銀河彼方での物語   作:秋鹿

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<後編>
第8話 戦いの始まり


燻る炎と火の粉が舞い散り、辺りを赤々と照らしていた。

充分離れているはずだが、広大な領域が燃え盛っているため、肌に突き刺さるような熱さが染みこむ。

クワイ=ガンは立ち尽くしているベレルガを素早く見つけ、傍に近寄った。

「ベレルガ」

彼女は振り向きもせず現場を睨みつけている。無言の沈黙に彼女の激しい怒りが感じられた。ようやく言葉を吐き出す。

医療所(メディカル・ステーション)だ。ここにあったのは。あいつら、絶対許せない」

「落ちつくのだ。後住民(テラフ)の仕業とは限らないはずだぞ」

「あいつら以外に誰がやるってんだ?」

 

そこへ、4台のスピーダーバイクが粉塵を飛ばして、目の前で急停車した。

「おい、ベレルガ。人々がテレスト通りに集まり始めているぞ」

「非常に険悪な雰囲気だ」

「ついに前面戦争に突入しちまいそうな感じだぜ」

乗っている男達が口々に叫ぶ。ベレルガが聞き返す。

「ということは後住民(テラフ)の人々も集まっているのか?」

「ああ。後住民(テラフ)でも学園(アカデミー)が破壊されたって言ってるが、そんなこと、本当かわからねぇ」

「わかった、すぐそっちに向かう。お前達はなるべく民衆が先走らないよう見張っているんだ」

「OK」

4台のスピーダーバイクはエンジンをふかすと、元来た方向へ走り去っていった。

ベレルガも自分の愛機に向かうと、スロットルを捻ってエンジンを点火させた。

「ここの救出活動はいいのか?」

悔しさを顔に滲ませベレルガが応える。

「あたしが来た時、既にここは火の海だった。生存者がいるとは思えないほどにねっ!!・・・クワイ=ガン。あんたも行くんだろ?」

彼は現場の調査をしたかったが、とても今の状態では無理だった。それに通りに集まりつつある群衆も気になる。

「そうだ」

彼女は親指をくいっと反らし後部座席を差した。

素早く軽やかにクワイ=ガンが跨ると、スピーダーは爆音を響かせ猛スピードで飛び去っていった。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「ひどすぎる・・・」

オビ=ワンは思わず言葉を漏らした。

 

白み始めた天を赤々と染める紅蓮の炎。

その下には学園(アカデミー)があったはずだが、焼け焦げた建物の残骸が残るのみ。学園(アカデミー)に隣接する職員宿舎も影形すら無い。

近くにいる数人の人々が声高に話し合っていた。

先住民(オレベフ)の仕業だよ。だって、焼け跡からバラバラになった死体が出てくるんだぜ。絶対メッタ刺しにしてから火を放ったに決まってる」

「どうやら、テレスト通りに皆集まって、先住民(オレベフ)の奴等に抗議するみたいだ」

「抗議なんて生ぬるいんだよ。俺達も行こうぜ」

現場そっちのけで皆、移動を始めた。

オビ=ワンはせめてこの火を鎮火させてからと思ったが、生存者が絶望視され、FF・Dが消火活動を行い、延焼は免れそうな今、彼にできることはなかった。

「オビ=ワン・・・」

茶色いローブを頭からすっぽり被ったリアが恐々と声をかける。

その声で彼は、今まで怒りに染まった顔をしていたことに気づき苦笑した。

「ごめん、リア。僕は皆の様子を見にいく。争いを止めなきゃならない」

「リアも行く」

「危険だよ。君はリシータさんと家にいて欲しい」

「リアも行くっ!!」

「・・・しょうがないな。じゃ、僕の傍から離れちゃだめだよ。いいね?」

コクリと肯く少女に溜め息を漏らしつつ、オビ=ワンとリアはテレスト通りに向かって駆け出した。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

幅15mはあろうかというテレスト通りは、今や一触即発の危機をはらんでいた。

ウェストとイーストから集まってきた民衆が、この通りを挟んで睨み合っていたからだ。

今まで燻っていた相手に対する怒りが、今朝の凄惨なる出来事により一層燃え上がったのだろう。

睨み合ったまま、まだ口々に相手を罵倒することで済んでいるが、何か起きたらすぐにでも戦いに発展しそうなピリピリとした雰囲気を醸している。

 

クワイ=ガンがベレルガのスピーダーに乗って到着したのはそんな時だった。

彼の姿を見た途端、先住民(オレベフ)側から喜びと期待の声があがる。それは津波のように先住民(オレベフ)側に浸透した。

「おい、後住民(テラフ)ども。お前達は今日でお終いだ。こっちにはジェダイがいるんだからなっ!!」

この言葉は後住民(テラフ)側に動揺をもたらした。ジェダイに勝てるだろうか?

同じくクワイ=ガンも眉をひそめて状況を見守っている。

不本意ではあったがジェダイの存在を知らしめることにより、争いに対する何らかの打開案を模索しようとしていた。

彼は群集から押されるままに先住民(オレベフ)の前面に出、腕を組んだまま立った。内心、溜め息を漏らしながら。

 

(マスター!?)

その姿に一番動揺したのは、後住民(テラフ)側の後方からこの成り行きを固唾を飲んで見つめていたオビ=ワンだった。

(どうしてマスターが先住民(オレベフ)側に!?ジェダイは中立の立場を取らなきゃいけないって・・・。それなのにどうして?)

傍にいたリアにはオビ=ワンの心の動揺が手に取るようにわかった。何を思っているかまではわからなくとも。

(オビ=ワン?大丈夫?)

心配そうな視線に気づき、オビ=ワンは慌てて動揺を押え、リアに微笑んでみせる。

その時。

「ジェダイならこっちにもいるぜっ!!」

後住民(テラフ)側から発せられた声に、少年の心臓は鷲掴みにされたように一瞬痛くなり、鼓動は音を立てて早くなった。

(まさか・・・?)

「ほら、そこの坊主だっ」

周囲の視線が突き刺さる。オビ=ワンは思わず身を縮めた。

「こんな坊主が?まさか」

「いや、俺は見たんだ。この坊主が青く光る棒を振り回すのを。あれは絶対ジェダイの武器だ」

(もしかしてあの夜、リア以外にも見られてた・・・?)

激しく気持ちが動揺するオビ=ワンは、この状態に対処する方法も見つからないまま、後住民(テラフ)側の前面に引っ張り出された。

 

クワイ=ガンは自分の目を疑った。人々の群れから押し出されるように現れたのは、紛れも無く自分のパダワンだったからである。

(どうして、ここにオビ=ワンが?)

努めて平静を保とうとするも、心は落ちつかない。

落ちつかないのは弟子も同じようで、彼の方を見ようとはせず、所在なさげに俯いている。

だが、そんな二人へ追い討ちをかけるように無情の一声が飛んだ。

「どっちにもジェダイがいるのなら、闘わせて勝った方がこの街を支配するってのはどうだ?」

 

クワイ=ガンはハッとして若きパダワンを見つめた。

オビ=ワンは落ちついた眼ざしで顔を上げ、マスターをじっと眺めた。その表情には決意の念が現れている。

二人はきっぱりと言い放った。

「そのようなことはできない」

「そんなことはできません!!」

クワイ=ガンは微笑み、オビ=ワンは顔を明るくした。

だが、そんな二人とは対照的に、一転して彼らを取りまく民衆の感情は悪しき方へ、憎悪渦巻く流れとなり漂い始めた。

ジェダイが役に立たないのなら俺達の手で。ついでにジェダイをも。

刹那、一発のブラスター光線が空間を切り裂き飛んでくる。

すかさずライトセーバーを起動し地面へ跳ね返すクワイ=ガンだったが、それを合図としたかのように、ついに恐れていたことが起きた。

先住民(オレベフ)後住民(テラフ)の前面戦争が。

 

あらゆる所で小競り合いが始まり、ブラスターの光線が飛び交い、振動ナイフ(バイブロブレード)のぶつかり合う音が聞こえる。

騒ぎを聞いて掛けつけてきたP・D達は巻き添えをくらって爆発を繰り返した。

クワイ=ガンは争いの場を移動しつつ、ベレルガの元へと向かう。

彼女はバイクに乗ったままブラスターをかわしつつ、何とか争いを収めようと必死になっていた。

「ベレルガ、頼みがあるのだが」

飛びかかってくる男をひょいとかわしながらベレルガが答えた。

「何だいっ?」

「君の仲間を一人借りたい」

「いいよ。ロイっ!!」

少し離れた所にいるセニス家の長男がバイクを駆って近寄ってきた。

クワイ=ガンが彼に指示をする。

「すまないが、向こうにいる・・・そう、あの小男。彼を捕まえてくれないか。逃げる前に」

その小男は奥にいて、この争いを避けるかのように闘いの輪から離れようとしている。

「了解しました、ジェダイ殿」

彼はニヤッと笑ってお辞儀をすると、噴煙を撒きながら駆けていった。

それを見届け、クワイ=ガンは傍で争っている者達を片っ端から、ある者には鳩尾に当て身をくらわし、ある者には後頭部の延髄に手刀を入れて気絶させていった。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

一方、オビ=ワンはと言うと、リアと無事合流できたが、争いを止めたくても、マスターのような体術を使いこなせるまでには至っておらず。

そこで、ライトセーバーで、相手が持つ武器を目についた物から切り落としていった。

武器がなくなっても懲りずに素手で殴り合う者もでてきたが、一対多でなければ直ぐには死に至ることもないだろう。

また、武器をなくすことで戦意を喪失させる効果もあった。

 

ライトセーバーを縦横無尽に振るっていた彼は、目の前を転がってくる物にふと目を停めた。

瞬間、心臓がキュッと締めつけられる。オビ=ワンは息を吐き出し心を静めようとした。

だが、足が微かに震える。

転がってきたものは、赤く明滅を繰り返す熱爆弾(サーマル・デトネーター)だった。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

相手を倒す度に周りで動いている人影も少なくなり、うまくいけばこのまま争いは終息に向かうかもしれないと思われ始めた。

しかも、あの鎌ドロイド(シクル・ドロイド)も現れていない。

彼らが現れないことで、クワイ=ガンの推測はいっそう確実なものとなった。

しかし、その時。フォースの乱れを感じた。

クワイ=ガンの心に、オビ=ワンの微かな恐怖が反映される。

(オビ=ワンっ!?)

クワイ=ガンは弟子の元へと駆け出した。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

(はね返そうか?いや、だめだ。他の人が巻き込まれるかもしれない。では、セーバーで切る?切った瞬間、爆発するかもしれない。どうする・・・?最後に一つだけ方法があるけど・・・ためらっている場合じゃない)

ついに決意を固めた。決断したら早かった。

オビ=ワンは集められるだけのフォースを集め身に纏うと、熱爆弾(サーマル・デトネーター)の上に身を投じた。

自分自身を盾として皆を守るために。

惑星バンドミーアの時にも、他者を助けるために自分の命を投げだそうとしたことがある。

その時と何の違いがある?オビ=ワンは儚げに微笑んだ。

クワイ=ガンの叫ぶ声が聞こえ ――

 

刹那、熱爆弾(サーマル・デトネーター)が爆発した ――

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