鳳華女学院高校に在籍する、傍若無人な女子高生――田中花子の前にある依頼が飛び込んでくる。
それは乾電池が盗まれたというもので、彼女はさっそく事件の解決に乗り出す。
が、それは結局彼女の相棒である結未が犯人だった。

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ペラよん――つまりペラ4枚で書き上げた作品。
ただそれだけ。

とある課題で出たものをそのまま眠らせておくのも何なので投げます。


ペラよん探偵

 鳳華(ほうか)女学院高校の放課後は、今日も至って平和だった。

 部活動に勤しむ彼女たちを見て、わたしことシャーロッテは優雅にカップへ口をつける。

 

「ふぅ、美味い。やっぱり紅茶はアールグレイに限る。なあ、ワトソンくん」

 

 わたしの言葉に反応して、電気ケトルの電源を抜いた長身の少女が振り向く。

 

「誰がワトソンなんだか。何度も言うように、僕の名前は結未(ゆみ)だって言ってるだろう? それにその紅茶はアールなんとかじゃなくて、一パック十円くらいで買えるリプトンのティーバッグだよ、花子ちゃん」

 

「花子って言うな! わたしはシャーロッテ! 田中花子なんていう面白みのない名前の奴なんかいない」

 

 わたしの必死の抗議も、ワトソン――仁科結未は長身を揺らして、くつくつと笑っただけだった。フェロモンでも出ているのではないかと勘違いするほどその笑みは様になっており、学内では付き合いたい女子ランキングで常に王者を維持している。告白された回数はもはや三桁に上るが、その内面はぐちゃぐちゃのどろどろ。暇があれば、わたしをからかって遊ぶ底意地の悪い相棒なのだから。

 

「ではシャーロッテ。今日も依頼が来ているようですが、どうします?」

 

 と爽やかな笑顔。花子はその笑顔すら、自分を小馬鹿にしているように見える。

 

「準備してるからその間に言って」

 

「相変わらず自由だなぁ」

 

 と何やら呆れた声が聞こえるが、わたしはは父からチョロまかした鹿追帽と二重回しを装備するのに忙しい。帽子の位置を鏡でチェックしながら、先を促した。

 

「科学部からの依頼です。電気飛行機を飛ばすために買い溜めていた乾電池エヴォルタが何物かに盗まれたと。何でも液漏れしているものは置いていったみたいですね。いやぁ、優しい犯人だなぁ」

 

 はははと笑う結未に「物を盗んでいる時点で優しくなんてないわよ。それで?」

 

「幸い電池は学校側で何とかなったそうなんですが、盗まれたままだと気持ち悪いから、ちゃんと捕まえて欲しいってことだそうです」

 

「ふうん。捕まえてどうするのかしら」

 

「リンチでもするんじゃないかな?」

 

「それで、やめて僕のために争わないで! とでも言うつもり?」

 

「まさか。僕ならみんなと仲良くなるさ。ハーレムは浪漫だよね」

 

「死ね」

 

 頭の中が淫乱百合女(ビッチ)はこれだから困る。

 

「さて、じゃあ行くわよー」

 

 準備は整ったわ。目指すは科学部室よ!

 

 

 **

 

 

 科学部の部室は、何というか非常に美しくなかった。作りかけの物体が至るところに散らかっていて、工具だけが中央の作業第に整理されて置かれている。それ以外はてんでばらばら。おまけに窓を開けているのに、鉄臭さが鼻をついた。

 

「解決に来たわよー」

 

「あ、花子ちゃ」「シャーロッテよ」

 

 忌まわしき名前を呼ばれる前に封鎖する。「ごめんごめん」と苦笑していた同級生は、続いて入ってきた結未を見て、親しげな笑みを浮かべて近寄っていった。これだからモテる奴は……。

 

「盗まれた電池はどこに保管してあったの? って、邪魔ねこれ。通れないじゃない」

 

「ああ、やめて勝手に動かさないでああ、部品が混ざったああぁぁ」

 

 涙目になりながら、部員のひとりが機械を整頓し始める。

 

「賑やかねぇ。もうちょっと落ち着けないのかしら」

 

 部屋の奥にはオレンジの繋ぎを着た少女がひとり。おそらく彼女が部長だろう。

 

「噂に違わぬ傍若無人っぷりだな……。ああ、もうそこで立ち止まってくれ、頼む」

 

「嫌よ、現場を見たいんだもの」

 

「お前のせいで現場が汚れているんだよ!」

 

「わたしなら例え現場が汚れても問題ないわ。天才なんだから――あ、裾が引っかかったじゃない、このっ」

 

 引っかかった二重回しを引っ張ると、机の上にあった何やら鈍重な器具が凄まじい音を立てて落下した。周囲から聞こえる嗚咽は、はて何に涙しているのかしら?

 

「いや、ごめんね部長。うちの花子ちゃんが」

 

「傍若無人さは聞いていたけどな……まぁ、久しぶりだな、結未。元気か?」

 

「お蔭様で。丈夫な体に生んでくれたからかな」

 

「そんなのはいいから。現場はどこ?」

 

 放っておけばいつまでも会話していそうなふたりに割り込む。すると、「すまんすまん。この金庫に入れてたんだよ」と言って部長が奥へと導いてくれた。

 

「ふぅん」

 

 言われた金庫を覗き込む。A5の用紙がぎりぎり入りそうなくらいの大きさで、鍵で開く仕組みのようだ。

 

「何で鍵なの?」

 

「ダイヤル式だと、管理し辛いからね。卒業生が来ても中を簡単に開けられるのは、さすがにまずいだろう?」

 

 それもそうだ。鍵なら先生に渡せば一括管理してもらえるし、安心というわけか。

 

「時間は何時くらいだったの?」

 

「私らが帰ってから翌日の朝八時まで。八時になって私が来たときに確認したら、もう無かった」

 

「ちなみに、何で朝から電池なんて確認したわけ?」

 

「液漏れしてたから。こまめにチェックして、新品に被害がいかないようにしてるんだよ」

 

 機械部品を扱う場所でもあるし、チェックは確かに必要か……。

 

「シャーロッテ、部長さんを疑ってるのかい? 彼女はそんなことする人じゃないよ? 君と違ってお金もあるんだし」

 

「最後の一言が余計よ」

 

 うーん、と唸る。

 割ともう答えが絞られちゃってるんだけど、言っていいのかしら?

 胡乱な目で結未を見ると、古巣に帰ってきたかのように、にこやかに談笑している。結未を見ても誰もときめかないのは、常に女子に言い寄られている彼女にとって安心できる空間なのだろう。

 

「部長。盗まれた電池って何本?」

 

「ん、十本だな」

 

 予想していた本数が合ってしまった。

 

「ちなみになんだけど」

 

 視線を一点へと持っていき、

 

「あいつに必要な本数は何本?」

 

「十本だなぁ。あ、」

 

 部長もわたしと同じ結論に至ったらしい。

 

「最後の充電時間から換算するとそろそろ?」

 

「来てるなぁ」

 

 部長と同時に息を吐く。

 あいつかあああぁぁぁぁぁ……!

 しれっとした顔でよくも、よくも!

 地団駄を踏みたくなる衝動を必死に抑えていると、

 

「ああ、どうです、犯人は見つかりました?」

 

 にょきっと生えてきた顔に、海よりも深い慈愛でできているわたしの自制心が、ぷっりと切れる。

 いけしゃあしゃあとよくもおおぉぉぉぉっ!

 

「犯人はお前だったんじゃないか、結未ぃぃっ」

 

「あ、バレちゃいました?」

 

 鋼鉄のように硬い首は、いくら絞めても腕が食い込む気配が全く無い。挙句の果てに「無駄だからやめた方がいいよ、花子ちゃん。僕の頭で胸がもっと抉れるかもね」なんて言ってくる。余計なお世話なんだよおおおお!

 

「結未、欲しいんだったらいつでもあげたのに。何で言わなかったんだ?」

 

 部長の言葉に、結未は動機を打ち明ける。

 

「実は昨日、シャーロッテにリプトンの紅茶を入れるときに、湯を沸騰させてたら無駄な電力を使うことになりまして。予定より早く止まりそうになっちゃったんで、拝借したんですよ。そうしたら、何だか大事になったし、僕の保護者であるシャーロッテに電池の弁償なんてできないだろうし」

 

「それくらいできるわよ、ナメんな!」

 

「千二百円だよ?」

 

「だ、だいじょう、ぶよ? わたしだって一ヶ月の食費くらい削れるんだから!」

 

 胡乱な瞳がわたしを突き刺す。納得がいかない! 断固として抗議しないといけない。どこにするのがいいのかしら? 差し当たっては学院の事務局? あ、でも奨学金を止められると、社会的に死ぬ……。

 

「じゃあ何で依頼を受けたのよ? あんたが受けるんだから、門前払いだってできるでしょ?」

 

「シャーロッテなら明後日の推理をしてくれるかなって思ったんだ。いやー、まさか僕だって推理されちゃうなんてねぇ、はは、予想外だよ」

 

 全く懲りた様子もなく笑う結未から腕を放し、わたしは部長に耳打ちする。

 

「ごめんなさい。もう紅茶は飲まないことにするわ」

 

「血涙流しながらそんなこと言われたら、そうしてくれって言えないぞ」

 

 部長は仕方ないと笑いながら、

 

「結未はうちの傑作だ。それをあんたに預けたんだから、使ってくれていい。それに、維持費はそっちの部活持ちだしな」

 

「ぐぅ……そのせいでうちの部活はリプトンなのよ」

 

 お湯は水道から汲めばタダだしね。

 

「まぁ、これにて事件は解決だな。代金は結未が持って行った電池でいいよな?」

 

 ニヤリと笑う部長。

 わたしはしばらく固まった後、

 

「あんた初めから犯人がわかってたんじゃないでしょうね?」

 

「さて、どうだか」

 

 からからと笑う部長に別れを告げて、部室を後にした。

 背後からは、慌てて追ってくる結未の声と気配を感じる。

 

「待って、シャーロッテ。僕も部室に戻るよ」

 

「あんたにとってみれば、あそこの方が居心地いいんじゃないの?」

 

 結未はいつもの爽やかな笑顔を浮かべて頭を振った。

 

「とんでもない。僕が安心できるのはシャーロッテの傍だけさ。だって」

 

 そして彼女はおもむろに制服を捲くり上げ、お腹をかぱっと開いて言った。

 

「僕がここまで見せられるのは、君だけだからね」

 

 彼女が開いたお腹の中には、エヴォルタが十本、並んでいる。

「あ、そ」

 

 わたしはそれだけ言って歩みを進めていく。

 その後ろに、にこやかに笑う機械の相棒を連れながら。

                                       《終わり》

 




30分くらいで書いた、軽く読めるもんです。

少しでも時間つぶしに使ってもらえたのなら幸いです。

続きは無いです。書くの面倒くさいんで。

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