青い光がドロイドの鎌を一閃する。
オビ=ワンは手首を捻りセーバーを返すと、左下から切りあげた。
鎌と首を切られたドロイドが崩れ落ちる。
セーバーをくるっと一回転させ右上段から振るうと、今度は体を深々と切り裂いた。
荒い呼吸を鎮めつつ彼はフォースに身を委ね、ドロイド達に対峙していく。ドロイドは次第に輪を狭めつつオビ=ワンに迫り、隙あらば鎌を繰り出そうとしている。
後ろからの攻撃の気配に、身を低く回転しセーバーを薙ぎ払った彼が見たものは。
テーブルの上で身動きがままならないマスター。
そして、その背後で鎌を振りかざすシクル・ドロイド ――
あの嫌な予感が頭を過ぎる。言い知れようも無い不安が巨大に膨れあがる。
「マスターっ!!」
オビ=ワンは叫び、自分が行っても間に合わないと見るや、ライトセーバーを右手に持つと反動を加えて横向きに投げつけた。
青い光は激しく横の回転度を上げ、クワイ=ガンの背後にいたドロイドの胴体をスパッと切り裂く。
ドロイドの上半身が後ろに落ちかけると同時に、オビ=ワンは高く跳躍し、宙返りして空中でセーバーを手元に引き寄せると、テーブルの上に着地した。着地の振動が腹や背中に響き、膝から崩れそうになるのをどうにか堪える。
そして、歯を食いしばると、クワイ=ガンを狙っていたドロイドの群れを上から一閃した。
不意を衝かれたドロイドは首や鎌を切り落とされ、行動不能に陥る。
突然、高々と跳躍し飛び込んできたドロイドが、全体重を預けたままオビ=ワンに鎌を振り下ろした。
ずしっと重い手応えに思わず膝を折る。
頭上で辛うじて鎌を防いでいるが、セーバーを挟み込んでいる鎌がじりじりと下がってくるのがわかった。目が霞んで力が抜けてくる。
瞬間、彼の横から碧色に輝く光が走り、ネオ・シクル・ドロイドの胴体を貫いた。
火花が散りドロイドから力が失われると、ゆっくり後ろに倒れて行く。
「大丈夫か?」
オビ=ワンは両手をテーブルにつき喘いでいたが、後ろを振り向くと微笑んだ。
碧色のセーバーを右手に持ち佇むクワイ=ガンの後ろには、鎌を真っ二つに切られ胴体から白い煙を上げて転がっているネオ・シクル・ドロイドの姿がある。
「手強い奴だったが・・・」
とマスターは視線を走らせ
「どうやらあの改良型シクル・ドロイドは2体しかいなかったようだ。不幸中の幸いだな」
「改良型シクル・・・?」
クワイ=ガンは微笑むと
「ここでしばらく休んでいなさい」
と言い置き、残り少なくなったドロイドの群れに飛び込んだ。
オビ=ワンもしばらく呼吸を落ち着かせていたが、すぐに後に続く。
そして、間もなく、この部屋で動いているものは彼ら二人だけとなった。
一通り気配を探った後、クワイ=ガンは扉を開けた。
その部屋の奥、ベマール石で出来たテーブルの向こうに人影が座っていた。両側にしか残っていない、かなり薄い白髪を生やした、初老の小柄な人物が。
「お前がトレディスか?」
男は、テーブルの上に置いてある何かの部品から視線を上げた。丸い眼鏡の向こうから鋭い眼光がきらめく。
「遅かったな、ジェダイ。かなり苦戦したようだが?おや、子供もいるのか。俺もなめられたもんだ」
彼はそう言って頬のこけた顔を歪ませて、引きつった笑いを浮かべた。
オビ=ワンは一瞬ムッとするが、あくまでも感情を冷静に保ちながら彼を見つめる。
意に介さず、クワイ=ガンは穏やかに聞いた。
「聞きたいことがある」
「そう言われて素直に応えると思うか?」
凄みのある笑みでクワイ=ガンを見あげた。
全く臆することなく、ジェダイも堂々と弁を述べた。
「応えてもらわねばなるまい。死にたくなかったらな」
「死?そんなもの怖くも何ともない。さぁ、どうする?ジェダイ」
目をギョロリと見開き面白そうに問う。
死のやり取りでさえ、この男にかかれば単なるゲームになってしまいかねない。
内心の怒りを必死に堪えながら、今まで沈黙していたオビ=ワンが口を開いた。
「どうして、こんな争いを起こしたんですか?」
「どうしてかな?どうしてだと思う?坊主」
含み笑いを見せるトレディス。
だが、挑発にのらず少年はじっと彼を見すえる。
トレディスは面白くもないといった表情で鼻を鳴らし、忌々しげに吐き捨てた。
「コルサントに近いからさ」
すかさずクワイ=ガンが口を挟んだ。
「それだけではないだろう?」
「それだけじゃない?あぁ、それだけじゃないさ。ここは良質の金属が採れるんだ。ブラスターを撥ね返すほどのな」
「そんな金属がとれるって聞いたこともないけど」
オビ=ワンは不思議そうな顔をする。
「そりゃそうさ。俺とルサムしか知らないからな」
「ルサム?」
聞き返すオビ=ワンにトレディスはちょっと顔をしかめた。
静かにクワイ=ガンが言った。
「隕石の影響か」
「ご名答。隕石が落ちた時にそれに含まれていた金属が、衝突の衝撃で圧縮され、より良い金属になったって訳さ。俺は元々それを調べにここに来た」
「だが、今は陰謀に加担し、この街の争いをけしかけたということか」
「さぁ、どうだろうな?」
「そんなことのために争いを起こしたんですか!?」
義憤さえ含まれるオビ=ワンの問いかけに、トレディスは吐き捨てるように言った。
「全て金さ。金がないと実験もできん。いいか?綺麗事を言っても、全てこの世は金で回っているんだ。金金金さ。住民どもが争いでドロイドを使えば、金が入る。住民どもがこの街からいなくなれば、ここの金属は
「哀れだな」
「何とでも言うがいい」
口の端に笑みを浮かべた。
そんな彼に委細構わず、クワイ=ガンは淡々と訊ねた。
「他のドロイドはどうした?」
「製造したのは全部お前達に壊された」
「これだけではあるまい。他にも製造していたはずだ。それはどこにある?」
「売っちまった。気が向いたら探してみるがいい」
「どこに売ったのだ?」
「さぁな、忘れた。さて、俺もそろそろ話し飽きた。実験に戻りたいんだが、いいか?」
あくまでもマイペースで会話を進めるトレディスに、ジェダイ・マスターは溜め息をつくと言い放った。
「お前にはもう、実験を続ける時間はない」
「俺を捕まえようってのか?こんな無抵抗の俺を」
「無抵抗とは言えないが?」
「まぁね」
その勝ち誇ったような言葉の響きに、不安を感じたオビ=ワンは周囲を見渡し ――
凍りつく。
何時の間に現れたレーザーガンが部屋の四隅、天井の角から黒光りする四つの銃口で、二人のジェダイに狙いをつけていた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ブラスターの光線が右腕を掠り、ジョンはもんどりうってバイクから転げ落ちた。
燃料がなくなりつつあり、バイクも上昇ができない状態での出来事だった。
「つっ・・・」
低空飛行だったため、さほどの高さからではなかったが、さすがに腰を打ったらしく痛がっている。
その彼の横に軽やかに飛び降りた者がいた。
苦笑を見せていたジョンの顔が強張った。首に
ナイフを持ったままローディアンが声高に叫んだ。
「おい、お前等、全員降りてここに来い。武器は捨てな、こいつの命が惜しかったら」
ベレルガを始めとするセニス兄弟は、半ば苦々しく半ば怒りを噛み締めながらバイクを止め、ブラスターを放り出すと素直にジョンの周りに集まった。
「よし、それでいい。手を挙げろ。おっと妙な真似はするなよ」
と言い放ち、ジョンの首筋をナイフで触れる。
ベレルガ達は激しい怒りを堪えて無言のまま立ちすくんだ。
ローディアンは見あげると声をかけた。
「おい、あれを出せ」
ベルトコンベアー付近から一人のクラトゥイナンが姿を現す。それとともに二人、もう三人。残っている敵は七人だったようだ。
(ちっ。もうちょっとだったな)
ベレルガは密かに舌打ちした。
上から一人が降りてきて、彼女たちの手首を紐で縛り始めた。
最初に現れたクラトゥイナンが手に持っている物を宙にかざした。
「これは何かわかるか?タイマー付の
敵は五人を数珠つなぎに縛った後、その紐の先を、傍にある重そうなコンテナの取っ手に括りつけた。
それを上で見届けたクラトゥイナンは、嬉しそうに爆弾を持った手を掲げた。
「これでお前達も終わりだ」