「折本──」さて、この後に続く言葉は── 作:時間の無駄使い
取り敢えず言い訳を先にさせて頂くと、二十五日から新しい仕事を初めまして、気疲れがあったのと、荒野行動やり過ぎて全く時間が取れてない&書く気になれないという状況でした。
それでも、今日が今年最後と言う事で、真・デッドラインと題して(聞いたこと?…無いです)何とか書き上げました。
ちょっと状況がごちゃごちゃし過ぎているので、状況の整理をした感じ(私しか分からない)になります。
* * *
「………どう…って」
エスカレーターの乗り場から少しずれた防火扉の正面で向かい合うようにして立つ由比ヶ浜と俺たち。
「…そのままの意味だよ……。……今のヒッキーにとって…さ──」
「───『奉仕部』は必要なの…かな」
──っ!?
「今のヒッキーに、奉仕部は必要あるかな?…ヒッキーが、言葉には出さなかったけど、ずっと欲しがってた『居場所』は手に入ったし、『理解者』も出来たんだよね?……だったら、ヒッキーにとってさ、奉仕部はどんな場所なのかな…」
「…それは……」
俺に取って、奉仕部が必要かどうか?
…そう言われてみて、今頃になって今更な事実に気が付いた。──何故、俺はここまで、奉仕部に固執するのかという、単純な疑問を。
対人関係に関して、俺ほどにドライな奴は居ない(但し彼女はいる)と、勝手に高をくくっていたが、言われてみれば確かに、何故奉仕部の二人に固執するのか、考えたことすらなかった。
──助けてくれて、慰めてくれたから?
──俺を理解しようとしてくれたから?
そんなハズはない。助けてくれた人に対しては常に勘違いを起こさないようにして行動してきた俺だ。今回に限って例外など、都合が良過ぎる。更に言えば、理解しようとしてくれたという意味ならば、小町と折本が居る以上、俺の性格では考えられない。
でも確かに、というか現に、俺は由比ヶ浜と雪ノ下──この二人に固執している。…付け加えて言うならば、今では折本と津久井もだ。
この四人にのみ、固執している。…まぁ、折本に関しては、俺が好きだった、という理由もあるのだろうが、それを入れたとしても──というかそれがあるからこそ、尚更理解出来ない。
この四人にのみ通じる共通点があるとしたら…。もし、その共通点が分かるのであれば──
──恐らく、
──その気持ちを打ち明ければ、
──きっと、正しい道が、見えるのかも知れない。
俺の歩いている、この間違った道に、新たな意味を付け加えることで──、
この道が、正しい道になるのかも──知れない。
* * *
──雪ノ下陽乃サイド──
結局、雪乃ちゃんが学校を休んでから、私は情報収集に努めるようになった。
因みに、あの日鉢合わせたのは、たまたまではなく、雪乃ちゃんがそう望んだから、わざとあのタイミングにした。…結果は今の通りではあるけれど。
そしてどうやら、比企谷君は、情報収集に失敗したようだった。
由比ヶ浜ちゃんを怒らせてしまったらしく、そこで収集を終えてしまったらしい。
私としては出来るだけ早く復帰して欲しいから、バレないように手は回すけれど。
──でも確かに、戦局が難しいのは、確かだった。
雪乃ちゃんは、この間の登校から事実上の軟禁生活。
由比ヶ浜ちゃんは、恐らく比企谷君に戻って来て欲しいと思っては居るものの、雪乃ちゃんを傷付けた事への無自覚さから、雪乃ちゃんを守るほうを優先している。
比企谷君においては、そもそも原因しか──下手をすれば、その原因すら分かっていないだろう。
この盤面で、寧ろ比企谷君に自覚を持って行動しろ、と言う方が無理だ。『病人』という殻を予期せずして被っていた彼は、その社会的認識からなる強固過ぎる殻と、周りの人間が常識人過ぎた事で、誰もその殻を破るような事をしなかった。しなかったからこそ、彼自身には情報が入らなかった。──だから、今こんな面倒臭い状況になっている。
私が少し動いて、由比ヶ浜ちゃんを説得して、その間に静ちゃんに比企谷君を任せるのが一番確実ではあるけれど、こういう場合の静ちゃんは動かし辛いから、そこだけ心配ではある。
何をするにも、何処かしらに不都合がある。
ただ、すべての大元である最初の原因は雪乃ちゃんにあるし、今の状況だって、言ってしまえば雪乃ちゃんが勝手に気に病んで勝手にそうなっただけだから、つまりは雪乃ちゃんが元通りに成りさえすれば、半分以上は解決したと言ってもいい。それ以降は寧ろ奉仕部としての問題だから、私が手を貸すのはそこまでだという意味では雪乃ちゃんが復帰した時点で仕事はお終いなんだけど。
だから、まず目標としては、雪乃ちゃんをどうにかして元に戻す事。それと、由比ヶ浜ちゃんへのアプローチを取って、雪乃ちゃんと比企谷君を元通りにする繋になってもらう事。
問題材料としては、折本ちゃんと津久井ちゃん。そして、比企谷君自身。特に、比企谷君の動き方によっては、下手をすればすべてが水泡に帰す。だから、出来れば統制を取っておきたいけど、それはちょっと無理そうだし…。まぁ、こちらで逐一合わせるとしよう。向こう側についてる医者も中々に切れ者っぽいし、比企谷君はそっちに任せてもいいかな。
…まぁ、まとめたところで結局詰まり気味なのは否めないけど。
雪乃ちゃんを説得しようにもあのレベルでは本人にどうにかしてもらうしかないから、もう既に私が出来る事は少しずつ氷山を溶かしていく様な事のみ。後は時間による解決も出来なくは無いだろうけど、既にその時間とやらも一年無い。──彼女達が総武校生で居られる時間は、もう半年と少し分位しか無いのだ。
この問題が卒業までに解決しなければ、ほぼ確実に比企谷君は
だから、この問題は在学中に何とかして片付けさせないと、そのまま終わってしまう。それはつまり問題の『消滅』──『解消』を意味する。比企谷君が居なくなった後で、比企谷君を考える事を諦めれば、雪乃ちゃんも元になるだろうし、比企谷君にとっては、それ自体に特に何の影響もない。影響があるとするならば、あの彼に、仲間意識がある場合のみだ。
「……本当に、何でこんな面倒臭い事を…」
思わず溜め息と、そんな捨て台詞を吐いて、私は雪乃ちゃんのところへ向かった。彼女を…いや──奉仕部を元に戻す為の、新しい一歩を、踏み出す為に。
* * *
とある扉の前で止まってから、ノックをして、中から聞こえて来た声を合図に目的の部屋へと入る。
「…おはよ、雪乃ちゃん」
「姉さん……。…何の用?」
「またそれ?『いつも通り』だね、雪乃ちゃんは」
「うっ…」
「またそうやってえずくんだ。『大丈夫じゃなかった』比企谷君と、『大丈夫だった』雪乃ちゃんを比べて。──ホントに気難しい性格してるよね、雪乃ちゃんは」
「……用が無いなら──」
「──無いわけがないでしょう!?いい加減にしなさい!…………私だってね、…いい加減に我慢の限界なのよ……」
私の突然の激に、当惑した顔を見せる雪乃ちゃん。
でも、私も本当にそろそろ限界だった。
毎日毎日気の弱った別人の様な妹の姿を見て、何とかして救おうとは思うけど、とても何とかなる状況では無いし、いっその事すべてを投げ出したいと、何度も思った。
比企谷君も頑張っては居るけれど、原因すら知らないのが私の探りで確定したし、そもそも事態に気付くのが遅いというところが、私の擦り減った精神を苛立たせた。
更には『あの人』の過保護のせいで雪乃ちゃん自身の行動が制限されていて、計画が思うように進まなかったり、津久井ちゃんの存在や比企谷君についてる元主治医の存在、その他あらゆる人間関係や事情、それらが複雑に絡み合って、『ゆるく絡まっているのに糸が多過ぎて
──だから、
「雪乃ちゃんはいつまでその被害者面を続けてるの!?比企谷君はもう完治して退院してるし、貴女は今は『大丈夫じゃない』。どっちに揃えたって貴女と比企谷君はもう対等でしょう!?」
──こういう、意味のない余計な事を、言ってしまうのだった。
去年の最終日が土曜日。今年は日曜日。つまり何が言いたいかと言えば、今年は休日に始まり、休日に終わる年でした。
去年のこの日にも投稿しましたが、どうやら私には年末年始に忙しくなる&書く気が失せる呪いが掛かっているようで、去年(というか今年一月)は二週ほどお休みを頂きました。──が、来年は不明ということで。日によって書いたり書かなかったりなので。
取り敢えず、年明け後は木曜日と月曜日に投稿日を変えまして、木曜日がメインになります。時間は変わらず定時九時です。
今後ともによろしくお願いします。
p.s.
いつの間にかお気に入り999人と、沢山のお気に入りをして頂きました。このSSを読んで折本が好きになったと言ってくれた方までいて、本当に感謝の至りです。ありがとうございます。