【一発ネタ】進撃の巨人×鉄のラインバレル【ナイスな展開だよ!】
-845年-
ウォール・マリアの中が人類の世界だった。
少年、エレン・イェーガーは少なくとも、物心ついたときから壁の外を見た覚えがない。外の世界は凶暴な巨人にまみれているというが、とにかく壁の外が見たい、見てみたいとひたすら願っていた。
少年の渇望に答える存在がいた。
壁の向こう側、超大型巨人、破られたウォール・マリア。
辺り一面を埋め尽くす地獄の朱。
家屋の残骸と人間の遺骸がそこらに散らばる中、目の前の巨人がゆっくりとあごを上下に動かす。
食べる、という行為はエレンも馴染み深い。
だが目の前のこれは何か違う。何かが間違っている。
なぜ自分の母が咀嚼されているのか。なぜ自分の母は今この瞬間あのギラついた歯に噛み砕かれているのか。
「あ……あ……ぅ」
情けない声しか出てこない。
エレンは尻餅をついたまま巨人を見上げていた。
やめろ。
やめろ。
やめろやめろやめろそれは食べ物じゃない俺の母親なんだぞやめてくれそれはそれは食べるな動くな嗚呼嗚呼嗚呼やめてくれ――
「エレンッ! エレンッ!!」
遠くで誰かが自分を呼んでいる。金髪が揺れながら遠ざかっていく。アルミンか。
自分は切り捨てられたのかと、どこか頭の中の冷たい部分が呟いた。きっと自分は今から、この巨人の胃の中で母親と混ざり合うことになる。
それはもしかしたら幸せなことなのかもしれない。
それはもしかしたら暖かいことなのかもしれない。
それでも、看過しがたいと、そう思う。
逃げろ。
生きろ。
ただ生存本能の叫びだけが体を動かした、瞬間。
「――!?」
巨人が鳴いた。動きを止めた。
自分たちのいるところに影が差す。上に何かいる。エレンはそれを感じて、空を見上げて。
自分目掛けて降る何かを、その視界一杯に捉えた。
押し潰される。
-850年-
「5分だ、あと5分以内にストレッチを終えなきゃサシャにパンを食われちまう」
「お前はあいつを何だと思ってるんだ……そうだエレン、お前5年前に二本角の巨人を見てやしないか?」
「二本角の巨人?」
「ああ。ひょっとして、聞いたことがないのか……」
訓練兵団の訓練場で、朝のストレッチが始まる。朝食の前の習慣だ。
草原に座って股関節を伸ばしていたエレンは、同期のメンバーであるライナー・ブラウンが発した単語に首を傾げた。
ライナーは肩を回しながら言葉を続ける。
「5年前のシガンシナ区での戦いに、お前はいたんじゃないのか? かなり多くの人が目撃したそうだが」
「いや……分からんな。巨人に角などあるのか?」
「くっ、なんだよそれ似てねぇ」
「うっせ」
こうしたストレッチもこのメンバーで行う回数は残り少なくなっている。
第104期生はすでに全訓練課程を終えている。後は成績の開示と解散を待つのみだ。どんな結果であれエレンも、またライナーも調査兵団入りを熱望しているが。
「……なあエレン」
「ん? なんだよ」
神妙な面持ちでライナーは尋ねる。
「あの日、お前は巨人を皆殺しにすると言ったな」
「ああ」
「やっぱり調査兵団に入って、その」
「壁の外に出て巨人を殺しまくる。オレはそれだけが望みだ」
そう言うエレンの目に曇りはない。その日もそうだった。こうやって誰にも分からないその眼差しの先を見据え、彼は滔々と語っていた。
夢を恥じない。彼のそういった点を、ライナーは非常に好ましく思っている。
語る内容は別にして。
「人間以外で巨人を殺したのは、その二本角の巨人が始めてなんだよ。まあ暴れまくって人間も大量に殺したし、錯乱してたんだろうってのが一番有力な説だ」
「……そうだ、それで何なんだよ、それ」
疑問に思っているのかいないのか、どうでもよさげにエレンは話題をつないだ。
なんだよ、興味なさそうだなとは口に出さずライナーも説明を続ける。
「15メートル級より少し大きいぐらいで、白い巨人なんだそうだ。ただ、全然人間っぽくない。なんていうのかな……言われ方はいろいろだけど一番メジャーなのは」
一拍。
「鬼、だな」
「……鬼かぁ」
そう言われエレンは目を細める。その様子を眺め不思議に思った。――なぜ、鬼という言葉に沈んでいるのだろうか。
エレンは答えるように口を開いた。
「人間が怪物を倒すって、相場は決まってんだ。でも現実には、人間じゃ倒せないヤツだっている。仕方のないことだ。だから……だからオレは……」
拳を握る彼の姿に閉口した。口を挟んではいけない空気をまとっている。下手に何も言わないほうがいい。
「エレン」
「ん、ミカサか」
横合いから声が割り込んできた。ミカサ・アッカーマン。第104期生の中でも群を抜いた身体能力を誇り、主席での訓練課程修了は間違いないといわれている逸材だ。
そしてそれに追随するのが他ならぬエレンであり、二人とも常人の身体能力を遥かに超えている。
「じゃあライナー、飯でも食いに行こうぜ」
「悪い、俺用事があるから」
そう言って立ち去っていくライナーを見やり、ミカサは唇を開く。
「エレン、訓練課程は終わった?」
「はぁ? もう終わってあとは成績を待つだけ……」
「ううん、そっちじゃなくて」
少し目を伏せてミカサが補足した。その言葉に、ああ、とエレンは納得する。
「一通りは、な。実戦になりゃ話は別なんだろうけど」
「……ごめんなさい、私は、大変な役目をエレンに」
「いいっての」
自然と手がミカサの頭に伸びていた。肌触りのいい黒髪を撫でてやる。
それだけで安心したようにミカサは目を細めた。気持ちよさそうな表情に思わず笑みがこぼれる。
「オレはさ、ミカサのおかげでこうしていられるんだ」
「……エレン」
「だから大丈夫だ、ミカサ。オレはまだ戦い始めてすらいねえ……大丈夫、だ」
エレンは艶やかな黒髪から手を放し、歩き出した。とにもかくにも腹ごなしだ。
隣にミカサが並ぶ。旧104期生のトップ2の仲睦まじさは有名だ。
「お、アルミンじゃねえか」
「エレンにミカサ。そっちも昼ごはん?」
「ええ」
「サシャにパン取られないうちに急ごうぜ」
さすがにそこまで食い意地は張ってないでしょ、という発言にミカサもエレンもあいまいに頷く。いまいち断言できないのがサシャの怖いところだ。
ベルトルトを見ていないなとか、アニの足技はこの間も痛かったとかくだらない話題で時間が埋もれていく。この感覚がエレンは嫌いじゃない。
巨人を皆殺しにするのが自分の使命だとは自負しているが、こうした時間は無為ではなく、何かのために積み重ねるものだと分かっているからだ。
「しっかし今期の上位10人は大半が調査兵団志望者か? ジャンとマルコぐらいだよな。憲兵団入りを希望してるのは」
「エレンにあてられた人も多い」
「うんうん。エレンはことあるごとに『巨人は悪だ。正義は巨人を倒さなきゃならない。オレたちが正義なら、巨人を殺すことが正義だ!』って言ってたもんね」
「そんな大層な言い方だったか……?」
自分の過去の発言が捏造されているような気がして、エレンは首をひねった。
意味はまあ大まかには合っている。現場の指揮官顔負けの戦意向上スピーチは、訓練中に行われるべきものではなくエレンはその度にもれなくキース教官から罰則を科されていたが。
と、向こう側から慌てて走ってきた兵士がアルミンとぶつかった。よほど急いでいたのだろう、ぶつかった双方が勢いよく廊下に転がる。
「あいたた……」
「~~~~ッ!」
「オイ、大丈夫か?」
エレンが立ち上がらせる。兵士はかぶりを振ってから、ハッとしたように顔を上げた。
「た、大変だ!! 巨人が、巨人が!」
「!」
「トロスト区だ! 超大型巨人がまた壁を破りやがった!」
『……!?』
アルミンが慌てて立ち上がる。同時に食堂から大挙して訓練兵たちが飛び出てきた。
見知った顔もいくつかあり、例外なく恐怖に歪んでいる。巨人、その存在が壁越しでなくそれを破ったこちら側にいる。そのことだけで十二分な恐怖だ。
「エレン!」
「落ち着けみんな……」
「ちょ、ちょっと待ってよ、私たちは避難するんだよね?」
同期の少女、クリスタ・レンズが前に一歩進み出た。
指示が出ていない以上、勝手に動くことは許されない。もうこの時エレンの中では確信に近い予測が組みあがっていた。ほとんど間違いなく、人員が足りない。いくらいても兵は足りない。
「分からない。何人かは戦うことになるかもしれない」
「……ッ!? おいっ、本当かよ!?」
「ジャン、あくまでもしかしての……」
「人が足りないんだ、十分にありうるぞ! 貴様らは待機していろ、すぐに追って連絡を入れる!」
兵士がつばを飛ばしながらそう言い、どたどたと走り去っていった。
残された旧104期生たちは、不安そうに顔を見合わせる。
その中で、唇をきつく噛むエレンの手に、ミカサはそっと自分のを重ねた。大丈夫と言い聞かせるように。初陣が近づけば天才二人組も動揺するのかと、逆に他の者たちは少し落ち着くほどだった。
動揺の理由がまったく違うところにあったとしても。
旧104期生の戦闘への介入は正式に決定された。
調査兵団はいない。駐屯兵団と104期生の合同部隊で、ウォール・マリアを破った巨人たちを駆逐しトロスト区を奪還する。
戦端が開かれれば何人も死ぬだろう。きっとほとんどは生きて帰れない。そんなことは分かりきっている。
「……ミカサ、オレは」
「来てくれるかどうかは分からない、でも、あなたを私は信じる」
出撃の直前に、ミカサはマフラーをエレンの首にかけてやった。
ミカサは先行部隊、エレンは後発の部隊に分けられている。旧104期生の戦意を長期に保つために。
「…………」
次々と市街地へ躍り出る同期生たちの背を見送り、エレンは歯を食いしばった。
背後から声をかけられる。
「エレン、部屋に戻るぞ。まだ時間がある」
「……ジャン、オレは」
逡巡し、前に踏み出すことも後ろに引き下がることもできない。
ただ重い後悔と迷いに足をとられている。
「なんだよお前らしくもねえ。いつものスパッとした言い草はどうした?」
「……悪い、少ししたら、戻る」
この場からエレン・イェーガーは一歩も動けなかった。あきれたようにジャンは立ち去っていく。自分の命を預けることになる立体機動装置をメンテナンスするのだろう。
エレンは動けない。ずっと脳裏に浮かぶのは、自分ごと巨人を踏み潰した白い巨体、新たな生命を得た自分、母の死を受け止められずその場で全てを――文字通り、巨人以外も含めた全てを――殺し尽くした自分。
あの日踏みにじった尊厳が、あの日巨人どもと同じ狼藉を働いた自分が許せない。
そんな自分を許す心優しい少女がいる。そんな自分を事実は知らないままだが受けれてくれた仲間がいる。
そんな環境におかれていることが、なにより許せない。
自分はこんなに恵まれているべきではない。巨人と人間の見分けもつかず、何もかもを壊しつくした自分は許されるべきではない。
「……あんた、何してんの?」
「うおっ、アニか……」
気づけば別の人間が横まで来ていた。のけぞり驚くが、すぐに気の知れた相手だと分かり安堵する。
アニ・レオンハートはフル装備のまま歩いていた。
「あんたらしくもないじゃん、そんな表情。正義の味方は廃業?」
「ッ、それ言うのやめろ」
正義の味方。
エレンがかつて憧れ願い、そして自分でぶち壊した夢。
「ま、別にいいけど。入団初日に言ってたこと、すぐに叶いそう?」
「……あの地区の巨人を駆逐しつくしても、壁の向こうにはまだまだたくさんいる。オレはそいつらも全部……全部、殺してやる」
母を千切られた怒りが、胃袋の底で沸騰し始めた。
「そうやっていつも通りのほうがあんたらしいよ。ほら、そろそろ出発の時間」
「……ああ!」
傍に置いてあった立体機動装置を装着し、超硬ブレードを手に取る。
自分にできるのはこれだけだ。自分がしていいのはこれだけだ。
巨人を殺す。
そのためだけに地を駆ける。
-845年-
少年は揺りかごの中にいた。外の様子は相変わらずの地獄。あちこちで巨人が昼食を取っている。
ただ、上からいきなり降ってきたこの鉄の塊には反応できていない。どう対応すればいいのか決めかねているのだろうか。
少年の瞳に紋章が浮かぶ。どうすれば動くのか全て分かる。
ここに来た時から、少年のひざの上には一人の少女が寝かされていた。服は身にまとっていない。そんなことを気にしている余裕はない。モニター越しということを知らないのだ、少年は幾体もの巨人の眼光に圧迫され荒く息を吐いている。
「ハァッハァッ、ハァッ……ハァッ、ハァッ」
母さんが死んだ。母を食われた。その事象だけが頭を渦巻く。
巨人はまだ動かない。自分も動かない。
少女が瞳を開けた。視線が合う。沈黙を破る。
「今のあなたは、巨人を皆殺しにできる」
「……ッ」
「今のあんたはどうすべきか、あなた自身が分かっているはず」
「お、れ、はッ」
両手のグリップを握る。
「……どうすべきかじゃない。違うよ、違う。大切なものは、違う……オレがどうしたいかが大切なんだ」
ファクターアイに暗い焔が灯る。
「オレは、あいつらを、皆殺しにしたい」
-850年-
「塔内部に先行部隊が孤立している。後発の諸君は塔を囲む巨人どもを速やかに殲滅、同士を解放せよ」
『了解!!』
各員が散開する。町の中で崩壊した家屋と、そこら中に漂う血の香りが嫌でも感覚を揺さぶる。
塔が見える。巨人の数は8。
ミカサは大丈夫だろうなと心配しつつ、最小限の噴射でガスを節約しながら一気に距離を殺した。ブレードでうなじを抉る。勢いのまま塔内部へ滑り込む。見知った顔もいくつかあった。
「エレンッ!?」
「助けに来た。もう問題はない」
「違うダメだ、罠だこれは!」
罠……? エレンが首を傾げた瞬間、塔を囲んでいた巨人たちが一斉に首をもたげる。あちこちで統率の意思なく暴れていた巨人たちが飛び跳ね集まりだす。
なるほど、ここは餌場か。この塔の中に人間を閉じ込め、これで他の人間を釣ったのか。エレンはそう分析しながらも、巨人が戦略的行動を取ったことを半ば受け止められずにいた。
「ミカサ、は」
「ぁ……」
奥のほうで声が聞こえた。
クリスタが、へたり込んで何かを視線で指し示している。床に寝かされた、見慣れた東洋系の少女。
「わた、わたしをかばって壁に打ち付けられて、どうにか運んできたけど……」
「エレンッ! 数がヤバすぎるぞ、調査兵団を待つしかない!」
後発の人間も続々と塔の内部に逃げ込んできていた。
まずい傾向だ。ミカサの脈拍をとりながら無言でエレンは外の状況を見回す。まだ巨人の数は増え続けている。50はくだらないだろう。これだけの数がいると、調査兵団が合流しても多大な犠牲は免れない。
ギリ、と歯を食いしばった。
何をすべきかは分かっている。
何をしなくてはならないのかは分かっている。
あとは踏み出すだけだ。
「……エレ、ン……」
「! しゃべるな、体の内側がひどく損傷しているようだ。手早く終わらせるしかない」
「手早く終わらせるって言ったって、どうやって……!?」
「コニーの言うとおりだ。正直言って、もう増援を待つしかないぞ」
冷静なジャンの意見にエレンは首を横に振る。それはミカサを見捨てるということになる。それは、そんんなことは、決して容認できない。
ならば再び鬼となろう。山を削り海を割る鬼神となり、例外なく愚かな下等生命体どもに死をくれてやる。
「だめ……エレン……大切なのはッ……」
「待ってよエレン、何をするつもりなの!?」
ミカサが、クリスタが声を上げる、アニも視線で引き止める。
「俺が何をすればいいのかは分かりきってる」
沈黙。
この場を切り抜ける方法などないのは明白だった。これは、エレンなりのはげましなのだろうかと戸惑いが広がっていく。
「あー、今のエレンの言葉、ミカサが聞いたら拳骨でしたよー?」
部屋の奥から声が聞こえた。サシャだ。
「ミカサ前、言ってましたよ。どうすべきかとか、どうしたら良いかより考えるべきことがあるって、それはエレンが教えてくれたって」
頭を金槌で殴られたかのような感覚。思わず足元がふらつきそうになる。
「サシャ……?」
「……ははっ、ミカサのやつ、記憶力いいんだな」
思い出す。忌むべき記憶。本当の初陣。敵味方の区別のない虐殺。
太刀を振るう度に巨人が絶命し人間が巻き込まれ、自分を中心に死の嵐が吹き荒れた。その光景を忘れることは二度とない。
そのとき、確かに自分は、ミカサに言っていたのだ。
【……どうすべきかじゃない。違うよ、違う。大切なものは、違う……オレがどうしたいかが大切なんだ】
「その通りだな、ったく」
寝ているミカサに視線をやる。
自分に力を与えた少女。
力の使い道を誤った自分を、傍で支えてくれていた少女。
どれほど助けられていたのか分からない。きっとこれからも、彼女なしに生きていくのは難しいだろう。
「大切なのはどうすべきかじゃない。オレがどうしたいかなんだ」
どうして忘れていたんだろう。どうして自棄にやっていたんだろう。大切な言葉はまだ胸の中に燻っていた。そしてミカサの胸の中で生き続けていた。
自分が自分として、口に出したことぐらい、実行できなきゃ男じゃない。
塔の外縁部へと歩き出す。巨人の手がすぐにでも伸びてくるだろう。
だがそれより先に正義が振り下ろされる。
エレンは天に手を突き上げた。
名を叫ぶ。
「来いッ――――『ラインバレル』ッッ!!!」
その名は多くの可能性を紡ぐが故に。
正義も悪も考えられない世界でこそ、純白の輝きは増す。
どこまでの突き抜ける正義ならば、果てるまでその巨躯と共に疾走し得るだろう。
全長21メートルの巨体が今、蒼空を破って顕現した。
唐突な召喚に世界が悲鳴を上げる。ぎしぎしと軋む大気。白を貴重とした機械人形が今、塔の眼前に突如降って沸いた。
「なに……あれ……」
「あれ、まさか、二本角の巨人か?」
「エレンが呼び出してた、よな……」
戸惑いの声に振り返ることなく、ジャケットをはためかせエレンはコックピットに乗り込む。表示される文字列を流し、双眸に光が宿る。
光となって疾走し、一撃で燃やしつくす。安寧を求める世界に舞い降りた異物を、いまようやく少年はその全身をもって甘受した。
「あ、んた……いったい、なんで」
呆然とした表情でアニが問う。
なぜそんなものを、なぜお前が、なぜ今になって。
それら全ての問いをエレン・イェーガーは一蹴した。
『そんなコト――俺が正義の味方だからに決まっているだろうが!』
両腕に備えた太刀を引き抜く。一振り二振り、瞬く間に死骸が積まれた。首を断ち命を撥ね暴虐の限りを尽くす。
そこに容赦は見えず、そこに迷いはない。
『仲間を背負って多勢に無勢の初陣! 本当に――ナイスな展開だぜ!!』
ラインバレルが刀を振りかざす。
エレンは歓喜の叫びと共に、ずっとずっと抱きしめてきた正義を振り下ろした。また一体、屠られていく。
その工程に淀みはなく。
人々の瞳に希望の光を降らせていく。
虐殺の現場で、狩人と獲物の逆転した世界で、エレンは獰猛に前歯をむき出しにした。
『5分だッ! あと5分以内にお前ら皆殺しにして、ウォール・ローゼから残らず駆逐し尽くしてやるッッ!!』
正義執行の剣戟は止まない。
・つづかない
・息抜きというかミカサが可愛すぎて暴発。腹筋可愛いよ腹筋
・多分肉弾戦ではミカサ≧ファクターエレンぐらい
ミカサ強すぎワロエナイ
・クリスタかばったのは多分気の迷い