銀河彼方での物語   作:秋鹿

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惑星オルデランを訪れたクワイ=ガンとオビ=ワン、そして、同じくジェダイ見習いでオビ=ワンの友人、ガレン。ただの表敬訪問だったはずが、施政10周年記念パーティを目前にし、何やらきな臭い陰謀が。否応なく巻き込まれていくオビ=ワンとガレン ―― といった話。
クワイ=ガンは48歳、オビ=ワンは13歳の設定。
シリアスです。

ちなみに、オルデランの描写はほぼスピンオフを参考にしています。


5.流過の都 -Ryuka no Miyako-(オルデラン編)
第1話 表敬訪問にて


まるで絵の具で色を塗ったようなきれいな紺碧の空が広がっている。そして、僅かに細くたなびく白い雲。時間が経つのを忘れさせる光景だ。

しかも、この首都の外観。何とも表現できないほど美しく、心を和ませる。

 

頬杖をついてそんな風景に視線を走らせつつ窓辺に佇んでいたジェダイ見習い、ガレン・マルンは、右隅から走ってくる人影に気づき、思わずくすくすと笑いをこぼした。

(やっと起きたな)

人影は、宇宙港に存在する巨大な、かつ白亜でできたメイン・ビルの自動ドアを通り抜けると、ガレンの元に駆け寄ってきた。

開口一番。

「ひどいじゃないか、ガレン」

「何が?」

笑いを噛み殺しながらガレンは友の方を向いた。

起きてから慌てて身支度して走ってきたのだろう。息せき切っている様子にまた笑いを誘われる。

「目が覚めたら誰もいないなんて。起してくれれば良かったのに」

「疲れているみたいだから起すなってマスター・ジンに言われたんだ」

「マスターが?」

溜め息一つつくと、オビ=ワン・ケノービは横の椅子に腰を下ろした。

「確かに任務が続いたけど、これぐらいで疲れたなんて思っていないのに」

「いや、マスター・ジンは正しかったと思うよ。だって現にこんな時間まで君は寝ていたじゃないか」

「え?今何時?」

「もう1100時だよ。何か言い訳できる?」

「そんな時間なのっ!?・・・・・・できないね」

ふぅと再び溜め息をつき両手を組んで顎を乗せた。横から窺える青緑の瞳にはショックの色とやりきれ無さが浮かんでいる。

(オビ=ワンはすぐ悩むからな・・・)

苦笑するとガレンは、彼を悩みから解き放つべく話を戻した。

「で、マスター・ジンに、君が起きるまで、ここで待っていてほしいって頼まれたのさ」

物思いに耽っていたオビ=ワンはハッとしたように顔を上げた。

「え?あぁ、そうなんだ。それでマスターはもしかしたら王宮に?」

「うん。王宮から迎えのシャトルが来て、表敬訪問だから私一人で充分だって。オビ=ワンにはゆっくり休むように伝えてくれ、気が向いたら観光でもしてみると良いだろうってね」

「・・・」

先ほどよりもっと落ち込んだ表情で俯く。

そんなオビ=ワンの姿に、ガレンは内心焦りつつ元気づけるべく言葉をかけた。

「そんなに落ち込まなくても。表敬訪問だし。マスター・ジンも休むようにって言ったんだから」

「・・・僕ってパダワン失格なのかな・・・」

「そ、そんなことないよ。君はがんばってるさ。僕なんかよりずっとね。・・・ほんと言うと君が羨ましくなることだってあるんだ」

思いもかけない言葉にオビ=ワンは不思議そうに訊ねる。

「ガレンが?」

「まぁね。ところで気晴らしに観光にでも行かないか?折角オルデラに来たんだから。ね?」

「・・・うん。わかった」

しぶしぶ承知したオビ=ワンの手を引っ張ると

「よし、行こう」

ガレンは元気良く駆け出した。

 

「わぁ・・・」

溜め息とも歓声ともとれる声がオビ=ワンから漏れた。メイン・ビルから外に出て、先ほどには気づかなかったこの素晴らしい景色を目にしたからだろう。

この宇宙港 ―― 奥にはつい先刻、オビ=ワンが降りてきた<Winged House>が白く美しい姿を横たえている ―― は高台にあり周りが見渡せた。

惑星オルデランの首都オルデラは湖の真ん中にある島にあった。

湖は隕石孔で涌き出る地下水によって満たされている。隕石孔は一連の低い不ぞろいな峰の丘のように湖を囲み、なだらかな丘陵には緑色の草原と森が広がっていた。

それが眼下に一望できるのである。

オビ=ワンならずとも感嘆の声が上がるのも無理はない。

 

「さ、早く行こうよ」

ガレンの言葉に促されて、オビ=ワンはハッと我に返ると急かされるが如く走り出した。

前方にはシャトルの発着所がある。

ちょうどそこには、今にも出発せんばかりにシャトルが待機していた。

二人は慌ててそれに乗り込む。

ドアが閉まり発車するとオビ=ワンはすかさず聞いた。

「このシャトルってどこに行くの?お金(クレジット)は?」

「これはオルデラを周遊しているんだ。だから観光名所と呼ばれる所には停まるよ。それに無料なんだって、とキャプテンが言ってた」

「そういえば、パグェスさんは?」

「キャプテンはドロイドを買いにいったよ。船で使うドロイドが必要なんだ」

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「いらっしゃい」

ドアを開けて入って来た客に、店の主人は愛想の良い顔で声をかけた。

パグェス・ハルシヨンは一通り店に展示してあるドロイドに視線を移した。

儀礼(プロトコル)ドロイドに始まりいろいろなドロイドが置いてあるが、どれが自分の欲しい物か今一つわからない。

そんな彼に主人は訊ねた。

「どんなドロイドをお探しですか?ここには様々な種類のドロイドがいますよ」

「そうだな。多国語を通訳してくれるドロイドで、しかも、宇宙船に詳しく、操縦や修理もできてしまうドロイドを探しているんだ。いるかな?」

「2体お求めで?」

「いや、1体だ。1体でそんな器用なことができるドロイドが欲しいんだが」

「それは難しい注文ですね、旦那」

主人は考え込んだ。

今まで考え込まれた末に「やはりないですね」と散々言われてきたのだ。今度も無理かもしれない。さすがにそんな都合の良いドロイドがいる訳はないかとパグェスが踵を返そうとした時。

「そうだ。ご注文に添える奴が1体いますよ。ただ儀礼(プロトコル)ドロイドほど多国語に精通している訳ではなく、宇宙船乗組用(アストロメク)ドロイドほど器用ではありませんが、ちょうどその二つを合わせて、二で割ったようなドロイドが」

主人が嬉しそうに言った。

初めての好感触にパグェスも安堵する。

「見せてもらえるかな」

「なかなか希なドロイドでしてね、ちょっとお値段は高いですが」

「値段は関係ない」

しかし、何故か主人はちょっと困ったような顔をして言葉を続けた。

「・・・ちょっと癖もありますが・・・」

「癖?」

パグェスは怪訝そうな顔つきをして、店の主人をまじまじと見つめた。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

その男性は赤い絨毯が敷きつめられた通路に立っていた。

煌びやかな服装をした男女と歓談に興じている。

男性はジェダイ・マスター、クワイ=ガン・ジンに気づき、男女に向かって何ごとかを言いお辞儀をすると、こちらに向かって歩いてきた。

その後ろを、流れるように白い輝く服を纏った、褐色の髪の女性がついてくる。

笑顔を満面に湛え、クワイ=ガンの背より少し低めのその男性は声をかけた。

「これはこれは、マスター・ジン。ようこそおいでになりました」

クワイ=ガンもゆったりとお辞儀を返す。

「お久しぶりです、総督。お元気そうでなによりです。ところで先ほどの方々は、よろしかったのでしょうか?」

総督と呼ばれた男は後ろを振り返った。男女が通路の奥に消えていく。

「彼らは施政10周年記念式典へお招きした来賓です。また、後で会えますからね」

「マスター・ジン、お久しぶりですね」

声とともに、総督の後ろから優雅な足取りで女性が現れた。

「総督夫人もお代わりなく。全く喜ばしいことです」

柔らかに微笑みつつ言葉を返す。夫人も美しい笑顔を見せた。

クワイ=ガンは再び静かに総督に向き直り、言葉を続けた。

「共和国元老院議長やジェダイ評議会に代わり、ご挨拶させていただきます。施政10周年、おめでとうございます。この星がここまで美しく平和な星になったのも貴方のおかげでしょう」

総督は豪快に笑い

「いえいえ。私一人の力ではありません。この星に住む人々の力です」

とクワイ=ガンの肩を軽く叩くと歩き出した。

 

オルデランの総督は民主主義により選出され、この惑星を統治している。

そして、彼はその平和的かつ文化的な性格から、オルデランを銀河有数の美しく、人々が安心して暮らせるような惑星に変えていった。それは犯罪がほとんどなく、公害もないといった現状を見ても一目瞭然である。

また、彼は共和国議員の一員としても類希なる手腕を発揮していた。

この度、施政10周年の記念式典が開催されるにあたって、多忙な元老院議長からジェダイ評議会に要請が入り、こうして先の任務を無事終えたばかりのクワイ=ガンとオビ=ワンに、表敬訪問の指示が下されたのであった。

それにはクワイ=ガンとオルデラン総督が旧知の間柄ということも、少なからず影響を及ぼしていたであろう。

 

「それはそうとマスター・ジン。貴方のパダワンはどちらに?」

総督夫人が歩きながら、悪戯っぽい笑みを向ける。

クワイ=ガンは思わず苦笑した。

「ご存知だったのですね、私が新しくパダワンを持ったことを。彼は少し疲れているようなので宇宙港で休ませております」

「まぁ、それはいけませんわ。この街には立派な医療(メディ)センターがあります。診てもらったらいかが?」

「いえ、大丈夫でしょう。すぐに元気になると思いますよ」

「そうですの・・・?折角お会いしたいと思っておりましたのに」

残念そうな表情を浮かべる夫人に、総督は優しく言った。

「サレフィ、無理を言ってはいけないよ」

それから言葉を続ける。

「私はマスター・ジンと話がある。君は部屋に戻っていてくれないか?」

「かしこまりました」

総督夫人は二人に向かって優雅にお辞儀をすると

「失礼させていただきます」

と微笑みつつ去っていった。

 

総督は深い溜め息を漏らすと、急に夫人を下げたことに対して不思議そうな顔つきで自分を見つめるクワイ=ガンに向かって、苦笑しながら口を開いた。

「私はもうすぐ45標準歳になります。彼女も40標準歳を過ぎました。しかし、まだ子供がおりません。彼女は年頃の子供を見ると羨ましそうな顔をするのです。仕方がないことなのですが。だから、もし貴方がパダワンを連れてきたら、彼女は自分の息子のように可愛がったかもしれません。しかし、それではジェダイとしての務めに支障を生じるでしょう?だから、これ以上、無理を言わせないようにサレフィを下がらせたのですよ」

決して夫人に怒っている訳ではなく夫人の気持ちを理解しつつ、かつジェダイとしての役割にも心を配るその態度にクワイ=ガンは賞賛の念を禁じえなかった。

「お心づかい感謝します」

ジェダイ・マスターは心からの謝辞を述べ、深々とお辞儀をした。

「気になさらないでください」

総督は笑顔を見せる。

「貴方が施政10周年を祝いに来てくれたことだけでも、本当に嬉しいのですよ」

「でも、それだけではありませんね?元老院議長を使ってまで私を呼び出した訳は」

「さすが鋭いですね。実は一つお願いが・・・」

総督は苦笑いを浮かべながら言葉を出した。しかし、その瞳は真剣そのものだった。

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