銀河彼方での物語   作:秋鹿

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第12話 砕かれた希望

「こっちです」

オビ=ワンの指示で入口を抜けるとそこはロビーだった。

この館に到着して最初に足を踏み入れた場所。そこに二人は戻ってきていた。暗闇から出てきた身には、ロビーの明るさが人心地をつかせてくれる気がする。

「そうか、私は二階から直接壁の間を通りぬけて、あの部屋に行ったのだが」

その言葉を継いで、疲れた息の下から少年が続けた。

「僕は二階からロビーの階段を降りて・・・あの部屋まで・・・辿り着いたんです」

師は弟子に心配そうな眼ざしを向けた。

弟子はそれに気づきながらも、逆に微笑み返して両手をそっと差し出した。その手の平には光刃を消した師のラートセイバーが乗っている。クワイ=ガンは柔らかな笑みを浮かべて受け取ると、逆に弟子のライトセーバーをオビ=ワンに返した。

そして、ジェダイ・マスターは不思議そうに自分の聖なる武器を見つめる。

「私のセーバーに爆弾が仕掛けられていると聞いたが。あれは嘘だったのか?」

オビ=ワンは軽く頭を振って応えた。

「いいえ、本当でした。・・・大広間で傷を癒した後、セーバーを分解したんです。・・・そうしたらスイッチと連動して爆弾が・・・仕掛けてありました。爆弾だけ何とか取り外し、・・・でも、一応持っていたんです。何かに使えるかもしれないと思って」

「それを使ったのが、あの二度目の爆発の時ということか」

少年は頷きニヤッと笑った。

「・・・ドロイドが待ち構えていたので・・・フォースで起爆装置を押して爆発させました。その後は・・・ブラスターの光弾を残ったドロイドに打ち返して、・・・何とかここまで来たんです」

言い終わり少年は、不意に思いついたことに気を取られ床に視線を落とした。

今朝見たあの悪夢が原因で、シーカー相手にレーザーを打ち返す訓練をしたことがこんな所で役に立つとは。しかし、訓練室に行かなかったらザナトスにさらわれるなんてこともなかったかもしれない。何とも言えず皮肉なものだ。

一方、クワイ=ガンは感心したといった風な表情を浮かべ弟子を見ていた。彼も知らないうちに少年はどんどん強くなっている。

 

だが、今はそんな感傷に浸っている場合ではない。

ジェダイ・マスターは館の玄関に視線を移し、ややあって眉間に皺を寄せた。

フォースで探るまでも無い。

玄関の扉は内側からは絶対開けようもない構造になっていたのだ。

「僕が閉じ込められていた・・・あの監房と全く同じですね」

溜め息を漏らしつつオビ=ワンが呟く。

内側には手をかける場所の類は全く無い。外側から、もしくはコントローラーがないと開かないのだろう。且つ、ちゃんとした手続きを踏まないと爆発する仕組みになっているらしい。道理でクワイ=ガンが訪れた時、自動的に扉が開いた訳だ。こういった仕組みになっていることをその時は悟られたくなかったと思われる。

クワイ=ガンは青年の言葉を思い出した。

_玄関の扉には正しいパスワードを入力しないと爆発する仕掛けがついている

_あんたに敬意を表してパスワードを教えてやるよ

(中から開けられないのなら、元々ザナトスは、私にパスワードを教えても意味がないと知っていたということになる。それなのに、パスワードを教えるそぶりをするとは・・・)

ジェダイ・マスターは沈痛な表情をした。

(彼が悔い改めればと思っていたが、もう無理なのかもしれない)

「マスター?」

心配そうなオビ=ワンの声でふと我に返ると、クワイ=ガンは苦笑し溜め息をついた。

過去に縛られるな。未来に目を向けよ。

気持ちを切り替えるとクワイ=ガンは静かに言った。

「他に脱出方法を考えよう」

「マスター、僕はパスワードなら・・・知っていますが」

師は驚いた。

「どうして知っているのだ?」

「僕がいた監房に・・・食事を届けてくれた人から"聞いた"んです。・・・この館にあるアクセス・パネルのパスワードは・・・全て統一されているということも。しかし・・・」

少年の顔は見る見る曇った。

「外にアクセス・パネルがあるんだったら無理ですね・・・」

「それだったら解決策がある」

クワイ=ガンはニヤリと笑った。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

突然、電子音が鳴り響く。

ただでさえ静寂しか支配しないこの中で、この電子音は心臓に悪かった。

浮揚車(ホバーカー)の操縦士はビクリと飛び起き、慌てて通信機(コムリンク)を掴む。バクバクする鼓動を押えつつ何とか返事をした。

「は、はい、レンダーです ―― おぉ、マスター・ジェダイ、無事だったんですね!!心配して ―― はい?あ、はい。 ―― わかりました。館の扉まで行けばいいんですね。着いたらまた連絡します」

レンダーと名乗った青年は車から出ると思いっきり伸びをし、照明棒(グロー・ロッド)を掴むと颯爽と館に向かった。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

クワイ=ガンの通信機(コムリンク)が不意に鳴った。

「ジンだ」

『レンダーです。ただ今、着きました』

浮揚車(ホバーカー)の操縦士の声が返ってきた。

「扉の近くにアクセス・パネルがあると思うが?」

『アクセス・パネルですか?え ―― と、あ、ありますね』

「そこに今から言うパスワードを入力して欲しい」

クワイ=ガンはオビ=ワンに通信機(コムリンク)を手渡した。

少年は頷くと、一語一語区切るようにゆっくりと言った。

「D・A・R・K・N・E・S・S。Darkness(くらやみ)です」

しばらく扉の向こうで何やら操作するような音が聞こえた。

緊張の一瞬が過ぎ去る。もし、パスワードが違っていたら ――

オビ=ワンはゴクリと唾を飲み込んだ。

アクセス・パネルが操作しにくい状況になっているのだろうか。それともパスワードを入力する前に別のパスワードを聞かれるのか?それとも、それとも?

レンダーからの連絡も無く、やや緊張感を強いられた状態に陥っていた二人は、両開きの扉がゆっくり左右に開き始めたのを見て、顔を見合わせて安堵の余り微笑んだ。

しかし、その笑みはすぐさま固まった。

二人の視線の先には、燃え上がる浮揚車(ホバーカー)

そして、その炎に彩られるように、憎悪の瞳を持ち不敵に微笑むザナトスの姿があった。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「残念だったな。これでお前達の生き残る術は絶たれたという訳だ」

愕然とする少年と眉根をひそめている元師に向かい、ザナトスは館に足を踏み入れながらクスクスと笑った。

凍りついたような空気が漂う。

それを破ったのはクワイ=ガンだった。

「レンダーはどうした?」

「さぁ?フォースで突き飛ばしたからな。運が良ければ生きてるよ」

薄ら笑いを浮かべザナトスはロビーを歩く。そして、嬉しそうに言葉を続けた。

「いいことを教えてやろう。この館はあと20標準分ほどで全てが爆発する」

ハッと息を飲むオビ=ワン、それから表情の変わらぬクワイ=ガンに順を追って視線を移動させると、ザナトスは含み笑いをして言った。

「それからもう一つ。パスワードは変えた」

言葉が与えた衝撃の余韻を楽しみながら、ザナトスは懐からコントローラーを取り出す。

そして、それを思いっきり握り潰した。

「これで内からも外からも扉を開けるのはもう無理だ。絶対絶命だな」

破片が床に零れ落ち、それと共に師弟の希望も粉々になっていくように思われた。

館の扉は今、ゆっくりと閉まり始めていた。

クワイ=ガンは元パダワンを悲しみの表情で見つめ、オビ=ワンは扉を開けたままにできないか周囲を模索し始める。

ついにジェダイ・マスターは決断した。

すかさずセイバーを起動するとザナトスに打ちかかる。ザナトスに攻撃を阻まれた所で右手を差し出し、フォースを叩きつけた。

オビ=ワンに向けて。

不意を突かれた少年はその勢いのまま宙を飛び地面に転がった。そこは館の外。

マスターの意図に気づき慌てて体を起こすと、必死の思いで立ち上がり扉に向かって駆け出した。

一瞬、師と弟子の眼ざしが交差し ―― しかし、その目前で分厚き扉は音を立てて閉まった。

「マスター、マスターっ!!!」

少年の悲痛な叫びと、扉を空しく叩く音だけが辺りを震わせた。

 

There is no emotion; there is peace.

 

残り20標準分 ――

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