息を漏らすしかなかった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「どのような状況ですか?マスター・ジェダイ」
エルカスト城に報告しに行ったクワイ=ガンに対し、開口一番、王は訊ねた。
「ますます困難な状況になりつつあります」
溜め息を飲み込んで、今までの出来事をかいつまんで正直に告げる。
「そうですか・・・」
と王は言ったきり沈黙に面を浸した。
クワイ=ガンも跪いたまま思案に暮れる。
ややあってジェダイ・マスターは言葉を紡ぎ出した。
「聞きたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?賢明なる王よ」
「何なりと」
「この街の生い立ちとはどのようなものですか?」
「先祖代々から受け継いでいる知識に添ってお答えしましょう。この惑星エルフィダイスは誕生してからこのかた、溶けることのない厚い氷河に覆われておりました。光を与えるはずの輝く恒星からも離れていたからです。しかし、何百年か前に、この星に一個の隕石が衝突し、巨大なクレーターを穿ったのです。その跡は思いのほか深く、その分、惑星のコアに近づいたため、氷河に覆われた地表より温度が高くなり、人々が住むに適した土地となったようです。その後、私の先祖のアジェス王がこの地を発見、一緒に来ていたヒューマノイドたちとともに開拓し街を築き上げ、そして、代々アジェスの名とともにその地盤は受け継がれてきました。そのクレーターこそがこの街なのです」
「この星には他に街はない。だから、排他的になるのですね」
「
「今現在、テレスト通りを隔てて、ウェストとイーストにはっきりと分断されていますが、政治や経済も別れているのでしょうか?」
「政治や経済は無きに等しい状態です。
「最後にもう一つ。聞くのもはばかられる質問なのですが。・・・あなたの母君のことです」
途端、現アジェス王は苦悶の色を浮かべた。最も思い出したくもない記憶なのだろう。しかし、彼はその質問を真っ向から受けとめた。
「女王は、私から見ても聡明で賢く、父王を影から支えていた素晴らしい女性でした。私と女王はよく人目を忍んで街に出かけました。街の実態を知り王に伝えることが私の務めと、よく女王はおっしゃっていましたから。そして、私も次期王として、街の現状を知ることが大切だとわかっていましたから。ところが、三年前のあの日、たまたま私に用があり、一緒に行けなかったあの日・・・女王は路地で
しばしの沈黙の後、クワイ=ガンは静かに言った。
「ご心痛お察しいたします。大変ご無礼なことをお聞きして、申し訳ありませんでした」
「いいのです。もう・・・過ぎたことですから」
「いろいろとありがとうございました。では、失礼させていただきます」
クワイ=ガンは深々と一礼して立ち上がり、謁見の間を辞そうとした。
その後ろ姿へ
「マスター・ジェダイ」
王は声をかけた。
クワイ=ガンは振り返る。
「どうか争いを収めていただきたい。亡き女王のためにも」
承知したという風に深々お辞儀を返すと、再び振り向き、静かにその場を離れていった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
・王と執事しか、あの館に自分が泊まることを知らなかったはず。他に知りえる立場の者は?
・街で滅多に見かけることのないエイリアン達。しかし、襲ってきたのは事実。裏で暗躍か?
・マッドサイエンティストと呼ばれる人物はどう関わってくるのか?
・事件、事故の処理をする組織が真っ先に壊滅させられたのは?
頭の中で問題を箇条書きにし、そこから一つの答えを導き出す。
(事情はだいだい把握できた。だが、これらをわかってもらうにはまだ材料が足りないし、説明する場もない。・・・それにしても、早いものだ。私がこの星に来てからもう4日目になろうとしているとは)
クワイ=ガンは目を開けた。
空は白みかけていたが明け方にはまだ時間がある。何故か目が冴えて、いつもより早めに起き出した。
(オビ=ワンは元気だろうか・・・。まだ怒っているかもしれないな。ま、いずれは私の気持ちもわかってくれるだろう)
苦笑しつつ身支度をする。
薬の入った袋を肩にかけた瞬間。
フォースに乱れが生じ、それは起こった。
耳をつんざくばかりの轟音と家が軋みを上げるほどの振動。
テーブルやベットが激しく揺れ動き、爆発音が絶え間なく聞こえる。
(また、爆破か!?しかし、これほど激しい爆破は初めてだ)
クワイ=ガンは素早く館の外に出る。
彼の瞳には、
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「お願いです、この子だけは助けてください。どうか、お願いですっ!」
膝を曲げ、崩れるようにママが覆い被さってきた。漆黒の長い髪がリアの顔にかかり、その黒い瞳から溢れる涙がリアの顔を濡らす。
「リア・・・あなただけでも生きて。生きて、パパを探して・・・。ママからの最後のお願いよ・・・」
ママの声が途切れ途切れに聞こえる。
「ママ、やだ。死なないでっ!! ママっ!!」
悲しげに微笑むママの顔。突き刺さるナイフの切っ先。真っ赤に染まる視界。
「・・・・・・・・っ!!!」
リアは飛び起きた。
(・・・夢・・・?)
夢とわかっても呼吸は荒い。生々しすぎる夢。いや、あれは現実。過去にあった出来事。
(何だろう・・・胸がどきどきする。嫌なことが起こりそうな・・・)
突然、巨大な風が家を揺らした。
一瞬、何が起こったのかわからなかったが、落ちつくと同時に思い当たった。何かが爆発したようだ。
慌てて家の外に出る。
外には既にオビ=ワンが立っていて、赤く燃える方向を厳しい表情で眺めていた。
「オビ=ワンっ!」
「リア。また爆破があったみたいだ」
彼は眉をひそめ悔しそうな声で言う。
「いつもより早く目が覚めて、外を散歩していたら突然。あの方向には何があるの?」
「・・・
オビ=ワンの顔色がサッと変わる。刹那振り向くと、まだ爆破の余韻が残るその場所に向かって駆け出した。
「待って、リアも行くっ!!」
この星を訪れて4日目。
しかし、その日が、良くも悪くもこの街の歴史に鮮烈な一ページを残そうとしていることを、まだ誰も知る良しもなかった。