手牌と闘牌描写書けないのは麻雀知識に乏しいせい。
――――聖牌戦争。
それはどんな願望でも叶うと言われている聖牌を手にするための魔術師による戦争である。
古より勝負事をする時には麻雀が用いられている。
過去に遡るという手順を踏む魔術師にとっては、麻雀は神秘そのものと言ってもいい。
神話、叙情詩、御伽草子、世界大戦、あるいは近年の大統領選挙や外交に至るまで、多くの人種に慣れ親しまれているのが麻雀なのである。
聖牌戦争ではこの麻雀という神秘に則って英雄達を座から召喚し、戦う。
英雄であるサーヴァントと召喚した魔術師、つまりマスターがペアを組んで全ての者を蹴散らし、聖牌を手に入れる――――!
「シロウ!それは、それはあまりにも無茶だ――!」
「――――セイバー」
「俺はきっと、これでいいんだ。俺はこの結果がどうなろうとも、決して、後悔だけはしないんだから――――」
「セイバー、やらせてあげなさい。士郎は最初から私達の言うことなんてちっとも聞いてくれなかったのよ。だから、ここで私達がなんと言おうとも無駄なの。そうでしょ士郎!」
「ごめんな、遠坂、セイバー。俺はやる――――」
顔があがり、意志のこもった鉄錆色が強くきらめく。
闘いを前にした戦士の顔だった。
セイバーがかつて同胞と強大な敵に挑んだ時の、円卓の騎士に通じるような、そんな顔――――。
セイバーは困ったような顔で苦笑した。
「そんな顔をされては私の立つ瀬がありません……。シロウ、自分のやるべき事を尽しなさい。それが今の私に言える、たったひとつの冴えた忠言です――――」
さらりと揺れる黄金の絹に続いて赤褐色がふわりと動いた。
「――――体は手牌で出来ている。
血潮は自摸で心は打牌。
幾たびの半荘を越えて不敗。
ただ一度の焼き鳥もなく、ただ一度のあがりやめもなし。
雀士はここに独り。
数多の符で翻数を飾る。
ならば、我が流れに意味は不要ず。
この体は、無限の手牌で出来ていた――――」
「無限の手牌――――!!」
周りの風景が神秘によって掻き消されていく。
地面は荒れた荒野。
空に遮る物は無く、それでいて全てを燃やし尽くすような猩々緋となっていた。
「ふん、雑種にしてはよくやるが、しかしこの我にはどうだろうな?」
「――気づいていないのか、英雄王」
「どうした騎士王よ」
「シロウはもう、和了っている――――」
士郎が倒した手牌は、和了の形をとっていた。
天和。
それが士郎の和了った手牌の名である。
33万分の1という奇跡を人の身でありながら手繰り寄せたのだ。
「ふははははは!阿呆め、天和は確かに素晴らしい役だ。しかし複数の味方ごと点棒を集めるとは愚の骨頂ぞ!」
「そうは思わないわ」
「何?」
「この聖牌戦争でのルールをもう忘れてしまったの?」
「――――役満に御祝儀がつくのよ。通常の役満なら全員からプラス20000点、ダブル役満ならプラス40000万点。そして天和にはプラス60000万点――――!!」
「私達がトぼうとも――――」
「士郎が」
「シロウが」
「「和了ればいい――――!!」」
聖牌からの加護を持たなくなった英雄王は、聖牌戦争で変更された現在のルールを知らなかったのだ。
天賦の運(ランクA)と強力な宝具という火力任せの英雄王には必要なかったのだ。
そう、今までは。
「おのれ、おのれおのれ、おのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれ――――!」
聖牌戦争のルールに従って英雄王の今まで積み重ねてきた点棒が急激に減っていく。
英雄王が英雄王としての宝具を使うためには、コストとして点棒が必要であった。
今の英雄王は宝具を展開できない状態である。
それを見逃す士郎では無かった。
「――――二本場だ」
「何?」
「天和。48000オール、御祝儀として60000オールだ」
「何を言っているのだ……その女達はとっくに点棒が……」
「ふんっ、何を言っているのよ英雄王。私達に点棒がないから麻雀を続行できない?ちゃんちゃら可笑しくてお腹が痛いわ!」
「――――五次聖牌戦争新ルール。最終戦は青天井で行う」
「英雄王、貴方の負けだ。麻雀をする上において何よりも大事なルールを把握しないという、その慢心こそが貴方を敗北へ導いたのだ――――」