やっぱりゆゆ様は至高ですなぁ
「河童の科学は世界一チイイイイ!!」
「だ、大丈夫ですかにとりさん!?」
「ああ...大丈夫だ。さあ、実験を続けようじゃないか。」
彼女の名は河城にとり。今彼女は全身全霊をかけて、「超・甘いリンゴ」の開発中だ。
「試料番号1341にα線照射!」
「はい!照射します...照射おわり。糖度19.63。」
「うーむ...。20を超えないと駄目なんだ。次!試料番号1342!」
「はい!...あ!糖度20.41です!20超えましたよにとりさん!」
「よし!」
「やりました!早速、リンゴの安全性の試験に移りましょう!」
「ああ、それなら適任者がいるから、明日私が持っていくよ。」
「ええ!?持っていくって...。人体実験するつもりですか?」
「いやいや。人じゃない、人じゃないからさ。大丈夫だって。」
テレビでは、射命丸文が朝のニュースを伝えていた。
「おはようございます。7時になりました。ニュースをお伝えします。昨日からここ、幻想郷にも導入された健康保険制度について、八雲紫氏は昨日の記者会見で、『全く認知されていないのではないか』と危機感をあらわに...」
「妖夢。」
「はい?」
「もういいわ、テレビを消して頂戴。」
「あ、はい。分かりました。」
プチッと音がして、射命丸の姿がブラウン管から消えた。
「今朝はやけに冷え込むわねぇ。」
「そうですね。もう冬が近いんですよ。そろそろ火鉢をださないといけませんね。庭にもほら。」
妖夢は庭を指さした。
「あんなに霜が降りて...ん?」
霜が沢山ついた草のその向こうから、何やら人影が近づいてくる。
人影は妖夢を認めると、片手を挙げて挨拶した。
「にとりさん!どうされたんですかこんな朝早くに。」
「いやあ。昨日遂に『超・甘いリンゴ』の開発に成功してね。早速だから幻想郷一の食通、幽々子様に試食してもらおうと思って、朝イチで持って来たんだ。良かったら、食べてみてよ。」
妖夢は差し出されたリンゴを受け取った。
見るからに美味しそうなリンゴである。
「いいんですか?こんな貴重な物を頂いて。」
「全然全然!!ノープロブレムさ!それより、食べたら感想教えてよ?私これから少し野暮用があるから、また午後来るからさ。」
「分かりました。どうもわざわざ有難うございます。」
「いやいや。頑張って糖度を20まで上げたんだ。美味しいと思うよ。」
「...で、そのリンゴを食べた後、具合が悪くなったの?」
「はい...。永琳先生。こんなこと、滅多にないんですけど...。」
「滅多に、というか初めてよね。幽々子がお腹を壊すのは。」
「ええ。ですから私も困ってしまって...。丁度タイミング良く紫さんが遊びに来てくださったお蔭で、ここにスキマを使って運び込むことが出来たんです。」
「そうだったの。それは大変だったわね。それで、診察した結果なんだけれどね。」
「ええ。詳しく聞きたいです。」
「まあ、一言でいうと、リンゴが亡霊である幽々子の体質に合わなかった。ということよ。」
「え!?でも、いつも普通に幽々子様リンゴも召し上がっておられ...あ!」
「そう。にとりが改良した『超・甘いリンゴ』なんでしょう?まあ、症状は二、三日もすれば治ると思うわ。そんなに心配することはない筈よ。」
「そうですか。それを聞いて安心しました...。」
「一応、薬を出しておくわね。妖夢、幽々子の保険証は持ってきた?」
「保険証...ですか?」
「あら。昨日から導入されたこと、知らない?それがないと、10倍の医療費を支払うことになるわよ?」
「ええ?...あ!ちょっと待ってください。多分幽々子様のハンドバックの中のお財布に入っていると思います!」
「ちっ。」
と魔理沙は舌打ちをした。
「ケッ、不景気だなァ。苦労して忍び込んで盗ったのに、中身が千円札一枚じゃぁ、しゃーねーな。」
そういうと、魔理沙は中の現金だけを抜き取った幽々子と妖夢の財布を、暖炉に放り込んだ。
ぱちぱちと、音を立てて明々と暖炉が燃える。
かくして、幻想郷に健康保険制度が定着するには、まだしばらくの時を待たねばならないようだった。