舞台はキャッシーク。ウーキーの星。ウーキー族の一人、フレールを守るように言われたオビ=ワン。しかし、思わぬ事態が彼を待ち受けていて ―― といった展開です。
クワイ=ガンは48歳、オビ=ワンは13歳の設定。
ほのぼのしてます。
ちなみに、キャッシークの描写はほぼスピンオフを参考にしています。
第1話 緑豊かな惑星
宇宙船は、
見る見るうちに地表は小さくなり箱庭のようになる。
そして、ついに惑星全体を視界に捉えるまでになった。
惑星は薄い茶色がかった碧色の輝く宝石のように光りを放ち、白い雲の渦が回りを取りまき覆っている。
あの下には、何百万、何千万というヒューマノイド及びエイリアンを含む生き物が、それぞれの生活を送り人生を過ごしているのだ。
しばし飛ぶと、惑星は光の点と消えその痕跡は跡形もなくなり、ただそこには無数の星々と暗闇が存在するのみ。
ひたすら黒い、何もかも吸い込んでしまいそうな空間が続いているのだ。
そんな中では、自分は何てちっぽけな存在なのだろう。
ちっぽけで・・・無力で・・・
「どうした? 傷が痛むのか?」
ビクッと物思いから覚め、頬杖をついていた顔を窓から離し急ぎ振りむくと、通信室から出てきた彼のマスターが心配そうな顔で見つめている。
「いいえ、違います。大丈夫です。それより」
と、オビ=ワン・ケノービは逆に問いかけた。
「コルサントと連絡は取れましたか?」
「ああ」
ジェダイ・マスターであるクワイ=ガン・ジンは若きパダワンの横に腰を下ろした。
5、6人乗り用のこの宇宙船は、それでも多くの人と荷物を運べるようにシンプル且つこじんまりと造られてる。クワイ=ガンにとってみれば、彼の今座っているこの席は小さすぎるかもしれない。だが、そんなことは気にかけずクワイ=ガンは言葉を継いだ。
「次の目的地は、キャッシークだ」
「キャッシークと言うと、ウーキー族の惑星ですか?」
「そうだ」
クワイ=ガンは静かに頷いた。
「キャッシークはここからそれほど遠くはない。マスター・ヨーダが我々にそこに向かうよう、指示したのだ。詳しいことは着いてから説明する」
そう言うと、クワイ=ガンは目を閉じた。
(いろいろあって、マスターも疲れているのかもしれない)
オビ=ワンは窓に顔を戻す。
ウーキー族というのは実際見たことはないが、聞いたことはある。巨大な体を持ち体毛は長く、腕力は強く犬歯は鋭い。ウーキーを怒らせるものではないと。
ウーキー語がわからないオビ=ワンは、次の任務がどんなものになるか正直不安だった。ただ困難なものになるかもしれないという漠然たる思いはあった。
暗闇が統べる世界が広がっている中、オビ=ワンの脳裏には先ほど離れたばかりの惑星アルカスの姿だけが焼きついていた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
1標準時間ほどハイパースペースを走行すると、宇宙船は通常空間に出た。
と、眼下に惑星キャッシークの姿が広がる。
「うわぁ」
オビ=ワンは思わず歓声を上げ、窓に顔をくっつけるように覗き込んだ。
見渡す限り緑色の波。この高さからはっきりわかるほどの巨木の群生。
そこは瑞々しく生命力あふれる惑星だった。
「すごいですね、マスター!こんなに大きな木がいっぱい生えていて・・・本当にすごいですっ」
閉じていた目を開けると、クワイ=ガンは微笑んだ。
「そうか、オビ=ワンは、このように自然が多い惑星には行ったことはなかったか」
「ここまですごい自然は初めてです」
余程感激したのだろう、オビ=ワンは顔を輝かせ、しきりにすごいを連発している。
そんな様子を見て、オビ=ワンもまだまだ子供だなと思うとともに、そんな無邪気な表情を久しぶりに見たような気がして、クワイ=ガンは思わず頬が緩むのを感じた。
宇宙船は木々の間を縫うように飛んでいく。
不意に森が開けると、鮮やかな緑に囲まれた巨大なプラットフォーム、そして、その上に立つ潰れた卵のような形をした街が見えてきた。
「あれは、ルークロロの街だ」
クワイ=ガンがポツリと言った。
「ルークロロ、ですか?」
「あの街にはわかりやすいウーキー語が話せるウーキーがいる。その方が何かと都合が良いからな」
オビ=ワンは顔を前に向けた。彼の興味はまだこの惑星に魅き寄せられている。
そうこうしているうちに宇宙船はプラットフォームに着陸し、オビ=ワンは未知の世界へ一歩を踏み出した。
前を歩くクワイ=ガンに大人しく付いていくものの、視線は留まらずあちこちをさ迷っている。
ルークロロの街は、縦横に交差する巨木の枝で造られた台の上の街で、幅1kmぐらいの大きさだ。二、三階建ての家もところどころ見うけられる、自然とうまく調和した街であった。
クワイ=ガンの行く手には何人かの人影があった。
どうやら、ジェダイ・マスターとその若きパダワンがこの街に着くことは、先刻通知済みだったらしい。
オビ=ワンは初めてウーキー族を見た。
一見すると大きな縫いぐるみのようである。焦茶色の長い体毛、つぶらな黒い瞳。長い逞しい腕。二本足で立つその身長は、ゆうにクワイ=ガンの背丈を越えている。
そのウーキーの群れから一人のウーキーが前に進み出た。
クワイ=ガンが優雅にお辞儀をするのを見て、慌ててオビ=ワンもお辞儀をする。
そのウーキーは牙を剥き出し言った。
【ようこそお出で下さいました、ジェダイ・マスター。そして若きジェダイ。私はラルラチーン、ラルラとお呼びください。お疲れでしょう、どうぞ、家を用意しました。そちらで存分とくつろいでください】
ウーキー語がわかるクワイ=ガンは躊躇なく
「お心遣い痛み入ります。私の名はクワイ=ガン・ジン、そしてこちらは弟子のオビ=ワン・ケノービ。しばらくの間、よろしくお願いします」
オビ=ワンにはウーキーが何を言っているのかさっぱりわからなかったが、紹介しあっているというのは何となく理解できた。
ウーキーに微笑む。しかし、顔は少し引きつっている。
(外見で判断しちゃいけない)
オビ=ワンはフォースを伸ばし、このウーキーの心を探ってみた。
そこには穏やかな海のような静けさが広がっている。
ウーキーという種族は、実は外見に似合わず優しく繊細な心を持っているのかもしれない。しかし一度怒れば、そうとも言えないだろうが。
先ほどよりもずっと落ちついてクワイ=ガンの傍で佇む。
クワイ=ガンがちらっと彼の方を振り向き、眉を上げ苦笑するのが見えた。
【それから】
と前に出ていたウーキーは後ろを見て、控えていたもう一人のウーキーを手招きして呼んだ。
【こちらが、フレールです。よろしくお願いします】
「こちらこそ」
とクワイ=ガンは微笑みオビ=ワンを前に呼んだ。
「オビ=ワン、彼がラルラことラルラチーン、そして彼がフレールだ」
「初めまして、オビ=ワン・ケノービです」
ラルラというウーキーはわかったという風に声を出し、フレールという名のウーキーは僅か一歩でオビ=ワンの元に近づくと、いきなり彼をぎゅっと抱き締めた。
「わっ」
突然のことでかなり慌てふためく。
そんなことはお構いなしにフレールは抱き締めたまま、自分の腹ぐらいの背丈までしかないオビ=ワンの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
乱暴に頭を撫でられながら、いつも自分が気を張った挨拶をしていたのを思い出し、こんな親しみのある挨拶もいいかなとオビ=ワンは恥かしいようなくすぐったいような感情を噛み締めながら、なすがままになっている。
そんな様子を端からクワイ=ガンは微笑ましそうに見守っていた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
午後、街に着いたため、初日クワイ=ガンはオビ=ワンにこの惑星の詳細を教えるに留まった。
ウーキー族のしきたり。
ウーキー族は何より名誉を重んじること。そして「命の借り」。ウーキーにとって「命の借り」とは自分の命よりも大切な物である。
森の仕組み。
キャッシークの生態系には7つのレベルがあり、第7層は木の枝のてっぺんである。
だんだん下に行けば行くほど下層になるのだが、勇敢なウーキー族の男でさえ第4層までしか降りたことがないと言う。
ましてや地表などというものを見たというウーキーは伝説にすら登場しない。それほど下層はウーキーにとっても未知の世界なのだ。
そして、惑星のほとんどを覆っている巨木ロシュアのこと。
またその幹や枝に寄生するブライダル・ヴェール・サッカーや、幅の広い葉っぱをつけている偽シル、クシー蔓。
それから、そこに棲まう生き物のこと。
オビ=ワンはこの惑星についての一通りの知識を得た。
夕方、ラルラが美味しそうな料理を運んでくれた。
二人は礼を言い、ヒューマノイドの口に合うよう調理された料理 ―― 通常ウーキーは生肉を食し、調理された料理でもスパイスが効き過ぎることがあるからだ ―― に舌鼓を打ったのであった。