適当な作品置き場
とりあえず書き終えたもの

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どうも、今回は夢子です

長く放置し過ぎました。約8ヶ月
再開が遅いと友人に笑われましたがやり遂げたぜ

ではごゆっくりと


生まれた心。

小説…最後の研究

 

 

 

とある科学技術の発展が進んだ街がありました。

ある日、街の中心の大きな建物に人が大勢集まっていて、今ちょうどある男の表彰式をしていたようです。

男は大きな紙と小さなメダルを持っていましたが、あまり喜んでいませんでした。

 

「私の名前は悠介といいます。今日はこのような表彰を深くお喜び申し上げます。」

 

そういうと、カメラのフラッシュと共にシャッター音が連なりました。

 

「では私はこれで。」

 

「悠介さん!どこ行くんですか?まだ時間余ってますよ?」

 

「とは言っても、もう話す事もないですし、式とかはあまり好きでないんですよ。なのでそろそろ失礼します。」

 

そういうと、悠介は記者達を押しよけて建物から出ました。

 

建物から出ると今度は祝いに来た人が大勢いて、避けて通るたび声をかけられ、少し迷惑そうに返事を返しました。

 

なぜ表彰式があったのか、それは

悠介が作り出したある電気製品が素晴らしいものだからでした。

 

それは、空気中の酸素から化学反応を起こし発電して光る電球で、ほぼ永久に光り続けると言われています。買い換えるときがあるとしたらコイルが曲がって使えなくなるか、保護ガラスが割れた時でしょう。

 

まぁそれはおいといて、

そんな感じで悠介は毎週に一度は表彰をされるのでした。

自分でも優秀な科学者と自覚しているけれど、謙遜してあまり喜んでいませんでした。

 

家の小部屋に紙とメダルを飾るとき悠介がつぶやきました。

 

「こんなもの誰にだってできるのに…何が天才だ、何が神の手だ、そんなものはいらない」

 

さらに悠介は半泣きでこう言いました。

 

「俺が欲しいのはこんなものじゃない、俺が欲しいのは…欲しいのは…」

 

悠介はハッとなって周りを見渡し、手に持っていたものを部屋に飾りました。

 

悠介が欲しいと強く願うもの、

それは本物の笑顔でした。

 

自分が誰かの為に何かをして、それで

喜んで貰いたかったのでした。

 

しかし、家族を亡くしてから、悠介自身も喜ぶ事が少なくなっていました。

 

次の日の事、手早く朝食を済ませ自分の研究所に向かおうとしていたその時、誰も気づかないような脇道に一人の女の子が、倒れていました。

 

声をかけても起きず困り果てましたが

研究所には休むと伝え、一日休暇を取りました。そして、女の子をおんぶして家に帰りました。

 

お客用の部屋のベットに寝かせ、しばらく様子を見ることして、待っていました。

 

リビングで本を読んでいると扉が開く音がして、振り向くと女の子が立っていました。

 

「ここはどこ?」

 

「ここは僕の家だよ。」

 

「あなたの家?でも私はさっきまで外にいたはずなのに。」

 

「君は道に倒れていたんだよ、そのままだと危ないからここに連れてきたんだ。」

 

「倒れていた、私が…」

 

悠介は心配しているのか少し不安げになっていました。

「君、名前は?お父さんやお母さんはどうしてるの?」

 

「お父さんもお母さんも居ない、私に名前はない…」

 

悠介はさらに困り、どうしたものか、と声をこぼしました。

 

女の子は無表情で悲しんでいる様子も喜んでいる様子もわかりませんでした。

 

「両親が居ない…か、君、何処かあてはあるかい?あるなら送って行くけど。」

 

「あてなんかない、私はずっとひとりぼっちだった。」

 

「ひとりって、ここまで生きているのが奇跡じゃないか…」

悠介はしばらく考えました。

 

女の子は、悠介が遊びで書いた小説を手

に取り読んでいました。

 

「あ、それ、僕が気分転換に書いたやつだ。」

 

「文字がいっぱい書いてある。面白くない。」

 

「まぁ、そうだよな、面白くないよな。」

 

悠介はふと思い、女の子に提案しました。

悠介「ねぇ、両親も居なくてあてもないんだよね、ならここで一緒暮らさないか?ここにいれば一人じゃないよ。」

 

女の子は悠介の方を向いて

 

「そうする」

 

ただ一言でした

悠介はその言葉を聞くと嬉しくなり

 

「これからよろしくね」

 

そう言い返しました。

 

研究所には長期の休みを取ることにして女の子の世話をすることにしました。

しばらく一緒に暮らしていて、悠介は思いました。

 

名前はどうしようか…どうしたら笑ってくれるのか…と

 

そして女の子に聞いてみました。

 

「君、名前がないんだよね。

どうする?どんな名前がいい?」

 

「名前…何でもいい」

 

「何でもいい…なら、ゆき

でいいかな?」

 

「ゆき…わかった、ゆきだな。」

 

そんなことで悠介とゆきの普通の日々が過ぎていきました。

 

ゆきはわがままを言うことも泣き笑うこともなく、悠介は困り果てていました。

 

ある日、仕事場の研究所の研究員が悠介の家を訪れました。

 

「悠介さん、いいんですか?長い時間休みなんか取って。」

 

「あぁ、そうだったな、少し忙しくて手をつけてなかったな。」

 

「忙しい?研究所にも来てないのに何が忙しいんです?」

 

「まぁ、いろいろあってな…」

 

「誰?お客さん?」

 

「なっ!、子ども!?なんで子どもが悠介さんの家に?」

 

「あぁ、この子は道で倒れていたのを助けたんだ。」

 

そしてもう一言付け加えました。

「保護者も居なくてあてもないらしいから、しばらくうちに居させてあげることにしたんだ。」

 

「そ、そうですか、ならいいんですが。早めに復帰してくださいよ。」

 

「あ、あぁ、」

 

そういうと、扉を閉め研究員は車で帰っていきました。

 

悠介はリビングのイスに座り

…ふぅ…

と一息ついていると、ゆきが

 

「お腹空いた、ご飯まだ?」

と、寄ってきました。

 

「そうだな、もう昼か、何が食べたい?何でもいいぞ。」

 

「何でもいい、おいしいもの」

 

相変わらず無表情のまま、ゆきは答えました。

「ならピザにしようか。」

 

そういうと、電話で宅配ピザを依頼して数分後届きました。

 

悠介とゆきは声を合わせて言います。

「いただきます。」と、

ピザを切り分けて皿に乗せてゆきに渡すと、ゆきはすぐさま口に運びました。

 

「どうだ?美味しいか?」

 

「おいしい…」

それでもゆきは無表情でした。

 

「そうか、よかった。さて、

俺も食べようかな。」

 

二人はすぐに途切れる会話をたまにして、そしてピザを食べ終わりました。

 

しばらくゆっくりしていると、珍しくゆきが悠介に話しかけました。

 

「おまえは科学者なのか?」

 

「そ、そうだけど、いきなりどうした?」

 

「そうか、ついてこい、」

そういうと、ゆきに連れられて街外れの森の中に行くと、そこには大きな屋敷がありました。

 

「こ…ここは?」

 

「ここはわたしの家だここでわたしは生まれた。」

 

「故郷ってことか、でも、両親は居ない…」

 

しばらく悠介とゆきは立ったままでした。

 

悠介が唐突に思いました。

この家に住むのか俺の家に住むのか、どっちがゆきのためになるのか…と

 

気がつくとゆきは涙目になっていました。

 

それを見た悠介は言いました。

 

「ゆき、ここに住もう、明後日ここに引っ越そう…」

 

「おまえの家はいいのか?」

 

「あの場所は借り家だ、どっちにしろ長居をするつもりはなかったしな。」

 

「そうか、」

 

そういうと悠介達は家に戻り身支度をしました。

 

次の日の事

 

悠介は会見を開き、研究所を自分が認めた人に譲る事を決め、街を離れ今後は科学者ではなく一人の人間として生きると発表しました

 

もちろん記者やマスコミは理由を聞きますが、中にはこんな発言が、

 

「あの女の子はなんなんですか!」

 

その言葉には驚いてすぐさまこう言い返しました

 

「ただの拾い子ですよ。」

 

そういうと悠介は家に帰りゆきと静かな一日を過ごしました。

 

そして次の日

悠介は必要なもの全てを半日かけて屋敷に運び、それからゆきと屋敷で生活することにしました。

 

しかし、前と同様普通の日々が過ぎて行きました。

 

悠介がゆきに唐突に聞きます。

 

「なぁゆき、なんでここに連れてきた時泣いていたんだ?」

 

「それは…別れのときが近いからだ。」

 

「別れ?何から別れるんだ?」

 

「そのうちわかる。」

 

それからしばらくは、何もなく平凡かつ普通の毎日が過ぎて行きました。

 

そしてある日のこと

 

「なぁ、おまえは偉い科学者なのか?」

 

「うーん、まぁ、間違いではないのかな。」

 

「ならおまえに見せるものがある、ついてこい。」

 

ゆきはまた悠介をある場所に連れていきました。

 

ゆきの寝室、そこにある本棚をどかすと、扉がありました。

 

「隠し扉か、こんなところに」

 

扉の先は下りの階段となっており、地下と繋がっていました。

そこで悠介が見たものは大きな研究所でした。

 

「これは研究所じゃないか…

どうしてこんなところに。」

 

「いいから、ついてこい」

そういうと、通路の先にある部屋につきました。

 

「ここは?君の部屋なのか?」

 

「ここがわたしの部屋だ、」

そういうと、ゆきはあるものを指差しました。

 

「あれがわたしのお父さんとお母さんだ。それと隣のにはわたしがいる。」

 

「これって、もしかして…

コールドスリープ…だよな。」

 

悠介は震えながら言いました。

 

「ゆき…君は本当は生きていないんだね、コールドスリープ状態の君が生み出した、幻なんだね…」

 

「そう、わたしはお前をここに連れてくるために生まれた幻影だ、おまえにはやってほしいことがあって連れてきた。」

 

「やってほしい事?また、研究なのか?」

 

「多分お前にとって最後の研究になるだろう。」

 

悠介は少し考え、そして

「わかった…引き受けるよ。」

 

ゆきはその言葉を聞くと、ベットに座りました。

 

そして…

「よかった。これで安心できる。」

 

無表情のままそう言って消えていきました。

 

「待ってくれ!まだ要件を聞いていない!待って…俺をおいていかないでくれ!」

 

悠介は泣きながらゆきが消えていくのを見ていました。

 

「いつかわかる

おまえならいつか辿り着くだろう」

そう言い残して、ゆきの気配は無くなりました…

 

しばらく悠介は泣いたまま、考えていました。

 

「なんで俺の周りの人は消えていくんだ、家族も、親友も、ゆきも…」

 

「なんでなんだよ!!」

 

ずっとそんなことを考えていました。

 

数分後、悠介は周りを見渡して、あるものを見つけました。

 

それは、手紙と大きな封筒でした。

 

「これは、ゆきの置き手紙…

1年前のものじゃないか。」

 

手紙の内容が最後の研究についてでした。

 

 

この手紙を読んでいるあなたへ

この手紙が読まれる時にはわたしは既にコールドスリープ状態です、

 

おそらくあなたは世界に名を轟かすような偉大な科学者でしょう。

 

だからこそ、あなたにお願いがあります。

 

私の両親と私が一生を使って果たそうとした研究をあなたに託します。

 

そこにある封筒に私達の全てがあります。どうかお願いです。

 

私達の苦労を水の泡にしたくないです。

 

 

悠介は少しの間黙ったままでした。

そして、封筒を開け中身を確認しました。

 

「これは…人を作る実験…」

悠介は驚きのあまり止まりました。

そして、ゆき達を見ると不思議に勇気が湧いてきて、成し遂げようと思いました。

 

「俺の最後の仕事だ、必ず成功させてやる…」

 

そういうと、クローゼットの中にある白衣を着て資料を元に実験を始めました。

 

研究所の地形、物の配置それら全ては一日で記憶し、基礎的な知識を思い出し。

 

前のように研究熱心になりました。

食事をしては、研究、

また、それの繰り返しでした。

 

一ヶ月、二ヶ月、三ヶ月、一年と

どんどん月日が経っていきました。

 

それでも…悠介の心は満たされることはありませんでした。

 

「あと少し、あと少しなんだ」

 

ある日のこと。

 

「これから、始まるのか…」

 

悠介の目の前にあるのは大きな筒

人体をカプセルの中で創りだす人体生成実験を始めました。

 

完成は約三ヶ月後、

問題となった障害は全て解決し、

ついにその時が来たのだ。

 

「ゆきとゆきの両親が一生を懸けて果たそうとした実験…」

 

【人工人間生成】

 

資料の一部にはこう書いてありました。

 

人を創りだす…これは禁域の類であり

決してあってはならない事だ、

しかし我々は禁域を犯してまでやり遂げなければならない…

それは世界のためであり、

人のためになるのだから…

 

悠介は人の"誕生"まで、三ヶ月近く待つと同時にある事をまた始めました。

 

それは【心】を創りだすこと、

そう、たとえ生まれたとしても感情が無ければ人とは言えない。

悠介は悲しみを浮かべながらこうつぶやきました。

「一人でいるのはもう嫌なんだ…」

そう言っていながらも布団に入ると疲れて半日寝たままになっていました。

 

目を覚ました悠介はコーヒーを飲みながら考えてました。

 

実験によって生まれた人間は人として成長することはない、たとえ普通に生活していても。

ならせめて、心を持って楽しく生きさせることは出来るはずだ…と

 

悠介は背伸びをして、また実験室へ向かいました。

 

人を創り出す、それがどれだけ罪深く、そして偉大であるか、ずっと考えていました。

しかし、この研究は自分が考えたものではない。

私は、頼まれ、託され、そしてこの研究を行っている

 

そうだ私は偉大なんかじゃない。

ただ私はここにあるままこの研究を続けるだけ。

 

しかし、ふと思い出しました。

【心】の研究を、ほぼ完成した【心】のプログラムのことを。

 

「結局私は自分で研究をしている

同じことの繰り返しじゃないか」

悠介は、そう呟くと完成していた

【心】のプログラムにパスワードをつけて封印しました。

 

「私はもう自分の研究はしない、私は託された研究を終わらせるだけなんだ」

 

そう呟きながら必死にプログラムを忘れようとしました。

 

やることが無く仕方なく日用品の研究をしていました。

しかしそれは、今までやってきたもので、これに関しては特に抵抗はありませんでした。

 

特に何もない、やることもなくひと月ほど過ぎたある日、実験室のカプセルを見ていると声が聞こえてきました

 

 

ありがとう、これで私達も報われる

貴方には感謝してもしきれないです

「最後の研究」が無事に成功することを祈っています

 

 

悠介は声が聞こえた途端周りを見渡しました。大人びた綺麗な声。しかしそれは悠介には誰の声か確信があってわかっていました。

 

「どこにいるんだ!ゆき!出てきてくれ!」

 

しかし、ゆきは出てくることはなくすぐに声は消えてしまいました。

 

悠介は残念そうにしていました

研究室に戻るとコーヒーを飲みながら、別れ際のゆきの言葉を思い出しました

「お前ならいつか辿り着くか…」

言葉の意味はよくわからず

そのまま考えて続けていました

 

ゆきとその両親、なぜこの研究をしようと思ったのか

その真理と理由、そして結果

全てわかった時何があるのか

研究をしている時も今も

ずっと疑問に思っていました。

 

世界のためであり

人のためになるのだから。

 

そんなことを考えながら

気掛かりでモヤモヤしながらも

悩み続けました。

 

ある日のこと、

 

ついに【最後の研究】に終わりが近づいてきました。

 

実験は最終段階まで来ているのでカプセルの中は見えませんが、成功しているだろうと確信していました。

 

 

悠介は部屋でカプセルを眺めながら今までの事を思い出し。そして今これからのことを考えていました

 

これからは人知の研究か。

 

そう呟いて今までの資料をすべて片付け、これから行う研究の資料を作り始めました。

 

そして次の日。

 

カプセル手前の機械に付いているランプが青く光っていました。

 

まさか!

 

カプセルの所まで走り。

機械を操作し、中を見れるように命令を出すと。エラーが起きてしまいました。

 

想定外のエラー

しかし。これは意味のないバグでした。

 

単に壁の役目をしているフィルターが固まり動かなくなっていました。

 

「仕方ない、このまま開けるか。」

 

カプセルの扉を内部フィルターごと開けると。完成した。【人工生命】がそこにいました。

 

容姿は17程の年頃の少女

 

まだ生まれたばかりで力なく座っており。もちろん意識もまだはっきりしていません。

 

服を着せ。ベットに寝かせて。昨日の続き、人知研究の資料を作っていました。

 

物音に気が付き振り返ると少女が目を覚ましていました。

 

「おはようございます…」

 

その姿はそのまま寝起きのようであった。

 

「おはよう、気分は?」

 

「まだ眠気が取れてないようです」

 

「お腹空いているかな?」

 

「はい、少し」

 

「少し待ってて、なにか持ってくるよ」

 

簡単なサンドイッチを作り少女に渡しました。

 

「美味しいかい?」

 

「ありがとうございます

とても美味しいです、味のバランスが良くてとても食べやすいです。」

 

「そうか、良かった」

 

さてと。と呟いて自己紹介をしました

 

「私の名前は悠介。

君は私が作った人工生命ということはわかっているかな?」

 

「はい、まだ、名前がないです」

 

「そうだったね。

そうだな、なつ、でいいかな?」

 

「なつ、わかりました、」

 

「よろしくね、なつ」

 

そうして、二人の生活が始まりました、

 

なつは悠介の研究を手伝い、そして悠介の研究の対象としての協力もしました。

 

語学、数学力、歴史、理系、文学そして、専門的な技術力や家庭的なものまで、ほぼ完璧にこなしていました。

 

「唯一出来ないのは極度な力仕事か、まぁそれは人間の本質的に無理なことだな。」

 

「お力になれず申し訳ないです」

 

「いや、大丈夫、君は女性だから。力が弱いのは仕方ないことだよ」

 

一週間と経たないうちに用意したすべての資料を試し終わってしまいました

 

結果はすべて、予想通りの出来で、欠点は補えないものとして切り捨てました。

 

「そうだ、いいことを思いついた。」

 

悠介は唐突にパソコンの電源をつけ、調べものを始めました、

 

「コーヒーをお持ちしました。

お疲れにならない程度にして、休むのも大切ですよ?」

 

「あぁ、ありがとうね、

心配しなくていい。私は昔から研究をしていないと落ち着かない性格なんだ。」

 

画面を覗き込むなつ、そして、悠介がなつに提案をする。

 

「歌を歌ってみよう。

たまには声を出すのも悪くない」

 

「歌、ですか」

 

「あぁ、君の歌声だけはまだ聞いたことがない、」

 

「わかりました。どれを歌えばよろしいですか?」

 

適当に5曲ほど、種類は別々で、バラード、Pop物、など様々でした

 

「どれでもいいよ、君が好きなものを選んでいいよ。」

 

なつはどれも綺麗な美声で歌って見せました。まだ、その声は幼くもありましたが、とてもしっかりしていて、耳に根強く残る声でした。

 

「こんな綺麗な歌声…始めてだ」

 

「あの。少し音がずれましたが」

 

「大丈夫だよ。誰も完璧に歌える人なんていない。わたしだってそうだ。でも、君の声は本当に綺麗だったよ。」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

なつに変化が現れました。笑顔で返事をし、笑った

 

悠介はとても感動した、今まで平常な顔しか見せなかった彼女が笑ったのです。嬉しくないわけありません。

 

「一つだけよろしいでしょうか。」

 

「なにかな?」

 

「このバラードの譜面のなかに、心をこめて、とあるのですが。どうしたら良いでしょうか」

 

「それは、感情を込めることだよ、さっきみたいに笑顔で歌う曲もあるからね。」

 

「歌に感情を入れるのは難しいですね。どうしたら良いでしょう」

ここでも困った顔を見せた

 

「そうだなぁ、単に声を出すだけじゃなくて、声と一緒に気持ちを吐き出すんだ。そうすれば自然と感情が表れるからね。」

 

「気持ち、ですか。

頑張ってみます、」

 

それから、なつは日が変わる度に歌っていました。しかし、どうしても心が篭っていませんでした。

 

「やはり…ここで行き詰まるか…」

 

「悠介さん。食事の用意ができました。」

 

「ん?あぁ、ありがとう」

 

二人は食事をしながら会話をしました、主に悠介の過去話でしたが、なつは真剣に聞き、そして心の篭った表情をしました。

 

そして、ある日の出来事。

 

台所代わりに使っている場所で物が割れる音がしてきました。

 

「どうした!?大丈夫か?」

 

「はい、私はなんともありません、ですが。ガラスの物が…」

 

なつが手に持っていたのは、悠介の母からの形見。ガラス細工の鳥の模型。

二つに割れてしまいました

 

「母の形見…こんなところにあったのか…」

 

「形見を…私は…」

 

「何があったんだい?」

 

「食器を片付ける際に腕がぶつかってしまって。落としてしまいました」

 

「それなら、仕方ないよ。

人間誰にでもミスはあるから。」

 

「申し訳ないです…」

 

なつがうつむいて、悲しそうに謝りました、その瞬間、なつの目から雫が零れ落ちました。

 

「泣かなくてもいい。割れていなかったら見つけれなかったかもしれないから。」

形見が見つかって嬉しい半面、なつの感情の現れにも喜びました。

 

「次からは周りに気をつけます」

 

「うん。それでいいんだ。」

 

悠介はなつを慰めました。なつは泣きながらも、慰めてくれる悠介に笑顔を見せていました。

 

そしてある日の夕方のこと。

 

「この前のバラード。もう一度歌って見ようと思います。」

 

「うん。ちょっと待ってね、今譜面出すから。」

 

なつは歌詞譜面の紙を手に持ち、簡易ステージに立ち、歌って見せました。

 

そして、悠介は喜びと歌声に涙を流しました。

とても綺麗な声、心が篭った感情的な表情と歌い方、人間以上に人間らしく歌いました。

 

「素晴らしい…こんな気持ちは始めてた…」

 

「上手に歌えたでしょうか?」

 

「すごく良かったよ。今までで初めてこんな綺麗な歌を聴いたよ、」

 

「ありがとうございます!これからも頑張ってみようと思います!」

 

 

 

その後寝室で呟きました

 

「これでゆきに顔合わせがで

るな…」

 

眠るなつを眺めているうちに悠介も知らぬ間に寝てしまいました。

 

次の日、悠介が唐突になつに話をかけた

 

「なつ。君はもう立派になったね」

 

「それは、どういう?」

 

「人工生命でありながら、君は心を手に入れた。普通の人間でも難しいことなんだ。」

 

「私は、人間なのですか?」

 

「うーん、人間ではないけど、君は人間に限りなく近い。」

 

「人間として生きていけますか?」

 

「あぁ、もちろんさ」

 

 

…………………………………

 

 

心を手に入れたなつ、人工生命に心を通わせることができた悠介。二人はお互いに信じて、長い時間を過ごしました。

 

しかしそれも悠介が息を引き取るまででした。

 

「そろそろなのかな…」

 

「悠介さん。病気の方は治らないのですか?」

 

「治らなくは、ないが、森を抜けて街に行かなければ…しかし、こんな体では、ね…」

 

「私が医者を呼びます!行って来ます!」

 

「待つんだ、なつ」

 

「でも、それじゃ悠介さんが…

私は、永く生きれますが、人間はいつか亡くなってしまうんですよ?」

 

「そうだ、その、亡くなる、時がいまなんだよ」

 

「そんな…」

 

なつは悠介の発言に言葉もなく唖然として、膝から崩れました、

 

「そんな…悠介さん…」

 

「なつ、最後まで、一所にいてくれるかい?」

 

「はい、私はあなたのそばに居ます、離れません。」

 

「あ…りがと、う…」

 

悠介はなつの手を軽く握ったまま、

ゆっくりと息を引き取りました。

 

「え?え?悠介さん?なんで?

待って…まだ、ねぇ。」

 

悠介が亡くなったという事にショックでその場に崩れました。

泣き崩れ。必死に体を揺するも、悠介は反応しません。

 

「なんで…なんで消えてしまうの。私を…置いて行かないで…」

 

半日ほど泣き続け…気がつくと寝てしまっていました。

 

目が覚めると、やはりそこには動かなくなった悠介が寝ていました。

 

涙をこらえながらもしっかりと事を受け止め。

自分の中の記憶プログラムにある、悠介の知らない、この研究所の更に地下にある、花畑に彼を埋葬しました、

 

「ありがとうございました。あなたから貰った心、決して忘れません」

 

なつはそう言って、そこを後にしました

 

そして、ひとつの行動に出ました。

 

何故、悠介さんは私を作ったのか、そればかり考え、悠介データを探しはじめました。

 

そして、見つけたのは2つの資料とひとつのプログラム。

 

2つの資料

片方はゆきとその両親が考えたなつの生成実験、

もうひとつは悠介が考えた人間の心の資料。

そして、鍵のかかった心のプログラム

 

「これは一体。ゆきさんとその両親。悠介さん。皆さん偉大な科学者なのに…何故こんなところで死を…」

 

そして、心のプログラムに向かい合う

 

「心のプログラム、悠介さんは私に心を入れ込もうと…」

 

パスワードは至って簡単なものでした

 

「こころ」

 

たったそれだけでした、

 

なつはそれを見てまた涙を流しました、それはなつが思う人間の心とは全く別の考え。それを理解した途端に、悲しみと嬉しさが溢れ出るように泣きました

 

「悠介さん…なぜ…」

 

やはり亡くなった事実が悲しくてたまりません。

 

心のプログラムはなつを大きく動かしました。

 

なつは感情のすべてを歌にして、

精一杯の感謝を悠介に捧げました

 

心を手に入れたこと、心をくれたこと。今までの暮らしの全てに感謝し、それを歌として叫びました。

 

 

 

そして、なつは疲れ果て。悠介の墓の前で倒れてしまいました。

 

人工生命であり、一番人間に近寄った。しかし、手に入れた心が彼女には大きすぎて。感情を抑え切れず、反動で生命活動をやめてしまいました。

 

 

彼女は永く眠ってしまいました。

ですが、長い夢の中にずっといました

 

その夢は、悠介となつが二人、大空の下の白と黄色の花畑で座って手を繋いで、いつまでも幸せに過ごしている夢でした。

 

そう。彼女は最後に悠介と再開することができたのでした。

 

おかえり、

 

ただいま、

 

その声が響くとその夢はその場面で止まってしまいました。

 

            おしまい…




長い作品ですがお読みいただきありがとうございました。

たまたまオリジナルを考えた結果、先にこれをやらなくては、ということで、最後に放置したところから約1週間で書き上げました。

オリジナルも悪くない?かなと思うのでまた機会があればオリジナル作品の投稿をしてみようと思います


それでは、また会えたら会いましょう

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