捻デレ者と和菓子屋の娘   作:グッバイぐら

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沢山の方々に読んでいただいてありがとうございます。今回は若干シリアス気味です。


仕事が増えちまったな...。

「うるっせぇな!!!!だったらもう探さなくていいからどっか行けよ!!!」

今、俺と小野寺の視線の先では、そう叫んで雨ざらしになっている一条の姿があった。

 

~1週間前~

一条が吹っ飛ばされてから少しして、転校生こと桐崎の席が決定した。何故か一条の隣に。どうやら知り合いならば丁度いいということらしい。

「「抗議する!!断固抗議する!!」」

ま、そりゃそうだよな。ざっくり言ってぶっ飛ばした人とぶっ飛ばされた人なわけだし。今さら席を変えるわけもないだろうけど。

「申請は却下されました。」

やっぱそうなるか。つーか先生その笛どっからだした、おい。とか思ってたら急に一条が自分の体をまさぐりだして...

「あー!!?」

大声で叫んだ。かと思えば今度はぶつぶつ呟き始めた。何アイツ、怖い。さっきまで怒り顔になったりニヤニヤしたりと百面相になってたのに。..というか怒るのは分かるけど、なんでニヤニヤしてんの?Mなの?

「無い!!俺のペンダントが無い!!一体いつから...どこで...ハッ」

「一条うるさい。黙れ。」

 

「で?ペンダントがどうしたって?」

「いや、こいつに膝げりされたときに失くしちまって...。」

「ふーん。で?それを探すのを転校生さんに手伝ってもらおうと?」

「あ、なるほど。」

「ハァ!?なんで私が手伝わなくちゃなんないのよ?」

「てめーの膝げりのせいで失くしたんだからてめーにも責任あんだろ!!」

「一条君、手伝おうか?」

「い、いや大丈夫だ、小野寺。それにこいつのせいで失くなったんだし、こいつが探すのが筋ってもんだろ。」

「ハァ!?ちょっとあんた!あんたのせいで面倒くさいことになったじゃない!どうしてくれんの!」

そういって桐崎は俺を睨んできた。やめて、俺を睨まないで。めっちゃ怖いから。

「い、いやでも膝げりしたのは確かなんだし、これで貸し借りなしってことにしてはどうでしょうきゃ。」

噛んだ。テンパりすぎて最後に噛んだ。くそっ、恥ずかしい...とりあえずあっちで爆笑してる舞子は後でしばこう。

「ったく...。わかったわよ。」

ひとまずは納得してくれたようだ。

「じゃあそれを探すかわりに今後私に学校の中で話しかけないって約束してくれる?」

前言撤回。この女全く納得してねぇ。

「おー分かったよ。望む所だ。」

「手伝うの放課後だけだからね?あとあんた!」

と言いながら俺を指差してきた。

「俺?」

「そう、あんた!あんたも手伝いなさい!」

「何で?」

俺は何の関係も責任も無いはずだが。

「あんたのせいで私も手伝うはめになったんだから当然でしょ!?」

えーなにその超理不尽な理由。

「いや、俺この後アレがアレなんで。」

「何?何か文句あんの?」

怖っ!?なんでこんな低い声出んの!?背中ぞわってなったんだけど!?

「おい、比企谷を巻き込む必要は...「ビュンッ...!」なんでもありません。」

弱っ!一条弱っ!もっと頑張れよおい。いやまぁ俺もあれやられたら逆らわないけど。パンチ当たってもないのに頬赤くなってるし。

「...はぁ。分かったよ。ただし、家で妹が待ってるから俺は早めにあがらせてもらうぞ。」

「シスコン?」

「違う俺は断じてシスコンではない。」

本番仕込みの発音で言わないでもらえます?

「それは否定できないな。」

そこは否定しろよ一条。

 

「こっちにも無いな...。」

結局、放課後にも関わらず俺はペンダント探しという名の残業をしている。...どこの社畜ですか、俺は。

「比企谷君」

場所を移動しようとした所で後ろから声をかけられたので振り返ってみると小野寺が立っていた。

「えっと...い、委員会終わったから、私も手伝うよ。」

「...いいのか?」

「う、うん。どうせこの後用事も無いし。それより、あの2人は?」

「3人で同じとこ探しても非効率だからな。俺だけ別行動だ。」

「そっか。じゃあ私もこっち探すよ。」

笑顔でそういって小野寺も探し始めた。

...危なかった。危うく告白して速攻でフラれる所だった。フラれちゃうのかよ。

「あ、あの、比企谷君、小町ちゃん元気にしてる?」

「うん?まぁ、元気すぎるくらいにはな。」

「そっか。」

「ああ。」

その相槌を最後に、会話が途切れた。

...俺は2年ほど前、交通事故に遭っている。小野寺も一条もその事故の関係者だったため、2人や彼らの家族は未だに俺に気を遣っている。別に気にすることじゃ無いと言っているんだがな...。そういやあの猫今どうしてるかな...。

 

~30分前~

 

1週間、ずっと小野寺と一緒にペンダントを探し続けているが、一向に見付からない。ちなみに一条たちの方も見付かっていない。最もそれは探しながら喧嘩しまくってるのが原因っぽいが。あいつらよく飽きないな。

「これで実は家にありましたとかいうオチだったら一条を呪ってやる...。」

具体的には口内炎に悩まされる呪いとか。

「あはは...それは流石に無いんじゃないかな...。」

小野寺も若干苦笑い気味だ。...小野寺の苦笑いとかあんま見たこと無いけど、普通にかわいいな。」

「ひっ、比企谷君!?かわいいって!?」

「え?」

もしかして今声出てた...?マジですか...ん?

「なぁ、小野寺」

「ひゃい!?」

「うお、びっくりした!」

「あ、ご、ごめん。」

そんなに俺に声かけられるのが嫌だったのかな...いやそれよりも...

「一条のペンダントってこれじゃね?」

「え?」

形も教えてもらった通りだし、鍵穴ついてるし...

「ホントだ...きっとこれだよ!良かったね!早く渡してあげよう!」

近い近い近い!やっと見付かって、興奮してるのは分かるけど、こういう行為が多くの男子を勘違いさせて、結果死地へと送り込むことになることを理解してほしい。

「あっ...ゴメン。」

「い、いや...大丈夫。」

小野寺は、顔を真っ赤にして向こうの方を向いてしまった...超気まずい...。

 

~現在~

「ひ、比企谷君...。」

小野寺は一条の怒鳴り声で萎縮してしまっているようだ。

「...小野寺。とりあえず今日は帰らないか?」

「え?でもペンダントは...」

「今はちょっとタイミングが悪いだろ。それに...いや、やっぱいい。」

「え?何?」

「何でもない。 おい、一条!」

「...比企谷?今の見てたか?」

「まあな。それより俺はもう帰るぞ。お前も今日は早いとこ帰っとけ。」

「あ、ああ。分かった。...変なとこ見せて悪い。」

「別に謝ることじゃねぇよ。じゃあな。」

 

...仕事が増えちまったな...。

 

 

 

 

 

 

 




ありがとうございました。次話で原作第1話終了の予定です。

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