銀河彼方での物語   作:秋鹿

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第6話 過去との闘い

平穏を求めよ。心の中の静寂を感じよ。

クワイ=ガンは集中するとフォースを呼び寄せた。それは彼に更なる力を与え、ザナトスを押さえつけるセーバーに力を注いだ。

余裕の笑みを浮かべていたザナトスの表情が徐々に怒りに彩られていく。

青年は怒りの力を取り込むと、一瞬にしてクワイ=ガンのセーバーを激しく弾いた。

そして、後方に宙返りして体勢を整えようとする。

しかし、ジェダイ・マスターは間髪入れず前に飛び出した。

刹那、セイバーを振るい、着地しようとしたザナトスの足元を切り払う。

が、その瞬間には、ザナトスは素早く着地して上空に再び宙返りし、クワイ=ガンのセーバーは空を切った。

切った体勢から勢いを力に変え、クワイ=ガンはくるりと横回転すると右上段から振り下ろす。

攻撃を赤い光で撥ね返し、ザナトスは後ろに飛びずさった。

 

(おかしい。手応えがなさすぎる。何かを企んでいるに違いない)

クワイ=ガンに疑心が芽生えた。

彼はセーバーを右八双に構え心を落ち着かせると、元弟子の様子を窺う。

そんな彼の気持ちを嘲笑うかのように、ザナトスはニヤリと笑みを浮かべた。

「どうした?あんたの攻撃はこんなもんか?俺に対する怒りが足りないんじゃないか?」

「私はお前を怒ってはいない。ただ、お前の行動を止めたいだけだ」

(今までずっと右へ右へと闘いは進んでいる。ザナトスは私を何かから引き離そうとしているのではないか?)

ザナトスを越えて奥には、他の部屋に通じる入口がぽっかりと暗い口を開けている。

「相変わらずジェダイ・コードに縛られた考え方しかできないんだな。あんたが可哀相になってくるよ」

嘲るようにザナトスが言う。しかし、ジェダイ・マスターは視線を相手から外さず、思いだけ馳せた。

(確かロビーの左奥にも同じような入口があったはずだ。ザナトスは左側の入口に私を行かせたくはないらしい。ということは、そちら側にオビ=ワンがいる)

一瞬のうちにそこまで思考を巡らせると、クワイ=ガンは静かに言った。

「相変わらず、お前は自分の話す声が好きなのだな」

ザナトスは瞬時にして顔を赤らめ、だが、すぐさまニヤリと笑った。

「あんたの皮肉なんて通じないよ。俺はあんたのペースでは闘わない」

「どうかな?」

言い終わると、すかさずクワイ=ガンは間合をつめ上段から振り下ろした。

上からの攻撃に跳びあがることもできず、辛うじてザナトスはセーバーで攻撃を防ぐ。

その隙にクワイ=ガンは後ろに回り込み、背後から切りつけた。

黒いローブが焼け焦げ、裂け目が走る。

間一髪かわしたザナトスは冷たい怒りのフォースに身を委ねると、クワイ=ガンに向き直った。

(これで攻勢に進めていきさえすれば、左方向に辿りつけるはずだ)

そう思う傍から、ザナトスが突如、物凄い勢いで打ちかかってきた。その激しい抵抗により、逆に左に何かあるのではないかと確信させるに相応しいほどの。

クワイ=ガンは受け流すと、セーバーを左上から切り下ろす。

それをザナトスは防ぎ力を込めて押し返すと宙を跳んだ。

正面にそびえる階段の中ほどに降り立つと、階下にいるクワイ=ガン目がけて駆けおりる。

今度はクワイ=ガンも迎え撃った。

階段を駆け登りざま、腹に狙いを定めてセーバーを横薙ぎに振るう。

空中で噛み合ったセーバーは激しく火花を散らした。

再び力と力のぶつかり合いになり、お互いの顔がセーバーの光に照らされる。

自然、セーバーを握る手に力がこもった。

突然、ザナトスはフッと薄笑いを浮かべ、次の瞬間、急にセーバーを引いて、軽やかに階段の左側へ跳ぶと手すりの上に着地した。

意表を突かれ体勢を崩しかけたクワイ=ガンに、凄みのある笑みを見せるとザナトスは階段の向こう側に消えた。

クワイ=ガンも急ぎ階段を飛び越え、着地すると周囲を素早く窺った。

ザナトスの姿は全く見当たらなかった。左奥に入口があるだけで。

暗闇が窺えるのみで、何があるかわからないその向こう。

静かに呼吸を整えるとフォースを纏いながら、クワイ=ガンは暗黒に足を踏み出した。

 

ライトセーバーで周りを照らす。

緑色の光に浮かび上がり微かに見える様子から、何も無い小さな部屋だと見てとれた。

数歩歩いた所で不意に、右から赤い光が振り下ろされる。

危険を告げたフォースに従って身をひるがえし、その攻撃をがっちりと受け止めた。

ザナトスは赤い光に染まった顔を近づけると、嬉しそうに囁いた。

「あいつ、死にかけているってさ」

その一言はクワイ=ガンに動揺をもたらすには十分だった。

思わずセーバーを握る手が揺れ動き、そこをザナトスにつけ込まれた。

ザナトスのセーバーが横に一閃し、クワイ=ガンのセーバーを弾き飛ばす。

光刃の消えたセーバーは床の上を回転した。

機を逸せずザナトスは、ダークサイドのフォースを集めると勢い良く手を前に突き出す。

強力なフォースがクワイ=ガンを打ち、彼は壁に激突し床に倒れ伏した。

それを見るや、ザナトスは壁に埋め込まれたアクセス・パネルを操作する。

床が横にスライドし、クワイ=ガンは床下に吸い込まれていった。

真っ暗な闇の中に。

「まんまと罠に飛び込んでくれて嬉しいよ。これで、さっき言ったことを実行できるからな。また、あとで会おう、クワイ=ガン」

ザナトスは口角を上げてほくそえみ、付け加えた。

「あんたが生きていたらね」

 

 

石畳の通路を足音が静かにこだまする。

照明棒(グロー・ロッド)に照らされた影が暗い壁をゆらゆらと揺れ動く。通常よりも引き伸ばされた巨大な影は魔性の生き物の如く、うごめいて見えた。

(こんなに簡単にいくとはな)

ザナトスは忍び笑いを漏らした。

(これでようやく復讐が果たせる。だが、それだけでは終わらせない)

知らず知らず右頬を指でなぞる。

頬に焼きつけた指輪の跡 ―― 決して繋がることのない円環は、彼の飽くなき復讐心をも永遠に満たされることのないものだと思い知らせてくれる。

(あいつ等を片づけた後は、ジェダイ評議会だ。きっと俺の力に恐れを抱き、泣いて許しを乞うだろう。その時が楽しみだ)

クスクスと笑い声を放ち、ザナトスは強大なダークサイドのフォースを発散させた。

悲しみ、怒り、恐怖、絶望。

それらを心ゆくまで体全体で感じ、彼は薄ら笑いを浮かべた。

(あいつも今ごろは震えているに違いない)

そう思うと自然に笑いが込みあげてくる。

目指す場所にはもう間もなく着くはずだった。少年を閉じ込めているあの監房には。

 

館の地下は元々、多数の部屋に区切られた貯蔵庫だった。

時折りこの館を訪れる主人達に提供する、食糧や飲物を保管するための。そして、主人不在の時が多いため、厳重な、また温度調整も自在にコントロールできるような管理体制が取られていた。

それをザナトスが幾つか監房に改造したのであった。

 

石畳を歩くその足が突如止まる。

ザナトスはニヤリと笑みを浮かべるとそのドアに向き直った。ドアのすぐ横にあるアクセス・パネルに手を伸ばしかけ、ふとその手を止める。ほくそえみ、益々より強いダークサイドのフォースを周囲に漂わせた。

(どんな顔をするか楽しみだ)

さも可笑しいといった風にククッと笑うと、アクセス・パネルにパスワードを入力した。そして、キーパットの下にある赤いボタンを2度押す。

スチール製のドアは滑るように開き、ザナトスは凄みのある笑顔で小さき暗い部屋の中へ入った。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

クワイ=ガンは見あげた。真っ暗で何も見えない。

明かりとりにライトセーバーを使おうとして彼は眉をひそめた。彼のセーバーは先ほどのザナトスとの闘いで床 ―― ここから見れば上の階の床だが ―― に落としてしまったのだ。

ザナトスにしてやられた。そんな思いが過ぎる。彼の行動を止めなければ。彼を教え導いた身としては。例えその指導が途中で断ち切られたものであっても。

だが、そんなことに気を払う余裕はなくなった。

オビ=ワンに危機が迫っている。それに ―― 暗く重圧に押しつぶされそうな闇の向こうから、獣のうなり声と、土の上を何かが歩いてくるような音が響いてきたからだ。

何十頭はいるかもしれないと思われる、その。

フォースで素早く探ってみると、体長1mはあろうかという四つ脚の肉食獣達だった。彼らはクワイ=ガンの前で止まり、まるで狩りの獲物の様子を探っているように臭いを嗅ぎ、牙を鳴らした。獣達の心からは狂暴な飢えと乾きが感じられる。

『あんたが生きていたらね』

ザナトスから放たれた言葉が耳の奥にこだました。

クワイ=ガンはフォースを纏い、心を穏やかに保つと彼らに対峙した。

瞬間、獣達が牙を剥き、激しい勢いで飛びかかってきた。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

笑みは一瞬にして固まり、たちまち不機嫌な表情に変わった。

ザナトスは監房の中を足早やに歩くと、部屋の中央で横たわっている人影を蹴りつけた。

蹴られた者は寝ぼけ眼で何ごとかを呟き、体を起こす。

「おい、あいつはどこだ?」

ザナトスは男の胸座を掴み、憎悪に揺れる瞳で訊ねた。

「あいつって・・・?あれ?俺、いつの間に寝てたんだ?」

惚けたように男は呟いた。先ほど食事を持ってきた男だった。訳がわからんといった風に頻りに首を傾げている。

「バカが。マインド・トリックに引っ掛かりやがって。おい、お前、あいつに何を話したんだ?」

汚いものでも吐き捨てるように言い放つと、ザナトスは尚も男を問いつめた。

男はしばらく考え込み

「・・・わからない。覚えてない」

とポツリと言った。

「役立たずめっ」

ザナトスは男の腹に強烈な蹴りを見舞うと、体を二つに折って苦しむ男を尻目に頭を冷静にして考え込んだ。

(記憶を消したに違いない。まさかそこまでやるとはな。そして、そんな元気があるとは。どうやら俺はお前を見くびっていたらしい)

(だが、この屋敷からは逃げられやしない。必ず捕まえてやる。必ずだ。 ―― これでまた、楽しみが増えたというものさ)

ザナトスは含み笑いをし口角を上げた。だが、その蒼き瞳には憎悪と冷酷な光が宿っていた。




<お知らせ>

突然ではありますが、誠に勝手ながら、本FanFic「Dark Fear」をもってSW作品の投稿を終わらせていただきます。
理由は、4月から忙しくなりそうなことと、モチベーションの低下(こちらの方が大きいかな)です(苦笑) 冒険譚などは、まだ2/5ぐらいしかアップしていませんが・・・。
何はともあれ、そんな感じでよろしくお願いします。
次からは後編。あともう少し、お付き合いください(^^)
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