ザナトスがセーバーを弾き返す。
一旦分かれると、両者床を蹴り前方に飛び出した。
出会いざまクワイ=ガンは緑色に光るセーバーを切り下ろす。
と見せかけ手首を捻ると右横から薙ぎ払った。
青年は跳躍してそれをかわすと、凄みを帯びた笑みを見せつつ落下の勢いを込めて振り下ろす。
ジェダイ・マスターは片膝をついて両手で攻撃を受け止めた。
クスクスと笑いを漏らしザナトスはセーバーを再び叩きつけ、後方に跳び退く。そのまま走り去った。
ゆっくりと立ち上がりクワイ=ガンはセーバーを構えると、あとを追う。
過去を断ち切るべく。ここに過去を封印しようと。自らの命をもってしても。
いつの間にか、二人の闘いの場は大広間へと戻っていた。
左右を隔てる
赤い光が一閃する。
クワイ=ガンはそれを半身にかわした。
すぐさま回転しザナトスの突き出された右手に、左の手刀を叩き込む。
流れるような動作で青年の懐に入ると、肘を相手の鳩尾目がけて突き出した。
傷めていた手が痺れセーバーを落したザナトスは、辛うじて肘を避けたに過ぎず。
体を返しながら飛んできた足蹴りには対応できずに、両膝を床についた。
クワイ=ガンは見下ろした。かつて弟子だったその者を。ややあって静かに問う。
「まだ闘うつもりか?」
ザナトスはキッとまなじりを決し睨みつけた。そして、言い放つ。
「俺は絶対あんたには従わない。弟子だった頃からあんたの融通が利かない性格には辟易していたものさ。・・・何故小さい頃、俺を父親から引き離したんだ?あんたが俺を見つけ出してさえいなければ、父親の持っていた莫大な富は俺のものになったのに」
不意にザナトスは、どうしようもできないことを吹っかけてきた。ジェダイ・マスターにだって過去を変えることなどできる訳はないというのに。
彼が饒舌になる時は疲れてきた時だ、と経験からクワイ=ガンは知っていた。
内心でも
(ジェダイとして修行させることは
と沈痛な思いを巡らせたがそれについて口には出さず、宥めるように、昔、師弟として会話をしていた時のように、ジェダイ・マスターは穏やかに応えた。
「お前のミディ=クロリアン値が高く、その上、賢く優秀だったからだ。未来のジェダイを担うようなナイトになるだろうと信じていた」
「ハッ、あの緑のチビだって俺の本質を見抜いていた。あんたは最後の最後までお人好しだったんだよ」
最後の最後までという言葉が心に引っかかったが、構わずクワイ=ガンは本音を漏らした。
「お前を信頼していたのだ。真実に気づかなかった。いや ―― 気づきたくなかったのかもしれん」
「だから甘いって言うんだよ。こうして俺に対して説教しようとしていることもさ」
冷笑を浮かべザナトスは手にセイバーを呼び戻し、素早く手首を捻ると起動した。
肉の焼ける臭いが漂う。
呻き声がクワイ=ガンの口から漏れ、彼は耐え切れず片膝をつき傷口を押えると激痛に震えた。
出現した赤きセーバーはかすめ、肉と筋に激しい損傷をもたらしていた。クワイ=ガンの右肩に。再び。
「よく避けたな。避けていなければ貫いていたところだ」
体を起こすとザナトスはニヤリと笑った。
「相当さっきまで痛かったんだろう?右手が上がらないくらいに」
隠していたが見破られたようだ。クワイ=ガンは歯を食い縛った。痛みはズキズキと広がり右手の握力は全くなくなっている。それでも蒼き双眸は光を失ってなかった。
ザナトスはセーバーを振りかざした。
「これで終わりだな」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
(よく考えるんだ。チャンスは一度きり。間違える訳にはいかない)
扉に寄りかかり玄関先に座り込むと、オビ=ワンは焦りに苛まれながら必死に考えた。
目の前にはひたすら枯れ果てた樹木と深い闇が広がっている。茫然と視線を上げると、無数の星々が吸い込まれそうな暗闇を背景に瞬いていた。
(最初のパスワードは
それは今のこの状況を表していた。館の周囲も、館内も、そして、監房の中も暗闇だった。
全てに捻りを利かせるザナトスのこと。パスワードと引っかけていたに違いない。
オビ=ワンは思考をはっきりさせようと努力した。これにはマスターの命が懸っている、そう考えると集中力が増してくる。
(でも、今は?・・・彼はパスワードが変わるかもしれないなんて考えたことがあった?)
もし、考えていたら、もうそれはオビ=ワンには思いもつかない言葉のはずだ。
しかし、考えていなかったら? ―― 不意にパスワードを変えざるを得なかったら?
ザナトスは、オビ=ワンがクワイ=ガンの助太刀に現れるとは思っていなかったはず。そして、彼にとってあの穴に落ち、どこをどう通ったかは知らないが、外から館に舞い戻ることになるなんて考えもしなかっただろう。
しかも、オビ=ワンがパスワードを知っているなんて思いも寄らなかったはずだ。自意識過剰な彼としては。オビ=ワンを見下していたあの青年としては。となると彼は、急にパスワードを変えるしかなかったことになる。
これまでの仮説が合っていることを祈りつつ、オビ=ワンは再び深く考えた。
(それなら変えられたパスワードは?その時の状況を反映していた?)
オビ=ワンは扉に手を当て支えにしながら、ゆっくりと立ち上がった。
(一つだけ今の状況にぴったりな言葉がある)
彼はアクセス・パネルに近づいた。監房のアクセス・パネルを操作した時のように軽く押すと、パネルを覆っていた蓋が持ち上がりディスプレイとキーパットが現れる。
少年は入力ミスが無いように確認しつつ言葉を打ち込んだ。
(もし、これが間違っていてこの扉が爆発したとしても、マスターの逃げ道は確保される)
悲観的な中での唯一の希望に、オビ=ワンの顔にも自然笑みが浮かんだ。
(まるで惑星バンドミーアの時みたいだ)
彼は入力し終わると、躊躇いもせず『実行キー』を押した。
There is no passion; there is serenity.
残り10標準分 ――