マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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遊戯VS海馬 ダイジェスト版です。

前回のあらすじ
リッチー「俺のデュエル……(1シーン版+フルカットだった人)」

デプレ「…………元気……出せ(濃いめのダイジェスト版だった人)」

夜行「ペガサス様ァ……(かなり濃いめのダイジェスト版だった人)」

月行「我々の中で唯一『勝ち』デュエルがあったじゃないですか!(フル構成だった人)」

リッチー「――この裏切り者ぉおおぉおおおッ!(サティスファクションのリーダー感)」





第122話 全てを超えた先に

 

 

 遂に始まった遊戯と海馬のデュエルは互いの闘志が激しくぶつかり合い、熾烈を極めていた。

 

 

 そんな遊戯のライフは900と少な目だが、フィールドには表側表示の永続罠《便乗》に加えて、4枚のセットカードと盤石。

 

 さらに切り札格の2体のモンスター《磁石の戦士マグネット・バルキリオン》と《電磁石の戦士マグネット・ベルセリオン》が融合合体した巨大なモンスターが佇む。

 

 その巨躯を支える馬のような四脚に翼の生えた天馬――ペガサスのような下半身に、巨人の上半身から伸びる右手の巨大な剣と左肩の巨大なランチャーが磁力の力でスパークを起こす。

 

超電導戦機(ちょうでんどうせんき)インペリオン・マグナム》

星10 地属性 岩石族

攻4000 守4000

 

 

 対する海馬のライフは2000と優勢。そしてフィールドは5枚のセットカードに、加えて――

 

「攻撃力4000の超大型モンスターか……だが!! 俺にはコイツがいる!!」

 

 巨大な砲台が4つズラリと並び、機械のドラゴンの顔が3つ伸びる異形のマシンが蛇の尾のような脚部で鎮座する。

 

「刮目せよ、遊戯! これが《XYZ-ドラゴン・キャノン》と《ABC-ドラゴン・バスター》が一つとなった究極すら超えた機械神!!」

 

 これこそが、海馬の2体の融合合体したモンスターを更に融合合体させた究極マシーン。

 

「《AtoZ(エートゥズィ)-ドラゴン・バスターキャノン》!!」

 

 その姿は何処か3つ首の《青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)》を思わせる。

 

AtoZ(エートゥズィ)-ドラゴン・バスターキャノン》

星10 光属性 機械族

攻4000 守4000

 

 

 そしてその隣で斧片手に気合を見せる牛の獣戦士、《ミノタウルス》が隅に寄るようにいた。超大型モンスターが並ぶゆえに居心地が悪いのかもしれない。

 

《ミノタウルス》

星4 地属性 獣戦士族

攻1700 守1000

 

「バトルだ!! 行けッ! 《AtoZ(エートゥズィ)-ドラゴン・バスターキャノン》! AtoZ(エートゥズィ)! インフィニティ・キャノン!!」

 

 《AtoZ(エートゥズィ)-ドラゴン・バスターキャノン》を構成する6体のモンスターがそれぞれの砲門を開き、エネルギーが輝き――

 

 《超電導戦機(ちょうでんどうせんき)インペリオン・マグナム》を滅殺せんと放たれた。

 

 

 しかしその破壊の砲撃が届くより先に遊戯の声が響く。

 

「さすがに迂闊だぜ、海馬! 俺は罠カード《聖なるバリア -ミラーフォース-》を発動!」

 

 《超電導戦機(ちょうでんどうせんき)インペリオン・マグナム》を覆っていく虹色に輝く半透明なバリアが放たれた数多の砲撃を受け止めた。

 

「これでその攻撃は全て跳ね返り、お前のモンスターを全滅させる!!」

 

 それらの砲撃を弾き返そうとするが――

 

「ふぅん、その程度など想定済みだ! 《AtoZ(エートゥズィ)-ドラゴン・バスターキャノン》の効果を発動!」

 

 《AtoZ(エートゥズィ)-ドラゴン・バスターキャノン》の3つの機械仕掛けのドラゴンの頭の瞳が赤く輝く。

 

「相手の魔法・罠・モンスター効果が発動したとき! 俺の手札を1枚捨てることで、その発動を無効にし、破壊する!」

 

 やがてその3つの首に新たに赤いエネルギーがチャージされ――

 

AtoZ(エートゥズィ)の前にそんな壁如きが通じると思うな! インフィニティ・ディストラクション!!」

 

 《聖なるバリア -ミラーフォース-》を粉砕すべく3つの火球となって放たれた。

 

「読んでいたか……だが! 俺もお前が超えてくることは予想していたぜ! この瞬間!《超電導戦機(ちょうでんどうせんき)インペリオン・マグナム》の効果を発動!」

 

 しかし放たれた3つの火球に向けて《超電導戦機(ちょうでんどうせんき)インペリオン・マグナム》はその巨大な剣を振り下ろす。

 

「このカードは1ターンに1度! 相手の魔法・罠・モンスター効果の発動を無効にし、破壊する!!」

 

 そしてその巨大な剣にマグネットの力と3つの火球がぶつかり合い、周囲に火花が散る。

 

「奇しくも同じ効果のぶつかり合いになったな、海馬――だがソイツには消えて貰うぜ! マグネット・ブレイバー!!」

 

 だが3つの火球は根負けしたように押されて行き――

 

「ふぅん、同じだと? 笑わせる――《AtoZ(エートゥズィ)-ドラゴン・バスターキャノン》の効果に回数制限などないわ! 俺は最後の手札を捨て、そのデカブツの効果を無効にし、破壊だ!!」

 

 その押されかけた瞬間に海馬の高笑いが木霊し、《AtoZ(エートゥズィ)-ドラゴン・バスターキャノン》の3つのドラゴンの頭から新たな3つの火球が灯る。

 

「なんだと!?」

 

「インフィニティ・ディストラクション! 二連打ァ!!」

 

 新たに飛来した3つの火球が《超電導戦機インペリオン・マグナム》の腕を吹き飛ばし、巨大な剣が宙を舞う。

 

 やがて巨大な剣から解放された最初に放たれた3つの火球が《聖なるバリア -ミラーフォース-》を砕き、《超電導戦機インペリオン・マグナム》を炎で包む。

 

「ぐぁああッ!!」

 

 その巨大な炎の威力に身構える遊戯を余所に《超電導戦機インペリオン・マグナム》は炎の中で崩れていった。

 

「さぁ、これで邪魔者は消えた! 遊戯にダイレクトアタックしろ! AtoZ(エートゥズィ)!!」

 

 やがて最大の障害がなくなったことで《AtoZ(エートゥズィ)-ドラゴン・バスターキャノン》の爆撃が遊戯に狙いを付けるが――

 

 

 

 そんな遊戯を守るように磁石の巨人が剣を盾のように構え、守備表示で佇む。

 

《磁石の戦士マグネット・バルキリオン》

星8 地属性 岩石族

攻3500 守3850

 

 さらにもう1体の電磁石の巨人もまた槍を地面に突き刺し膝を突いて守備姿勢を取っていた。

 

《電磁石の戦士マグネット・ベルセリオン》

星8 地属性 岩石族

攻3000 守2800

 

「なにっ!? 2体の壁モンスターが!?」

 

 その2体は《超電導戦機インペリオン・マグナム》の元となったモンスターたち。

 

「《超電導戦機インペリオン・マグナム》の効果さ――このカードが相手によって破壊されたとき、デッキから素材となる2体のマグネットを特殊召喚できる!」

 

 《超電導戦機インペリオン・マグナム》が倒れたとき、残ったパーツは再度集まり、主を守るべく立ち上がるのだ。

 

「成程な……その効果で融合素材である2体の大型マグネットモンスターを呼び寄せたと言う訳か……」

 

 遊戯の説明に納得を見せる海馬。しかしクワッと目を見開き宣言する。

 

「だが、その程度の壁モンスターで俺を止められるなどとは思うな!」

 

 一般的なデッキであれば十二分に切り札を張れるモンスターであっても、海馬からすればただの壁にしかならない。

 

AtoZ(エートゥズィ)!! 《磁石の戦士マグネット・バルキリオン》を抹殺しろ!!インフィニティ・バスター!!」

 

 再び《AtoZ(エートゥズィ)-ドラゴン・バスターキャノン》の全砲門が開き、《磁石の戦士マグネット・バルキリオン》をハチの巣にする。

 

「クッ……済まない、マグネット・バルキリオン!」

 

 打ち据える数多の砲撃に死のダンスを踊らされた後、崩れ落ちる仲間に遊戯は拳を握るがーー

 

「ふぅん、倒れた仲間の心配をしている場合か?」

 

 まだ海馬のバトルは終わってなどいない。

 

「ここで《AtoZ(エートゥズィ)-ドラゴン・バスターキャノン》の更なる効果を発動! 自身を除外することで、除外された《XYZ-ドラゴン・キャノン》と《ABC-ドラゴン・バスター》を特殊召喚する!!」

 

 究極を超えた機械神の進撃は止まらない。

 

 《AtoZ(エートゥズィ)-ドラゴン・バスターキャノン》の全ての関節が光を放ち、やがてその身体を構成する6体のモンスターに分かれた。

 

「分離能力だと!?」

 

「奇しくも似た効果を持ったことだ――分離し、追撃せよ! 《XYZ-ドラゴン・キャノン》! 《ABC-ドラゴン・バスター》!」

 

 やがて組み上がるのはお馴染み三段重ねの《XYZ-ドラゴン・キャノン》に、

 

《XYZ-ドラゴン・キャノン》

星8 光属性 機械族

攻2800 守2600

 

 2つのドラゴンの頭を持つキメラマシーン、《ABC-ドラゴン・バスター》が翼を広げる。

 

《ABC-ドラゴン・バスター》

星8 光属性 機械族

攻3000 守2800

 

 バトルフェイズに特殊召喚されたこの2体のモンスターには当然、まだ攻撃権が存在する。

 

「さぁ、《ABC-ドラゴン・バスター》よ! 最後に残った守備表示の壁モンスターを破壊しろ! ABC・ハイパー・バスター!!」

 

 《ABC-ドラゴン・バスター》の両肩のキャノン砲と2つのドラゴンの頭が火を噴き、遊戯を守る最後の砦《電磁石の戦士マグネット・ベルセリオン》を消失させる。

 

「だが、この瞬間! 破壊された《電磁石の戦士マグネット・ベルセリオン》の効果が発動するぜ!」

 

 しかし燃え滾る炎の中から身体を3つにバラし、燃えるからだをゴロゴロと転がることで消火しながら窮地を脱する影が見える。

 

「除外されている3体の電磁石の戦士――α(アルファ)β(ベータ)γ(ガンマ)の3体を帰還させる! 戻って来い! 磁石の戦士たちよ!」

 

 それは両剣と盾を持った小さな戦士、《電磁石の戦士(エレクトロマグネット・ウォリアー・)α(アルファ)》と

 

電磁石の戦士(エレクトロマグネット・ウォリアー・)α(アルファ)

星3 地属性 岩石族

攻1700 守1100

 

 獣のように伏せ、様子を伺う《電磁石の戦士β(エレクトロマグネット・ウォリアー・ベータ)》に加えて、

 

電磁石の戦士β(エレクトロマグネット・ウォリアー・ベータ)

星3 地属性 岩石族

攻1500 守1500

 

 ズングリとした丸い身体の《電磁石の戦士γ(エレクトロマグネット・ウォリアー・ガンマ)》の3体が遊戯を守るべくそれぞれ腕を交差し、守りの姿勢を取った。

 

電磁石の戦士γ(エレクトロマグネット・ウォリアー・ガンマ)

星3 地属性 岩石族

攻 800 守2000

 

「チッ、雑魚がワラワラと! ならば《ミノタウルス》! そして《XYZ-ドラゴン・キャノン》! ソイツらを蹴散らせ!」

 

 遊戯の守りが中々崩せず苛立つ海馬の声に《ミノタウルス》は久々の獲物に斧を振りかぶって迫り、さらに《XYZ-ドラゴン・キャノン》の6つの砲塔が火を噴く。

 

 

 しかし遊戯は此処ぞとばかりに宣言する。

 

「そうはさせないぜ! 永続罠《連撃の帝王》を発動! このカードの効果で俺は海馬!お前のメインフェイズ及びバトルフェイズでアドバンス召喚を行えるぜ!」

 

「今更なにを呼ぶつもり――――まさか!!」

 

 今の遊戯のフィールドに存在する3体のモンスター。そしてアドバンス召喚。よって導き出される答えは――

 

「俺は3体の電磁石の戦士を生贄に捧げる(リリース)!!」

 

 3体の《電磁石の戦士(エレクトロマグネット・ウォリアー)》が3つの光の柱となって天を穿つ。

 

 

 やがて穿たれた天から一際巨大なイカヅチが遊戯のフィールドを打ち抜き――

 

 

「降臨せよ! 三幻神が一柱! 天空を統べるもの!」

 

 

 そのイカヅチの奔流が収まった先に存在するのは――

 

 

「――『オシリスの天空竜』!!」

 

 天空の神、『オシリスの天空竜』がその長大な赤い身体をデュエルタワーにとぐろを巻くように這わせ、2つの口を持つ龍の瞳が相手を見定めるかのように海馬を視界に収めた。

 

『オシリスの天空竜』

星10 神属性 幻神獣族

攻 ? 守 ?

 

「此処で神を呼んだだと!?」

 

「『オシリスの天空竜』のステータスは俺の手札の枚数によって決定する――今の俺の手札は3枚! よってその攻撃力は3000!!」

 

 圧倒的な威圧感を以て遊戯のフィールドを舞う三幻神の1柱、『オシリスの天空竜』が己の力を誇示するかのように咆哮を上げた。

 

『オシリスの天空竜』

攻 ? 守 ?

攻3000 守3000

 

 その咆哮を余所に神が召喚された衝撃で海馬の隣まで吹き飛ばされた《ミノタウルス》が転がる。

 

「さぁ、どうする海馬?」

 

 やがて遊戯が挑発気に海馬を見やる、海馬が有利に進めていた筈の盤面は遊戯が神のカード、『オシリスの天空竜』を呼び出した時点で覆った。

 

 遊戯の放った僅か一手だけで。

 

 

 

 その事実を受け海馬は――

 

「ハハハハハッ! ハーハッハッハッハ!」

 

 笑う。心の底から今の状況が楽しくて仕方がない。

 

「昂る、昂るぞ、遊戯!!」

 

 海馬はこのバトルシティで様々な強者と戦ってきた。

 

「このギリギリの戦い! これこそが俺の全身からアドレナリンを掻き出させ、血液を沸騰させる!!」

 

 その強者との戦いでも海馬は追い詰められたときは幾度となくあったが、これ程までに楽しいのは――

 

「やはり貴様が相手でなくてはならない!!」

 

 デュエルの相手が、海馬が認めた生涯のライバルたる遊戯であってこそ。

 

「だが勝つのは俺だ!!」

 

 そう決意を再確認するかのように海馬は声を張り、状況を動かす。

 

「バトルを終了! そしてセットしておいた魔法カード《融合識別(フュージョン・タグ)》を発動!」

 

 ドッグタグを模した首にかけるように鎖が伸びる小さな金属のプレートが宙を舞う。

 

「この効果で俺のフィールドのモンスター1体――《ミノタウルス》をエクストラデッキの融合モンスター1体を公開することで、そのモンスターの同名カードとして扱う!」

 

 そのプレートを《ミノタウルス》は空中でキャッチし――

 

「これにより《ミノタウルス》は融合モンスターである《VW-タイガー・カタパルト》の名を得る!」

 

 そのプレートに描かれているのは青い四角いロケットに虎型のロボットがドッキングした姿。

 

 やがて《ミノタウルス》の姿がそのプレートに示された姿形へと変貌していく。

 

《ミノタウルス》→《VW-タイガー・カタパルト》

 

「この布陣は!!」

 

「そうだ! 『VW』と『XYZ』を除外し、融合召喚! ファイナァッル! フューージョンッ!!」

 

 海馬との過去の一戦に記憶を巡らせる遊戯に海馬は未来を突き進む為、右手を掲げて叫ぶ。

 

「今こそ起動せよ! 究極機械神! 《VWXYZ(ヴィトゥズィ)-ドラゴン・カタパルトキャノン》!!」

 

 その右手の先の天に跳躍した《ミノタウルス》と《XYZ-ドラゴン・キャノン》が光と共に交錯し、降り立つのは――

 

 鍵爪のような黄色い腕にドラゴンの翼、そして肩から伸びるキャノン砲。そして青い2本の足で立つ巨大なロボット。

 

《VWXYZ-ドラゴン・カタパルトキャノン》

星8 光属性 機械族

攻3000 守2800

 

 そう、デュエリストキングダムにて遊戯を苦しめた大型モンスター。

 

「だが! 新たにモンスターが呼び出されたことで『オシリスの天空竜』の効果が発動する! 召・雷・弾!!」

 

 しかし、あの時とは状況が違うとばかりに『オシリスの天空竜』の上側の口が開き、球体状のイカズチが《VWXYZ-ドラゴン・カタパルトキャノン》を打ち据える。

 

「コイツを受けたモンスターは――」

 

「ふぅん、説明は不要だ――対応するステータスが2000ポイント下がり、効果処理の終了時0だった際に破壊されるのだろう?」

 

 遊戯の説明を海馬は切って捨てる。如何に神の一撃といえどもこのカードならば耐えられると。

 

「だが《VWXYZ-ドラゴン・カタパルトキャノン》の守備力は2800! 倒れはせん!」

 

 やがて神の一撃に苦悶の声を上げていた《VWXYZ-ドラゴン・カタパルトキャノン》だが、そのイカヅチを振り払い、身体の至る所から煙を出しつつ守備姿勢を取った。

 

《VWXYZ-ドラゴン・カタパルトキャノン》

守2800 → 守800

 

「そして《VWXYZ-ドラゴン・カタパルトキャノン》の効果で遊戯! 貴様のフィールドのカード1枚を除外する!」

 

 そしてお返しとばかりに《VWXYZ-ドラゴン・カタパルトキャノン》の砲門が遊戯のフィールドに狙いを定める。

 

「だが神に神以外の効果は通じないぜ!」

 

「だからどうした! 俺は真ん中のリバースカードを除外!」

 

 遊戯の言葉など意に介さずリバースカードの1枚を打ち抜いた砲撃。

 

「――ふぅん、罠カード《マインドクラッシュ》か……悪くない」

 

 砕かれたカードは何時ぞやのデュエルの時に海馬の悪しき心を砕いた千年パズルの力と同じ名を持つカード。

 

 その効果は宣言したカードが相手の手札に存在するときにそのカードを捨てさせる厄介な効果を持つ――除去できたのは海馬にとって大きくプラスだ。

 

「これで俺はターンエンドだ。エンド時にこのターン発動しておいた速攻魔法《超再生能力》の効果でリリースもしくは手札から捨てられたドラゴン族1体につき1枚ドローする」

 

 ターンを終えた海馬だが、ただでは終わらない。

 

「俺が捨てたドラゴン族は2体――よって2枚のカードをドローする」

 

 しっかりと手札を回復し、次のターンに備える。

 

「だがお前が通常のドロー以外でドローしたことで発動済みの永続罠《便乗》の効果で俺は新たに2枚のカードをドローできるぜ!」

 

 しかし、海馬の手札補充がトリガーとなって遊戯の手札を潤す。それはつまり――

 

「そして手札が増えたことで『オシリスの天空竜』の攻撃力もさらに上昇!」

 

 天空の神が更なる力を得ることに等しい。

 

 『オシリスの天空竜』が己が身体に漲る力を表す様に咆哮を上げ、空気を震わせる。

 

『オシリスの天空竜』

攻3000 守3000

攻5000 守5000

 

 

「俺のターン! ドロー! これで俺の手札はさらに増えたぜ! よって『オシリスの天空竜』は更にパワーアップ!」

 

 どんどん手札の差を広げていく遊戯。そして力を高めていく『オシリスの天空竜』。

 

『オシリスの天空竜』

攻5000 守5000

攻6000 守6000

 

 

 だが海馬に焦りはない。

 

「バトル! 『オシリスの天空竜』で――」

 

 そんな海馬に対し、『オシリスの天空竜』が力を誇示するように口元から紫電を迸らせ、神のイカヅチを放とうとするが――

 

「待って貰おうか! 俺は貴様のメインフェイズ1の終了時に《ABC-ドラゴン・バスター》の効果発動! 自身を除外することで除外されている光属性・機械族のユニオンモンスターを3種、帰還させる!」

 

 《ABC-ドラゴン・バスター》の機械の身体が音を立ててドッキングが解除されて行く。

 

「再び分離せよ! 《ABC-ドラゴン・バスター》!!」

 

 やがて黄色いサソリ型のロボットが、

 

《A-アサルト・コア》

星4 光属性 機械族

攻1900 守 200

 

 二足で地を駆ける緑のドラゴン型のロボットが、

 

《B-バスター・ドレイク》

星4 光属性 機械族

攻1500 守1800

 

 翼を広げる紫のプテラノドン型のロボットの3体が海馬のフィールドに舞い戻る。

 

《C-クラッシュ・ワイバーン》

星4 光属性 機械族

攻1200 守2000

 

 新たにモンスターが呼び出された。これの意味する所は――

 

「だがこの瞬間、新たなモンスターが呼び出されたことで、『オシリスの天空竜』の効果が発動する! 召・雷・弾!!」

 

 天空の神のイカヅチの洗礼が3体のモンスターに降り注ぐ。

 

「その3体のステータスはどれも2000以下! さっきのようにはいかないぜ!」

 

 3つの雷弾が海馬の3体のロボットを消し飛ばさんと襲い掛かる。

 

 ステータスがそこまで高くないレベル4以下の下級モンスターではひとたまりもない。

 

 

 そう、このままでは無駄死にである――この3()()()()()()()()は。

 

「甘いわ! 神の効果にチェーンして、リバースカードを発動! 永続罠《連撃の帝王》! そしてすぐさま効果を使用する!」

 

 相手ターンでのアドバンス召喚を可能にするカードに3体のモンスター(いけにえ)

 

 この状況で海馬が繰り出すカードが遊戯には分かる――いや、遊戯だからこそ誰よりも理解出来た。

 

「まさか、お前も!?」

 

「当然だ! 貴様が神を操るのなら、また俺も神で挑もう!」

 

 海馬のフィールドに青い波動が脈動する。

 

「《A-アサルト・コア》! 《B-バスター・ドレイク》! 《C-クラッシュ・ワイバーン》の3体のモンスターを生贄に(リリース)し、降臨せよ!!」

 

 やがて『オシリスの天空竜』の雷弾が着弾する海馬のフィールドに3本の青い光の柱が昇り――

 

 

「――『オベリスクの巨神兵』!!」

 

 現れるは破壊神たる蒼き巨人、否、巨神。

 

 赤き眼が鈍く輝き、対峙する『オシリスの天空竜』に向けて歓喜の雄叫びを上げた。

 

『オベリスクの巨神兵』

星10 神属性 幻神獣族

攻4000 守4000

 

「これで俺のユニオンモンスターを狙った『オシリスの天空竜』の効果は不発だ」

 

 その海馬の言葉通り、効果を受ける前にフィールドを離れてしまってはいくら神といえども追い打つことは出来ない。

 

 空を切ったイカヅチの砲弾が海馬の背後に着弾し、その衝撃が海馬のコートを揺らす。

 

「だとしても新たに『神』が召喚された! 『オシリスの天空竜』の効果を受けて貰うぜ! 召雷弾!!」

 

 しかし、代わりに受けろとばかりに放たれた『オシリスの天空竜』のイカヅチの一撃が『オベリスクの巨神兵』を強かに打ち据える。

 

 神の一撃をその身に受け、苦悶の叫びを上げる『オベリスクの巨神兵』。

 

「耐えろ! オベリスク!」

 

 やがてその一撃を耐えきった『オベリスクの巨神兵』だが、その身体は所々損傷し、ボロボロと崩れていく。

 

 だが蒼き巨神が倒れることはない。

 

『オベリスクの巨神兵』

攻4000 → 攻2000

 

「これで『オベリスクの巨神兵』のパワーは大幅にダウンしたぜ!」

 

「だが墓地に送られた《A-アサルト・コア》・《B-バスター・ドレイク》・《C-クラッシュ・ワイバーン》のそれぞれの効果により――」

 

 しかし先の『オシリスの天空竜』の後にチェーンして発動された3枚のカードが逆処理によって先に発動され、いつの間にやら海馬は戦線を立て直していた。

 

「《B-バスター・ドレイク》の効果でデッキからユニオンモンスター《W-ウィング・カタパルト》を手札に加え」

 

 緑のドラゴン型ロボットこと《B-バスター・ドレイク》がてってと走って海馬の元に運んだのは青いロケット台のようなモンスター。

 

「《A-アサルト・コア》の効果で自身以外の墓地のユニオンモンスター《B-バスター・ドレイク》を手札に戻し」

 

 立ち去ろうとする《B-バスター・ドレイク》だが、黄色いサソリ型ロボットに海馬の手札に引っ張り上げられ、

 

「《C-クラッシュ・ワイバーン》の効果で手札のユニオン《W-ウィング・カタパルト》を特殊召喚させて貰ったぞ」

 

 空を飛ぶ紫のプテラノドン型のロボットが置き土産とばかりに先程のロケット台のようなモンスター《W-ウィング・カタパルト》をポトリと落とす。

 

《W-ウィング・カタパルト》

星4 光属性 機械族

攻1300 守1500

 

 

 これで海馬のフィールドには『オベリスクの巨神兵』と《W-ウィング・カタパルト》に加えて、《VWXYZ(ヴィトゥズィ)-ドラゴン・カタパルトキャノン》が存在する。

 

「だが三度、『オシリスの天空竜』の効果が発動する! 召雷弾!!」

 

 三度放たれる天空の神のイカヅチ。

 

 しかし既に海馬の究極の一手を止めるには至らない。

 

「もう遅いわ! その効果にチェーンして『オベリスクの巨神兵』の効果を発動ォ! 2体のモンスターを贄に捧げることで発揮される真の力を見るがいい!! ソウルエナジーMAX!!」

 

 2体の贄が破壊の神に捧げられ、『オベリスクの巨神兵』の拳に蒼いエネルギーが高まり、究極の一撃が放たれる。

 

 

 

 

 

 

 筈だった。

 

 『オベリスクの巨神兵』の両の拳のエネルギーは霧散し、《W-ウィング・カタパルト》が『オシリスの天空竜』のイカヅチを受け爆散する。

 

「なにっ!?」

 

 そして海馬のフィールドに存在するのは『オベリスクの巨神兵』1()()()()

 

「何故、オベリスクの効果が発動しない!」

 

「残念だったな、海馬! 俺はお前が『オベリスクの巨神兵』を召喚する前にこのカードを発動していたのさ!」

 

 驚愕する海馬に遊戯はタネを明かす様に語る。

 

「罠カード《戦友(とも)の誓い》をな!」

 

「罠カード《戦友(とも)の誓い》……だと!?」

 

 オウム返しのように返す海馬の顔に理解の色が浮かぶ。そう、初めから『オベリスクの巨神兵』の効果の発動条件が整っていなかったのだ。

 

「そうさ! コイツは俺のフィールドにエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターがいないとき! 相手フィールドのエクストラデッキから特殊召喚されたモンスター1体のコントロールを得る!」

 

 そのカードの効果は、まさしく海馬の融合モンスター、《青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)》を狙いすましたかのようなもの。

 

「よって、お前の《VWXYZ(ヴィトゥズィ)-ドラゴン・カタパルトキャノン》は既に俺のしもべとなっていたのさ!」

 

 本来の狙いとは大きく逸れたものの海馬にとって手痛い計算違いとなることだろう。

 

「ターンの終わりにコントロールは戻り、俺はこのターン特殊召喚できないが問題ないぜ!」

 

 遊戯のフィールドに佇む《VWXYZ(ヴィトゥズィ)-ドラゴン・カタパルトキャノン》の姿が海馬を苛立たせる。

 

「ぐっ、おのれ……」

 

 そして未だ遊戯のメインフェイズ1だ。

 

「俺は《VWXYZ(ヴィトゥズィ)-ドラゴン・カタパルトキャノン》の効果で左端のセットカードを除外だ!」

 

 遊戯を苦しめてきた厄介な効果が今度は海馬に襲い掛かる。音を立てて海馬に狙いを定める《VWXYZ(ヴィトゥズィ)-ドラゴン・カタパルトキャノン》の砲塔。

 

「させん! 永続罠《デモンズ・チェーン》を発動! モンスター1体の効果を無効にし、攻撃を封じる!」

 

 だが地中から飛び出した数多の鎖が《VWXYZ(ヴィトゥズィ)-ドラゴン・カタパルトキャノン》を捕らえ、行動を封じた。

 

「ならバトルフェイズだ! 『オシリスの天空竜』で『オベリスクの巨神兵』を攻撃! これで終わりだ!!」

 

 『オシリスの天空竜』から放たれるイカヅチのブレスと『オベリスクの巨神兵』の破壊の力を纏った拳がぶつかり合う。

 

 とはいえ攻撃力は6000と2000――その差は歴然だ。

 

 やがて『オベリスクの巨神兵』の拳が押され始める。だが己の神が敗北する様を黙って見ている海馬ではない。

 

「俺は速攻魔法《手札断殺》を発動! 互いは手札を2枚捨て、新たに2枚ドローする!」

 

 しかし発動されたカードはただの手札交換カード。

 

「迂闊だぜ、海馬! お前が新たにカードをドローしたことで永続罠《便乗》の効果で俺は更に2枚ドロー! そしてオシリスがパワーアップ!」

 

 手札を入れ替えた後そう叫ぶ遊戯の言う通り、状況は悪化の一途を辿っている。

 

 『オシリスの天空竜』から放たれるイカヅチの規模が巨大になり、より『オベリスクの巨神兵』を追い詰める結果となった。

 

『オシリスの天空竜』

攻6000 守6000

攻8000 守8000

 

「俺が迂闊だと? 真に迂闊なのは貴様だ、遊戯!」

 

 だが全ては海馬の計算通り。

 

「俺はさらなるリバースカードオープン! 罠カード《大暴落》を発動!」

 

 これこそが遊戯の『オシリスの天空竜』を打ち砕く海馬の一手。この世の終わりを感じさせる悲痛な叫びが木霊する。

 

「このカードは相手の手札が8枚以上存在するとき! その全てをデッキに戻し、新たに2枚ドローさせる!」

 

「この為に俺の手札を!?」

 

 そう、今の遊戯の手札はちょうど8枚。これが罠カード《大暴落》の効果で一気に2枚まで減少する。

 

 その身に宿っていた溢れんばかりの力が消えうせ戸惑う『オシリスの天空竜』。

 

『オシリスの天空竜』

攻8000 守8000

攻2000 守2000

 

「オシリスの攻撃力を維持しようとするあまり、手札を保持し過ぎたな!」

 

 『オシリスの天空竜』の放つイカヅチが大きく弱まったことで、勢いを取り戻した『オベリスクの巨神兵』の拳が押し返す様に突き進む。

 

「さぁ、神々の戦いに終止符を打つがいい! オベリスクよ!! ゴォッドォ! ハンドォ! クラッシャァアアア!!!」

 

 やがて限界まで振りぬいた『オベリスクの巨神兵』の拳と、

 

「迎撃しろ、オシリス! 超電導波! サンダァアア! フォオオオスッ!!」

 

 最後の力を振り絞るかのような『オシリスの天空竜』のイカヅチがぶつかり合う。

 

 

 そして互いの一撃は混ざり合い巨大なエネルギーの奔流となって互いを消し去っていく。

 

 

 

 しかし唐突に遊戯の千年パズルと海馬が預かっている千年ロッドが光を放ち始めた。

 

「オカルトグッズが光を!?」

 

 

 やがて遊戯と海馬は謎のビジョンを垣間見る――それは古代エジプトの歴史の一部。

 

 

 遊戯と瓜二つな姿の名もなきファラオと対峙する海馬と瓜二つの神官が争う姿。

 

 互いは黒き魔術師と白き龍を呼び出し、命を賭けてぶつかり合う。

 

 その姿はまるで現代の遊戯と海馬のデュエルの如く。

 

 

 やがてそのビジョンが消え、遊戯と海馬は元のデュエルタワーの頂上たるデュエル場に意識が引き戻された。

 

「くっ……」

 

「あのビジョンは一体……」

 

 怒涛のオカルト現象にふらつく海馬に摩訶不思議な現象の意図を考える遊戯。

 

 既に互いのフィールドに神の姿はない。

 

 

 やがて海馬は先の遊戯の呟きから状況を把握し尋ねた。

 

「遊戯、まさか貴様も俺と同じビジョンを見たのか!?」

 

「ああ……海馬、お前もあのビジョンを見たようだな――俺は確信したぜ! このデュエルは3000年の時を超え、受け継がれた宿命のデュエルだ!!」

 

 しかし遊戯から返ってきた返答はオカルト過ぎる回答――海馬を苛立たせるには十分な威力だった。

 

「なにを訳の分からんことを言っている!」

 

「このバトルシティは俺の記憶を取り戻す戦いでもある! お前との戦いによって、俺の閉じられた記憶の扉が開く!!」

 

 海馬の怒声にも変わらず遊戯の主張は変わらない。

 

 海馬は苛立っていた。

 

 最大、最強、最高のライバル(遊戯)自身(海馬)とのデュエルではなく、別のもの(失われた記憶)を向いていたことに苛立つ。

 

「くだらん御託はそこまでにしろ!! 神の激突でどんなトリックが起きたのかは知らんが――」

 

 海馬は遊戯の言葉を断ち切るように叫ぶ。

 

「――このデュエルにそんな過去の残照など存在せん! 俺と貴様! 2人のデュエリストのロードが導いたものだ!」

 

 過去の因縁に振り回される気はないとばかりに海馬は右腕を振り切り、断言する。

 

「俺たちのデュエルに――そんな過去のくだらん宿命など持ち込むな!!」

 

 海馬は「遊戯の失われた過去」の為にデュエルをしている訳ではない。

 

 己が認めた遊戯というデュエリストと「全力でデュエルしたい」――それだけの理由で戦っているのだ。

 

「さぁ、遊戯! これで互いの神は消えた! さっさとカードの剣を振るえ!! 俺に貴様の輝きを魅せてみろ!!」

 

 そんな海馬の言葉に遊戯は返す言葉を持たない。ゆえにデュエルで語る。

 

「なら俺はバトルを終了し、魔法カード《アドバンスドロー》を発動!」

 

――あのビジョンが本当なら此処で引くカードにもさだめが……ならば、このドローが俺の記憶の新たな1ページとなる!!

 

 名もなきファラオの遊戯の想いは過去を向いている。過去の記憶のない遊戯にとってそれは己を構成する為の重要なピースなのだから。

 

「俺のフィールドのレベル8以上のモンスター《VWXYZ(ヴィトゥズィ)-ドラゴン・カタパルトキャノン》をリリースし、2枚ドロー!」

 

 海馬からコントロールを得た《VWXYZ(ヴィトゥズィ)-ドラゴン・カタパルトキャノン》が光の粒子となって消えていき遊戯の新たな手札となっていく。

 

「俺は2枚の魔法カード《闇の量産工場》を発動! 俺はそれぞれの効果で墓地の通常モンスターを合計4枚手札に戻す!」

 

 さらに墓地から遊戯の力となるべく4体のモンスターが何でも任せろとばかりに遊戯の手札に戻り――

 

「《磁石の戦士α》・《磁石の戦士β》・《磁石の戦士γ》・《幻獣王ガゼル》を手札に!」

 

 遊戯はそんなカードたちの想いを受け取り1枚のカードを発動させる。

 

「そして魔法カード《手札抹殺》を発動! 互いに手札を全て捨て、その分だけ新たにドロー! これにより、海馬! お前が新たにドローしたことで永続罠《便乗》の効果で俺は更に2枚ドロー!」

 

 海馬の手札交換を誘発させ、更に手札を増やす遊戯だったが海馬もなされるままではない。

 

「だが墓地に送られた2枚の《伝説の白石(ホワイト・オブ・レジェンド)》の効果が発動し、俺はデッキから《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)》を1体ずつ手札に加えさせて貰うぞ!」

 

 墓地に送られた2つの白き龍の卵、《伝説の白石(ホワイト・オブ・レジェンド)》が光り輝き、2体の《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)》を海馬の手札に導いた。

 

 しかし遊戯は止まらない。このデュエルに負ける訳にはいかないと。

 

「まだだ! 魔法カード《マジック・プランター》を発動! 永続罠《連撃の帝王》を墓地に送り、さらに2枚ドロー!」

 

「一気に手札を回復させたか……」

 

 2枚にまで減っていた遊戯の手札が今や7枚。

 

 このターンに遊戯が発動した罠カード《戦友(とも)の誓い》の効果でモンスターを特殊召喚できないことを加味しても驚異的なアドバンテージである。

 

「俺はカードを3枚セットし、ターンエンドだ!!」

 

 守りを固めターンを終えた遊戯だが、海馬は待ったをかける。

 

「だが、そのエンドフェイズ! このターン墓地に送られた《太古の白石(ホワイト・オブ・エンシェント)》の効果が発動し、俺はデッキから『ブルーアイズ』モンスターを呼び出すことが出来る!」

 

 海馬自身が発動した速攻魔法《手札断殺》のときに墓地に送られていた白き卵の化石がひび割れていき――

 

「俺はデッキから『ブルーアイズ』モンスターとして扱う《白き霊龍》を特殊召喚!」

 

 デッキから海馬のフィールドに舞い降りるのはより一層白さを増したブルーアイズの精霊(カー)としての姿を持つ《白き霊龍》。

 

 それは先の古代エジプト時代のビジョンを連想させる。

 

《白き霊龍》

星8 光属性 ドラゴン族

攻2500 守2000

 

「そして特殊召喚された《白き霊龍》の効果で貴様のフィールドの永続罠《便乗》を除外する!」

 

 その《白き霊龍》から放たれたブレスの白き一閃は遊戯のフィールドの永続罠《便乗》を打ち抜く。

 

「これで今後は易々と手札を補充できまい……」

 

 他のセットカードよりも手札補充のカードを除去した海馬――「手札の数は可能性の数」とまで評される程に重要なアドバンテージ。

 

 遊戯の実力を加味すればその脅威度は桁違いである。

 

「俺のターンだ! ドロォオオオオ!!」

 

 そしてカードを引く海馬には自負がある。多少の罠程度ではビクともしない己の力に対する自負が。

 

――フッ、来たか……やはり貴様に引導を渡すのは神をも超越したブルーアイズでこそ!

 

 手札を見て胸中でそう零しつつニヤリと笑う海馬。遊戯を屠る相応しいカードが揃いつつあると。

 

「だが、まずは俺も魔法カード《アドバンスドロー》を発動! 《白き霊龍》をリリースし、新たに2枚ドロー!」

 

 《白き霊龍》が海馬の元に飛び立ちやがて2枚の手札となって海馬に寄り添い――

 

「魔法カード《マジック・プランター》を2枚、発動! 無意味に残った永続罠《デモンズ・チェーン》と永続罠《連撃の帝王》を墓地に送り、それぞれの効果で合計4枚ドロー!!」

 

 更に発動された2枚のカードによって海馬の手札も一気に補充される。

 

 そして条件はクリアされた。

 

「行くぞ、遊戯! 魔法カード《融合》を発動!!」

 

「来るのか!?」

 

 このタイミングで発動される《融合》のカード。何が呼ばれるかなど自明の理。

 

「究極にして最強の力で貴様を叩き潰してやる! 現れろッ! 《青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)》!!」

 

 海馬の手札の3体の《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)》が今一つとなる。

 

 やがて暴風と共に舞い降りるのは巨大な体躯を持つ3つ首の美しき白き龍。

 

 究極のブルーアイズ、《青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)》が己こそが王者たることを示す様に咆哮を上げる。

 

青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)

星12 光属性 ドラゴン族

攻4500 守3800

 

「くっ……」

 

 その圧倒的な《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)》の威圧感に究極の龍を見上げることしか出来ない状況に冷や汗を流す遊戯に海馬の声が届く。

 

「遊戯、先程の下らんイメージ映像――それを貴様が現実の過去と考えるなら好きにするがいい」

 

 その海馬の言葉はまるでオカルトを認めたような物言いだ。

 

「このデュエルがあの石板の、3000年前の再現と言うのならそれもいい」

 

 しかし海馬の真意はそこにはない。

 

「だが覚えておけ、遊戯! 3000年前のくだらん因縁も、貴様に負けた屈辱的な事実も俺にとっては所詮、ただの過去でしかない!」

 

 過去は未来を構成する上で重要なピースではある。それは海馬も理解している。

 

「俺は貴様のように過去に縛られる愚かなマネはせん! 俺は――」

 

 だが過去に拘るあまり、今を、未来を生きぬものは愚かだと断ずる海馬。

 

 

 

「――過去を凌駕する!!」

 

 

 常に進化し続ける――これこそが海馬のデュエルの答え。

 

「俺は《青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)》をリリースし、このカードを手札から特殊召喚する!!」

 

 《青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)》の全身にヒビが広がって行く。

 

「アルティメットを捨てるのか!?」

 

「捨てる? ふぅん、違うな――更なる高みに昇るのだ!」

 

 遊戯の言葉を強く否定する海馬――過去に縛られた遊戯とは違うのだと示す様に。

 

「ブルーアイズよ! 今こそ究極を超え、全てを圧倒する絶対なる光の覇者として君臨するがいい!!」

 

 やがて砕け散った《青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)》からは眩いばかりの光が溢れ――

 

「――《青眼の光龍(ブルーアイズ・シャイニングドラゴン)》!!」

 

 現れたのは光り輝く白き龍。

 

 その身体は三つ首が1つに戻っており、全身を機械的な装甲に覆われており、何処か《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)》を強く意識させる姿をしていた。

 

青眼の光龍(ブルーアイズ・シャイニングドラゴン)

星10 光属性 ドラゴン族

攻3000 守2500

 

「シャイニング……ドラゴン……」

 

「《青眼の光龍(ブルーアイズ・シャイニングドラゴン)》の攻撃力は俺の墓地のドラゴン族1体につき300アップする! 俺の墓地のドラゴンの合計は15体! よって4500ポイントアップ!!」

 

 圧倒的な光の輝きに言葉を失う遊戯に向かって海馬は意気揚々と《青眼の光龍(ブルーアイズ・シャイニングドラゴン)》の力の一端を示す。

 

 その海馬の声に従い、《青眼の光龍(ブルーアイズ・シャイニングドラゴン)》の全身の関節から光の線が伸びていき、その身に纏う力がより強大になっていく。

 

青眼の光龍(ブルーアイズ・シャイニングドラゴン)

攻3000 → 攻7500

 

「見るがいい、遊戯! 俺の未来へのロードを切り開く光輝くブルーアイズの姿を! 雄姿を!」

 

 圧倒的な輝きを魅せる《青眼の光龍(ブルーアイズ・シャイニングドラゴン)》を誇るように語る海馬。

 

「この輝きが、貴様の見た過去のビジョンに在ったか!!」

 

 これこそが過去を、今を、そして未来の全てを圧倒する究極を超えた力なのだと海馬は示す。

 

「今の貴様はくだらんビジョンに惑わされ、過去の鎖に囚われた哀れな囚人だ! 過去に囚われたものに未来などない! 今、貴様の目を覚まさせてやろう!!」

 

 そんな海馬の言葉と共に《青眼の光龍(ブルーアイズ・シャイニングドラゴン)》は翼を広げ飛翔し、遊戯を視界に収め――

 

「やれい! ダイレクトアタックだ! 《青眼の光龍(ブルーアイズ・シャイニングドラゴン)》!! 殲滅の――シャイニング・バースト!!」

 

 《青眼の光龍(ブルーアイズ・シャイニングドラゴン)》の全身を奔る光が口元に集まっていき巨大なブレスとなって蓄積されていく。

 

 その輝きは三幻神にも勝るとも劣らない。

 

「――ッ! そうはさせないぜ、海馬! 俺は罠カード《六芒星の呪縛》を発動! 相手モンスター1体の攻撃を封じる!!」

 

 だが遊戯が発動した六芒星が描かれた魔法陣が《青眼の光龍(ブルーアイズ・シャイニングドラゴン)》を拘束する。

 

「無駄だァ!! シャイニングドラゴンは己を対象とするカードの発動を受けるか否か選択できる!!」

 

「なにっ!?」

 

 それは全てを思うがままに選択するまさに神の如き力。

 

 それにより《六芒星の呪縛》に拘束される筈だった今を改変した《青眼の光龍(ブルーアイズ・シャイニングドラゴン)》の動きは何一つ封じられていない。

 

「当然、そんなカードは無効だァ!! シャイニング・フレアッ!!」

 

 やがてその海馬の言葉と共に《青眼の光龍(ブルーアイズ・シャイニングドラゴン)》が翼を一度羽ばたかせただけで《六芒星の呪縛》は砕け散る。

 

 

 今まさに放たれんとする《青眼の光龍(ブルーアイズ・シャイニングドラゴン)》のブレス。

 

 しかし遊戯は怯まない。

 

「だが俺はあの石板に刻まれた魂が、俺たちに受け継がれていることを証明する! 罠カード《マジシャンズ・ナビゲート》を発動!!」

 

遊戯の背後から魔法陣が描かれ、その魔法陣の中央に黒いゲートが生み出される。

 

「俺は手札から《ブラック・マジシャン》1体を特殊召喚! 今こそ来たれ! 黒き魔術師よ!!」

 

 そのゲートを潜って遊戯の元に馳せ参じたのは黒い法衣に身を纏う遊戯の相棒たる魔術師、《ブラック・マジシャン》。

 

 そして遊戯を守るように腕を交差し、守備表示で攻撃に備える。

 

《ブラック・マジシャン》

星7 闇属性 魔法使い族

攻2500 守2100

 

「《ブラック・マジシャン》……貴様は未だ過去に拘るか――あまり俺を失望させるなよ!」

 

「慌てるなよ、海馬――まだ罠カード《マジシャンズ・ナビゲート》の効果は終わりじゃない! 更なる効果により俺はデッキからレベル7以下の闇属性・魔法使い族を特殊召喚する!」

 

 海馬の挑発を軽く流した遊戯の背後に浮かぶ魔法陣のゲートから1つの影が見え――

 

「今こそ師の元に現れよ! 《ブラック・マジシャン・ガール》!」

 

 そのゲートを潜って現れたのは水色の軽装の法衣を纏う《ブラック・マジシャン》の弟子たる魔術師、《ブラック・マジシャン・ガール》が師の隣に降り立った。

 

《ブラック・マジシャン・ガール》

星6 闇属性 魔法使い族

攻2000 守1700

 

「ふぅん、守りを固めたか――だが俺が発動しておいた速攻魔法《竜の闘志》の効果でこのターンのみ《青眼の光龍(ブルーアイズ・シャイニングドラゴン)》は貴様が特殊召喚したカードの数だけ追加攻撃できる!」

 

 新たに2体のモンスターで守りを固めた遊戯だったが、海馬の語るようにいつの間にやら罠カード《マジシャンズ・ナビゲート》にチェーンして発動されていた速攻魔法《竜の闘志》の効果により意味をなさない。

 

「貴様が呼び出したのはマジシャンの師弟2体! よってこの三連撃の攻撃が貴様を襲う!!」

 

 遊戯がモンスターで守りを固めれば固める程に《青眼の光龍(ブルーアイズ・シャイニングドラゴン)》の連撃は続いていくのだから。

 

「くらうがいい!! 圧倒的な力を!!」

 

 《青眼の光龍(ブルーアイズ・シャイニングドラゴン)》のブレスが魔術師の師弟たちに狙いを定め、今放たれ――

 

「俺は速攻魔法《黒・爆・裂・破・魔・導(ブラック・バーニング・マジック)》を発動!」

 

 る前に更に遊戯は更にカードを発動させる。

 

「俺のフィールドに《ブラック・マジシャン》と《ブラック・マジシャン・ガール》の魔術師の師弟がいるとき! 相手フィールドの全てのカードを破壊する!!」

 

 まさに魔術師の師弟の結束の力を象徴するかのようなカード。

 

「コイツは対象を取る効果じゃない! シャイニングドラゴンの力じゃ止められない筈だ!!」

 

「フハハハハハッ! そうだ! くだらん過去など凌駕し! 乗り越えろ! 俺の敵は常に最強でなければならない!!」

 

 《青眼の光龍(ブルーアイズ・シャイニングドラゴン)》の効果の穴を突いた一撃に満足そうに笑う海馬に遊戯は《青眼の光龍(ブルーアイズ・シャイニングドラゴン)》を指差し、宣言する。

 

「やれッ! 《ブラック・マジシャン》! 《ブラック・マジシャン・ガール》!! 黒・爆・裂・破・魔・導(ブラック・バーニング・マジック)!!」

 

 2人の魔術師の息を合わせた魔術によって《青眼の光龍(ブルーアイズ・シャイニングドラゴン)》を囲むように巨大な魔法陣が形成され、その中心に黒い魔力が膨張していき、やがて爆ぜた。

 

 

 巨大な爆発によって爆炎が海馬のフィールドに舞うが、その爆心地から吹いた突風が全てを吹き飛ばす。

 

 

 

 その突風に思わず目を覆った遊戯がやがて目を開いた時に見たのは――

 

「ふぅん、それで終いか?」

 

「…………無傷……だと!?」

 

 傷一つない《青眼の光龍(ブルーアイズ・シャイニングドラゴン)》の姿。

 

 遊戯のフィールドの魔術師の師弟も驚愕に目を見開く。

 

「俺は墓地の魔法カード《復活の福音》を除外させて貰った――これによりシャイニングドラゴンは破壊されん!」

 

 その説明に何も返さない遊戯に海馬は苛立ちを持って答える。

 

「何を呆けている? 言った筈だ! 過去に縛られたままの貴様では何をしようと無駄だと! さぁ、過去の鎖を断ち切れ、遊戯!!」

 

 圧倒的なまでの《青眼の光龍(ブルーアイズ・シャイニングドラゴン)》の姿に動かぬ遊戯にならばと海馬は遊戯を指さす。

 

「断ち切れぬようなら、そのまま俺の糧となって消えるがいい! 《青眼の光龍(ブルーアイズ・シャイニングドラゴン)》!! シャイニング・バースト! 三連打ァ!!」

 

 そして海馬の宣言に導かれた《青眼の光龍(ブルーアイズ・シャイニングドラゴン)》の極光のブレスは放たれ、遊戯の相棒たる魔術師の師弟を一瞬にして消し去り、遊戯に着弾した。

 

 

 

 

 

 

遊戯LP:900

 

 しかし光が晴れた先の遊戯のライフにダメージはなく。

 

「俺へのダイレクトアタックは手札の《クリボー》の効果でダメージを0に……」

 

 遊戯を守るように佇む《クリボー》に海馬は獰猛に笑う。

 

「ふぅん、僅かに命を繋いだか……俺はバトルを終了し――」

 

「待って貰うぜ! 海馬、お前のバトルフェイズ終了時に手札の《クリボーン》を捨てて効果を発動! このターン戦闘で破壊されたモンスター1体を蘇生! 舞い戻れ、《ブラック・マジシャン》!!」

 

 頭に白いベールをつけた白い毛玉こと《クリボーン》が天から白いベールをヒラヒラ揺らすと、そのベールの影から遊戯の危機に駆けつけんと、相棒たる《ブラック・マジシャン》が守備表示で膝を突く。

 

《ブラック・マジシャン》

星7 闇属性 魔法使い族

攻2500 守2100

 

 その《ブラック・マジシャン》の姿に海馬は満足気だ。

 

「ならばカードを2枚セットし! ターンエンド!!」

 

 それもその筈、舞い戻った《ブラック・マジシャン》――それは遊戯から戦う意思が折れていない事実だと海馬には感じ取れたゆえに。

 

「覚悟するがいい遊戯! 貴様の記憶に真の勝利者であるこの俺の名を刻み付けてやろう! フハハハハハッ!!」

 

 腑抜けた遊戯を倒しても海馬にとっては何の意味もない。

 

 

「海馬! 俺はこのデュエル! 負ける訳にはいかない! 失われた記憶を取り戻す為に!」

 

「ならばデュエルで示してみせろ!」

 

「ああ、俺はこのデュエルを制する!! 俺のターン! ドロー!!」

 

 デュエルに何をかけるのかはデュエリスト次第。そしてそれはデュエルを以て示すのがデュエリストの流儀。

 

「俺はメインフェイズ1の開始時に魔法カード《貪欲で無欲な壺》を発動! 墓地の異なる種族のモンスター3体をデッキに戻し、新たに2枚ドローする!」

 

 引いたカードを手札に加え、すぐさま手札の1枚を切った遊戯のフィールドに欲深な顔と穏やかな顔の2つの側面を持つ壺が現れ、遊戯の選んだ3枚のカードが投入される。

 

「俺は墓地の魔法使い族《ブラック・マジシャン・ガール》! 岩石族《電磁石の戦士マグネット・ベルセリオン》! 悪魔族《クリボー》の3体をデッキに戻し、2枚ドロー!」

 

 やがて砕けた壺から新たな2枚のカードが遊戯の手札に加わる。

 

「バトルフェイズを捨てたか……」

 

 その海馬の言葉通り、魔法カード《貪欲で無欲な壺》を発動すればデメリットとしてそのターン、バトルフェイズを行えなくなる。

 

 ゆえに遊戯がどう動くか興味あり気に見やる海馬。

 

「墓地の《置換融合》を除外し、融合モンスター《超電導戦機(ちょうでんどうせんき)インペリオン・マグナム》をエクストラデッキに戻して新たに1枚ドロー!」

 

 しかし遊戯は4枚の手札を見た後、瞳を閉じて――

 

「カードを3枚セットしてターンエンドだ!!」

 

 3枚のカードを伏せターンを終えた遊戯。だが明らかに罠を仕掛けた様相が垣間見える。

 

「ふぅん、何を仕掛けたかは知らんが、貴様の目はまだ死んでいない――それだけ分かれば十分だ!!」

 

 だが海馬からすれば「それでこそ」だった。

 

「俺のターン!! ドロー!!」

 

 海馬がカードを引き、メインフェイズにはいる前に遊戯は宣言する。

 

「俺はお前のスタンバイフェイズに罠カード《バトルマニア》を発動! これでお前のシャイニングドラゴンはこのターン必ず攻撃しなければならない!!」

 

 発動されたのは攻撃強要のカード。これが遊戯のラストアタックの第一手。

 

「どんな罠を仕掛けたかは知らんが、貴様に強制されずとも攻撃してやるわ!」

 

 そう語る海馬だが、ただ攻撃する訳ではない。

 

「リバースカードオープン! 永続罠《最終突撃命令》を発動! これでフィールドのモンスターは強制的に攻撃表示になる!!」

 

「《ブラック・マジシャン》が!?」

 

 永続罠の効果によって無理やり攻撃姿勢を取らされる《ブラック・マジシャン》。これで戦闘ダメージを防ぐことはできない。

 

「これで終局だ!!  《青眼の光龍(ブルーアイズ・シャイニングドラゴン)》!! 殲滅の――シャイニング・バースト!!」

 

 《青眼の光龍(ブルーアイズ・シャイニングドラゴン)》の極光が今度は逃がさぬとばかりに《ブラック・マジシャン》に襲い掛かる。

 

「さぁ、どう動く、遊戯ッ!!」

 

「なら! 見せてやるぜ! 俺の勝利へのラストアタックを!!」

 

 海馬の覚悟に応えるように遊戯は1枚のリバースカードを発動させる。

 

「俺は速攻魔法《破壊剣士融合》を発動! このカードの効果で《バスター・ブレイダー》を融合素材とする融合モンスターをこの瞬間に融合召喚する!!」

 

 《ブラック・マジシャン》の隣に宙から躍り出た巨大な大剣が突き刺さる。それは伝説のドラゴンバスターの至高の魔剣。

 

 

 その魔剣が《青眼の光龍(ブルーアイズ・シャイニングドラゴン)》の一撃を防ぐ。

 

「《バスター・ブレイダー》……だと? まさかその最後の手札が!?」

 

「その通りだぜ、海馬!! 俺は手札の《バスター・ブレイダー》とフィールドの《ブラック・マジシャン》を融合!!」

 

 《ブラック・マジシャン》が龍殺しの魔剣を手に取ったと同時に遊戯の手札から飛び出した《バスター・ブレイダー》が光となって《ブラック・マジシャン》を覆っていく。

 

 そして龍殺しの力が《ブラック・マジシャン》の身体を駆け巡り――

 

「――《超魔導剣士(ちょうまどうけんし)-ブラック・パラディン》!!」

 

 現れるは金の意匠が全身に奔る鎧のような法衣を身に纏った魔術師――否、魔導剣士。

 

 《ブラック・マジシャン》の杖は《バスター・ブレイダー》の大剣と一体化し、どこか薙刀(なぎなた)を思わせる逸品と化していた。

 

超魔導剣士(ちょうまどうけんし)-ブラック・パラディン》

星8 闇属性 魔法使い族

攻2900 守2400

 

 その攻撃力は2900。現在の《青眼の光龍(ブルーアイズ・シャイニングドラゴン)》の攻撃力7500には遠く及ばない。

 

 だが《超魔導剣士(ちょうまどうけんし)-ブラック・パラディン》は相手がドラゴンであればより一層の力を増す《バスター・ブレイダー》の力を受け継いでいる。

 

「《超魔導剣士(ちょうまどうけんし)-ブラック・パラディン》の攻撃力は互いのフィールド・墓地のドラゴン族1体につき500アップする!!」

 

 ゆえに今の状況でこそ、圧倒的な力を発揮する。

 

「その合計は16体! よって《超魔導剣士(ちょうまどうけんし)-ブラック・パラディン》の攻撃力は――」

 

 《超魔導剣士(ちょうまどうけんし)-ブラック・パラディン》の薙刀(なぎなた)のような武器に散っていったドラゴンの力が集まっていき――

 

「1万900ポイント!!」

 

 巨大な魔力の刃を生み出した。

 

超魔導剣士(ちょうまどうけんし)-ブラック・パラディン》

攻2900 →攻10900

 

「攻撃力1万超えだと!?」

 

 此処でバトルフェイズ中に攻撃対象モンスターが消え、更に新たなモンスターが呼び出されたことで、このまま攻撃するか、否かを海馬が選択する。

 

「さぁ、海馬! お前のシャイニングドラゴンは罠カード《バトルマニア》の効果で攻撃しなければならない!!」

 

 だがこのターンに限れば海馬は攻撃する以外の道を持たない。

 

「やれ! ブラック・パラディン!!」

 

 《超魔導剣士(ちょうまどうけんし)-ブラック・パラディン》が持つ巨大な魔力の刃が振りぬかれ、《青眼の光龍(ブルーアイズ・シャイニングドラゴン)》の極光のブレスとぶつかり合う。

 

 

 しかし攻撃力の差から《青眼の光龍(ブルーアイズ・シャイニングドラゴン)》のブレスはジリジリと押し負けていく。

 

「バカな……俺のシャイニングドラゴンが……負ける!?」

 

 此処から先がどうなるか分からぬ海馬ではない。

 

 その胸中に浮かぶのは「敗北」の2文字。

 

 己のリバースカードの1枚を見て逡巡する海馬だったが、その視線の先のモクバを視界に収めた海馬の決断は早かった。

 

「――このまま見す見すやられるくらいなら我が勝利の為に最後の輝きを見せろ! ブルーアイズよ!!」

 

 海馬のデッキを構成しているのは己の力だけではない。ゆえに勝利の可能性があるのなら例えブルーアイズを失う結果となっても止まる訳にはいなかい。

 

 足踏みして敗北するなど寧ろブルーアイズに対する侮蔑だと。

 

「罠カード《破壊指輪(リング)》発動! これにより俺は自分モンスターを1体破壊し、互いは1000ポイントのダメージを受ける!!」

 

 迫る魔力の刃が光のブレスを切り裂き、その白き龍に迫る寸前に《青眼の光龍(ブルーアイズ・シャイニングドラゴン)》の全身に奔る光のラインが輝きを放つ。

 

「ブルーアイズの命の輝きを見よ!! シャイニング・ノヴァ!!」

 

 その《青眼の光龍(ブルーアイズ・シャイニングドラゴン)》の全ての力をかけた輝きは互いのフィールドを呑み込んでいき――

 

「これで終わりだァアアアア!!」

 

 やがてその輝きは互いのライフを1000ポイント削る――つまり最後にはライフに僅かな余裕がある海馬の勝利を届ける極光となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 筈だった。

 

「カウンター罠《神の宣告》!! 俺のライフを半分払い、お前の発動した《破壊指輪(リング)》を無効!!」

 

遊戯LP:900 → 450

 

「なんだと!?」

 

 神の威光が海馬の罠カード《破壊指輪(リング)》を貫いた。これでは罠カード《破壊指輪(リング)》の効果は適用されない。つまり――

 

「ブラック・パラディンの反撃を受けな、海馬! 超・魔・導・無・影・斬!!」

 

 互いのデュエリストを襲う筈だった光の輝きは《超魔導剣士(ちょうまどうけんし)-ブラック・パラディン》の魔力の刃と接触し、膨大な魔力が籠った刃と共に光は爆ぜる。

 

 

 

 辺り一帯はその爆ぜた光に包まれ、2人のデュエリストの姿を覆い隠した。

 

 

 

 その光が晴れた先で、最後に立っていたものは――

 

 






原作では《オシリスの天空竜》と《オベリスクの巨神兵》の激突による衝撃で

世界各地のモニターがぶっ壊れていましたが


今作では「デュエルエナジー回収機構」のお陰で大丈夫です。


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