「折本──」さて、この後に続く言葉は── 作:時間の無駄使い
まだ終わってないので、随時更新します。
-追記-
21:41、完成しました。
01(28)
* * *
冬の寒さは完全に抜け、草木の芽生えを感じる春を過ぎ、長い梅雨を乗り切ると、そこに待って居るのは灼熱の季節。
「あぁ~、…動きたくねぇ……」
この日もそれは例外ではなく、今日の気温は二十九度。
まだ夏が始まったばかりだから、このくらいの気温でも体感的にはもう少し上に感じる。
「はいそこ、そんな事言ってる暇あったら動いて。…小町だって暑いんだから…」
「…あいよ……」
比企谷家・庭。
そこで現在行われているのは、BBQの用意。
なぜ急にBBQかと言うと、事の発端は数週間前に遡る。
────
──
「比企谷ー、おーい」
「おう」
駅付近のカフェで俺を見つけた折本は、手を振ってこっちに小走りでかけて来る。
梅雨も終わったんだか終わってないんだか微妙なこの時期に、何故俺が折本とカフェに集合しているのかというと、…まぁ、端的に言ってデートだ。
俺もあの日から遂にリア充の仲間入りを果たした為、これからもこういう事がしばしばあるかも知れない。
もともと高一の時もこんな事があったが、やはり間に空いていた穴や、その穴の中にあった沢山の出来事のせいだろうか、高一の時とは一段違った感覚だ。
「あ、そう言えばさ」
「ん?」
いつだかの様に俺の隣に座った折本は、俺とは反対側の肘をテーブルにつき、俺の方を見ながら急に話を始める。
「最近私の家に来てばっかで全然比企谷ん家行ってないから、たまには比企谷ん家行きたいんだけど、どう?」
「俺ん家?…来てもいいが何もねぇぞ?」
「いいの。私が行きたいんだし、何もなくたって比企谷の部屋なんだから」
「お、おう。…そうか」
今の会話を聞いてリア充死ねよと思ったそこの材木座。俺も非リア時代は同じこと思ってたかもな。…だか、俺は今やリア充だ。悪いな、材木座。…いや、悪くはないか。
──という事で俺ん家に行くことになったのだが…。
「あれ?かおり!…と比企谷君?」
「千佳!?…何でこんなとこに?」
そこには、久しぶりに見る仲町さんの姿が。どうやら、俺たちより先にこのカフェに居た様で、その手に持っている勘定の紙からして会計に行くところなんだろう。
「私は普通にカフェに寄っただけ。二人は…デート中?」
「…そっ、それは…その…」
「べ、べちゅに…グッ…」
折本、俺ともにパニック状態。
自分たちではデートだのなんだのって言うのは大丈夫なのに他人から言われると急に恥ずかしくなって…。おい、そこの材木座、スマホのカメラこっちに向けるな。叩き割るぞ。
「あははっ、照れてる照れてる」
「っ……ぅぅ~っ」
デートという単語が出てきた瞬間に顔を真っ赤にした折本は、仲町さんにその赤くなった顔を見られない様に下を向きながら答えたものの、照れてるというどうしようもないところを突かれ、さらに恥ずかしそうにその顔を耳まで赤くする。
…しかし、仲町さんがこういう風にからかったりする人だとは思わなかった。
決して悪い意味ではないのだが、何だろうか…もっとちゃんとした人だと思っていたから、少し驚いた。…まぁ、これも俺が仲町さんに理想を押し付けていたという事なんだろうか。…いや、違うか。相手をよく理解してない内に作るイメージ──第一印象のせいだな。うん。
「…照れてるかおりも久しぶりに見たなぁ…」
「ち、千佳ぁ…」
もうやめてと言わんばかりに赤い顔で仲町さんを止めにかかる折本。
「ごめんごめん。…っと、私そろそろ行かなきゃ。二人の邪魔するのもなんだしね。…比企谷君と楽しい時間過ごせると良いね」
仲町さんは最後にそう言って、カウンターへと向かって行った。
「…大丈夫か?」
「……うん」
仲町さんが行き、そして店を出た後で折本に訊く。未だにその顔は赤く、小さく唸っていた。
「…しかし、意外だわ」
「…何が?」
「いや、仲町さんがあんな人だった事が?」
「あんなって…からかった事?」
「ああ。…なんかそういう事しないイメージだったから」
「まぁ、あんまりないよ。極々たまにだけ。しかも──」
…と、そんなやり取りをしている内に時間は過ぎて行き、気付けば真昼。
「…そう言えば、結局比企谷ん家って行っていいの?」
なんか解決してた気もするが、取り敢えず折本のその質問によって話は最初に戻る。
「ん?あぁ、来てもいいぞ?」
「うん、じゃあ今から行こ?」
──という事で、俺は折本と自分の家に帰る事になった。
…まぁ、展開から分かる通り、この後家で事件が起きるのだが。
* * *
「たでーま…。入ってくれ」
「うん。…お邪魔しまーす」
昼になって上がった気温と、まだ昼飯を食べてないせいで何かしらの食べ物をせがんでいる俺の腹の虫に板挟みされながらも帰宅を果たす。
昼飯に関しては帰る途中で買うかどうかの話になったのだが、家で作ろうという結果になり、現在に至った。
「およ?お兄ちゃん…とかおりさん!いらっしゃい」
「あ、小町ちゃん。お邪魔するよー?」
玄関の空いた音が気になったんだろう我が妹が、階段から降りて来て、俺と折本を出迎える。
「小町、昼飯あるか?」
「お昼ご飯?…まぁ、あるにはあるよ?」
ちょっと暗い小町の反応に、流石に気になって追求に出る。
「…何かあったのか?」
「…実は、塩加減間違っちゃってさ。…仕方ないから全部の材料を塩加減に合わせて足したら大変な量に……。あ、味は大丈夫。小町も食べたし」
結果的に話をまとめれば、途轍もない量の料理が出来上がってしまい、昼飯だけでは終わらない量らしいから、夜飯も同じメニューになると言う事だった。…ミスってもリカバリーをとって普通に戻せるのが由比ヶ浜とは違うところだ。そもそもマズイのは置いといて。
「んじゃまぁ、俺らはそれ食うわ。折本もそれでいいか?」
「うん。私はいいよ?」
という事で、不幸中の幸いと言うか何と言うか。俺は妹の昼飯にありつけることとなった。
──そんな事があり、飯を食べ終え、そして俺の部屋へ。
「…久しぶりだなぁ、比企谷の部屋」
「ざっと二週間半くらいか?」
「そうだね。…って……」
急に折本が俺の机の前で足を止め、固まる。
「…どうした?」
「……もしかして、つい最近雪ノ下さんと由比ヶ浜さん呼んだ?」
「雪ノ下と由比ヶ浜?…いや、呼んでな──いや、小町が確か呼んでたな」
「小町ちゃんが?」
「あぁ。…俺はその日、本屋に行ってて、そのついででちょっと遠出して来たんだが…、そん時だったはずだ」
「……てことは小町ちゃんか…。うーん」
俺の話を聞いて納得した素振りを見せるものの、そもそも何でこんな話になってるのか理解していない俺は首を傾げつつも、取り敢えずベッドに腰を下ろす。
「…そう言えば小町にもまだ言ってなかったな」
「?…何を?」
「いや、俺と折本が付き合ってること。…まだ言ってなかったなーと思って」
「それでよくバレないね?」
「まぁ、俺ん家に来てるのは頻度的にはダントツでお前だけどたまに由比ヶ浜とか雪ノ下とか津久井も来てるしな。その辺で迷ってんじゃねぇの?」
「……………」
「……比企谷、…正座」
──この時の折本の目には、光が全くと言っていいほど無かった。
* * *
「比企谷。…比企谷は、私が好きなんだよね?」
「お、おう。…当たり前だろ」
「で、それなのに他の
その口振りからして、どうやら折本が怒ってないのは本当のようだった。
だが、だとしたら何に──。
「…まぁ確かに比企谷はかっこいいし、それが分かる人には分かるんだけどさ」
「…何か、不安になっちゃうよ。…いつか比企谷が他の娘に盗られちゃうんじゃないかって」
「そ、そんな訳ねぇだろ!…俺は折本だけが好きだし、他の奴は…友達…みてぇなもんなんだから」
俺の中では彼女って言うより友達って言う方が恥ずかしいのでそこが少し口ごもってしまったが、折本にはそれが別の意味で伝わったらしく、
「…はっきりとは、言わないんだ……」
「ち、違っ…」
「…やっぱり…独占欲強いのかな、私」
そう言う折本の目尻には、水の粒があった。
「お、折本…」
「うっ…ぐすっ……」
ついに泣き出してしまった折本にどうする事もできない俺。
「…折本──俺は、やっぱりお前が好きだ」
「……だから、…だから──」
「んっ!?」
俺は、折本の事を好きだと言うのを、行動で示す事にした。
「んっ…ん………っ…」
「んんっ…ん……ぷはっ…比企谷…っ」
少し長い、“キス”。
──それは、俺が本当に好きな人にしかしないもの。
そして、それは折本も知っている。
「…これで、分かったか?」
「……うん。…ごめん…ね?」
そう。ここまでは良かったんだ。ここ、まではな。
だけど──
「…………お、…お兄…ちゃん?」
「………え?」
「………は?」
──小町に、見られていた。
次回からこのSSの投稿時間を三時間遅らせて、18:00だったところを21:00(夜九時)にずらします。
理由は、今回の投稿が遅れた事とも関わりがありますが、今まで通っていたところと、現在のところの家との距離の差が凄くて、通うのにだいたい片道で五十分の差で、往復二時間近い差があり、家に帰ってくるのが六時超えるのもざらなので、遅らせます。
尚、今回遅れたのも同じ理由です。すみません。
それともう一つ。
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津久井晴太
(@Tsukui_Haruta)