銀河彼方での物語   作:秋鹿

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第2話 指示を受けて

翌朝、クワイ=ガンはこの街に来て初めてオビ=ワンに指示を出した。

「今回、お前はあのフレールの傍についていて欲しい」

「フレールの傍に?彼は狙われているのですか?」

クワイ=ガンは聞かれて何故か考え込んだ。

「?」

不思議がるオビ=ワンにややあってマスターは口を開く。しばらく考えをまとめようとしていたのかもしれない。

「実は彼はあるウーキーに狙われているのだ。フレールはこの街一番の狩り上手なのだが、別の街のウーキーが自分の方が狩りが上手いと豪語し、フレールの名誉を汚すようなことを言ったそうだ。それが街同士の争いに発展しかけているらしい。ウーキーにとって名誉は何よりも大事なものだからな。・・・わかったな?」

「はい、マスター」

オビ=ワンは素直に了承した。

「私はいろいろなウーキーに話を聞いて、争いの元を調査し調停することにする。オビ=ワン」

言葉を止め、彼は若きパダワンを見やった。

「はい?」

「頼んだぞ」

「はい、マスター」

真摯に答えるオビ=ワンに微笑みかけるクワイ=ガンであった。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

ルークロロの郊外に設けられた仮の家から、外に出てみる。

ワサワサと揺れる緑色のロシュアの葉が街の回りを囲み、見渡す限り緑色の海である。上を見上げると、青い空が広がり白い雲が彩りを添え、清々しい気持ちになった。

「フルルルル」

声を掛けられ振り向くと、一人のウーキーが大股で歩いてくる。

「フレール・・・?」

そのウーキーはニヤッと笑みを浮かべ ―― それが笑みというならば、だが ―― オビ=ワンの元に近づくと背中をバンバン叩き始めた。

ウーキーにとって、背中を叩くこと、抱き締めること、相手を揺さぶること、これらは全て親愛の証なのだと聞いていた。

しかし、余りの強烈な挨拶に思わず息がつまる。

「いたた、もう、いいよ。わかった、わかった」

慌てて叩かせるのを止めると、オビ=ワンは苦笑いをしながらフレールを眺めた。

フレールは何故?という風に首を傾げている。オビ=ワンは思わず吹き出し、笑い始めた。フレールも訳がわからないまま声を上げて笑い始める。

白い一筋の雲が風に流れて空を横切っていった。

 

「僕は君を守るように言われたんだ」

プラットフォームの片隅に腰を下ろし、オビ=ワンはフレールに話しかける。

足元にはロシュアの葉が重なり合って緑色の絨毯のようになっている。覗き込むと地表は全く見えない。どれほどの高みにこの場所はあるのだろう。

覗いていてオビ=ワンは軽い眩暈に襲われた。

急いで頭を振り、隣に座っているウーキーを見やる。

ウーキーは首を傾げた。その意味するところはわからないが、君の助けがなくても自分の身は自分で守れると言いたいのかもしれない。

「だから、これから君の行く所には僕も必ずついていく。わかった?」

再び首を傾げ、それから牙を剥き出し笑った。了解したのだろう。

オビ=ワンはつくづく彼らの言葉がわかったら・・・と思わずにはいられなかった。

 

午前中、ルークロロの街を案内してくれたフレールは、午後になるとオビ=ワンを伴い森に出かけた。

第7層、そして、第6層の上の方を見せて回る。

オビ=ワンには初めて見る光景で、見るもの全てが珍しかった。

フレールはウーキー語しか話せなかったが、標準語(ベーシック)は理解できたので身振り手振りで教えてもらい、及びクワイ=ガンから仕入れた知識と照らし合わせて、何とかオビ=ワンにもその物の名前ぐらいはわかるまでになった。

そして、フレールと一緒にいる間、彼の豊かな表情を見ることで彼の言いたいことがなんとなく感じるようになってきた。

しかし、ウーキー語が理解できたらと思うこともやはりままあるのだった。

 

そんな時、別のウーキーが現れた。

そのウーキーはフレールに吼える。

フレールは駆け寄っていった。

【よぉ、ショーランじゃないか。何をしてるんだ?】

【おぉ、フレール。いいとこで会ったね。今から陰森(シャドー・フォレスト)に行くんだ、客人をもてなすための獲物を捕りに。君もどうだい?狩りがうまい君がくれば助かるんだけどな】

【そうだな、行ってもいいぜ。その前に、あの小さき勇者を街に帰した方がいいな。陰森(シャドー・フォレスト)に連れていくには危険すぎる】

【そうだね。じゃ、僕先に行ってるよ】

【ああ、後から追いつくから、行っててくれ】

二人でウーキー語でしばらく話していた後、フレールはようやく踵を返しオビ=ワンの元に帰って来た。

「どうしたの?」

訊ねるオビ=ワンに、フレールは唸り、付いてこいと合図をする。

要領を得ず、言われるままオビ=ワンはフレールに付いて歩き始めた。

 

30標準分ぐらい歩いただろうか。

ルークロロの街並みが樹海の向こうに見えてくると、フレールは

「フルル」

と唸り、街を指差すと行けといった仕草をする。

「フレール?ちょっと待ってよ」

確かにここまで来てしまえばルークロロの街は目と鼻の先。オビ=ワンにだって一人で帰れる。

オビ=ワンが街の方を確認したのを見届けると、ウーキーは体を返し巨大な体に似合わず恐ろしいスピードで走り始めた。街とは逆の方向へ。

しかし、彼はフレールを守らなくてはならなかった。そのためには、常に一緒にいなければならない。

「どこ行くの!?」

ウーキーが唸る声が聞こえたが、あっという間にその茶色い姿は樹木の間に消えた。

フレールの傍についていて欲しい

マスターの言葉が蘇る。

オビ=ワンは唇を噛み締めると走り始めた。

フレールを追って。巨大で広大な森に。

 

フォースを伸ばすと、かろうじてフレールのフォースを感じることができる。オビ=ワンはその後を辿って行く。

しかし、ロシュアの木が巨木とはいえ、ウーキーのようにしなやかな肉体と土地鑑を持っているならともかく、人間にはこの木の枝と枝の間を飛び越えて進んでいくとなれば至難の技である。

枝の直径が2mあったとしても、だ。交差していればまだいい。飛び越えねばならないとなれば、フォースを使うしかあるまい。

そうして、フレールの姿を追いつつ、オビ=ワンは次第に森の下の層に入り込んでいった。

日が当たりにくいため、苔が密集している木の枝を用心深く歩きながら、フォースでフレールの行方を探す。

 

どれほど探したかわからない。1標準時間か2標準時間ぐらい経っているかもしれない。

ようやく、フレールのフォースを間近に感じられた。

フォースの使いすぎで息が上がり、体は疲れていたが

//フレールっ!!//

と、フォースを送った瞬間、すぐ傍のロシュアの葉の陰から見たこともない生き物が驚いて飛び出してきた。

ぶつかりそうになり、慌てて避けたオビ=ワンの足が枝を踏み外した。枝に生えている苔が拍車をかけた。

「うわぁぁっ!!」

ルークロロの街から下を覗いた風景が頭に浮かぶ。地表が全く見えず、ひたすら木の幹だけがそびえ立っていたその景色を。

オビ=ワンは奈落に吸い込まれるように落下していった。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

【偉大なるジェダイ・マスター!そこにいらっしゃったんですね?】

いつも冷静なラルラが血相を変えて走ってきた。

クワイ=ガンは他のウーキーと話をしていた所だった。ただならぬ様子に眉をひそめる。

「何かあったのですか?」

【小さき勇者が行方不明とのことです】

クワイ=ガンは眉間に皺を寄せ、ラルラに向き直った。そして、静かに促す。

「何があったというのです?」

【先ほどフレールが来まして、今、陰森(シャドー・フォレスト)から戻ってきたのだが、小さき勇者の姿が見当たらない。彼には先にルークロロの街に帰るよう伝えたはずだと言うのです。私達が街中探したのですが、彼の姿は見当たりません。まさか、森に一人で行ったのではないか・・・と】

クワイ=ガンは沈痛な面持ちを破り訊ねた。

「もし一人で森に入ったとして、ヒューマノイドの子供が無事に戻ってくる確率は高いのですか?」

ラルラは唸り声をあげた。

【何とも言えません。しかし、不慣れな森です。確率は・・・】

「低いのですね」

【ご期待に応えられず、申し訳ありません】

マスターは深い溜め息を漏らした。

「フレールに話を聞きたいのだが、フレールはいますか?」

【彼は小さき勇者が帰ってきていないと聞くと、すぐさま森に探しに行きました】

「そうですか」

【貴方はどうされますか?偉大なるジェダイ・マスター】

「私はここで待ちましょう。私にとっても不慣れな森だ。オビ=ワンとフレールを信じます」

ラルラはわかったと吼えると、急ぎ足でその場を去る。

そこには独り心配げに佇むクワイ=ガンの姿だけがあった。

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