銀河彼方での物語   作:秋鹿

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第4話 暗黒面の恐怖

(どのくらい経ったんだろう?)

小さく四角い、暗黒漂う、一筋さえ光の射さぬ部屋。

少年は膝を抱え座っていた。どのくらい時間が移り変わったかわからぬこの部屋で。昼なのか夜なのか、目覚めてから何標準時間経ったのか、感知できぬこの部屋で。

ただ、かなりの時間が経過していることだけはわかった。

お腹が猛烈にすいているのだ。

オビ=ワンは小さく溜め息をついた。

(全く。こんな状況でもお腹がすくなんて・・・)

ふぅと再び溜め息をつき顔を膝の間に埋めると、心の静寂を求めフォースに手を伸ばす。

その時、急に彼はフォースの乱れを感じ、頭を気づかいながら立ち上がった。

今いる部屋の闇よりも暗く、邪悪なフォースを纏った者が部屋へと近づいて来ている。

気配の訪れとともに、彼を取り巻く周囲の空気が濃厚に密度を増し重くなるようだった。

少年はだんだん息苦しくなってきた。背筋がざわざわしてくる。

フォースが危険を告げていた。

気配がドアの前で立ち止まった時には、真っ直ぐに立っているのも辛いほどだった。

 

(夢だ、あの夢みたいだ・・・っ!!)

今にもドアが開き、闇が忍び込み、浮かぶ白い顔がどろどろに溶ける。そして、彼の顔も ――

心が激しい悲鳴を上げた。

部屋の後ろに下がりたかった。暗い気配から少しでも遠ざかりたかった。しかし ―― 膝ががくがく震え足が全く動かなかった。一歩たりとも。

_自分はジェダイだ。

何度も言い聞かせた。

周りに暗く冷たい空気が纏わりつく。

_恐れに囚われるな。平穏を求めよ。

必死にその言葉にしがみつこうとした。腕で自分の体を抱え込み、冷たい流れから遠ざけようとした。

悲しみ、怒り、恐怖、絶望。それら感情が渦を巻き急速に心の中に忍び寄ってくる。

_フォースに心を委ねよ。

オビ=ワンはかき集めるようにフォースを呼び寄せると、彼を守る盾にしようとした。

だがそれは弱く、邪悪で強大な力に対抗するには余りにも弱く、彼は声にならない悲鳴をあげ続けた。

 

それほど経っていないのかもしれない。

しかし、オビ=ワンにとっては永遠かと思われる時間が過ぎ去ったあと。ドアの向こうの気配はやがてゆっくりと去り始めた。それとともに暗い邪悪なフォースの存在も薄れていった。

少年は呪縛から解放されたように弱々しくよろめき壁にもたれかかると、ずるずると床に崩れ落ちた。

心が無に占領されたかのようだった。

去りゆく邪悪なフォースの持ち主が、彼を嘲り笑っているのが感じられた。耳の奥に、実際は聞こえないはずの甲高い笑い声が響いているような気がする。

だが、それに気を払う余裕もなく、少年は別の思いに支配されていた。

今度またあの暗い渦巻くフォースに囚われたら ――

オビ=ワンは恐怖に震えた。心から。そして、目を閉じると微かに囁いた。

「マスター・・・」

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

There is no emotion; there is peace.

There is no ignorance; there is knowledge.

There is no passion; there is serenity.

There is no death; there is the Force.

 

セピア色の景色。過去の記憶。

少年は聖堂の千泉室で腰を下ろし泉を眺めていた。

ふと深い溜め息を漏らす。

彼は先ほど、他の生徒に対しちょっとした怒りを爆発させ、そして、怒りを抑えられない自分に対して自己嫌悪に陥っていた。

「オビ=ワン?」

「マスター!?」

彼の師は突然現れた。その表情は怒っているようにも悲しんでいるようにも見える。

オビ=ワンは目をそらせた。師を落胆させてしまった・・・悲しみが胸をよぎる。

「感情を表すことを恐れてはいけない、パダワン」

クワイ=ガンは静かに言った。

思いかけぬ言葉に弟子は師を見上げるが、口から出てきた言葉は否定的なものだった。

「しかし、ジェダイは感情を表してはいけないと聞きました」

「感情に呑み込まれてはいけないだけなのだ。感情は時として力となる」

「力に?」

「そう、人を慈しみ愛する心。人を支え救いたいという思い。これらも紛れもなく感情の一つだ。だが、ジェダイがこの感情を持っていることは不思議ではないだろう?」

「はい、マスター」

「感情の制御は大切だ。しかし、必要以上に恐れてはいけない。また、必要以上に頼ってもいけない。わかるか?」

「・・・よくわかりません」

「いつかわかる時が来る。感情を恐れず、心を平穏に保ち自分の本質を見極める。そうすれば自ずとフォースがお前を導いてくれる。その時、もし、暗く悪しき心がお前と向き合ったとしても、光は決して消されることはないだろう」

彼の師は優しく微笑んだ。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

There is no emotion; there is peace.

There is no ignorance; there is knowledge.

There is no passion; there is serenity.

There is no death; there is the Force.

 

_もし、暗く悪しき心がお前と向き合ったとしても、光は決して消されることはないだろう

心の空虚さが徐々に埋められていく。

今やフォースは此処彼処にあふれていた。それは彼を癒し心さえも癒し、暖かく包んでいた。

オビ=ワンは深い息を吐き出し、それから目を開けた。

その青く緑色をした瞳には決意がみなぎり、輝かんばかりの光を取り戻していた。

(ここから抜け出そう。何とかして)

 

それから、どのくらい経ったのだろうか。

遠くから足音が響いてきた。誰かが部屋に近づいてきている。

ひたすら頭と右腕を癒していたオビ=ワンは、緊張して顔を上げた。心臓の鼓動が早くなる。

しかし、暗く邪悪な気配は感じられなかった。それは彼を安堵させた。だが、警戒は怠らなかった。仲間がいることがわかった今は尚更に。

足音はドアの前で止まり、しばらくして滑るようにドアが開いた。

携帯用照明棒(グロー・ロッド)の灯りに照らされて、一つの影が立っていた。

暗闇にすっかり慣れていたせいか、いきなり眩しい光に照らされ、直視することは全くできない。

影は部屋に入ると

「ほら、食事だ。ありがたく食え」

低い声で言った。その声質で男だとわかった。

平べったい物が石の床に下ろされる。置いたと同時に男は部屋を去ろうとした。

オビ=ワンは慌てて叫ぶ。

「ちょっと待って!こんな真っ暗な中で食事なんてできません」

一瞬、男はムッとしたようだった。だが

「仕方ねぇな、いいか?早く食うんだぞ?」

凄みを利かせて言い返すと立ち止まり、照明棒(グロー・ロッド)をかざして料理が乗っているトレイを照らした。

オビ=ワンはトレイに近づく間、素早く男越しに窺えるドアの向こうを眺めすかした。

中からは開けられない仕組みになっているから、外側に仕掛けがあるのだろう、ドアは開いたままであったが、その向こうには何一つ見えぬ暗闇がひたすら広がっていた。

何ら慰めを見ることもできず、溜め息をつくと少年はトレイを見下ろした。

深い皿に水っぽいかゆのようなもの、及び浅い皿には肉のようなものがポツンと乗っていた。そして、スプーンとフォークがその横に転がっている。

とても食欲をそそるものではない。

しかし、食べないより食べた方がまだマシだろう。ジェダイたるもの、いざという時、力を発揮できないのでは困るからだ。

警告を発していないフォースを信じ、彼はトレイの前に跪くと食事を無理矢理、口に運んだ。

抗議の声を上げ続ける嗅覚と味覚を無視して食べながら、オビ=ワンは容器に特徴がないか密かに確認した。例えば珍しい容器だったら ―― 彼が今いる場所を特定できるかもしれない。

だが、現実はそんなに甘いものではなく、器、スプーン、フォーク全て特殊プラスチック(デュラプラスト)でできたありふれたもので、少年をがっかりさせた。

且つ、食事の量もこれでは全然足りない。

オビ=ワンはイライラしている男に向かって声をかけた。

「次は夕食ですよね?いつ来るんですか?これじゃ足りません」

男は途端、激怒した。

「お前は立場というものをわかっていないようだなっ!!食事をもらえるだけでもありがたく思えっ!!それに今のが夕飯だ。わかったか!?」

「今のが夕食なんだ・・・」

少年は小さな声で呟き、笑みを浮かべて立ち上がった。

そして、男に向かい合うと静かに言った。

「聞きたいことがあるんですが」

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