クワイ=ガンは48歳、オビ=ワンは13歳の設定。
シリアスです。
第1話 海賊船の襲撃
ゴォォ・・・ン
物を叩くような鈍い音がして、少年はハッと顔を上げた。
手にしたデータパットの上では、美しい惑星がホログラムとなり浮かびあがっている。
(何の音だろう?)
警戒心を強めた矢先に彼のコムリンクが鳴り出した。
すかさず応える。
「はい、オビ=ワン・ケノービです」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
毛の長いダークグリーンの絨毯が敷きつめられた廊下を静かに歩き、ジェダイ・マスター、クワイ=ガン・ジンは夕食後の散歩をしていた。
とりたてて当てはない。
ただ、このような豪華客船に乗ることは滅多になかったし、そう言った意味では彼も人並みに好奇心が沸いたということか。
<Elegant Castle>は、コルサントから出航し、銀河の主な惑星に立ち寄る旅客船だ。次の任務地にも寄る。
任務はかなり楽なものとなるだろう。表敬訪問をするだけなのだ。
マスター・ヨーダは、先だってのクテーラの街の争いを、短期間に無事収拾したことについて深く感銘を覚えたようで、今度は簡単な任務をクワイ=ガンとオビ=ワンに与えたのだ。いや、任務と言うよりは褒美を兼ねているかもしれない。
クワイ=ガンは思わず苦笑を漏らした。
あの争いだって彼の弟子がいなかったら、どんなに困難な状態になっていたか・・・。
その若きパダワンは部屋で次の任務地の勉強をしているはずだ。
好奇心旺盛な弟子はすぐにでもこの客船の中を探検してみたいだろうが、さすがに任務先のことを頭に入れてからでないと気が引けるのだろう。
彼も彼なりに努力している。
クワイ=ガンは弟子のことを考えると思わず頬が緩んでしまうのであった。
絨毯を踏みしめ辺りを見渡す。そこは大広間だった。
この客船は本当に豪華な造りになっており、高い天井にシャンデリアが煌き、その下には紳士淑女達が歓談し話に花を咲かせていた。
躾の行き届いたクルー達が飲み物の載ったトレイを運び、かいがいしく乗客の間を回っている。
広間の隅にはバンドがいて様々な惑星の曲を奏でていた。
その時、何か鈍い音がしたような気がした。常人では気づかないかもしれない音。
だが、クワイ=ガンはすかさず急ぎ足で歩き出した。船尾に向かって。
風が轟々と渦巻いている。
船の空気が、船尾に突如空いた穴から外に吸い込まれているようだ。空気と一緒に備品やら小物も巻き上がり、船の外へと消えていく。
クワイ=ガンは自身も吸い込まれないよう近くの壁から出ている出っ張りに指をかけ、様子を窺う。
しばらくして鈍い衝撃が走ると風は収まった。
どこぞの船が、この客船に穴を開けて乗り込むためにドッキングしてきたらしい。
ジェダイ・マスターは苦虫を噛み潰したような顔をした。
と、今度はかなり離れた所から再び鈍い音が響いた。船首の方だ。コクピットを支配するつもりかもしれない。あそこを押さえれば船は航行できなくなる。
(二ヵ所から乗り込むつもりだ)
彼はすかさずコムリンクを鳴らした。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「マスター、何があったんですか?」
ただならぬ雰囲気を感じ、オビ=ワンは問いかけた。
『緊急事態が起こっている。お前はただちにコクピットに向かって欲しい』
「はい、マスター。しかし、緊急事態とは?」
ところが、通信はそこで切れた。
オビ=ワンは素早くローブを羽織りライトセイバーを確認すると、部屋から出てコクピットに向かって走り出した。
マスターの所に向かいたい心を押さえながら。
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コムリンクを切らざるを得なかった。
ブラスターの光線が次々とクワイ=ガン目がけて発射されたからだ。彼はライトセーバーを起動させると、それを全て撥ね返した。
ブラスターが効かないとみるや、斧を持ったガモーリアンが突進してきた。ジェダイ・マスターは腰をかがめ、体を一回転して反動をつけると、セーバーを薙ぎ払う。
真っ二つになるガモーリアンを余所に前に飛び出ると、ブラスターを構えていたローディアンにセーバーを振るい切り落とす。
隣り合った船から、接続した通路越しに続々と乗り込もうとしている者達を見るや、彼は周囲に視線を走らせた。
目当てのコントロール・パネルは少し離れた壁際に埋め込まれていた。
確認するやクワイ=ガンはおもむろにセーバーを振りかざすと、<Elegant Castle>と船を繋いでいる仮の通路目がけて振るった。
いくら頑丈な通路と言えども、セイバーの前では高熱により飴のように溶けて曲がっていく。
放たれる光線をことごとくかわしながら、クワイ=ガンは通路に切れ目を入れ続けた。
やがて脆くなった通路は乗っている人数に耐えきれなくなり、床が歪むと激しい音を立ててひしゃげ、乗っていた者もろともゆっくりと宇宙空間を落ち始める。
クワイ=ガンは複雑な気持ちで眺めつつ、自身も真空空間に飛ばされないよう壁を伝いコントロール・パネルに向かうや、スイッチを押した。
緊急用のシャッターが素早く落ち、船は元通りの静けさを取り戻した。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ふと足を止めた。
壁に背をつけ、こっそりと部屋の中を窺う。
そこは緩やかな曲線を描く階段が二階へと続く、美しく豪華な雰囲気を持つ大広間であった。
その一角に着飾った人々が集められ、物々しい武器を抱えた荒くれ者達が人々を囲んでいる。
広間とその横から通じる通路とを隔てる扉には、無理にこじ開けた跡があり、ブラスターなどの応戦の跡だろう、所々焼け焦げていた。
その様子からオビ=ワンは察した。
(宇宙海賊だ・・・っ)
海賊は多いと聞いていたが、まさか自分達の船が襲われるとは。宇宙を航行する船にとって一番会いたくない者達だ。
確かにこの船は煌びやかな外装から豪華そうなイメージを醸しており、狙いたくなる獲物なのかもしれない。現に、彼ら海賊達の足元には、乗客からかき集めたと思しき宝石や金目の物が高く積み上げられていた。
彼らは手っ取り早く仕事を済ませるために、この大広間に通じる通路を破壊して侵入してきたらしい。かなり手慣れた連中だ。
「そろそろ潮時だ。行くぞ」
この海賊の頭と思しきデヴァロニアン ―― 惑星デヴァロン出身のこのエイリアンは、男性のみ頭部に大きな悪魔のような2本の角を持つ ―― が声を発した。
ブラスターの銃口を乗客に向けつつ、海賊どもは宝とともに通路の奥へと消えていった。
最後に一人残ったデヴァロニアンが、じっと周囲を眺め渡したあとポツリと声を出した。
「もう
と身近にいた母娘の方を睨みつける。
声をかけられ、今まで震えていた親子は更に身を寄せ合って縮こまった。
デヴァニロンは構わず近づくと、母親から子供を引ったくった。
「何をするんですっ」
恐怖の面持ちで、しかし、気丈にも母親は声を荒げた。
「人質にするのさ。攻撃できないようにな」
ニヤッと不敵な笑いを見せるとデヴァロニアンは、その嫌がる髪の長い少女を無理矢理引きずっていく。
「やめてください、やめてっ」
「おっと、大人しくしてろよ」
行かせまいとする母親にブラスターの銃口を突きつけた。恐怖に立ち竦む母親。
周りにいた乗客も隙さえあればと身構えるが、そんな彼らにも銃口を向けつつ海賊は後ろ向きに下がっていく。
あまりのことに、声すらも発せない幼き少女。
オビ=ワンは沈痛な表情で、しばし目をつぶった。
ややあって目を見開き、そっと辺りを見回す。だが、マスターの姿はどこにも見えなかった。
彼は意を決し唾を飲みこむと、大広間に足を踏み入れて声を投げかけた。
「その子を放してください。僕が代わりに人質になります」