喧騒の中、ハリーは自分の『予言』を抜き取り、ローブの中に入れた。代わりに『粉砕呪文』の衝撃で棚から落ちた、ひびの入った水晶玉を置いておく。少しでもクラウチの目を誤魔化せればいいが……
「こっちよ!」
ハリーの腕を誰かが掴み、引っ張った。声からしてチョウだろうか。
「いたぞ、ポッターだ!」
『インスタント煙幕』を抜けると、ハリーを見つけた死喰い人が呪文を撃ってきた。
チョウはそれに気がついていないようだ。
「危ない!」
咄嗟にチョウを押し退けて、『失神呪文』を撃ち込む。
ハリーの呪文と、死喰い人の呪文が激突した!
物凄い力で押されているような感覚が、杖から伝わってくる。ハリーはそれをなんとか押し返し、杖を思いっきり前に突いた。
紅い閃光が緑の閃光を突き破り、死喰い人を引き飛ばす。死喰い人は壁に激突し、動かなくなった。
「上手い!」
叫びながら、チョウが杖を振るった。
二人が走っていた先の扉が、吹き飛ぶように開く。二人はほとんどスライディングになる形で、部屋の中に飛び込んだ。
ハリーは辺りを警戒し、その間にチョウが扉に接着呪文をかける。
「みんなを置いてきちゃった!」
「いいえ、違うわ。私達話し合って、チームを分けることにしたの。セドリックとハーマイオニーちゃんのチームに。他のみんなが、注意を引いてくれてる。君はその間に、私と一緒に逃げるの。いい?」
「そんなこと許さ――」
「ハリー危ない!」
今度はチョウが、ハリーの事を吹っ飛ばした。
次の瞬間、さっきまで立っていたところを三本もの閃光が走り抜けた。
さっきチョウが閉めた扉とは別の扉から、死喰い人達が押し寄せている。
迂闊だった!
普通に考えれば、扉があれだけじゃないことくらい、簡単に分かったのに!
「アクシオ! 机!」
死喰い人達が次の呪文を撃つよりも、チョウの方が一瞬早かった。死喰い人達の後ろにあった机が、一斉にこっちに向かって飛んでくる。
二人は咄嗟に屈んで避けたが、一人は後頭部にモロに机が当たり、動かなくなった。
一人やった!
残りは二人!
これで一対一だ!
しかし残りの二人は直ぐに体制を立て直し、呪文を撃って来た。
おそらくハリーよりも、少し早い。
咄嗟にチョウが沢山の机を死喰い人とハリーとの間に滑り込ませ、盾の様にして攻撃を防いだ。
「乗って!」
机の一つが、ハリーの所に飛んでくる。
ハリーが言われた通り飛び乗ると、直ぐにチョウも同じ机に飛び乗ってきた。
次の瞬間、机が猛スピードで発進した。死喰い人が何やら呪文を撃ってきていたが、他の机が盾になり、それを阻んでいる。
「コンフリンゴ!」
二人の死喰い人のちょうど真ん中で、呪文は炸裂した。
再起不能とはいかないだろうが、しばらくは動けないだろう。
空飛ぶ机はハリーとチョウを乗せたまま、神秘部の中を駆けた。
「ああっと。こりゃあ不味いわね……」
途中まで順調に進んでいたのだが、三つほど部屋を超えたところで、クラウチとセドリックが戦っている所に遭遇してしまった。
『悪霊の火』で作り出した大熊と大蛇を、激しくぶつけ合っている。
木製の机でこの中を突っ切るのは、少々良くないだろう。
「ハリー! こっちよ!」
「ジニー!? どうしてここに?」
「説明は後! チョウ、ハリーをこっちにパスして!」
一瞬迷ってからチョウは机から降り、ハリーだけを残した。
背を向けながら、チョウが最後の言葉を語りかける。
「いい、聞いてハリー。貴方は私達の中で唯一、『例のあの人』を倒せる可能性も持つ人間なの。だから生き残るべきだわ。
そのことを話したら、みんなで一瞬の迷いもなく頷いてくれた。みんな貴方が好きなのよ。
私はここまでだけど……絶対に生き残りなさい!」
そんな価値が自分にあるとは、ハリーには到底思えなかった。
むしろこんな自分に付き合ってくれるみんなの方が、よっぽど生き残るべきだ。
ハリーはそう反論しようとした。
だがそれより速くチョウが杖を振り、ハリーを机ごと吹き飛ばしてしまった。
名前を呼ぶ暇もなく、扉の外へと弾き出されてしまう。
チョウはここに残り、セドリックの応援に行くようだ。防火の呪文を机にかけて、死喰い人へと向かって行った。
ハリーの目線の先……
チョウもセドリックは頑張っていたが、優勢とは言えなかった。机が次々と溶けてなくなり、大熊の炎も最初ほど燃え盛っていない。
反対に死喰い人が出す炎の勢いは、増すばかりだ。
このままじゃ危ない!
助太刀に行こうとしたハリーの腕を、しかしジニーが掴み、反対方向へと走らせた。
「ジニー! 二人を助けなくちゃ――」
言い切る前に、ジニーはハリーの頬を引っ叩いた。
分かっている。
ああ、分かっているとも。
あの二人はハリーよりもずっと優秀で、むしろハリーがいては、足手まといになるかもしれない。
それでもハリーは、二人のところに行きたかった。
だがジニーが、それを許さなかった。
ハリーの腕を引き、新しい扉へと走った。
「ごめん、ジニー」
「いいってことよ、とは言わないわ。貸しにしとくわね」
「うん。でも、どうしてジニーがここに?」
「私だけじゃない。ショーンもルーナもいるわ! ルーナはネビルと双子の兄貴と一緒に、ショーンはハーマイオニーとロンと一緒に戦ってる」
「それは分かったけど、でもどうして!?」
「長い話になるんだけど――」
「ステューピファイ!」
「コンフリンゴ!」
角を曲がったところで、死喰い人と出くわした。
向こうは面食らったようで完全に出遅れていたが、ハリーとジニーは即座に魔法を唱えた。ハリーの呪文で失神した死喰い人が、ジニーの呪文で吹っ飛んで行く。間違いなく骨の二、三本は折れているだろう。
ホッとしたのも束の間、直ぐに後ろから足音が聞こえてくる。
ハリーとジニーは真横にあった部屋に入り、息を潜めた。二人とも肩で息をしていたため、呼吸音がうるさかったが、偶然にもここは
二人は床に耳を当て、音を聞いた。
足音は通り過ぎていったが、直ぐに出ない方がいいだろう。
辺りを警戒しながら、ジニーが息を潜めて言った。
「あのね、ハリー。落ち着いて聞いて」
「なに?」
「闇祓いや先生達は助けに来れないわ。だから私達が代わりに来たの」
「なんだって?」
ハリーは耳を疑った。
誰も助けに来ない?
そんな馬鹿な。
それじゃあ、みんなはどうなる?
何故助けに来れないのか――ハリーが聞くと、ジニーが渋い顔で答えた。
「ホグワーツが襲撃されたの」
「えっ、それってどういう――」
「誰もいなくなったホグワーツを、死喰い人が襲ったの。
だから記者会見は途中で打ち切り、みんなホグワーツの方に行ってしまったわ。今コリンが呼びに行ってるけど、いつになるか……」
絶望的な知らせだった。
確かに今、ホグワーツの守りは手薄かもしれないが、攻撃する理由など何一つない。賢者の石もなければ、ハリーもいないのだから。つまり意味することは一つ――陽動だ。
「とにかく、今は行きましょう。暖炉まで行けば、ホグワーツに戻れるわ。貴方だけでも送り返さないと」
肩を掴み、ハリーを立たせた。
扉の前に立ち、息を潜めて辺りの様子をうかがう。
何の音も聞こえない……
「誰もいなさそうね」
「それじゃあ行こう。1、2、さ――」
「3」をハリーが言い終わる前に、強烈な破壊音が鳴り響いた。
「ああ、嘘でしょ神様のクソッタレ……」
ジニーが嘆くのも無理はない。
なにせ天井が壊れ、上から巨大な『脳みそ』が落ちて来たのだから――!
脳みそと一緒にロン、ハーマイオニー、ショーンも落ちてくる。
ロンは脳みそに絡み取られ身動きできないでいたが、ショーンとハーマイオニーは落下しながらも、死喰い人と戦っていた。
「さあ行って! ハリー!」
ジニーがハリーを蹴っ飛ばして、部屋から出した。
次の瞬間、ついに脳みそが地面に落ちた!
轟音が鳴り響き、落石で扉は崩れ、中の様子はまったく分からなくなってしまった。
「――行かなくちゃ」
ここまで全員が、ハリーのために戦った。
彼らに勇敢さに報いる為には、何をすればいいのか――戻って共に戦う?
違う。
ハリーは逃げなくてはならない。
例えそれがハリーが最も選びたくない選択肢であっても、ハリーは逃げなくてはならないのだ。
それが、彼らの望みだから。
故にハリーは走った。
その途中悲鳴や戦いの音が聞こえても、ハリーは走り続けた。
悔しくて涙が出ても、後悔で何度も振り返りそうになっても、ハリーは走った。
走って、走って、走って――
気がつけば『神秘部』を抜け、暖炉がある大ホールにたどり着いていた。
何処をどう走ったのか、まったく分からない。
「はあ、はあ、はあ……ホグワーツ行きの暖炉はどれだ?」
暖炉がたくさん並んでいて、どれがホグワーツ行きの暖炉だったか思い出せない。
こんなところで足踏みなどしてる場合ではないのに!
「教えてあげようか?」
すると、声が聞こえた。
まるで今から歌でも歌うかのように上機嫌な声が。
――コツン、コツン。
次に、大理石を歩いてくる音が聞こえてくる。
魔法省の中を悠然と歩く“ソイツ”を見た瞬間、ハリーの中の血が爆発した。
身体中が、火でもつけられたみたいに熱い!
ひたいの傷も、狂ったように痛み出した!
体が告げているのだ! 目の前に立つ“ソイツ”こそが己が宿敵だと! みんなが必死にハリーをここへたどり着かせてくれたのは、“ソイツ”を倒すためだったのだと!
ハリーは“ソイツ”の名を口に出した。誰もが畏れる、その名を!
「ヴォルデモート――!」
「やあポッター。ご機嫌麗しゅう」
ヴォルデモートが、人の良さそうな笑みを浮かべて立っていた。
まるで古くからの知人の様に、ハリーを見ている。
「エクスペリアームス!」
ハリーは今までにないくらいの速度で、『武装解除』を撃った。
ヴォルデモートは一切の抵抗もせず、それを受けた。
それどころか呪文の効果で杖が放物線を描いて飛んで行くのを、呑気に眺めている。しかも手を叩いて、ハリーを褒めた。
「お見ごと」
「馬鹿にするな!」
ヴォルデモートに大股で詰め寄り、その場で押し倒す。
ハリーは馬乗りになり、喉元に杖を突きつけた。
しかしそんな状況にあって、ヴォルデモートの余裕はなくならない。
「僕を殺す?」
「ああ、お前が望むならそうしてやる!」
「それもいいだろうね。でもお忘れかな、この体は誰のものかを」
ヴォルデモートの――というより若かりし頃のトム・リドルの――顔が歪み、シリウスの顔へと変化した。
普段は魔法でトム・リドルの顔を貼り付けているが、実際は変わらずシリウスの体なのだ。
ハリーは杖を突きつけたままだったが、先程までの激情がぱったりと消えたのが、ヴォルデモートには手に取るように分かった。
「はははははは! やはり弱いな、君は。こんなのが英雄だなんて、いっそ喜劇だよ!」
「黙れ!」
「黙らせてみなよ! 君の手でさ。まあ無理だろうがね!」
またヴォルデモートは、大きな口を開いて笑い転げた。
ハリーは杖を強く喉に突きつけ、ありったけの声で叫んだ。
――なんだ、何なのだこれは。
ヴォルデモートの手には杖が握られておらず、ハリーの手にはある。体勢的に見ても、有利なのは明らかにハリーだ。それなのに、ハリーは追い詰められていた。自分の下で狂った様に笑うヴォルデモートが、心底不気味に思えた。
これも、自分が弱いせいなのだろうか?
ヴォルデモートの言うように、自分が弱いから――
「――昔に教えたはずじゃ、トム。『強さ』とは魔法の技量だけに使う言葉ではないと」
ヴォルデモートの笑い声がピタリと止んだ。
「随分早かったじゃないですか、先生。やはりあの程度では、貴方の足止めにはなりませんでしたか」
ドクン、とハリーの胸が高鳴った。
手の節々にまで熱が満ち、先程までの弱い気持ちが消え、あり得ないほどの高揚感が駆け巡る。
ほがらかに微笑む“彼”を見た瞬間、ハリーはここが世界一安全な場所にすら思えた。
――暖炉のすぐそばに、アルバス・ダンブルドアその人が立っていた。
ダンブルドアは少しも恐れることなく、大股でヴォルデモートへと向かって行った。
その足取りは、彼が老人であることを少しも感じさせない。
むしろ今世紀最高の魔法使いという称号にふさわしく、パワーに満ち溢れている。
「両親の仇であるお主を憎む気持ちよりも、後見人であるシリウスを大切に思う気持ちが優った。ハリーが強い証拠じゃ」
「そう僕を笑わせてくれるな、ダンブルドア。腹がよじれそうだよ」
口ではそう言いつつ、ヴォルデモートは少しも笑っていなかった。
むしろ少しの油断もなく、ダンブルドアを見つめている。
「それじゃあ――ダンブルドアが言うには――強いハリー・ポッター。これを防いでみろ!」
ヴォルデモートはハリーの袖を掴んだ。
咄嗟のことで、ハリーの体は一瞬硬直した。
その隙を見落とすヴォルデモートではない。箒を使わない飛行術で一気に天井まで飛び上がり、急降下してハリーを叩き落とす!
「アレストモメンタム!」
地面に当たる直前、ダンブルドアが呪文を唱えると、ハリーの動きがピタリと止まった。
否、止まっただけではない! ハリーの体は滑空し、ダンブルドアの隣に着地した。
強烈な安心がハリーの体を包む。ダンブルドアの持つ力強く暖かい雰囲気が、ヴォルデモートの冷たい狂気から守っているのだ。
ヴォルデモートは冷えた目でハリーを
「そらみろ。貴様に守ってもらわねば、小僧は今の一撃で死んでいた。やはり弱いではないか」
「先程も言ったであろう。『強さ』とは魔法の技量にあらず。心の『強さ』にこそ相応しい言葉じゃ。ハリーは弱くない。むしろわしやお主なんかよりも、ずっと強い心を持っておる。取り消すのじゃ、トム。この子を弱いと嗤うことは、このわしが許さん」
「ハッ! 滑稽だなダンブルドア。例え心がどれほど強かろうと、力がなければ何も出来はしない!」
ヴォルデモートが緑色の閃光を放った。
その光の大きさと速さは、これまでハリーが見たどの呪文よりも強大だった。
ダンブルドアが杖を振るうと、空中から黄金の戦士像が出現し、盾でそれを防いだ。戦士像はそこで止まらず、ヴォルデモートへと走っていき、剣で斬りつける。
やった! とハリーは思った。
しかしヴォルデモートはヒラリと身をかわし、半透明なベールで戦士像を包んだ。戦士像の動きは急にスローになり、遂には止まってしまう。
止まった戦士像をヴォルデモートが杖で小突くと、あれほど頑丈そうだった戦士像は、飴細工のようにいとも簡単に砕けてしまった。
「悲しいことだダンブルドア。かつて貴様は、確実に僕――俺様よりも優れていた。
しかし貴様は老い、俺様は若い姿で舞い戻った。全盛期を知っている俺様からすれば、力を失った貴様はいっそ哀れにすら映る」
ヴォルデモートは飛翔し、魔法省の中心へと降り立った。
両手を上げると、窓ガラスや水、果ては床までもが、呼応するように浮かび上がる。
ヴォルデモートが唱えているのは、ハリーでも使える初級呪文――浮遊魔法だ。しかし彼ほどの技量があれば、それは必殺の魔法となる。
「死ね、老いぼれ」
あらゆる物体が、高速でダンブルドアとハリーに襲いかかった!
しかしダンブルドアは、簡単な杖の所作で、それを防いでしまう。
全ての物体が空中で無に帰した。
「逆じゃよトム。わしが得難き物を手にし、お主が失ったのじゃ。
もしも逆の立場であれば、お主はわしに立ち向かえるか? 傷ついた生徒を守りながら、格上の敵に立ち向かえるか?」
今度はダンブルドアの番だった。
新たに七体の黄金像が、ヴォルデモートを取り囲むように躍り出た。
だが、ヴォルデモートも負けてはいない。
飛翔魔法と『姿くらまし』、それからアバダ・ケダブラを乱発し、直ぐに像を瓦礫に変えてしまった。
守る像のいなくなったダンブルドアを、ヴォルデモートが嗤いながら見据える。
ダンブルドアはその圧に負けず、いや一層の迫力を持って押し返した。
「わしは立ち向かえる! むしろ喜んでこの役を引き受けようとも! これは心から言えることじゃ。何故じゃと思う?」
「しれたこと。貴様が偽善者だからだろう。足手まといを切り捨てられぬからよ!」
「否! 断じて否じゃ!」
ダンブルドアの背後から、不死鳥の形をした黄金の炎が燃え上がった!
呼応するように、ヴォルデモートの背後からも巨大な蛇の形をした暗黒の炎が燃え盛る!
お互いが激突し、周囲を溶かし尽くす――!
あまりの熱風でハリーは目を覆ったが、ダンブルドアとヴォルデモートはしっかりとお互いを見つめ合っていた。
「トム、わしはのう。夢のような時間を過ごした。ここ数年、本当に楽しい時を過ごさせてもらった。他ならぬ生徒達にじゃ。来年は何があるのかと考えただけで、ワクワクして寝れもせん。若かりし頃の理想――夢よりも、今の方がずっと楽しい証左じゃろう。
そんな楽しいひと時を過ごさせてくれる生徒達のためなら、弱いわしはこんなにも勇敢になれる!
歳ゆくことは人なら当たり前のこと、むしろ進歩じゃ! それを逸脱し不老となったお主は、停滞したに他ならん!」
ダンブルドアの不死鳥がヴォルデモートの蛇を食い破り、ヴォルデモートへと飛翔した!
今度こそ決まった! とハリーは思った。
しかし寸前――ヴォルデモートは恐ろしいまでの速度で『姿くらまし』を練り上げ、ハリーの真隣へと『姿表し』したのだ!
ヴォルデモートの杖が、ハリーへと向き、光った。
その所作は流麗で、ハリーの身体能力を持ってしても、捉えることが出来ないはずだった。
しかし、たしかにハリーは見た、聞いた。ヴォルデモートの口が開き――せせら笑うように言ったのを。
「ならば守ってみせろ」
強い衝撃が響き――ハリーは何か、生暖かい物を全身にかぶった。
血だ。
おびただしいほどの血を、ハリーは浴びたのだ。
だが、ハリーは少しも傷ついていなかった。
ではこの血は、一体誰の……?
「グ、ウゥ……!」
「ダンブルドア先生!」
ハリーを庇うように覆い被さっていたダンブルドア。
その右腕――杖腕が、肘から切り落とされていた。
ダンブルドア「腕がとれた……っ!」
ハリー「腕の一本くらいなによ、人間には二本も腕があるのよ!」
ショーン「出番は?(´・∀・`)」