ショーン・ハーツと偉大なる創設者達   作: junk

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第8話 銀行強盗をしよう

 入店した客の容姿を見てアーノルド――グリンゴッツ銀行で働く小鬼――はにわかに緊張した。

 黒ずくめの者たちだった……ローブも、手袋も、ベルトも、ズボンも、靴も、おそらくは下着すらも…………顔に嵌めた銀色のマスク以外は全て徹底的に黒で統一されている。

 彼らは俗に『死喰い人』と呼ばれている、『例のあの人』の信奉者たちである。

 

 小鬼達が実際に被害に遭ったことはまだないが、彼らは暴力的な組織だ。

 しかし反面、彼らを構成するのは純血主義の者達が多く……純血主義の者には資産家が多い。つまりお得意様でもあるということだ。

 更に複雑なことに、純血主義はお得意様であるだけでなく、魔法族以外を見下している為に、プライドの高い小鬼族とは軋轢(あつれき)のある間柄でもある。

 

 そんな彼らがわざわざ“正装”でやってきたのだ。

 熟練の職員であるアーノルドが緊張したのも無理からぬことであった。

 

「本日はなんのご予定で?」

 

 5人の死喰い人達――その中でもリーダー格と思わしき、先頭の男に声をかける。

 後ろの四人はいずれも大きな、やはり黒色の、ボストンバックを持っていた。当初はガリオン金貨でも入れて持ち帰る用かとでも思ったが、見たところ何かがいっぱいに入ってる様なのでそういうわけでもないらしい。

 他の職員達が一応、武器の類が入ってないか検査しようと近づいているのを尻目に、アーノルドは取引の内容を推し進めようとする。

 しかし目の前の男は何も言わずに、ただアーノルドを見下していた。

 

「……こほん。本日はなんのご予定で?

 聞きにくいならそのフードをとった方がよろしいのではないですかな」

「――下等生物風情が」

「今、なんと……?」

 

 ピタリ、と止まる。

 アーノルドだけではない。

 グリンゴッツ銀行で働く小鬼達の歩く足音、タイプライターを叩く音、何事か談笑する声――全ての音が止まった。更に言うなら動きも。

 

 アーノルドは怒りの目を向けながらも、それでもなお平静を務めながら声をかける。

 それはプライドの高い小鬼族にしては珍しく、そして職務に真面目なアーノルドを知る他の職員からすれば当然の行動だった。

 

「失礼、サー。ここでは差別的な言葉をやめていただきたい」

「差別的? お前達ごとき下等生物が我らの様な高貴な者と肩を並べて言葉を話すことの方がよっぽど差別的で侮辱的な行動だ。ええ、お前達? そうは思わぬかね」

 

 男はそう言って、他の死喰い人達を見た。

 言葉こそ発さなかったが、同意しているのが気配で分かった。

 ――一瞬、戸惑っているようにも感じたがきっと気のせいだろう。

 

「貴様らがするべきことを教えてやろう。その醜い指を仕切りに動かしてメモでも取るんだな」

 

 ――いいかっ!!

 声を荒げながら男は机を叩き、ぐっと身を乗り出した。

 

「我々魔法族、特に『例のあの人』に奉仕する者が入店したならば、平伏して出迎えるのが礼儀と知れ!!!

 貴様ら金勘定しか脳のない醜い魔法生物ごときが我々を仰ぎ見ぬなど、到底許される行為ではないのだ! 分かったら我が君と同じ髪型にでもするんだな下等生物ども!!!」

「な、なっ、なんと無礼な……!」

「そして言うにこと書いて何の用だと……?

 我々が貴様ら下等生物とお茶でもしに来たとでも思うのかマヌケが。金だ、金を出せ」

「ぐ、ぐぅ――そ、それは引き出しか融資を受けたいと言うことでございますでしょうか!?」

 

 アーノルド!?

 ――アーノルドさん!!?

 そうだ! あれが、アーノルドさんだ!!

 勤務年数300年。

 無遅刻無欠席。

 120年連続ベスト接客賞受賞、アーノルドさんっ!!

 

「(この後に及んでまだ、マニュアル通りの接客を!

 が、がんばれアーノルドさん!)」

 

 近くで見ていた小鬼は大先輩であるアーノルドを心から応援した。

 後ろにいる死喰い人達からも似た様な気配を感じたがきっと気のせいだろう。こんな、こんな人間とも思えぬ様な非道な輩の仲間なのだ。気のせいに違いなかった。

 だからあの、手を握ってソワソワしてる様な様子も早く暴れたくてしょうがないとかそう言うことが理由なのだ。

 

「本物の間抜けだな貴様は!

 だぁれがお前達と取引などするか! 金を出せと言われたら素直に持ってくれば良いのだ!」

「その言葉忘れめされるな! ならばあなたはお客人ではない!」

「そう、客ではない! 貴様らを支配する存在だ!」

 

 ――警備兵!!

 そう叫ぼうとしたアーノルドだがしかし、気がつけば男に首根っこを掴まれ、持ち上げられていた。

 絶体絶命である。

 よく考えれば衣服を掴まれて持ち上げられているだけで、攻撃はされていないのだが少なくともアーノルドは死を覚悟した。

 それでもなお叫ぶ。

 

「ここはグリンゴッツ銀行!

 我ら小鬼族が守ってきた伝統と誇りの地!

 貴様らの様な非道な輩に渡す金銭など1クヌート足りともないわ!」

 

 よく言ったアーノルド!

 店中の小鬼達がそう思った。

 何故だか後方にいる死喰い人達からも「ほお……」という感心と居心地の悪さの様なものを感じたがきっと気のせいだろう。なにせ、こんな人間とも思えぬ様な非道な輩の仲間なのだ。気のせいに違いなかった。

 ……いやひょっとしたら?

 

「グハハハハッ! よくぞ吠えたわ下等生物! では言葉通りに守ってみせろ、そのチンケな伝統と誇りとやらをなあ!」

 

 やっぱり気のせいだ。

 だって、こんな人間とも思えぬ様な非道な輩の仲間なのだ。気のせいに違いなかった。

 それを指し示すかの様に、後方の死喰い人達が持つ黒いボストンバッグに向けた『危険物探知機』が狂った様に鳴り出す。

 中身はやはり、大量の破壊兵器――!

 

「やれ!」

 

 一瞬躊躇した様に見えたが、結局死喰い人の一人がボストンバッグの中身――爆弾を床にぶち撒けた。

 爆発したそれは意外にも小鬼達を傷つけることこそしなかったが、床を壊し、周りには煙幕を発生させた。

 

「つぎ!」

 

 次に出てきたのは箒だ。

 四人全員が飛び乗り、地下へと下っていく。

 

 

   ◆

 

 

「君、元々死喰い人やってたでしょ? 途中から「あれ? この人本当に死喰い人? 本当に死喰い人と一緒に犯罪に手を染めてる?」って不安になっちゃったんだけど!」

「バカ言え。俺はとっくに死喰い人を出禁にされてる」

「どうやったらそんなことになるのさ!」

 

 箒に乗ってグリンゴッツ銀行の地下へと一緒に下るトンクス――闇祓いの一人でマッドアイの弟子――にそう言われたが、何をしたかを一々説明しているとダンブルドアが寿命を迎えてしまって戦争に負けてしまいそうだったのでやめた。

 ショーンは不死鳥の騎士団の暫定団長としてきちんとやならければならないことをしたのだ。

 

「ホグワーツではあの程度のハッタリくらい常識だ」

「卒業してからそんなに経ってないはずなんだけど……」

 

 呆れるトンクスとショーンにマッドアイが吠える。

 

「馬鹿者ども! 追手の小鬼とドラゴンが来るぞ!」

「チャーリー! 手筈通りに!」

 

 チャーリーはドラゴンキーパーをしているウィーズリー家の次男である。銀行強盗を持ちかけられた時は「うちは貧乏だけどそこまで困ってない」などと言っていたが、ショーンの非常に平和的かつ公平性のある説得を受けた結果、今回の作戦に協力的かつ友効的に加わってくれた。

 グリンゴッツ銀行で飼われている世界最大の竜種ウクライナ・アイアンベリーを相手するのにどうしても彼が必要だったのだ。

 ドラゴン調教用の鈴を持ったチャーリーとマッドアイが、ドラゴン目掛けて飛び立って行った。

 

「追手と伏兵は俺が対処しよう」

 

 ショーンはそう言って懐からハロウィーン――ショーンのペットのヒキガエル――を取り出した。

 

「やれ、ハロウィーン」

 

 ハロウィーンは超高音を出し、グリンゴッツ銀行内をけたたましく反響させた。

 ショーンは耳がいい。

 『闇の帝王』として覚醒してからは更にだ。

 

「(トロッコで追って来てるのが20人。先で待ち伏せてるのが3人×4組か)」

 

 音の反響で追手と、それから待ち伏せている小鬼達の位置を把握したショーンはその近くに向けて『火炎呪文』を放つ。火に照らされた小鬼達に向かってトンクスと、それから闇祓いになったセドリックが次々と呪文を当てて失神させた。

 暗がりの中で一方的に位置を把握している優位性と、それを活かせる度量が彼らにはあった。

 

「まさか闇祓いになって最初の任務が君とで、更に銀行強盗とはね」

「いいじゃないか、給料が出てるんだから。俺なんて無償だぞ。銀行強盗してるのに取り分ゼロだ」

「それはまた、なんとも不思議なことだ」

 

 チャリティーで銀行強盗するなんて、この後にも前にも自分だけだろうとショーンは思った。

 

「ついたぞ」

 

 呆気なく、三人は目的の金庫に辿り着いた。

 金庫の入り口に『レストレンジ家』と彫ってある。ここに死喰い人達の資金が入っているだろうというのがショーンの読みだった。

 

「それで、この後どうするんだい。どうやって開ける?」

「まさか君、レストレンジ家の杖がないと開かないって知らないわけじゃないよね?」

「……えっと、そうなのか?」

 

 ショーンがそう言うとトンクスは仮面を付けてても分かるくらい驚いた顔をした。

 セドリックはこの手のジョークには慣れっこだった。

 

「ジョークだよ。場の空気を和ませようと思って。ほら、セドリックも初任務で緊張してるだろうから」

「いいんだよ緊張感あって! 今一応、私たちは難攻不落のグリンゴッツ銀行に押し入ってるんだから!」

「あー、そういう見方もあるな」

「他にどんな見方があるっていうのさ!」

 

 さて。

 当初、ショーンはグリフィンドールの剣で扉を斬ろうと考えていた。しかしどうにも呼んでも剣が来ないのだ。

 おそらく、『闇の帝王』として覚醒してしまったからだろう。まったく闇の力なんて、響きがかっこいいだけで不便なものだとショーンは思った。

 しかしそれならそれでやりようはある。

 

「2人とも背後を向いて目を瞑っててくれ。絶対に開くなよ」

「えーっと、一応聞くけど、なんで?」

「やり方を見られて後日勝手に真似されたら困るからだ」

「そんなことしないよ!? えげつないほど信用ないなあ……まあいいけど」

 

 どちらかというと悪者は君じゃないかな……と呟きながらもトンクスは背後を向いた。セドリックはとっくにそうしている。

 

「――2%解放」

 

 大体、このくらいだろう。

 ショーンはそう思い、自身の中の力を解放した。

 フラーとの特訓の成果もあって、わずかならば力を引き出せるようになっているのだ。

 身体の中を力が迸(ほとばし)り、暴力的な思考が頭を駆け巡る。並の人間ならば今頃精神を乗っ取られていたかもしれないが、そもそもショーンは既にある程度暴力的というか、一部では「実は闇の生物なんじゃないか?」と言われているくらいなので、その全てが乗っ取られることはない。

 

 目の前の扉に向けてその力を振るう。

 

 というと大袈裟だが、なんてことない。

 ただの右ストレートである。

 しかしショーンの全身は今や強力な呪いであり、それはそのまま攻撃力となる。

 『レストレンジ家』と書かれた金庫の扉は開かれた――だけなら良かったのだが、なんかもう瓦礫になっていた。

 ……金庫ごと。

 

「うっし。もういいぞ」

「なんかすごい音したけど大丈夫――じゃないねえこれ! 扉の開け方とか知らないのかなあ!? 扉を開けるっていうのは吹っ飛ばすって意味だと思ってるのかなあ!?

 っていうか君、すごい汗だけどだ、大丈夫っ!?」

「平気だ。これはなんていうか……お前達の後ろ姿が気持ち悪くてな。ははっ、気にしないでくれ」

「気にするよ!? なんだよ後ろ姿が気持ち悪いって! そんな爽やかに言うことじゃないよ! ってそれもジョークでしょ!? めっちゃ体調悪そうだけど平気なの?」

「……ごめん。少し休んでいい?」

「すなおっ!」

 

 トンクスは『探知不可拡大呪文』がかかった袋を持って金庫へと入ろうとした。

 

「それにしてもどうやったらこんなに木っ端微塵になるのさ。ここただの洞窟じゃなくて、小鬼の銀で作った金庫だよ」

「今時のホグワーツではよくあることだよ」

「セドリックまでそんなことを!? OB訪問してなかったからかなあ。そんなに変わらないはずなのに凄いジェネレーションギャップ」

 

 そんなことを言いながら財宝を回収する二人。

 無事に終わりそうだ……そう、ショーンが思った時である。ショーンの耳に箒の風切り音が聞こえた。

 それも、三人分。

 人数が合わない、チャーリーとマッドアイではない。

 

「やめろ! 死喰い人ども!」

 

 ショーンの目の前に降り立った男は、杖を突き出してそう言った。

 というかハリーだった。

 ハリーとハーマイオニーとロナルドさんだった。

 

「(な、なんでここに!?)」

 

 今や街中でばったり出くわしても驚くというのに、まさかグリンゴッツ銀行内で会うとは流石に思わなかった。

 ――おそらく、『例のあの人』を倒すためのなんらかを探しに来たのだろう。わずかなヒントを頼りにそうショーンは推理した。というか普通に銀行強盗に来てたら引く。

 

「その金庫から退け」

「……これはこれはハリー・ポッターではないか」

 

 とりあえずショーンは死喰い人のふりを続けた。

 物凄くめんどくさくなりそうな気配がするがもうしょうがなかった。

 

「どうした? 窓口なら“上”だぞ」

 

 小粋なジョーク――少なくともショーンはそう思った――を言ってみたが、なんの反応もない。ただ杖を突きつけてくるだけである。当たり前なのだが少し悲しかった。

 

「何をしに来た」

「なに。我が君からのお使いを少々。君こそなんのようかな、ポッターくん」

「ヴォルデモートにとって大事なものがここにあるはずだ。それを取りに来た」

「あいにくだがそんな物はここにはない。家に帰ってゆっくりでもしていたほうが賢明だと思うがね」

 

 本心からショーンはそう思った。もう早く帰ってくれ。いつもそう言われる側のショーンだが、今回こそはマジだった。

 しかしハリーは全然そう思ってくれなかった。むしろ敵意をメラメラと燃やしているようだった。

 

「油断しちゃダメよハリー! さっきの上でのやり取りを聞いていたでしょう?」

 

 口を出してきたのはハーマイオニーだった。

 その積極性は普段なら美徳であったが、今回ばかりはやめて欲しかった。

 

「貴方みたいな残忍で狡猾な人、初めてみたわ! 小鬼族に対してあんな――恥を知りなさい! 貴方みたいな人、同じ空気を吸うのだって嫌だわ!」

「ちょ、ちょっと言い過ぎではないかね?」

「どこがよ! まだまだ言い足りないくらいだわ! この卑怯者! くず!」

「そういう系の言葉は言われ慣れてるけど今日はなんか傷つくな」

「黙れ! お前のことをとっちめてやるからな!」

「(ろ、ロナルドさん……!)」

 

 ショーンは仮面の中で人知れず涙を流した。

 

「お前達みたいな死喰い人は生きてても何にもいいことがないんだ!」

「そうよ! よく言ったわロン!」

「わかった、分かったよ。お前達が勇敢でそれから豊富な語彙力を持ってることはよく分かった。我が君にもそう報告しておくから。ここは一旦引いてはどうかな」

「うるさい! そう言って背を向けた瞬間、攻撃するつもりなんだろ!」

「そうに違いないわ! いかにも卑怯者のやりそうなことよ」

「お前のいうことなんて何ひとつ信用できないね!」

「そうやってよってたかって悪口言うほうが卑怯だと思う……がね」

「ふん! そうやって悲しんだふりしても騙されないわよ? あんたなんかどうせ、人の心もない人でなしなんだから! 悲しむ心も持ってないんでしょうよ」

 

 三人は息巻いたものの、直ぐには攻撃出来なかった。

 目の前の死喰い人はあっという間にグリンゴッツ銀行を無力化した熟練の魔法使いであり――現に、こうして会話しながらもまったくと言っていいほど隙がなかった。

 

「(この身のこなし……こいつ、強い!)」

 

 特にハリーはそう感じていた。世界最高峰のクィディッチ選手であるハリーの観察眼を持ってしても、中々攻撃の糸口が見えない。

 まるで毎日命のやり取りでもしているかの様な――異様なまでの戦い慣れを感じる。実際のところショーンのそういう戦闘感的なものを育てたのはもちろん戦争云々ではなく、ジニーとセブルス、正に今自分の後ろにいるハーマイオニーなんかであることなどつゆほども知らないハリーは目の前の相手を歴戦の死喰い人であるとして二の足を踏んでいた。

 

 逆にショーンからすると、時間はかかればかかるほど良かった。

 先ず、先ほど解放した『闇の帝王』の力がまだ収まりきっていないのだ。この力は出すのは簡単でも引っ込めるのは容易ではなかった。

 このままではうっかり三人を殺しかねない。

 それにもう少しすればトンクスとセドリックが合流するはずだ。数で互角になれば引くかもしれない……いや引かないだろうなあ、とショーンは思った。

 

「あー、こほん。私としては君達とことを荒げたくはないのだ。それはなぜかと言うと……それは、えーっと、そう! ハリー・ポッター、貴様は我が君の獲物だからだ!」

「それじゃあやっぱ私たちは殺す気じゃない!」

「違う違う! そうじゃなくて、私は……ああ、ううんと……宗教上の理由で赤毛と栗毛は殺せないんだ」

「はあ?」

「闇の陣営も最近多様化でね。信仰の自由がある程度は認められるようになったのさ」

 

 こいつ、何を言ってるんだ?

 三人はそう言う目でショーンを見た。

 ショーンだって「俺何言ってるんだろう?」って思った。

 奇遇だね。

 

「こっちは終わったよショーン――」

 

 そう言って飛び出てきたのはセドリックだった。

 ハリー達を見る。

 状況、把握。

 名前を呼ぶのはまずい、オーケイ?

 

「――ショーンをぶっ殺したがってる我が同胞よ」

 

 ギリギリの軌道修正。

 流石はセドリックだった。

 褒めてやりたいところだが、なんだか複雑な気持ちだった。

 

「まったくこんな雑用をやらせて失礼しちゃうわショーン――」

 

 そう言って飛び出てきたのはトンクスだった。

 ハリー達を見る。

 状況、把握。

 名前を呼ぶのはまずい、オーケイ?

 

「――ショーンだけはヤると誓った我が同胞よ」

 

 再び、ショーンは仮面の中で人知れず涙を流した。

 そしてこのタイミングで上からチャーリーとマッドアイが合流してきた。

 この後の展開を予知したショーンは両手を挙げた。

 

「何してるんだ、長居はできない。早く行こうショーン――」

「退路は確保したぞバカショーン――」

 

 ハリー達を見る。

 状況、把握。

 オーケイ?

 

「――ショーンにどんな拷問したいか笑い合った同胞よ」

「――ショーンを殺すぞ!」

 

 おい、マッドアイ。

 

 とにかく、これで人数有利だった。

 もうなんでもいいから早く帰りたいとショーンは思った。たかが銀行強盗に来ただけなのにあんまりだった。こんなことなら銀行強盗なんかしなければ良かった。やはりチャリティーなんてするべきじゃない。

 

「それでは我々は失礼するよ。家に帰って枕を濡らさないといけないのでね」

「あっ、待て――!」

 

 マッドアイが“マキシマ級”の強力な『妨害呪文』を張り、その間に五人は急いで飛び立った。

 振り向くことなく上を目指す。

 誰が落としたのか、そこには一粒の水滴が確かにあった。







オマケ 穢れた血クラブの運営指針に対する解答
第1項 「死喰い人」は「動物の死体を喰らう人達」ではありません。したがって、農業組合とは一切関係のない団体です。
第2項 『穢れた血』はマグル産まれを揶揄する言葉であり、間違っても「献血を促す標語」ではありません。
第3項 再三になりますが、ですから、献血の為の用語ではありません。赤十字社に確認する必要はありません。また、ホグワーツ及び死喰い人、魔法省等の団体が赤十字社の下部組織に位置するということは一切ありません。
第4項 「死喰い人」の福利厚生について貴方がメスを入れる必要も改正に踏み込む必要もありません。
第5項 闇の組織の福利厚生として『例のあの人』と行く年二回のウェールズ旅行は予定されていません。したがって旅行券はクーリング・オフさせていただきました。単刀直入に申し上げて、非凡なほど余計なお世話です。
第6項 確かに我々「死喰い人」は『例のあの人』の信奉者ですが、それは必ずしも『例のあの人』と一緒のベッドで寝たいという意味にはなりません。
第7項 「死喰い人」の勧誘は我々で行います。ですから「死喰い人」になりたい人向け用の回覧板をご近所に回す必要はありません。
第8項 「死喰い人」が仮面を被っているのは「弱視・盲目の同胞への配慮」ではありません。我々が闇の組織だからです。
第9項 『穢れた血』は玉ねぎや青魚を摂取しても治る類のものではありません。また、「リウマチがいいと聞いたが本当か?」という問い合わせに関しましては、審議の結果「改善されるのは『血統』ではなく『血行』である」と返答させていただきます。
第10項 『例のあの人』がプリントされたTシャツが「死喰い人」の新規ユニフォームとして採用されることはありません。例えカラー及びデザイナーバリエーションが豊富だとしてもです。
第11項 『例のあの人』の名前を言ってはいけないのは「『例のあの人』が世間で思われてるよりもシャイだから」ではありません。
第12項 カロー校長の専属美容師にはならなくていいです。
第13項 今後!一切!断固として!!「最高にクールな」から始まる魔法界転覆計画を計画・立案・実行しないで下さい!!!いいですね?!
第14項 「最高にホットな・今が旬・春満開」というフレーズも禁止します。
第15項 「死喰い人・スーパー・セクシー・ダイナマイト・エクササイズ」なる催しを即刻中止して下さい。例えこれによって『例のあの人』への支持率が16%上がったとしてもです。筋肉の比率が28%上がり、ローブ姿が似合わなくなるという闇の組織にあるまじき問題が起きています。
第16項 確かに、我々魔法使いは運動不足になることが多いです。しかしそれが魔法省に野生のゴリラ、ドラゴン及びマンティコアを放ったことへの言い訳にはなりません。あなたは死人が出なかったことをスネイプ教授に感謝しなくてはなりません。
第17項 あなたが考案した「死喰い人のポーズ」は採用されませんでした。はっきり言ってセンスがなかったからです。
第18項 「死喰い人」による「朝礼」は採用されませんでした。理由としてましては、闇の組織としてのイメージ崩壊になるのでは? という懸念を免れなかったからです。
第19項 確かに我々は吸血鬼やドラゴン、巨人族を組織へと勧誘していますが、それは『例のあの人』もしくは最高幹部の誰かが『とんでもない性癖を秘めているから』ではありません。
第20項 第19項を「性癖をオープンにしている」として解釈するのは、まさに悪魔的な発想と言えるでしょう。

※修繕等にかかる費用はセブルスの給料から天引きされます。
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