今話より新章突入!舞台は………まぁ、章名で既にネタバレな気が半端ないですが、エルトリア!
では、どうぞ!
第30話 荒野での生活
「ふっ………ふっ………」
私は今、朝のジョギングの真っ最中。見渡す限り岩と砂、荒野の中をただ1人で走り抜けていきます。元は草原でもあったのだろう真っ更な荒野を抜け、岩山の麓まで走るとここで一旦休憩して持ってきた水を少し飲み、そのあと頭から被ります。ここでシャドウボクシングを少ししながら息を整えたら、元きた道(実際に道があるわけではありませんが)をジョギングで戻ります。これがこの世界に来てからの私の日課。
私とリインフォースがこの世界に飛ばされてから早2年が経ちました。あれから私とリインフォースはケガと魔力の回復に約1ヶ月を要し、その間私達を助けてくれた人のお世話になっていました。最も、行く宛のない私達は今でもその人達のお世話になっていますが。
私は朝のジョギングを終えて助けてくれた人の家、フローリアン牧場へと帰ってきました。
「ただいま戻りました」
「あら、おかえりなさい」
「刹那さん!朝ごはんの準備、もうすぐ出来ますからシャワーでも浴びてきてください!」
この穏やかな人がこの牧場を管理している人の奥さんでエレノア·フローリアン。
もう1人の赤い髪を三つ編みにした元気な女の子がアミティエ·フローリアン。愛称はアミタ。この家の前で倒れた私とリインフォースを助けてくれた1人です。
「わかりました。汗、流してきますね」
「ぁ、キリエが使っているかもしれないので気をつけてくださいね?先程キリエもシャワーを浴びるって言っていましたから」
このキリエ、という子が助けてくれたもう1人の女の子で、アミタの妹のキリエ·フローリアン。ウェーブの掛かったピンクのロングヘアと花の髪飾りが特徴的な女の子。
それともう1人。今ここにはいませんが、ここの主グランツ·フローリアン。今彼は病に犯されていて別室の無菌室で療養中。
ケガが治ってここに住むようになってすぐ、今のようにジョギング帰りでアミタに勧められてシャワー室へ入ったところに先にシャワーを浴びていた(もちろん裸の)キリエとばったり遭遇するという事件が起きて以降、こうして注意を促してくれるようになりました。
「では、キリエがいたら先にリインフォースを起こしに行くようにしますね」
「そうしてもらえると助かります」
私は家の奥にあるシャワー室へと向かいます。脱衣所の前まで来ると中からシャワーを浴びる音が聞こえるので、アミタの言うようにキリエが先に浴びているみたいです。
「キリエ、タオルだけ取らせてもらいますね?」
「ぁ、刹那?もう帰ってきたんだ。ごめんなさい、すぐ代わるわね」
リインフォースを起こすにも汗だくのまま行くわけにいかないので、タオルだけ貰おうと私は脱衣場の更に奥のシャワー室にいるキリエに声を掛けます。
「待つ間にリインフォースを起こしに行くのでそのまま続けてて大丈夫ですよ。ジョギング上がりなのでタオルだけもらえれば」
「わかったわ。そこにあるヤツ、使っていいわよ」
キリエから脱衣場にあるタオルを使っていいと許可が出たので、私は脱衣場へ入ってタオルを1枚拝借。もちろんキリエの脱いだ服の方は気にしないようにするのも忘れません。こんなつまらないことで信用を失いたくないですしね。
で、私は汗を拭きながらリインフォースの寝室へ。今現状唯一の寝坊助はまだ夢の中。
「リインフォース、起きてください。朝ですよ」
「んぅ………おふぁよぅ………刹那」
そんな
「ほら、着替えて外で顔洗ってきてください。もうすぐ朝ごはんです」
「ぅむ………」
「ぁ、刹那ー?シャワー空いたわよ」
寝癖でボサボサになったリインフォースの銀髪を手櫛で簡単に調えているとシャワーを終えたキリエがやってきます。
「わかりました。リインフォースの髪、頼んでも?」
「そういうことは私にお任せよん」
私はキリエと交替してシャワー室へ。シャワーを浴びて汗を流し、さっぱりしてから着替えて朝ごはん。これが私の1日の始まりです。
惑星エルトリア。そこが今私達がいる場所の名前。
エルトリアは環境汚染や資源枯渇等々の理由で荒廃が進んでいて、約300年前から外宇宙への進出やコロニーの建造と移住が進められていて、惑星地上に住んでいる人はほとんどいないらしいです。で、このフローリアン一家はその地上に住んでいる数少ない人という訳です。
しかし、一家の主のグランツさんが病に倒れてからというもの、このフローリアン牧場の運営と種々の実験は滞っていて………今はコロニー『フロンティアロック』へ移住することも視野に入れて(主にアミタとエレノアさんが)色々と考えているみたいです。
「そうそう、私今日は少し遠出しますね。夜の内に魔獣が出たって連絡があったのでその退治に。刹那さん、リインフォースさんを借りていいですか?」
「本人が良いなら、私は構いませんよ。ちょうど私はキリエと調べ物をするつもりでしたし」
「アミタ、よろしく頼むよ」
「ありがとうございますっ!」
リインフォースは空間震に飲み込まれる前「私が生きていれば防衛プログラムが再構築される」というようなことを言っていました。だからあの血戦にも参加しましたし、そもそも本人はそこで消えるつもりだったのでしょう。
けど、今リインフォースは生きています。それは何故か?答えは簡単。空間震に取り込まれた後、離れ離れにならないように私はリインフォースを抱き寄せてからレアスキルのソウルコアを発動し、リインフォースを構築するシステムの書き換えを行ったからです。それによりリインフォースがリインフォースであるのに必要なもののみ残し、防衛プログラムの様な物騒で不要なシステムは一切合切捨て去りました。
とは言え、あの不安定極まりない空間で行ったこの無謀な行為、その後行った取り込まれた空間から脱出するための無差別転移も相まって再構築したリインフォース自身もボロボロで不安定、私もリンカーコアに(その前の血戦時の無茶もあり)深刻な損傷を受けました。
で、そのボロボロで不安定なリインフォースはその後アミタの行ったマテリアライズというものによって今の安定した肉体を得ているわけです。
マテリアライズとは………話すと長くなりますが、要約するとこのエルトリア独自の技術であるヴァリアントシステムというものの応用で、実態のない意思や人工知能に肉体を与える技術、だそうです。
長くなったのでまとめると、不要なシステムを全部捨てて再構築、肉体がボロボロで不安定になってしまったのをマテリアライズでさらに再構成して今に至る、という訳です。
「それでは行ってきますねー」
「行ってくるよ」
っとと、本題に戻りましょう。
朝ごはんが終わりると魔獣退治に行くというアミタとリインフォースは簡単な用意を済ませてから2人で出発。
それを見送ってから私は地下へ降りたキリエの所へ向かいます。
「お姉ちゃん達、もう行った?」
「はい、先程」
キリエのいる部屋へ入ると、そこにあったのは大きな石板。これは地球でいうコンピュータのようなもので、情報を検索、閲覧することができます。タブレットサイズのものだと持ち運びもできるので便利です。石板なので地球のタブレットより重いのが難点ですが。
キリエはその大きな石板を操作しており、私が部屋に入ったのには気付いていたようですが、石板から目を離そうとはしません。
「キリエの方は調査の進渉はどうです?ここ最近ここに篭る時間が長くなってるみたいですが」
「うーん………お手上げ状態かなぁー。これと言ってめぼしい情報はなし。焦ってるのかも」
私はキリエに紅茶のカップを渡しました。キリエはありがと、とそれを受け取り一口。ちなみにこの紅茶の茶葉は先日フロンティアロックの病院へ行く用事があり、そのついでに仕入れたものです。
「1つ確認してもいいですか?」
「んー?」
「エルトリアの荒廃の原因は種々あるそうですが………主だったものは資源の枯渇と環境汚染、それで間違いはないですか?」
「そうねぇ。かなり大雑把に言えばそんな感じかな。人間同士の争いとかもあったらしいけど、荒廃が目立ちはじめた頃にはみんなそれどころじゃなかったみたいよ?」
「確か、300年前からは全人類で協力してエルトリアを離れてコロニーに移住したり外宇宙へ進出したりし始めて………それ以降は汚染そのものは一応は止まったんですよね?」
「えぇ。その辺は前にも話したわね。でー、それがどうかしたの?」
「少し気になることがあるんですよ。ぇーと………ここで見られればいいんですが………」
私はキリエの操作していた石板を操作し、情報検索。地球のデータベースにある情報が見られればいいのですが………
「何を調べてるの?」
「私が前いた場所、地球なんですけどね。エルトリア程ではないですけど、環境汚染や資源の枯渇は問題となっているんですよ」
「うんうん。それで?」
「もちろんその原因は私達人間。その辺は大体の想像は出来ますか?」
「エルトリアも似たようなものだし、それくらいなら出来るわよ。要は、放っておくとその星もエルトリアみたいになりかねないってことよね?」
「まだ遠い未来の話で極論ですけどね。ぉ、ありました。このコンピュータは優秀ですね」
地球の現状を簡単にキリエに教えながら見つけた情報のウィンドウを拡大。そこにあったもの、それは
「原因が人間なら、もしその人間が1人残らず居なくなればどうなるか。それを科学的に推測した番組があったんですよ。あくまでもifですけどね」
「へぇ〜。なかなか面白いわね」
私はその映像の荒い動画をキリエにも見せました。キリエはそれを興味深々と言った様子で凝視。
「エルトリアから人類が離れ始めたのが約300年前。地上に人がほとんどいなくなったのはそんなに昔ではないとしても、開発そのものが地上で行われなくなって200年は経っている、と考えると1つおかしな点があるんですよ」
「おかしな点?」
「えぇ。この動画だと200年も経てばそれなりに回復はしていってます。もちろんこれは推測ですし、エルトリア地上で全く開発をしていないのか、と言われれば全くの0では無いでしょうから鵜呑みには出来ませんが」
「つまり、開発が0ではないにしろほとんど止まったような状態が200年くらいは続いていて、エルトリアが自然に回復していないってことね?まぁ、そもそも地球とエルトリアは星として別物だし地球での推測がエルトリアに通用するかって言われたら怪しいのだけれど」
「それを言われると私の考えは説得力が無くなりますけどね」
映像を見せながらキリエに私が考えたことを伝え、それについて2人で考察します。キリエが調べているのは荒廃したエルトリアを蘇らせる方法。私も助けてもらった恩と、今住んでいる世界というのもあって私もそれに力を貸している、という訳です。
特に最近はアミタがエレノアさんとフロンティアロックへ移住する計画を立てていて、それにキリエがハブられでしまって独りでいることが多くなった関係でキリエとアミタはすれ違いが多くなり、今はその双方と仲良くしている私を通じてなんとか仲を保っている、と言ったところ。ただ、もしも何が引き金があればこの2人は仲違いしてしまいそうなほど危うい関係です。
私は独りの寂しさをよく知っているので、キリエとはよく一緒に過ごしています。アミタのことは基本的にリインフォース任せになってしまってますが。
すれ違っていはいるものの、アミタもキリエもエルトリアの事を本気で心配していて、何とかしたいという思いは同じであるが故に、こちらも何とかしてあげたいのですが………如何せん私は居候の身、家族のことに口出しをするのは下手をすれば今以上に仲をこじらせて家庭崩壊の危機すら有り得るので、抵抗があります。可能な限り私は出しゃばらずに当事者同士で解決してもらうのがベスト。きっかけさえあればその手助けくらいは出来そうなのですが……
「とは言っても私達は藁にも縋りたいのが本音なのよねぇ………刹那のことだからそこまで話したんだから何が考えがあるんじゃないの?」
「まぁ、一応は」
私の考え………これをアミタとキリエの2人でやってもらえればきっかけにはなるでしょうが………下手すれば仲違いが酷くなりかねない。ただ、エルトリアのことも考えたらそうも言ってられませんね。
「そうですね。要は環境汚染や資源枯渇の他に根本の原因があるんじゃあないか、と」
「根本の原因?」
「えぇ。例えばこの星に巡っている魔力が弱まっている、とか。そのせいで星そのものが弱っているのかもしれないというのが私の考えです。最も、それを調べる術は今はありませんが」
「それを調べられる人を連れてきてほしい………ってこと?」
「えぇ。私がロストロギア『夜天の書』に取り込まれた時に偶然見つけた情報なのですが………。それは───」
私はエルトリアが弱っている理由の推測とそれを確証にする為の方法をキリエに教えました。夜天の書内のデータなので石板に見えるようにはできませんが。
「なるほどね。けど、それには地球に行かないといけないんじゃないの?」
「えぇ。ただ、私はリンカーコアの負傷がまだ残っているのでそれを手伝うことは出来ませんが」
ちなみにリインフォースは夜天の書のコアでしたが、その類のデータは消失しています。なので、そのことはリインフォースは知りません。が、夜天の書本体を利用すれば………可能性はあります。
「刹那が来れないってことは………リインフォースも無理よね?」
「はい。ですから、可能ならアミタと協力してやってもらえれば………」
「うーん………」
やはりアミタと、となると渋りますよね。結局、了承はしてもらえましたがかなり渋々といった様子で。心配事は尽きません。
ちなみに地球に行く方法自体は近所の遺跡にいるイリスの力を借りようかと思っています。ただ、このイリスもどこか猫を被っているように思えて………キリエは絶対の信頼を置いているみたいですが、私はどうもそこまで信頼できません。
私はキリエと一緒にイリスにこの話をしに行き、その後石板を幾らか貰って帰り、夜の内にその計画を実行する為の魔法を読み込ませます。ついでにイリス対策の魔法も少々。それをキリエに持たせて数日後に地球へ。
ただ、そこで問題が発生。キリエがアミタを放置して単独で地球へ行ったのです。アミタもそれを追って地球へ行くと言い出しました。一応アミタにもリインフォースを通じて先程の私の案は伝えてあるのですが………やはり心配です。
「アミタ、すみません。私が入れ知恵したばかりに」
「気にしないでください。刹那さんなりにエルトリアを思ってのことなんですから。とりあえず、キリエにあったら説教しないといけませんね」
「お、お手柔らかに………。ぁ、向こうの魔導士に会ったら私とリインフォースのこと、伝えてあげてください。心配してるでしょうから」
「わかりました!」
私は全てをアミタに託し、地球へと送り出しました。
なまじReflectionやらないとなると難しいです。完全なオリジナルストーリーになる訳ですからねぇ。
刹那とリインフォース達を中心にしてもっと展開していくので生暖かい目で見守ってくださいっ!
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