捻デレ者と和菓子屋の娘   作:グッバイぐら

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第9話です。
今回で原作1巻の内容終了です。


昨日通報しといたけど。

「ほう?俺に相談とな?」

「ああ、まぁちょっとな。」

昼休み。俺がいつも通りベストプレイスに行こうとした所で舞子が一条に呼び止められていた。それだけならいいのだが...

「何でここに来たんだお前ら...。」

何故その相談とやらを俺のベストプレイスでする?

「いや、その、比企谷にも話を聞いて欲しくて。」

「舞子いるなら俺いらないだろ...。」

「...集だけだと何か脱線しそうだから...。」

...なるほど。確かに舞子だけだと面白半分で話が明後日の方向に飛びかねんな。

「ちょっと楽、酷くない~?」

「そういうことなら仕方ない。」

「比企谷も!?」

だってお前前科多いし。

「それで?どうだね彼女の唇の柔らかさは?」

「してねーよんな事・・・!!」

...早くも脱線し始めたし...。

 

一条の相談は、『桐崎に「親しい友達相手なら秘密を言ってもいいんじゃないか」と言ったら逆ギレされた』というものだった。

「俺にはあいつがどこにキレたのかさっぱり分からん。...まぁ単純に虫の居所が悪かっただけかもだけど...。」

「んー...と言うよりかはよ、その秘密とやらを『言える友達がいりゃ苦労しねーよ!!』...って事なんじゃねーの?」

...やっぱ舞子がいれば十分だったろ。俺が思ったことそのまんま言ってくれたし。

「・・・は?...友達いねーの?あいつ。」

「いや知らんけど。お前彼氏だろ。」

「...でも俺あいつが女子と楽しげに話してるとこみたことあるけど...。」

「バカかお前は。楽しげに話してるからって仲がいいとは限らんだろ。」

「でもあいつあんな性格してるし...」

...ダメだ。こいつ何も分かってねぇ。

「どんな性格だ?」

「え?」

「いやだからどんな性格だって言ってるんだ。」

「それは...社交的っつーか、何つーか...」

「それをクラスの連中がみんな知ってると思ってんのか?あいつが転校してきてまだ一ヶ月も経ってないんだぞ?」

「あ...」

何故そこを失念してんだこいつは...。

「それに良くも悪くもあんな目立つ容姿で帰国子女だ。しかもお前と話す時とそれ以外と話す時とで明らかに壁つくって態度も違うときたもんだ。つまり今はクラスの連中があいつを敬遠してるんだよ。お前の言う秘密ってのがどういうのかは知らんが、そんな現状でそこまで心を許せる相手が出来るわけねーだろ。」

「...」

「ま、俺も桐崎さんがお前以外の特定の誰かと仲良くしてるとこって一度も見たことねーんだよなぁ。」

追い討ちするように舞子が続けた。

「...確かに俺、普段のあいつの事なんて全然見てなかった...。」

「...とにかく、お前の意思がどうだろうが、今桐崎と最も近い位置にいるのはお前だ。なら直接何かしてやるのはお前の仕事だろ。何なら昔お前がしてもらったみたいに橋渡しでもすればいい。」

「ちょ!?何でそれを知ってんの!?比企谷に言ったことないよね!?」

俺の最後の一言に、一条ではなく舞子が反応した。

「前に一条に聞いた。」

「楽!何話してんの!」

お、舞子が顔赤くして照れるなんて珍しいな。

 

~放課後~

「小野寺?」

日原先生に頼まれていた案件が終わり鞄を教室に取りに行く途中、既に帰ったはずの小野寺がいた。

「比企谷君?どうしたの?もう帰ったと思ってたけど。」

「いや別に?先生に押し付けられた案件が終わったから教室に鞄取りに行くだけだ。そっちは?」

「えっと、ちょっと忘れ物しちゃって。」

「そうか...。」

「うん...。」

...沈黙が重い...。

一条とか舞子相手なら別に気にしないが、小野寺相手だと何か重い。

「え、えっと先生に何頼まれてたの?」

小野寺も沈黙に堪えかねたのか、多少慌てた様子で話題を振ってきた。

「主に荷物(プリント)運びだな。...ったく、舞子あたりにでも頼めばいいだろうに。あいつなら喜んで引き受けるぞ。」

「あはは...いくら舞子君でもそれはどうだろう...」

「小野寺は何忘れたんだ?」

「えっと筆箱とか...」

「ふーん。」

「...」

「...」

俺の相づちを最後に会話が途切れ、さっきよりも気まずい空気のまま教室前に着いた。

「・・・!」

「・・・!!」

...教室の中から言い合いのような声が漏れてくる。

「何だ?誰か教室いるのか?」

「この声って一条君と桐崎さんじゃない?」

 

「しょせんあんたとの仲なんて演技なんだから・・・!!」

「分かってるっつーの!!」

 

「え...演技...?」

「あーやっぱそうだったか。」

つかあいつら、バレたくないなら教室でんな大声でそのこと話すなよ...。

「比企谷君...演技ってどういうこと...?」

どうやら小野寺は桐崎のセリフを正しく理解できていないらしい。

「あー...これは俺の推測だけど多分あの二人、別に付き合ってないんじゃね?」

「え?でもいつも教室ではあんなにラブラブなのに?」

「ほら、ここ最近教室覗いてた不審者いたろ?」

ま、昨日通報しといたけど。

「う、うん。」

「多分あれとか、あとは一条の家の人達にはあの二人が付き合ってるように思ってもらう必要があるんじゃね?竜さんの言ってたギャングの娘って桐崎の事だろうし。」

「...そっか。でもだったらその事情って何だろう?」

「それは俺も知らん。つーかそろそろ鞄取りたいんだけど。」

もう入っていいかな?入っていいよね?

 

ガラガラ

「入るぞー。」

「うおわっ!ひひひっ比企谷!?お、小野寺も!?」

何それ?笑ってんの?

「あ、あんた達いつから!?」

「ついさっき。今まで仕事してたから鞄取りに来ただけだ。」

「き、聞いてた!?」

...ばっちり聞いてはいたけど、ここは・・・

「何を?」

すっとぼけよう。

「あ、えっと、何でもない...。」

「そうか。なら俺は帰るぞ。じゃあな。」

「あ、ああ。また明日。」

 




ありがとうございました。
...調理実習編についてはごめんなさい。うまい具合に書ける気がしなかったし、ヒロイン小咲なのに今まであまりにも千棘メインすぎたので...

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