「随分と優しいんだな」
クスクスと笑う青年を意にも介さず、クワイ=ガンは扉に釘づけになっていた愛情と寂しさが混じった瞳をゆっくりと転じ、ようやくザナトスを視界に捕えた。
「大切な者を、未来を守ろうとしただけだ」
「あんたが死んだら、その未来とやらも消え失せるだろうよ。俺が手を下すまでもない、自らね」
鋭い指摘を受けクワイ=ガンの表情に影が過ぎった。だが、しばらくして静かな声で応える。
「それはどうかな?彼を甘く見ない方がいい」
「俺も甘く見ない方がいいぜ。あんたに教わっていた時よりいろいろと学んだんだ。覚悟するがいい」
ザナトスはセーバーを起動した。憎しみの眼ざしとともに赤く禍禍しい光が輝く。
(どこをどう間違えたのか。私は師としては失格なのかもしれないな)
幾分自虐的な笑みを見せ、すぐに真剣な表情に変えると
「お前を止めてみせる。例え刺し違えてでも」
手に持つ感触を少し懐かしみながら、クワイ=ガンはセーバーのスイッチを入れた。緑色の輝きが現れる。
瞬間、二つのセーバーは噛み合っていた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ずるずると扉を伝って地面に崩れ落ちる。
涙が溢れそうになる所をぐっと堪え、両手両膝をパーマクリートの地面につけると少年は悔しさに体を震わせた。
(マスター・・・)
ザナトスの言葉が頭の中を巡る。
_この館はあと20標準分ほどで全てが爆発する
_内からも外からも扉を開けるのはもう無理だ
(いや、諦めるな。何とかしてマスターを助ける方法を考えるんだ)
オビ=ワンは拳で涙を拭い、傷の痛みを押えて立ち上がる。不意に彼は思い出した。
(そうだ、
すかさずそれを拾い上げると、急いで少年は周波数を設定した。
『はい?』
声が聞こえた瞬間、居たたまれない思いが込み上げてきて、オビ=ワンは矢継ぎ早やに言葉を発した。
「僕だ、お願いがある。・・・助けが必要なんだ、無理なことはわかってる、でも、マスターが・・・マスターが、あと20標準分で爆発する家に閉じ込められて・・・。それまでに助けてくれそうなジェダイ・マスターを見つけて・・・。武器も・・・壁を破壊できる武器も・・・。どうか、お願いだ、マスターを・・・」
あとは感情が高ぶって言葉にならず、ひたすら
『・・・貴方・・・オビ=ワンね?』
その落ち着いた声にオビ=ワンは一瞬にして顔が赤くなった。
(バントじゃないっ!?)
動揺を抑え切れない彼は、
『 ―― =ワン?オビ=ワン?』
「あ、はい」
『落ちつきなさい。貴方が落ちつかないでどうするの?』
「・・・す、すみません」
『いい?今から言うことに落ちついて応えなさい。まず貴方はどこにいるの?それから、どういう状況なの?』
一種の興奮状態から醒めてくると気が緩んだのか、急激に頭が朦朧としてきた。ドロイドとの闘いで精も根も尽き果てた気がする。
途切れそうになる思考を何とか纏め、オビ=ワンは声を出した。
「僕達はマナライ山脈の頂上から下った・・・荒れ果てた館にいます」
(玄関の扉が開くまでの間、マスターが現在地を教えてくれた。確かそう・・・言っていた)
心は焦りながらも思うように言葉が続かない。
「そして、ザナトスが・・・マスターを館に閉じ込めてしまいました。・・・内からも外からも開けることができません・・・それで・・・」
言葉が不意に途切れ、心配そうな声が沈黙を破る。
『 ―― オビ=ワン?どうしたの?オビ=ワン?』
「大丈夫です。それで・・・・・・あと20標準分ほどで館が・・・」
言いかけた言葉を相手が素早く遮った。
『爆発する訳ね。わかったわ。マスター・ヨーダに伝えている暇はないし、いいわ、全て私に任せなさい。すぐにそこに行くわ。今すぐ出れば超高速シャトルだったら15標準分もかからずに行けるでしょう。ところで、オビ=ワン、貴方、本当に大丈夫?怪我をしているの?』
「だ、大丈夫です。それより早く・・・」
『オビ=ワン、できるだけ早く行くけど、貴方もできる限りのことをしなさい、ジェダイとしてね。フォースと共にあらんことを』
言い方は厳しかったが、気を張らせることにより意識を保たせる狙いがあったのかもしれない。そして、それは充分に効果を発揮していた。
「あ、あの、貴方は一体・・・?」
問いかけた時には、
オビ=ワンはしばらく荒い呼吸を整えていたが、先ほどの相手の言葉が耳から離れなかった。
_ジェダイとしてできる限りのことをしなさい
(助けが間に合うかわからない。なら、僕が何とかするしかない)
無理矢理、気力を振り絞り扉を見つめる。
(できることはただ一つ・・・正しいパスワードを見つけ出すことだけだ。でも、どうやって・・・?)
There is no ignorance; there is knowledge.
残り15標準分 ――