銀河彼方での物語   作:秋鹿

44 / 58
第3話 囚われの弟子

小さく四角い、暗黒漂う、一筋さえ光の射さぬ部屋。

少年は膝を抱え座っていた。どのくらい時間が移り変わったかわからないこの部屋で。

ふぅと溜め息をつき顔を膝の間に埋めると、心の静寂を求めフォースに手を伸ばす。

その時、急に彼はフォースの乱れを感じ、素早く立ち上がった。

今いる部屋の闇よりも暗く、邪悪なフォースを纏った者が部屋へと近づいてきている。

気配の訪れとともに、彼を取り巻く周囲の空気が濃厚に密度を増し重くなるようだった。

少年はだんだん息苦しくなってきた。背筋がざわざわしてくる。

フォースが危険を告げていた。

気配がドアの前で立ち止まった時には、真っ直ぐに立っているのも辛いほどだった。

 

音もなくドアが開いた途端、部屋の空気が暗黒に支配された。

ドアから明かりが漏れてきているはずなのに、依然として暗闇に包まれたままだ。いや、逆に闇が更に濃く深くなったようだ。闇にも濃さがあるとすれば ―― だが。

突然、少年は喉を強く締めあげられた。振りほどこうと喉元に手をやったが、そこには何もなかった。

(誰かがフォースで締めつけているんだ!でも、誰が!?)

彼は浅い呼吸を繰り返しながら考えた。

(ダークサイドに陥ちた集団 ―― シスなんて、授業で習ったことがあるだけだし・・・)

(ブルック ―― 彼のフォースには暗い小波がたつことはあったけど、それだけだ。それに・・・もう死んでしまった。僕の目の前で・・・)

喉が更に締めつけられた。

少年は必死に酸素を求めて喘ぎ、見えない力に対抗するが如くフォースに手を伸ばす。

だが、フォースは彼の指の間をすり抜け消えてしまった。

絶望が彼を支配した。

全身の血管が音を立てて脈打ち、頭が朦朧としてくる。視界の周りが黒く滲み狭まってきた。

(強い・・・ダークサイドのフォース・・・太刀打ち・・・できない)

そう思った瞬間、突如、暗闇に白い顔が浮かびあがった。

その顔を認識しようとしても、すでに思考が働かない。

茫然と見つめる少年の前で顔はニヤリと笑い、不意に崩れ始めた。皮膚がどろどろと溶け落ちて骨が見えるほどになったが、口元の笑みは消えず凄みを増して更に広がった。

その顔が急に目の前に迫ってくる。

恐怖の声が喉元で止まり、少年は霞む目を見開いた。

どろどろと溶けつつある両手で少年の顔を挟むと、ほとんど骸骨だけになった顔が嬉しそうに言った。

「次はお前の番だ」

少年の頬は蒸気を発し溶け始めた ――

 

「うわぁぁぁ・・・」

叫び声とともにオビ=ワンは目を覚ました。

肺は空気を求めて喘ぎ、冷汗が全身を濡らしていた。思わず両頬に手をやり何もないことを確認する。

(また、あの夢・・・)

耐え切れずに目を瞑る。

ここ数日彼を悩ます悪夢。体が溶けていくあの恐怖。

(夢だ、夢なんだ。現実じゃない・・・)

落ち着かせるため自分に言い聞かせる。次第に鼓動は大人しくなり汗はひき始めた。

深い呼吸を数回しようやく彼は目を開け、しかし、恐怖で喘いだ。

部屋の中は真っ暗で何も見えなかったからだ。

まるで先ほど見た夢の中の部屋のように。

 

(あの部屋みたいに暗い・・・?)

オビ=ワンは再びドキドキし始めた心臓をなだめようとした。

(これは夢だ、きっと僕はまだ夢を見てるんだ)

深い息を吸い込み額に手を当て汗をぬぐうと、次第に気分が落ち着いてきて、溜め息と共に彼は手を横に下ろした。その指先に冷たい感触が走る。

恐る恐る手を伸ばし調べてみた。それはごつごつとした手触りがする。

これは ―― 石?石の床?

不意にそれに気づきガバッと体を起こすと、途端、激しい目眩と強烈な頭の痛みに襲われた。起きていられないほどの目眩に倒れそうになり、思わず右手を床に着いて

「ぐっ・・・」

オビ=ワンは激痛にうめいた。

痛みの感覚により、ようやく彼は現実を把握した。

(これは・・・夢じゃない)

 

(何故こんな所にいるんだろう?)

冷たい石の床に横たわりながら少年は考えた。目眩の酷さに今は体を休めるしかなかった。

(頭痛と脳しんとう、右の二の腕の火傷・・・一体、何が?)

彼の思いは過去を溯る ――

ついにオビ=ワンは、シーカー相手にライトセイバー訓練を行っていたことを思い出した。

(そうだ、シーカーが止まって・・・突然、僕は何かの攻撃を受けたんだ。それで飛ばされて、床に頭を思いっきりぶつけたような気がする・・・)

薄れ行く意識の中で辛うじて、少年はフォースを通して心の中で叫んでいた。//マスター!//と。

彼の声は師に届いたのだろうか?ここはどこだろうか?誰が彼を攻撃したのだろうか?そして、誰が彼をこの部屋に閉じ込めたのだろうか?

わからない。何も。全く。

 

痛みは癒されていた。

彼を取り巻くフォースが温かく救いの手を差し伸べている。床に打ちつけた頭に、そして、レーザーで焼かれた右腕に。

細胞一つ一つに波のようなフォースが浸透し、それは彼の心にも穏やな暖かさを与えてくれた。

少年はゆっくりと体を起こした。

頭痛は治まり ―― ま、こぶはできただろうが ―― 目眩もそれほどでもなくなった。右腕の痛みもズキズキする痛みから鈍いものへと変化していた。

ここにおいてようやくオビ=ワンの思考は、部屋の中を調べてみることに思い至った。

明り取りにライトセイバーを使おうと何気なくベルトに手を伸ばし、彼は思わず息を呑む。

(ない!)

左腰の辺りを慌てて触ってみたがセイバーはなかった。焦って近くの床の上をもう一度探ってみたが、やはりどこにもなかった。

不意に記憶が蘇る。

(訓練室で落したんだ・・・)

それしか考えられない。

オビ=ワンは天を仰ぎ溜め息を深くついた。

だが、ここで、このままずっと意気消沈している訳にもいかない。

また、焦っても何の解決にもならないことは充分にわかっている。そして、この、何も見えない状況でむやみに動き回るのもかなり危険だ。

少年は一度ゆっくりと深呼吸した。

目を瞑ってからもう一度深く呼吸をすると、自分の中にある静寂を見つけた。集中力を保ったまま、それからフォースを呼び込んで感覚を部屋の隅々にまで広げる。

どうやらそれほど広くない四角い部屋にいるようだ。

彼は立ち上がり、フォースの導くままでこぼことしている石の床を躓くことなく、壁際まで歩いていった。壁に手が触れると、今度は手探りで調べ始めた。

四方の壁を手の届く範囲で入念に調べたが、わかったことと言えば、この部屋には窓はなく、一ヵ所を除いて全て岩壁で囲まれているということだけだった。

その問題の一ヵ所には滑らかなスチール製のドアがあったが、手をかけるところもアクセスパネルもなく、向こう側からしか開けられないようになっていた。

ロック機構は単純な物のようだが起爆装置が併設されており、正規の手順を踏んで解除しなければ爆発する仕組みらしい。しかも、起爆装置に繋がる配線はドア全体に広がっており、これでは例え今、ライトセイバーが手元にあったとしても、ドアを焼き切って脱出することなど到底不可能だ。

オビ=ワンはドアを開けるのをひとまず諦めて、また部屋の中央辺りまで戻ると座り込んだ。

誰に連れてこられたにせよ、生かして監禁しているということは、彼から何か聞き出すか何かさせるか、とにかく生かしておく必要があるということだ。

そのうちここに来るだろう。

(・・・以前にもこんなことがあった?)

オビ=ワンは軽く頭を振った。思い出すのは後でいい。

今に集中しなければ。今できることをやるんだ。

いつ何が起こってもすぐに反応ができるように、オビ=ワンは頭と右腕を癒すことに専念し始めた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。