通路の向こうは闇だった。漆黒の。
足音立てずに曲がり角まで走り、壁に背をつけ先を窺う。
気配はない。いや、逆に邪悪な力に満ち満ちていて、本当の気配を探ることができないと言った方が正しいか。
クワイ=ガンはそれでもフォースを伸ばし、元弟子の痕跡を辿る。微かに感じられるその跡。
彼は走りだし、突如として足を止めた。
そのままライトセーバーを起動させると、頭を屈め飛んで来るレーザーを躱す。
フォースの導くまま体を横に一回転させ、その反動で再び向かってきたレーザーを弾き返した。
撥ね返された光弾は放った持ち主を貫いたらしく、攻撃は突然止んだ。
しばらくして何かが崩れる音が通路に響く。
耳を澄まし危険がないのを察知するや、クワイ=ガンは音の元へと向かった。
通路の突き当たり。セーバーの青き光に照らされるは、胸を射抜かれ壊れた一体のドロイド。
(
2足歩行をし、ブラスターを構えるこのドロイドはリモート・コントロールによって操作されている。ここに来る者を襲えとの指示を受けていたのだろう。
(一体だけか。しかし、油断はならない。まだどこかに潜んでいるかもしれない)
クワイ=ガンは目を右に転じた。
二階へと通じる階段が続いていた。道はここしかない。ならばこの階段を行くしかないだろう。何が待ちうけているとしても。
彼はセーバーのスイッチを切った。光を発してわざわざザナトスに位置を知らせるつもりはない。
不意に彼は手元のセーバーを見つめた。
少し細めのグリップ。だが、造りは師のセーバーを踏襲しているせいか、さほど違いはない。
(オビ=ワン・・・)
彼の意識は過去を溯った。
惑星バントミーアでのザナトスとの闘い。
あの時、他人のために自らの命を捨てようとした少年の姿を見て、パダワンにしようと心に決めたのだ。二度と取るつもりはないと誓ったはずの。
しかし、その後、あのメリダ/ダーンの悪夢が訪れた。
オビ=ワンにライトセーバーを向けられ、彼を置いてコルサントに戻った時にはもう少年を信用することはできないだろうと思っていた。ザナトスに裏切られ、再びオビ=ワンから同じ仕打ちを受け、クワイ=ガンの心は大きく傷ついていたのだ。
だが ―― タールに説き伏せられた。
彼女が持つ、透けて見えるほど美しいガラスのカップを例えに。
一度壊れたものでも、その上から新たに作り直すことで、より強固なものにすることができる ―― と。
そして、今。
あの少年はクワイ=ガンの中でかなりの比重を占めるに至っている。
(いつから、このように彼の存在が大きくなったのか)
オビ=ワンの何ごとにも素直な性格。時折り頑固で ―― 師に似たという噂もあるが。そして、無鉄砲で ―― 本人は否定するだろうが ――
取りとめもなく考え、ジェダイ・マスターは自然に笑みをこぼした。少年に思いを馳せることは、クワイ=ガンの大いなる痛手を癒してくれるようでもあった。
そう、痛手。彼のかつての弟子、ザナトスをダークサイドに向けてしまったこと。
(ザナトスは過去だ。しかし、オビ=ワンは未来だ。今こそ過去を断ち切らなくてはならない)
そして、壊れた円環を一つの円に繋げる時だ。
一瞬にして緊張の面持ちを取り戻し、クワイ=ガンは階段に向き直った。
(時間はない。急がねば)
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
二階に向けて、かなりのスピードで駆け上ってくる気配がある。
壁際に立ち闇に溶け込みながら、ザナトスはニヤリと笑みを浮かべた。
(用心して注意を払いながら上がる訳ではなく、スピードをつけることで俺からの攻撃をかわそうという狙いか。意表を突いたつもりだろうが、全く読みやすい奴だ)
彼は懐からコントローラーを取り出しスイッチを押した。
通路に待機していた
そのブラスターは真っ直ぐ階段の、のぼり口目がけて固定された。
瞬間、闇に慣れたザナトスの目に、下から現れ出た長身の影が映る。
翻るローブの音が微かに響いた。
「殺れ」
ザナトスの命令にドロイド達は一斉にブラスターを連射する。
階段をのぼりきったばかりで迎撃態勢が取れぬその者を、レーザー光線が次々と貫いた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
長身の影は崩れ落ちた。
ガシャという床にぶつかる音が響くと共に、その後ろから跳躍しつつもう一つの影が現れる。
その者は、ローブを纏い転がっているドロイドの上を飛び越えると、軽やかに着地した。
刹那、青い光が横薙ぎに一閃する。
身構えていた
クワイ=ガンはセイバーを右に構えたまま、しばらく辺りを窺う。
もう攻撃はないと見るや、セーバーを前方にかざした。
青き光は、ここが踊り場で、そのすぐ先には部屋に通じる暗い入口があることのみを示した。
(ザナトスはあの先にいるはずだ)
セーバーのスイッチを切ると、クワイ=ガンはフォースを研ぎ澄ましそこへ足早に向かった。
漆黒の闇に足を踏み入れた。
全神経を張りつめ、周囲の様子を探る。
ここも何もない部屋らしい。ガランとしている。一体何に使われていたのか。
窓からの明かりでもあれば見通しも利くだろうが。しかし、その窓は暗く、しかも厚いカーテンで覆われていた。
突然、右前方の暗闇で、微かにカタッという音が鳴った。
瞬間、クワイ=ガンは腰を低くし体を横回転させる。素早くセーバーを起動させ自分の左側面へ切り上げた。
赤い光が頭上を旋回し、急激に軌道を変えるとクワイ=ガンのセーバーを迎え撃つ。
青と赤の光が噛み合い、ジェダイ・マスターと元パダワンは顔を近づけた。
ザナトスは赤く照らされた顔に薄ら笑いを浮かべる。
不意に勢い良くセーバーを弾くと、青年は後方に飛びずさり、床を蹴って前に突進した。
切りかかってくる所を返し、逆にクワイ=ガンは相手の腹めがけてセーバーを横薙ぎに振るう。
ザナトスは跳躍し回転するとクワイ=ガンを飛び越し、彼の背後に着地した。
振り返りざま、元師の背に向けてセーバーを切り下ろす。
だが、それは空を切った。
前に2回転し攻撃をかわしたクワイ=ガンは、ふと手に触れた床に落ちていた物を掴むと、ザナトスに向かって投げつける。
飛んでいったデータカードが真っ二つにされる、その隙に、クワイ=ガンは彼の懐に飛び込んだ。
突き出されたセーバーを辛うじて半身にかわし体を返すと、ザナトスは鋭い膝蹴りを入れる。
蹴りはジェダイ・マスターのチュニックを掠め、クワイ=ガンは後方に間合を取った。
ザナトスは息つく暇も与えず前に踏み出すと、セーバーを右上段から切り下ろす。
振り上げられた青きセーバーがそれを阻む。
火花が散り、激しくぶつかり合う音が部屋に響き渡った。
組み合ったセーバーはしばらく均衡状態を保っていたが、クワイ=ガンが手首を返し始めるとそれは崩れた。
青い光刃が徐々に赤き刃を制し始める。
ザナトスのセーバーは上から押さえつけられる格好となった。
反撃しようにもジェダイ・マスターの力は強く、セーバーを外すことさえできない。
クワイ=ガンはよりいっそう力を込め、急にグリップを握り締めると下方に叩きつけた。
弾かれたセーバーは勢いに押され、先端が床に突き刺さる。
その一瞬を逃さず、クワイ=ガンは下から切り上げた。
惜しくもそれは相手の影を切ったに留まる。
しかし、辺りに肉の焼け焦げる臭いが漂った。
後方に辛うじてとんぼ返りをし逃げていたザナトスは、憎悪の表情もあらわに元師を睨みつけた。
その胸には、黒いローブを引き裂いてセーバーの焼き傷が斜めに走っている。
彼は痛みに顔を歪め、傷口に左手をやり胸を抑えつけた。
クワイ=ガンはセーバーを右八双に構え、この機を逃さぬとばかりに前に駆け出す。
突如、その足元を後ろからブラスターのレーザーが穿つ。
一瞬、クワイ=ガンの足が止まった。
その隙にザナトスは高く飛び上がり回転すると、クワイ=ガンの背後に降り立った。
痛みに唇を噛み締めるザナトスは、一旦闘いの間をあけるため、再び左手にあるコントローラーを操作する。壁際に立つ青年の斜め後ろ、隣りの部屋に通じる入り口から再びレーザーが放たれた。
(また、
クワイ=ガンは横に転がりレーザーを避ける。
ガシャガシャとドロイドの歩いてくる音が響く。全部で何体いるのだろうか。
ジェダイ・マスターを抹殺するため遠くから包囲している。セーバーの光も届かぬ暗闇だけにドロイドの姿は全く見えない。ただ発射される光弾だけが見えるのみ。
そんな中でレーザーをかわしきれるのだろうか。
ザナトスはニヤリと笑みを浮かべると右手を動かした。床に刺さったセーバーが宙を飛び手に収まる。スイッチを切ると、彼は闇に溶け込むように消えた。
心の静寂。
クワイ=ガンはフォースを自らの回りに張り巡らせた。
そして ―― 右前方に駆け出した。
顔を掠めるレーザーをものともせず右上からセーバーを薙ぎ払うと、体を横に一回転させ下から切り上げる。
高々と跳躍すると上からセーバーを振るい、ドロイドを切断しながら床に着地した。
手首を返すと左から切り裂く。
ガシャガシャと崩れる音がし、辺りはあっという間に静まり返った。
クワイ=ガンはまだ周囲を警戒しゆっくりと立ち上がる。
攻撃者はいないと感じるや、彼は隣の部屋の入り口に走り出した。ザナトスが消えた部屋へ。
<お知らせ No.3>
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皆さん、ご存知だとは思いますが、一応(^^)
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