銀河彼方での物語   作:秋鹿

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第5話 予期せぬ再会

浮揚車(ホバーカー)は、門前から少し離れた所にライトで周囲を照らしたまま停車した。

気の焦りを封じ込め沈思していたクワイ=ガンは、顔を上げ閉じていた目を開いた。その蒼き双眸には揺るぎ無き決意があふれている。彼は車の操縦士に向かい、落ち着いた声を放った。

「頼みがあるのだが」

「はい、何でしょう?」

浮揚車(ホバーカー)の操縦士が後ろを振り向いた。まだ若そうだが、一癖も二癖もある面構えをしている。

「しばらくここで灯りを消したまま待機していてくれ。この通信機(コムリンク)を渡しておく。君の力を借りることがあるかもしれない、その時はその通信機(コムリンク)で連絡する。そして ―― もし、私が2標準時間経っても帰って来なかったならば、ジェダイ評議会に連絡して欲しいのだが?」

無理難題をふっかけられた形となった操縦士だが、ジェダイという言葉に興味をそそられたらしく、そんな様子はおくびにも出さずに愛想良くニヤリと笑って応えた。

「いいですよ。しかし、割増料金になりますが」

その軽い受け答えにクワイ=ガンは微笑むと

「よろしく頼む」

通信機(コムリンク)を手渡し、車の外へと足を踏み出した。

 

ここは惑星コルサントの、元老院議事堂やジェダイ聖堂がある政治の中枢から南方。

パーマクリートに覆われ、且つ、その上にも建物が続々と進出し天に伸びていくコルサントにおいて、ただ一ヶ所、緑に覆われている場所。

切り立つ峰は天にそびえ、降る雨を吸い込み大地を潤す。覆われた硬き地表に逆らって、唯一生命を感じさせるこの一帯。

マナライ山脈。

マナライ山を含むこの峰々の山頂は、樹木が少なく、所々荒れ果てた岩肌が見えながらも絶えず雪に覆われている。ここからの眺めは素晴らしく、超高層ビルが立ち並ぶコルサントの街並みを眼下に見おろすことができる。

また、この山の麓には100階建ての尖塔状の建物があり、その最上階にある、それこそ山に敬意を表して付けられた『マナライ』というコルサント一の最高級レストランからは、山々の頂上を見ることができる。このレストランは、透明スチール(トランスパリスチール)を通して絶景を楽しめることと料理の美味しいことで知られ、非常に人気が高く、ここで食事をするには何標準ヶ月前から予約をしなくてはならないほどだ。

 

クワイ=ガンは今、このマナライ山の頂上から800mほど標高の下がった場所にいた。

彼の目前には朽ち果てた門が辛うじて立っている。そして、その向こうには、針葉樹林に囲まれた邸宅と思しき広い屋敷が崖を背にし、夜の闇に溶け込んでいた。

(ここだ、間違いない)

ジェダイ・マスターは真剣な眼ざしで屋敷を見つめた。

あの手がかりがマナライ山脈を指すのではないかと察した時に、聖堂の端末でこの地について調べてみたのだ。

検索のポイントは、人を監禁するに当たって最適なのは家だろうとの判断から

  ・マナライ山脈近辺で、人が住まなくなって久しい家。

  ・それなのに、この頃、人のいる気配がある家。

の二点。

そして、情報端末の画面には一軒の屋敷が表示された。

この館の主はコルサントに住む、さる大富豪だったが、事業に失敗しこの別荘を手放した。しかし、売価が高値であったため買い手がつかず、そのまま朽ち果てるに任せられたのだった。

だが、この頃、その家に灯りがついているのがしばしば見受けられると言う。

クワイ=ガンはフォースを伸ばし館の様子を窺った。

暗い邪悪なフォースが禍々しく渦を巻いて館を覆っている。その圧倒的な強さ、激しい暗黒の力に彼は眉根をしかめた。

これほどまで強大なダークサイドのフォースを操る者とは ――

クワイ=ガンは微かな溜め息を漏らすと、再び全神経を集中しフォースで探ってみる。そして、ややあって安堵の表情を浮かべた。

暗闇に包まれて微かにしかわからないが、小さな光を感じたからだ。彼の弟子の。

オビ=ワンは生きている。

この事実にジェダイ・マスターはホッと笑みを漏らし

//オビ=ワン?//

静かに語りかけてみる。しかし、この強いダークサイドのフォースに阻まれ、その声が届いたかは定かでなかった。

彼は気持ちを引き締め決意を瞳に表すと、館に向かった。

 

門から小径を歩き、巨大な両開きの扉の前に立つ。

すると、まるで彼が来るのを待っていたかのように扉がゆっくりと両脇に開いた。

クワイ=ガンは真っ暗な館内に足を踏み入れた。

それを合図にしたように部屋の灯りがともり、彼の背後で扉が音を立てて閉まった。

彼が今いる所は、入り口から入ってすぐ左右に大きく広がっているロビーだった。正面には二階へと通じる広い階段が真っ直ぐ伸びている。

 

「ようやく来たな。あんまり遅いから、あんたがあの無器用な少年を見捨てたかと思っていたよ」

不意に上から声がかかった。

クワイ=ガンは視線を移し、階段の踊場の上に人影を見つけた。

黒いローブを纏い、邪悪な影を漂わせるその人物。

「またあんたに会えて嬉しいよ、クワイ=ガン」

クワイ=ガンは唇を噛み締め辛うじて声を漏らした。

「ザナトス・・・」

 

闇に溶けこむが如く漆黒の髪。憎しみに燃える深みを帯びた蒼き双眸。

そして、右頬に刻印された、永遠に繋がることのない円環。

「せっかく手がかりまで残してやったのに、随分と時間がかかったもんだな。あんたの頭の硬さは昔っから全然変わってないね」

口元に薄ら笑いを浮かべ元弟子はククッと笑った。

その様子を階下から見つめるクワイ=ガンの心中や如何に?

ザナトスは死んだはずだ。惑星テロスで。濃硫酸のたぎる泉に自ら飛び込んで。クワイ=ガンやオビ=ワンに後味の悪さを残したまま。

それなのに何故?どうやって生きていたのだ?

しかし、クワイ=ガンは心を穏やかに保ち、動揺していたとしてもそれをうまく隠していた。

「驚かないんだな」

顔に笑いを貼りつけたままザナトスは楽しそうに言う。

このまま行くと、この元弟子のペースに呑み込まれかねない。クワイ=ガンは自ら問い質すことでそのペースを乱そうとした。眉間に皺を寄せたまま、しかし、クワイ=ガンは心を落ち着けると穏やかに訊ねた。

「この一件にお前が関わっているような気はしていたからな。 ―― オビ=ワンはどこにいる?」

「この館にいるさ。だが、正気を保っているかどうかはわからないけどね」

「どういうことだ?」

ザナトスは嬉しそうに言った。

「真っ暗な小さな部屋に閉じ込めているからだよ。俺が何度も夢で見せてあげたような暗い部屋でね。可哀相に、さっき俺が行ったらすごく脅えていた」

言い終わると、さも可笑しそうに含み笑いをする。

微かに眉をしかめた以外は表情を変えぬまま、ジェダイ・マスターは力強い声で述べた。

「彼は強い」

「彼は強い?」

聞き返してザナトスはクスクスと忍び笑いを漏らした。そして、嘲笑うかのように続ける。

「あぁ、でも、あいつは心の底にいつも怒りと恐怖を抱えている。他人に対する怒りと、あんたが見捨て ―― 」

「けれども、オビ=ワンは強い。私は彼を信じている」

突如、クワイ=ガンはその言葉を遮り、断固とした口調で言い放った。

見る見るザナトスの表情が不快感に彩られる。彼は怒りを抑えた低い声で言った。

「随分と大切にしているんだな。俺のことは信じてくれなかったくせに」

「信じていた ―― だが」

「裏切られたって言うのか?裏切ったのはどっちだ?」

クワイ=ガンは静かな眼ざしで青年を見つめた。

ザナトスも瞳に激しい憎悪を燃やし見つめ返す。

先に視線をそらせたのはクワイ=ガンだった。

「こんな話をしている暇はない。オビ=ワンを返してもらおうか」

「いいよ、物言わぬ死体でね。あんたが死んだあとにっ!!」

ザナトスは素早く腰からライトセーバーを抜き取り起動させる。

そして、赤く光を放つセーバーを振りかざして、踊り場から身を躍らせた。全体重と落下の勢いを攻撃に込めて。

だが、それを真っ向から受けるほどクワイ=ガンも馬鹿ではない。

すかさず攻撃を半身にかわしつつ、緑色に輝くセーバーを起動させる。

そして、ザナトスが着地した瞬間。体を半回転させると力を込めて横薙ぎに切りつけた。

ビィィィ・・・・ン

赤く光るセーバーと激突する。

一瞬後、二人は後ろに飛びずさった。

攻撃が届かぬと見るや、クワイ=ガンは逆回転し今度は上段に打ち込む。

だが、それも強い邪悪な力によって阻まれた。

ザナトスの嘲笑うかのような笑みがセイバー越しに窺える。

光輝くセーバー同志が激しくしのぎ合う音が響き、稲妻が落ちたような臭いが辺りに漂った。

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