(・・・どれくらいの時間が・・・経ったんだろう・・・)
意識が戻り始めると、オビ=ワンは最大限の努力をして、ようやく重い瞼をこじ開けた。熱で潤んだ瞳を周りに向ける。変わらず先ほどの場所だ。
やや快復しつつある思考は、マスターが心配しているかもしれない、早くマスターに連絡しないと と、オビ=ワンを駆り立てる。
しかし、体が全く言うことをきかない。まるで鉄の布団が覆い被さっているように身動き一つままならない。
それでもフォースを何とかかき集め、状態を確認してみる。
熱が高い。それはわかっている。あと傷は・・・そうだ、左足と右肩にブラスターの光線を受けたんだ。
右肩は怖くて探れない。直視する勇気も今は出なかった。ま、いかにせん、顔を動かすことも容易ではないのだが。先に左足にフォースを送る。布が巻いてある。あの人が手当してくれたらしい。左足の傷はちょっとした火傷程度で熱を帯びているが大丈夫だろう。
右肩は・・・。オビ=ワンは恐る恐るフォースを伸ばした。途端、思わず声を漏らす。悲惨だった。左足と同じく布が巻いてあり、消毒や手当はされているが、光線が貫通した箇所の筋肉は筋が切断され、肉は赤く焼け爛れ、かなりの高熱を発している。フォースの導きか、骨は掠める程度にしか損傷していなかったことが不幸中の幸いだった。
体が麻痺しているせいか痛みは鈍くしか感じない。
しかし、気持ちを落ちつかせて探ったにも関わらず、ただでさえ青白い顔から更に血の気が失せ、気を失いかけた。慌てて意識をはっきりさせる。
(ちゃんとした治療を受けるまでは、当分右手は使えそうにない・・・)
「よぉ。気分はどうだい?」
突然、視界に彼の笑顔が飛び込んできた。
「・・・さっきよりは・・・大丈夫です・・・」
言葉を絞り出すように掠れた声で応える。喉は依然として水分を求めている。
「あなたは・・・誰なんですか?どうして・・・僕を?」
「余りしゃべらない方がいいな。体力を消耗しちまう。俺の名はジェネヴァー。ルポライターみたいなもんかな。いろいろな惑星に行ってそこの土地を調べ、ガイドブックを作っているんだ。お勧めの店や旅行者が決して足を踏み入れてはいけない場所なんかを載せているんだが、これがまた、売れるんだぜ」
そう言って彼はニッコリ笑った。オビ=ワンが真剣に聞いているのを見ると、彼は台所に向かいながら話を続けた。
「で、今回も同じようにこの星に来て、あちこち胡散臭い場所をぶらついてたらさ、たまたまあの倉庫の前を横切った。音が聞こえて、好奇心旺盛な俺は中を覗き込んだんだ。そうして坊主を見つけたって訳さ」
水が入ったグラスを持ち、片目をつぶってウィンクする。人懐こそうな人だ。ルポライターという職業柄そのような性格になるのかもしれない。
「ほら、水だ」
「ありがとう・・・ございます」
また上体を起こすのを手伝ってもらいながら、水を流し込む。
体のすみずみまで冷たい感覚が広がっていくようで、生きているという喜びとともにしばらく余韻を味わった。
「僕は・・・・・オビ=ワン・ケノービです。・・・でも、どうして・・・介抱・・・」
「しゃべらない方がいいって言ったばかりだぞ」
少し窘める顔をし、しかし、すぐに一転して微笑んだ。
「ま、困った時はお互いさまさ。死にそうな奴を放っておく訳にはいかないだろう?・・・それに、死に別れた弟が丁度坊主と同じぐらいの歳だったんだ」
悲しげな横顔を見せる。
オビ=ワンは慌てて言った。
「す、すみません・・・」
急にニカッとした笑顔を見せて、彼は
「気にするなって。いいってことよ、過去のことだしな。それより、坊主、お前一人か?」
話を変えた。
(そうだ、マスター・・・)
「マスターが・・・僕の師匠・・・なんですけど」
呼吸を整え、再び口を開く
「彼と連絡を・・・取らないと・・・」
「本当だったらお前についていてやりたいが、その師匠とやらを探した方が良さそうだな。どんな特徴をしている?」
頭が朦朧としてきた。瞼が重い。確かにしゃべりすぎたのかもしれない。
「おい、大丈夫か?」
「・・・すみません・・・」
閉じていた瞼を開き、オビ=ワンは辛うじて声を出した。
「背が高く・・・がっしりとして・・・茶色いローブを纏っています。・・・髪は少し長め・・・で・・・青い眼で・・・・・・」
「もういい、もういいよ。とりあえず名前を教えてくれ」
喘ぎつつ、オビ=ワンは必死に声を絞り出した。
「クワイ=ガン・ジン・・・・」
意識を保つ気力もついえ、オビ=ワンの思考は闇に消えた。
(かなり酷い状態だ。この星の原始的な医療じゃ、大した治療は望めないかもしれないが、早めに
彼は、腕の中で意識を失ったオビ=ワンを見つめる。端から見ても呼吸が荒いのがわかった。ベットに静かに横たえると布団を掛ける。
オビ=ワンの顔を眺め、彼は一瞬寂しそうな顔をし、それから振り向くとそっと部屋を出ていった。