突然彼方で、今まで微かに感じていたフォースが急激に激しい渦を巻き起こし、途端、消えた。
クワイ=ガンは思わず足を止める。
(オビ=ワンの身に何か?)
言い知れ得ぬ不安が鎌首を持ち上げ、クワイ=ガンの心臓を締めつける。
急いでコムリンクを鳴らす。オビ=ワンも持っているはずだ。いざという時のために。しかし、コムリンクは鳴り続けたままだった。
彼は緊張に固まった表情を見せつつ、先ほどまでフォースが感じられた場所に向うため、急ぎ足で歩き始めた。
どのくらい歩いたことだろう。
クワイ=ガンの右手前方、横道の辺りに人だかりができているのが見てとれた。
制服を着、銃を持った屈強な男が数人、野次馬を追い払うように立っている。
あれが街の人の言う保安部隊とやらだろう。この街の治安を守っている組織とのことだ。
その傍に数台の
迷わずそこに足を進める。
「何かあったのか?」
近くにいた人の良さそうな、一見ヒューマノイドに見える年配の女性に声をかける。女性は胡散臭そうにクワイ=ガンをじろじろ見やった。
クワイ=ガンはさりげなく手をかざし、彼女の心に穏やかにさせるフォースを送った。
途端に女性はしゃべりだす。誰かに話したくて仕方がなかったようだ。
「いやね、小耳に挟んだんだけど。ついさっき、あの奥の」
と、横道の奥に立っている古い倉庫を指さし
「あそこで乱闘騒ぎがあったらしいんだよ。この辺には、あぁいったろくでもない奴らが多いんだけど、そいつらが何人かで少年を襲ったみたいなんだ。たった一人の少年を、さ」
(オビ=ワンか?)
クワイ=ガンは内心苛立ちを覚えた。早く先を聞きたい。
「ところが、その少年が滅法強くってさ。あっという間に皆やられてしまったらしいよ」
「それで、その少年は?」
焦りを奥底にしまい込み、何事もないかの風を装い、穏やかにクワイ=ガンは聞いた。
「わからないんだ。だって、保安部隊が乗り込んだ時には、もう影も形もなかったからね」
(無事だといいのだが。しかし、どこに行ったのだ?)
「でもね、ぼく、見たんだ」
その女性の傍らにいた少年がいきなり話し始めた。少年がいたことすら気づかなかった。
それほど、オビ=ワンのことで頭が一杯だったらしい。
「見たこともない、わかい男の人がね、走って来たんだ。男の子をかかえていたよ。その子、気を失ってたみたいだった。かおが青白かったもん」
(何だと?)
クワイ=ガンはしゃがみ込み、まだ幼き少年に目線を合わせた。
「どちらの方角に行ったか、わかるかな?」
「あっち」
男の子は指を指した。クワイ=ガンが歩いてきたのと反対の方角に走って行ったらしい。
そちらの方角は街の郊外に続く道だ。宿屋も多くあり、仕入れた知識から考えると
クワイ=ガンは頭を戻して続ける。
「どんな男の人だったか、教えてくれるかな?」
「う~んとね。ぜんぜん知らない人だった。きっと、このまちの人じゃないよ」
「特徴とかは?」
「あんた、保安部隊のもんかい?」
ふと不安になったのだろう、女性が突っぱねるような言い方で遮った。おびえた目で見つめる。面倒に巻き込まれたくないのだろう。
「いや、違う。私はその少年を探しているのだ」
やや一呼吸置いて、そして、再びそれとわからぬよう手をかざす。
「保護者なのだ」
「あら、そう?それは大変だね」
「かっこいい人だったよ。せは、おじさんよりちょっと低いかな。けど、あんまりとくちょうとかは、わかんないや」
クワイ=ガンは思わず深い溜め息をつきそうになり、急いで口を一文字に結んだ。これ以上は聞き出せそうにない。しかも、これ以上人目につきたくない。
「ありがとう」
という言葉を残し、足早にその場を去った。
もしかしたら、オビ=ワンが担ぎ込まれているかもしれない
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
体が燃えるように熱かった。喉が水分を求めて喘いでいる。
オビ=ワンは重い瞼をどうにか持ちあげた。
霞む視界の向こうに茶色の背景とポッと光る丸いものが見える。じっと必死に目を凝らしているうちに、それは天井とそこから吊り下がる灯りということがわかった。
(ここは・・・どこだろう・・・?)
声にならない呟きを漏らす。
(僕は・・・どうしたんだ?)
何も考えられないぐらい重い思考を振り絞り、オビ=ワンは考えた。
(そうだ・・・・あいつらと戦って・・・気を失ったんだ)
体が鉛のように重い。身じろぎさえすることができない。全身が火を吹いているようだ。汗がびっしょりと服を湿らせている。
(水・・・水が・・・欲しい・・・)
ふと、左手からカチャカチャというリズミカルな音が聞こえるのに気づいた。
やもすれば眠りに落ちそうになる頭をどうにか左に向け、熱にうるむ瞳を向ける。
(マスター・・・?)
しかし、違った。
そこに居たのは、背中から判断するしかないが、若そうな、恐らくヒューマノイドだと思われる男だ。クワイ=ガンよりは細身で髪も短めである。
彼はオビ=ワンに背を向け、テーブルに乗ったキーパットのような物を両手で打っていた。
気配に気づいたのか、男は振り向いた。
「おっ、気がついたか?」
ニッコリ微笑みながら彼は向かってきた。
「大丈夫か?坊主」
「・・・ここ・・・は・・・?」
かすれる声をどうにか出し、オビ=ワンは訊ねる。
「しばらく休んでいた方がいいぞ。熱が高いからな」
彼は傍を離れ、しばらくして、なみなみ水が入ったグラスを持ってきた。
体を起こそうとするが、全く力が入らない。男はそんなオビ=ワンを助け、水を飲ませてくれた。
冷たい感覚が火照った喉を通りぬけ、とても気持ちがいい。
喉を鳴らしながら水を飲み干し、ホッと一息つくと、再び睡魔が襲ってきた。
力なくベットに沈み込むと、オビ=ワンの意識は混濁し、気を失うように眠りについた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
続々と先ほどの乱闘で担ぎ込まれる男達を余所に、クワイ=ガンは同時期に
しかし、答えはNoだった。
(
相変わらずオビ=ワンは、自分のフォースの呼びかけにも応えない。再びコムリンクを鳴らしたが、返事もない。
クワイ=ガンは再び焦る心を静めつつ、ただでさえ少ない情報を得るために歩き出した。
嫌な予感がする。
何度心の中でこの言葉を繰り返したことか。
オビ=ワンが行方不明になってから丸一日たった。何かトラブルに巻き込まれていなければいいが。
昨日一睡もできなかった。
オビ=ワンのフォースが感じられない今、自分から探し回るしかない。フォースが感じられないということは、オビ=ワンは気を失っているか、さもなくば・・・・・・生きてはいないということだ。まさか、自分のフォースが届かない遠くに行っているという訳ではなかろうが。
いや、その可能性もなくはない。何しろここは密売が公然と行われている街なのだから。子供一人連れ去られた所で誰も気にしないのだ。
見知らぬ若い男・・・
彼は気を失ったオビ=ワンを抱え、どこへ連れていったというのだ。
焦る心を静めつつ、クワイ=ガンは考えた。
落ちつけ、落ちつくんだ。ジェダイ・マスターらしくもない。
気を失った子供を連れているなら、そんなに遠くへも行けまい。リルパの宿屋を片っ端からあたってみるか。
もし、その若い男が宇宙船を持っていたら・・・そんな可能性は考えないことにした。
とりあえず、できることをやっていこう。多分、フォースが導いてくれるはずだ。
いつでも危険を察知できるようにフォースを纏いながら、クワイ=ガンは街を足早に歩く。微かなフォースの揺らめきさえもあれば、すぐ感じ取れるように。
数多い宿屋に向かいながら。