銀河彼方での物語   作:秋鹿

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第11話 手負いの反撃

ドカンッ!!

再び館を振動が襲う。

ザナトスの刃を辛うじて躱したクワイ=ガンは、不安な面持ちで音のした方を見あげた。

二階からだ。何が原因で爆発が起こったのだ?

不意に傍らからクスクスと笑う声が聞こえる。

「あいつも馬鹿だよな」

聞き捨てならない言葉に、クワイ=ガンは真剣な表情をして元弟子に視線を移す。

「どういうことだ?」

「ライトセーバーさ。あんたがセーバーを落した後、俺はあのセーバーに細工をしたんだ。スイッチを押すと爆発するようにね」

「何だと?」

「さっきあいつがスイッチを押そうとした時、忠告してやったのに、それでも押すとはね。これで俺の復讐の一つは適えられたということだな」

(まさか、そんな・・・)

クワイ=ガンは無理矢理、心を静めるとフォースを通じて呼びかけた。

//オビ=ワン。オビ=ワン?//

答えはない。

唇を強く噛み締めると、クワイ=ガンはそれと知られぬよう部屋から出る道を模索し始めた。

その視界を不意に影が過ぎり、ジェダイ・マスターは起動したセーバーで攻撃を受け止める。

赤いセーバーに力を込めながらザナトスは嘲笑った。

「どうした?集中力を欠いているようだが?」

クワイ=ガンはその言葉に顔をしかめると、グリップを力強く握りセーバーを弾き飛ばした。

そして、後ろに飛びずさり間合を取る。

瞬間、二階からブラスターの連射が聞こえてきた。

「どうやら、とどめを刺しているみたいだ」

ザナトスの含み笑いにクワイ=ガンの不安は増大した。

彼は突然、攻撃に転じ、右八双にセーバーを構えると、元弟子に青きセーバーを打ち込む。

セーバーを振り払うと、体勢が崩れたザナトスに向けてフォースを叩きつけた。

壁に向かって飛ばされたザナトスを尻目に、先ほど見つけた入口へと駆け出す。

気がせいていたために、突如、襲ってきた危険に気づいて身を避けるも間に合わず。

回転して飛んできた赤い光刃がクワイ=ガンの右肩を掠める。

激痛が走り、ジェダイ・マスターは苦痛に顔を歪めると傷口を押えた。

思わず片膝をつくも、その眼ざしだけは光を失わず元パダワンをじっと見つめる。

セーバーを手元に呼び寄せると、ザナトスは薄ら笑いを浮かべた。

「この館があんたと弟子の墓場になりそうだな」

 

素早くフォースを注ぎ激痛を中和させる。それでも痛みのあまり右手が震えていたが、グリップを握り締めるとクワイ=ガンは静かに立ち上がった。

そして、青年に向き直る。

「あいつのことなんか心配している暇があったら、自分の心配でもするんだな」

ザナトスは言い捨てると真正面から向かってきた。

その姿が不意に消える。

彼は一瞬のうちに跳躍し宙返りすると、落下の勢いを含めてクワイ=ガンに切りかかった。

ジェダイ・マスターは両手で防ぐも、右肩に走る激痛に体勢を崩しかける。

それでも背後に回ったザナトスにセーバーを振り払った。

青年は軽々とその攻撃を受け流し、逆に赤き光刃を叩きつける。

辛うじてそれをかわすとクワイ=ガンは後退した。

(痛みに囚われるな。この一瞬に集中するのだ)

心を落ちつかせるとフォースに身を任せた。暖かな流れが自分を取り巻くのがわかる。そして、傷を癒し始めていることも。

ジェダイ・マスターは知らず知らず閉じていた瞳を開けた。

視界に映る範囲にザナトスの姿はない。

しかし、クワイ=ガンは慌てず後方に跳ぶと、突如現れた赤きセーバーの切っ先を紙一重で躱す。

そのまま体を横回転させセーバーを叩き込んだ。

怪我をしていると思われないその力強さに、ザナトスの受け止めた手が痺れる。

ここぞとばかりにセーバーを切り下ろすクワイ=ガンに向け、元弟子はニヤリと笑った。

右手を突き出しフォースを叩きつける。

吹き飛ばされはしなかったものの、クワイ=ガンは壁際まで後退を余儀なくされた。

青年の笑みが深まった。

その瞬間、クワイ=ガンの脳裏を考えが過ぎった。

(この部屋はあの時の)

ヴォルンスクルーの部屋に落とされたときの記憶が蘇る。

ザナトスが壁に埋め込まれたアクセス・パネルをフォースで操作した。

すかさず床が横にスライドする。

だが、クワイ=ガンはそこにいなかった。

驚き見渡すザナトスの視線が壁に吸い寄せられる。

ジェダイ・マスターは高々と跳躍し、壁にセーバーを突き立て落下を防いでいた。

セーバーを引き抜きつつ壁を思いっきり蹴って身を躍らせる。

そして、空中で回転するとザナトスに向けて切りかかった。

だが、ザナトスは笑みを浮かべて待ち受ける。

このままいくと相打ち。もしくは体勢を変えられないクワイ=ガンが不利 ――

刹那。

ザナトスは危険を感じ体を反らせた。

鼻先を別のセーバーが回転しながら飛び去っていく。

青年の目が驚きにより大きく見開かれた。

その隙をクワイ=ガンは見逃さなかった。渾身の力を込めて青きセーバーを振り下ろす。

受け損ねたザナトスの右手に激痛が走った。

「ぐっ・・・」

痛みに顔をしかめ左手で火傷を押える青年に、着地しざまクワイ=ガンは体を捻るともう一撃を加える。辛うじて受け止めたもののザナトスは、その勢いに押され気味になっていた。

ジェダイ・マスターは握る手に力を込めるとセーバーを振り切る。ザナトスは飛ばされると壁にぶつかり、そのまま床の穴に落ちていった。

クワイ=ガンは壁のアクセス・パネルに素早く近づき、しかし、操作方法がわからず一瞬首を傾げる。が、すぐに悪戯っぽい笑みを浮かべると、1,2歩下がりセーバーを振りおろした。アクセス・パネルは途端に火を噴き、ついでに床のスライドも口を閉じた。

 

「ヴォルンスクルーに遊んでもらうと良い。但し、命懸けだがな」

ニヤリと笑みを浮かべると、クワイ=ガンはすぐに視線を部屋の入口に向けた。

「よく・・・無事だったな、オビ=ワン」

感慨深げに言葉が放たれる。

舞い戻った緑色に光るセーバーを手にし、入口にもたれ掛かっていた少年は視線を返した。そして、荒い呼吸の中で微笑む。

「マスターこそ・・・無事で安心しました」

しかし、すぐに眉をしかめた。

「・・・右肩に火傷を・・・」

クワイ=ガンは、焼け焦げたチュニックの隙間から見える傷口に視線をちらりと走らせると、苦笑を漏らした。

「ちょっとした怪我だ。これぐらいは何でもない」

とてもそうは見えなかったが、この件について師と争うつもりはオビ=ワンにも無かった。

もともと頑固な人だし。と思うに留めて。

そんな弟子の気持ちを知ってから知らずか、クワイ=ガンは真剣な面持ちで口を開いた。

「さて、ザナトスがここから脱出する前に、この館から抜け出すとしよう」

「しかし、ザナトスを止めないとっ!!」

「いや、オビ=ワン。お前の手当てが先だ。これだけは譲るつもりはない。いいな?」

「・・・はい、マスター」

不承不承頷いたパダワンに苦笑しつつ、師は弟子に近づくと愛情のこもった仕草で軽く肩を叩いた。それから少年を促し、二人は心持ち急ぎながらその場を離れた。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

爛々と輝く赤い眼が獲物を狙っている。時々唸り声さえも発しながら、ぐるぐると徘徊していた。ヴォルンスクルーの群れは、今やこの部屋に落ちた哀れな犠牲者に飛びかかろうと身構えていた。

赤いセイバーで周囲を照らしザナトスは鼻で笑った。

「全部殺していったかと思ったら、必要最低限度の攻撃しかしないとは。骨の髄までジェダイ・オーダーに染まっているらしい」

5,6匹、痛むのかうずくまっている獣達はいる。しかし、皆、生きていた。

そして、その怪我をした獣達の共通点。

(あいつ、弱点を知っていたのか)

夜行性で頭部が犬に似た狂暴な生物ヴォルンスクルーは、フォースを持つ者を異常に嫌い、襲う性質がある。また、その鞭のような尾には弱いながらも毒があり、触った者を痺れさせる効果があった。だが、その尾は弱点にもなり得た。尾を切ってしまえば、激しいほどの狂暴性が損なわれるのだ。損なわれると言っても前に比べたら、との意味合いだが。

故に、地面に横たわってじっとしているヴォルンスクルーには尾がなかった。

クワイ=ガンが尾を切断し、ここを通り抜けていったことは明白だった。

(俺はそんなまどろっこしい方法は取らない)

フッと笑みを浮かべると、ザナトスはダークサイドのフォースを体から強烈に発散させた。途端、今まで虎視淡々と狙っていた獣達は尻込みし、避けるように部屋の奥へと逃げていく。

含み笑いを漏らし、ザナトスは悠々と肉食獣の間を縫って歩いていった。

時折り恐怖に駆られる余り攻撃してくる獣もいたが、血飛沫を撒き散らしたに過ぎなかった。

ヴォルンスクルーの群れを抜けると、彼は憎悪に彩られた顔をいっそう濃くし駆け出した。暗闇に向けて。

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