砂塵を撒き散らし、スピーダーバイクは次々と急停車した。
余りの運転の荒さに振り落とされそうになり、オビ=ワンは慌ててジョンにしがみつく。
イースト・クテーラの北側にその工場はあった。
工場を約20m向こうに眺めつつ、斥候として先に行かせたディルとクーンの帰りをしばし待つ。
ほどなく二人は走って戻ってきた。
「どうだ?」
ベレルガが低い声で問いかける。
「いつものように製造は続けられているようだ」
「トレディスは?」
「・・・わからない。気配はないが」
曖昧な答えに不安を押さえきれないベレルガは、ジェダイに顔を向けた。
「どうする?クワイ=ガン」
ジェダイ・マスターは目を閉じ、何かをうかがうようにしばらく瞑想していたが、ややあって蒼色の瞳を見せた。
「トレディスは多分いるだろう。我々は何があってもこの工場を閉鎖に追い込み、トレディスを捕まえなくてはならない」
「そうだな。亡くなった人達のためにも」
「あの建物の造りはどうなっている?また入り口は?」
「一階が製造工場で二階が事務所だ。入り口は表の一ヵ所しかない」
「では、トレディスがいるとすれば事務所だな?」
「ああ。しかし、
クワイ=ガンはフッと笑った。
「それは私とあの少年に任せてくれ」
「あの少年?大丈夫なのか?」
「彼もジェダイだ。大丈夫だ」
(マスターは僕との関係を皆に隠そうとしている・・・?もしかして怒ってるのかな、僕が勝手にこの星に来た事を)
オビ=ワンは、マスターの余所余所しさを内心訝しげに思った。テレスト通りにいた時からそうだった。
頷くとベレルガは号令をかける。
「では、行こうっ!!」
「作戦は?」
「前進あるのみさっ」
言い放ちアクセルをふかした。
5台のバイクは猛スピードで工場の入り口に向かい、キャノン砲が発射されたかと思うと入り口に巨大な穴を穿つ。
バイクは次々とその穴を通り抜けた。
途端、ブラスターの光線が工場内のあちこちから放たれ、バイクを掠める。工場攻撃は読まれていたらしい。
「散れっ!!」
ベレルガの一声でバイクは四方八方に散った。すかさずバイクを駆りながらブラスターで応戦する。
クワイ=ガンは走り回るバイクから軽やかに飛び降りた。
ライトセーバーを起動しつつ声を出す。
「私と少年はこの工場の動力を止める。君たちはここを頼む」
「クワイ=ガン、動力機はシクル・ドロイドと同じ金属でできているかもしれないぞっ」
「だから、私達が行くのだ」
彼はニヤッと微笑み、工場の奥に向かって駆け出した。
オビ=ワンもジョンの後ろから宙返りして飛び降り、走り出そうとしてふと思いつき、ベレルガに訊ねる。
「僕達が動力を壊したら、ここは真っ暗になってしまいます。大丈夫ですか?」
「任せとけ」
彼女は親指を立ててウィンクする。
微笑み、オビ=ワンもセーバーを起動させ駆けていった。
すぐさま改造キャノン砲が炸裂した。
激しく熱せられた光の固まりが、製造途中のドロイドをふっ飛ばしながら天井近くの壁に、轟音とともに巨大な穴を穿つ。
動力を切られても光が射し込み中が見えるように。併せてドロイドを破壊する意味も含めて。
続けて1発。もう1発。
キャノン砲の音に紛れバイクで近づき、ブラスターを乱射していた豚のような顔のガモーリアンに
「ベレルガっ!!もうそのくらいで止めとけ。これ以上撃ったらバイクが使い物にならなくなるぞっ!!」
彼女はバイクをこまめに動かしながら叫び返した。
「上等じゃないかっ。未来のための戦いだ。バイクなんかに構っている場合じゃないよっ!!」
(お前が命の次に大切にしているバイクじゃないか・・・)
とロイは思ったが口には出さず、発した言葉は
「もし、バイクが動けなくなったらどうするんだ?」
すかさずベレルガはニヤリと笑って言った。
「あんたが乗せてくれるんだろ?」
「まあな」
ロイもニヤッと笑い返すと、次の獲物を探すためにアクセルを勢いよくふかした。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
走りながら前方左上に何者かの気配を感じると、素早くフォースに身を委ね左に身をかわし、右下段からセーバーを振りあげる。
撥ね返った光線は狙い違わず、狙撃したローディアンの胸元に吸い込まれた。
すかさず身を翻して別の光線を避けると、手首を返しセーバーを左横から薙ぎ払う。
飛んできた光線は前方右めがけて撥ね返され、そこの影にいたガモーリアンの眉間を捉えた。
クワイ=ガンは再び走り出した。
後ろからは、若きパダワンの同じく駆けてくる微かな足音が聞こえる。
と不意にジェダイ・マスターは歩を止めた。
ライトセーバーを右横に構える。
「ここから先には行かせん」
声とともに柱の影から現れたのは、巨大なトゴリアンだった。
一瞬、<モニュメント号>で闘った宇宙海賊のことが、クワイ=ガンの頭をよぎる。トゴリアン・・・侮りがたい敵だ。
クワイ=ガンの背後では緊張するオビ=ワンのフォースが感じられる。
ちらっと後ろを振り向くと、パダワンはこちらに背中を見せて新たな敵と対峙していた。その向こうには、幾分小柄なトゴリアンが同じく立ちはだかっている。
(挟み撃ちか・・・)
クワイ=ガンは苦々しげに思った。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「あと何人いるんだ?」
すれ違いざま発せられたクーンの問いにディルは答えた。
「20人ほどだ。今まで5、6人倒したからな」
「まぁだ、そんなにいるの?」
右下から聞こえる末っ子の嘆きにディルは思わず苦笑した。
が、一瞬のちには厳しい表情を浮かべる。
「だが、このままではまずい。今、我々は素早く動き回っているから相手の攻撃を防いでいられるが、燃料がなくなったら苦しい立場になる」
二人は沈黙した。
「ま、何とかなるだろう」
クーンが長い前髪をなびかせつつ素早く体を捻りブラスターを発射すると、奥からエイリアンが転げ落ちた。
「そうだね、だってジェダイもいるし」
明るい声でジョンも言い、バイクを急上昇させた。
しかし、皆の心には一抹の不安がよぎっていた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
爛々たる眼。巨大な口から見え隠れする長い鋭い牙。しなやかな体つき。美しいビロードのような毛並み。そして、何もかも突き刺さんばかりの前肢の鍵爪。その上、右手に
トゴリアンと実際には闘ったことがない。宇宙海賊に襲われた時だって、直に闘いはしなかった。
この生っ粋の狩人の攻撃を防ぐことはできるだろうか?
オビ=ワンは心を落ちつかせ、集中力を高めるとフォースを纏った。
いつも彼を助け、癒してくれたそれは、今も強さを与えてくれる。
彼はライトセーバーを右に構えると、トゴリアンを見つめた。
(来るっ!!)
と同時にオビ=ワンは前に飛び出した。
すぐ後ろにはマスターがいる。闘いのスペースを取るために。
セーバーを横薙ぎに払う。が、その瞬間にはトゴリアンの体は宙を舞っていた。
背後に回れこまれたと見るや、すぐさま体を沈めたまま反転させ、その勢いで再び足を薙ぎ払う。
これも空を切り、オビ=ワンが横に飛びずさると何時の間にか横に迫っていたトゴリアンのナイフが、彼の胸を掠めた。切っ先がローブを切り裂く。
オビ=ワンは後ろに宙返りして体勢を整えた。
トゴリアンは彼と行く手の間を遮り、前に行かせない構えである。
(マスターは大丈夫だろうか?)
ふと師に思いを馳せると、その一瞬の隙を狙って、トゴリアンがナイフを振りかざしてきた。
ライトセーバーはある程度間合が必要とされる。逆に懐に飛び込まれるとセーバーを扱いづらくなるのだ。
トゴリアンはそれを承知しているらしく、至近距離に近づいてはナイフをかざしてくる。
その激しい攻撃に、隙あらば攻撃に転じようとするものの、右に左に避けることで精一杯である。じりじりと後退し、マスターとは離れてしまった。
(彼の目的はマスターから僕を離すことだ)
と頭では理解しつつ、しかし、押されていく。
その時、ようやくトゴリアンに隙ができた。思いっきりナイフを大振りしたのである。
(今だっ!)
彼はトゴリアンに向かってセーバーを横に振るう。
視線の片隅に影が走ったような気がして
(まさかっ?)
と思った時は遅かった。
腹に強烈な打撃を受け吹っ飛び、壁にしたたか背を打ちつけ滑り落ちる。
トゴリアンはわざと隙を見せ彼の攻撃を誘い、今まで使っていなかった膝蹴りを食らわしたのであった。正にこれこそ狩人の本領発揮である。
壁に激しくぶつかった衝撃で、一瞬、息が詰まった。
咽込んで呼吸ができるようになると背中と腹が猛烈に痛み、頭がくらくらする。
その霞んだ瞳には、ナイフを振り上げたトゴリアンが勝ち誇った雄叫びとともに向かってくる姿が映っていた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
一方、クワイ=ガンは。
彼に向かい合うトゴリアンは装甲服を着込み、両手に
クワイ=ガンは静かにフォースを呼び寄せた。
「たぁっ」
掛け声とともに右のナイフを振りかざし、トゴリアンが突っ込んでくる。
クワイ=ガンは右に体を翻し、回転させて遠心力を使いセーバーを奮う。
その攻撃は左のナイフに阻まれトゴリアンまで届かない。
しかも、このナイフは何という固い金属でできているのであろう。セーバーで切り落とす事もできないのだ。
一瞬、驚きの表情を浮かべたクワイ=ガンだったが、気を取り直し、すかさず手首を返すとセーバーを下から切り上げた。
しかし、既にトゴリアンは後ろに飛びずさっている。
敵もさる者、セーバーの間合いには入らないようにしているのだ。
巨大な体を持つトゴリアンはそれだけに手も足も長く、セーバーの間合いの外から攻撃が可能なのだ。その攻撃を止めるには、自ら間合いを詰める攻撃をするか、武器を切り落とし間合いを縮めるか。
しかし、そのどちらもできない今、どのように闘うべきだろう?
クワイ=ガンは目を閉じた。集中しているのが感じられる。
不意に複数の何かがトゴリアン目がけて飛んできた。
ドロイドのパーツと思われるそれは縦横無人に飛び回ると、トゴリアンに攻撃をしかける。
敵がそれを避け、又は撥ね返しているその隙に、クワイ=ガンはすかさず前に駆け出し、セーバーを振りかざすと右上段から切り落とした。
かに見えたが、右のナイフががっしりと食い止める。すかさず、トゴリアンは手首を返した。
力と力のぶつかりあいでナイフとセーバーの間に蒸気が立ち上った。
セーバーの熱によってナイフが溶け始めているのだ。
が、トゴリアンの力は強く、徐々にセーバーは下に押し込まれる。
逆に上からセーバーを圧迫されることにより、クワイ=ガンの方が身動きがとれなくなり始めた。
その時、トゴリアンの左のナイフが煌いた。
まるで、この時を待っていたかのように。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
エンジンが空回りし始める。
バイクのスピードが落ち、
「ちっ」
舌打ちするとベレルガはバイクから飛び降り、放たれる光線を避けつつ壁の隅にある物陰に転がり込んだ。
素早く立ち上がりブラスターを構える。
失速したバイクは狙いどおり製造中のドロイド群に向かって突っ込み、爆発炎上した。
彼女はその様子を複雑な想いで見つめていた。
しかし、すぐに感傷を振り切り、冷静に状況を判断する。
この工場は二階建てと言っても、一階は製造を行っているため、天井が通常の三倍ほど高い。
そして、天井に近い方では多くのベルトコンベアーが並び、ドロイドのパーツを乗せたまま動いている。
床の方では、組立ドロイドによる組立作業が行われていた。
それら製造場所を囲むように1mほどの壁が連なり、入口から向かって右横にまで続くと、工場と通路を隔てる高い壁に繋がっている。
その通路に向かって、あの二人のジェダイは走っていったのだ。
(あいつら、大丈夫かな?)
不意にそんな思いにとらわれ慌てて頭を振ると、ベレルガは敵を見つけ次第ブラスターで応戦し、戦いに専念し始めた。
彼女の目前では、セニス四兄弟がバイクを自由自在に操り、ブラスターを連射しながら宙を駆け巡っている。
そんな矢先、彼女の傍に何か固い物が落ちてきて転がった。
視線を向けハッとする。彼女は一呼吸すると叫んだ。
「皆、逃げろっ!!
聞くや否や、四兄弟はバイクを駆って、爆発から逃れようとアクセルをふかした。
このままでは巻き込まれる。しかし、
葛藤している彼女の元に
「ベレルガ!! つかまれっ!」
轟音とともに空中から逞しい腕が伸ばされた。
「ロイっ!!」
急いでそれに手を伸ばす。