この世界には永遠の命を持つ人間がいる、そんな都市伝説がある。
それはまるでおとぎ話のように現実味のない話。けれどもこの世界の人間はきっとこの話を皆知っている。

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永遠の命、なんてかわいそう

この世界には永遠の命を持つ人間がいるらしい。

 

 

「遥ぁ、最近また流行り始めたの知ってる?」

 

「何が?」

 

「永遠の命を持つヒトの話。」

 

「あー、あれかー……。」

 

 

学校の帰り道、教室で聞いた話をふと思い出した。

都市伝説のようなその話はただのおとぎ話と何が違うのか私にはよく分からない。

 

 

「あり得ないよね、永遠のなんて。」

 

「どんな内容だったっけ?」

 

「100年毎に赤ちゃんに戻ってまたおばあちゃんになって……、たしか何されても死なないって話だった気がするけど。」

 

「ふーん。」

 

「興味なさそうだね。」

 

「結構あるよ、少し考えてんの。」

 

 

永遠の命かぁ…。隣でそう呟いた遥は私の方へ顔を向けた。

 

 

「梨華ならどう?」

 

「どう、って……。」

 

 

確か昔、この都市伝説に似た物語を読んだことがある。その時思った感想を思い出しながら答える。

 

 

「かわい、そう?」

 

「かわいそう?」

 

「や、だって、ほら一人でずっと生き続けなきゃいけないんでしょ?かわいそうじゃない?」

 

 

後付けのようなその言葉。

物語を読んだ時、私はどうしてそう感じたのだろう。

 

 

「私考えたんだけどさ。」

 

「んー?」

 

「転生って、知ってる?」

 

「生まれ変わるやつでしょ?知ってる。」

 

「人間がさ、転生してるとしたらどう?」

 

「え、待ってそれ都市伝説の新たな解釈?」

 

「いや、そうじゃなくて……都市伝説の方はずっと生き続けてるんだから記憶があるでしょ。昔の。」

 

 

そうじゃなくて私が言ってるのは他の人間。

 

そう言って遥は足元の石を思いきり蹴飛ばした。アスファルトの上で何でも跳ねながら転がって行くその石を何となく目で追いながら歩く。

 

 

「でさ、永遠の命の方は自分がそうだと気付いてないとしたらどう?」

 

「ちょ、ちょっと!難しいこと言わないでよ。」

 

「あー、ごめんごめん。馬鹿なあんたのためにもっと簡潔に言って上げよう。」

 

「うわムカつく。」

 

 

学校帰り、いつも寄る近くのファストフード店に入ってその話は一旦中断。お互い別々のレジでソフトドリンクを注文する。

 

 

「で?さっきの続き!」

 

「あー、そうそう。でさ、100年毎に永遠の命を持つ人間が変わるとしたらどーお?」

 

「変わるとしたら、ってそれじゃ永遠の命じゃなくない?」

 

「だから、人間が全員転生してるのが前提。

それで100年毎に一人づつ前世の記憶を思い出すの。で、一回思い出したら何回転生してももう思い出さない……とか。」

 

「待ってよ、それじゃあ人間全員一回は永遠の命を持つの?」

 

「正しくは持っていると思えるの。」

 

 

突拍子もない遥の妄想は時間を忘れるほど面白かった。二時間ほど話してその帰り際、一言ポツリと言った言葉。

 

 

「だからさ、まるで呪いじゃない?」

 

 

何で呪いになるのか意味が分からなくてその時は流してしまっていた。

高校卒業して、大学に入って、就職して、大人になって、家族を持って……。

遥との交友は何年たっても続いた。

 

 

「あ、遥。久しぶりね。」

 

「久しぶり、元気にしてた?」

 

 

60代になっても70代になっても、遥は病気の一つもしなかった。老人ホームに入った私に対して遥はいつまでも元気だった。

 

 

「ひいおばあちゃん!お手紙来てるよ!」

 

「おてがみ……?」

 

「遥さん?が死んじゃったって!」

 

 

その手紙は遥の親族の方からで、亡くなったのは100歳の誕生日の日。

 

 

「……はる、か…。」

 

 

あのときの話は、そういうこと?呪い、ってそういうことだった?

 

100年毎に一人づつ永遠の命を持つ人間が変わるのなら、今回は遥だったのかな。

呪い、って次の一人が前世を思い出してしまうからなのかな。

それは私がかわいそうだと言ったから?

 

思い出した、思い出したよ遥。

かわいそうだとあの物語を読んでそういったのは。

 

 

あなただったんだ。

 

 

 

 

 

 

「永遠の命なんてかわいそう。」

 

 

 

 

 

 

【完結】

 




ここまでお付き合いくださりありがとうございました。

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