テイルズオブフェイシア ―己が神を信ずるRPG―   作:澄々紀行

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Chapter2  信仰讃える聖剣〈リージャ〉

 

 強烈な殺気が、ゾクリと背を撫でる。フォルセは身体を大きく捻って飛び退いた。直後、轟音と共に地面が大きく抉られる。爆ぜた土塊を横目に金髪をふわりと揺らし、殺気の方へと顔を上げる。

 

 

 視線の先――其処には一体の魔物がいた。

 

 

魔狼(ウルフ)の異常種……に近いか。一撃でも受けたら一溜まりもないな)

 

 

 フォルセの思う通り、その魔物は魔狼(ウルフ)の異常種に似た姿を持っていた。全身の筋肉は異常なほど盛り上がっており、太い血管が幾つも浮き出ている。その猛々しい肉体を後ろ足でのみ支えており、“見た目だけなら”まさしく魔狼(ウルフ)の異常種たる人狼(ワーウルフ)そのものであった。

 

 しかしその魔物は、ただの異常種とは言えぬほどに黒く禍々しい殺気を放っていた。荒く息を吐き、二度と逃さんとばかりに血走った眼で睥睨(へいげい)してくる。その様は通常の人狼(ワーウルフ)には到底有り得ないだろう――邪気に満ちた姿。

 

 

 普通なら一目散に逃げ出すか、命乞いでもするだろうが――、

 

 

(……見た目通りただの異常種なら、下すほどではないのだけれど)

 

 

 フッ、と甘く柔らかな笑みが落ちた。

 乱れたストールをゆるりと撫で、フォルセは魔物を見返す。肩の力を抜き、教会に在るのと同様に典礼の姿勢をとる。

 

 己を容易く凌駕する巨体を前に、フォルセはゆったりと構えていた。

 

 空気を震わす凄まじい咆哮を合図に、魔物が勢い良く地を蹴った。

 刹那の内に迫る存在、それをしかと眼に映し、フォルセは意識を集中させる。

 

 

「女神の名の下――」

 

 

 女神フレイヤが言葉を綴る古代文字“ヴィーグリック言語”が淡く輝き、青い光がフォルセの全身より溢れ出でる。

 

 

「――浄化しましょう!」

 

 

 敬愛せし女神への信仰をもって慈しみを浮かべながら、フォルセは高らかにそう告げた。

 

 

 

***

 

 

 フォルセ・ティティスが登山道を逸れた理由を語ろう。

 それは昨晩の出来事であった。

 

 次の日の朝に控えた最後の典礼のため、フォルセは部屋で〈始祖ユーミルの軌跡〉を読み上げていた。本を手にせずとも覚えているが、神聖なる女神の文字ヴィーグリック言語をなぞりながら信者に読み聞かせることも、神父としての務めである。

 

 古めかしい蝋燭(ろうそく)の灯りの下、丁寧に頁を捲りながらフォルセは瞳を動かしていく。

 

 

『フォルセ、御手紙が届いていますよ』

 

 

 そこにやって来たのは神父ペトリであった。己を呼ぶ声にフォルセは本を置き、一息吐いて振り返る。二、三の言葉を交わして一通の手紙を受け取り、フォルセは僅かに表情を硬くした。

 

 それは、ヴェルニカ騎士団からの報せ――端的に言えば命令書であった。封を切る。中からは二通――堅苦しい文体で書かれた書類と、急いで書き殴った、にしては長文な、見覚えのある筆跡の手紙が出てきた。書類はとりあえず置いて、手紙の方へと目を通す。

 

 

『――フェニルス霊山(ふもと)にて、ヘレティック発生。単独での任務を命ず。発見次第討伐せよ』

 

 

 手紙の冒頭は、書類の内容を短縮したものから始まっていた。やはり、と頷きつつ、フォルセは手紙を読み進める。

 

 ヘレティックとは、邪心に冒された存在のことである。

 

 人も魔物も差はあれど、その心には女神フレイヤへの信心があるという。嘗て惑星ホルスフレインを救った女神への敬愛はあらゆる生命の魂に宿っており、死した後も語り継がれていく――それが、この世界の(ことわり)である。

 

 しかしヘレティックと呼ばれる種には、その本来あるべき信心が存在しない。邪悪に染まり、女神へ背を向け、凶暴化してしまっている非常に危険な存在なのだ。

 

 人間と魔物は争う。人間側は多くの理由のため、そして魔物はただ生きるために。だが互いに無意識下で共存を保ちながら、共に生きている。

 ヘレティックはそれらを容赦も躊躇もなく踏み荒らし、破壊していく。ゆえに見つけ次第、フォルセ含むヴェルニカ騎士には討伐命令が下されるのだ。

 

 

『――追伸』

 

 

 手紙の続きにフォルセの眉がピク、と上がる。

 

 

『よう。俺、現在遠征中。我が部隊唯一の祭士(さいし)の癖に半年修行をもぎ取ってくれやがった友人フォルセ・ティティスの横っ面に労いのキスができないことが非常に残念だ……と、お前の信仰深さにほんの僅かなヒビを入れられたんじゃないかと勝手に満足しつつ、俺はペンを置く。久々の任務だろうが俺は知らない。精々任務を軽く終えて、無事帰ってこい。

 ――ブリーシンガ隊隊長テュール・スパルティーノ』

 

 

 ――グシャ。手紙を潰す音が沈黙を破った。

 

 

『…………、態々ありがとうございます、ペトリ様』

 

 

 手紙を読み終わり、フォルセはペトリに礼を言った。透けるような笑みで手紙を畳み、屑カゴヘ小さく小さく千切っては投げ、千切っては投げを繰り返す。その行いは同封された書類の方こそが正式なものであると知っているためだ。ゆえに問題など皆無。容赦など皆無。

 

 

『それは討伐……それもヘレティック討伐の命令書だと聞いています。フォルセ、本当にお一人で大丈夫なのですか?』

 

 

 心底から案じているのだろう。ペトリの表情は暗く曇っている。しかしフォルセは安心させるように笑みを返し、口を開いた。

 

 

『ご心配痛み入ります、ペトリ様。でも大丈夫、これでもヴェルニカ騎士団の端くれですから』

 

『ですが貴方は剣をお持ちになっていない。貴方の法力の強さは知っていますが、修練とはいえやはり帯剣なされた方が良かったのでは……?』

 

『司祭としての修練に剣は不要です。それに規律ゆえの所属とはいえ、僕がヴェルニカ騎士団の一員であることは歴然とした事実。その上で個人的な聖地巡礼や教会への修行をという我侭を申し出ているのですから、急な命令に対応することも承知の上です。

 ……一応、単独行動を許された“祭士(さいし)”の位を賜ってますし、隊長の期待にも御応えしないと』

 

 

 ヴェルニカ騎士団員は全て、フラン=ヴェルニカ教団の者で構成されている。その内、フォルセのように聖職との兼任をしている者も少なくはない。

 

 騎士団での階級名では、聖職兼任者は“祭”の文字を冠し、騎士団へ完全従事する者は“修”の文字を冠する。

 

 隊長の他、兵卒を纏める者、それらを纏める者、更にそれらを纏め隊長へ直接報告する義務を持つ者、と騎士団内での地位は様々だ。そんな中でフォルセは、隊長より単独任務を命じられる立場にある。それを表す階級名が“祭士(さいし)”なのだ。

 

 

 フラン=ヴェルニカ教団司祭、そしてヴェルニカ騎士団ブリーシンガ隊所属祭士(さいし)

 この二つが、フォルセの職務上での地位であった。

 

 

『厚い信頼があるのですね……わかりました。もう何も言いません。貴方のことを私も信じましょう。明日は快く送り出したいですから』

 

 

 教団員の殆どは騎士団への従事を経験している。ペトリもまた、若き頃は騎士団にて任務に励んだ者だった。既に退役しているとはいえ、己の知る祭士(さいし)という階級の者を思い起こしたのだろう。これ以上の心配は逆に負担になると考えたのか、ペトリは続きかけた言葉を呑み込み、代わりに自身もフォルセを信頼するという旨の言葉を伝える。

 

 

『……ありがとうございます、ペトリ様』

 

 

 ペトリの心情を読み取り、フォルセは珍しく子供のような笑みでそう締めくくった。

 

 

 

***

 

 

 地を揺らす轟音が森に響く――恐ろしい両の腕が一撃、二撃、三撃と降り下ろされる。連なった岩を粘土のように抉り、木々はまるで小枝でも折るように薙ぎ倒していく。鬱蒼としていた筈の森は、木々が無惨な姿となる度に皮肉にも拓け、明るくなっていった。

 

 恐ろしきヘレティックの猛攻。フォルセはそれらを見切り、かわしていた。その結果が美しい景観の崩壊に繋がっていることを申し訳なく思いながら、腰の荷物袋から金縁のルーペを取り出し、(かざ)す。

 

 

「――やはり、光に弱い。見ずとも良かったか?」

 

 

 普段と変わらぬ柔らかな声色でフォルセは呟いた。

 

 そのルーペ――スペクタクルズは、対象のマナを乱す、或いは正す属性を読み取る道具だ。生物のマナに属性は存在しないが、マナに干渉する――簡単に言えば、苦手であったり耐性を持つ属性は必ず存在する。

 

 光に弱い、つまりフォルセの目の前にいるこのヘレティックには、光属性の攻撃を仕掛ければ良いということだ。

 

 逃げるフォルセに苛立っているのか、ヘレティックの動きは徐々に荒く、より攻撃的となっていった。避けきれぬ巨岩に向けてフォルセは手を(かざ)し、光の障壁によって直撃を防ぐ。粉砕され飛び散った岩の欠片が頬を掠めるも、気に留めることはしない。

 

 大きくバックステップした所で、フォルセは立ち止まった。背に触れるは崖、周囲には薙ぎ倒された木々、平坦だった地面は飛び散った岩片によって無惨に変貌している――逃げ場は、もう無い。

 

 犬歯を剥き出しにした口がどこかニヤリと笑ったように歪んだ。それは獲物を捕らえた喜びへの確信。直後、ヘレティックは鋭い爪をフォルセに向け、驚異的な速さで飛び上がった。

 

 

 

***

 

 

『ヘレティック種は、その多くが光と闇の属性を苦手とします』

 

 

 神父とは何も典礼を成すだけの存在ではない。学びを求める者へ知識を授けることもまた、神父としての勤めである。

 

 いつのことだったか。教会の幼き修行者達を前にし、フォルセもまた授業を行ったことがある。己の掌に太陽を思わせる光球を出現させて、フォルセはある世界の不変の真理について語り出す。

 

 

『それが、ヘレティック種討伐の多くがヴェルニカ騎士団によって請け負われている理由です』

 

 

 もう片方の掌に、今度は夜を濃縮したような黒球を生み出す。光と闇――双方の球を合わせれば、それらは朝焼けとも夕焼けとも言える不思議で淡い空間を成して、静かに霧散した。

 

 

『魔術は自然要素たる四大を行使する術。己のマナをもって星の(ことわり)を謳い、地水火風の力を紡ぐ大いなる御技。

 では――清浄を司る光、静寂を担う闇。この二つを行使するにはどうすればよいのか?

 ……己がマナを、神に捧げるのです』

 

 

 胸の前で手を組み女神フレイヤに祈りを捧げれば、聖なる青の粒子が身体から放たれた。輝き、収束して空へ溶ける。

 

 そして青き粒子――解放されたフォルセのマナの代わりにやって来たのは、正しき祈りを認めた女神の慈愛、光と闇を織るための聖なる力だ。白く輝くその力は、フォルセの身体に溶け入り、体内のマナが巡る道へと流れていく。

 

 それこそがフォルセの求めた――偉大なる女神の力。

 

 

『女神フレイヤに祈りましょう。捧げましょう。愛しましょう。女神フレイヤは慈愛の神。なればその眼は等しく我らを見つめ、その加護を授けて下さるのです』

 

 

 フォルセは歌うように言葉を放った。幼き修行者達を見下ろす二対の緑玉は、どこか恍惚とした色を帯びている。両手を広げ、眼下の者共に自身と同じ解放を促して、女神へと捧げる祈りのマナを導いた。

 

 

『さあ祈りましょう、平和への軌跡を。誰もが等しく愛せる美しき世界を。そして女神が慈愛、光と闇、法術の源――“リージャ”を授かるのです』

 

 

 

***

 

 

「――光よ」

 

 

 その一言が空気を震わせたのを合図に、柔らかな金髪がふわりと舞った。

 

 

「フォトン!」

 

 

 淡く輝く手を払い、清浄なる光の召喚を命ずる。大気より出でし光の粒子――それは間近に迫ったヘレティックの腹部にて集束し、大きく弾けると共にその巨体を後方へと押し退けた。大気を震わす断末魔が響く。まとわりついた禍々しき気は次々に霧散し、筋骨隆々たる肉体には幾つもの風穴が開けられていった。

 

 リージャ――女神フレイヤへの信心によって得られる聖なる力が、悪しきヘレティックの肉体を浄化しているのだ。

 

 吹き飛ばしたヘレティックを追ってフォルセは素早く踏み出し、焼け焦げた懐に飛び込んだ。目標も定まらぬままに降り下ろされた豪腕を、リージャの障壁ではね除ける。

 

 苦痛に歪むヘレティックの面を、フォルセはしかと見据え、両手を防御から攻撃の型へと移行した。漏れ出る青い光が稲妻となって弾け飛び、バチバチと鼓膜を弾くような雷鳴が森中に響き渡る。

 

 

「セイバースティング!」

 

 

 剣でも扱うように腕を振り払う。幾本もの雷が前方へ放たれ、ヘレティックの肉体を更に焼き尽くしていった。四肢は千切れ、辛うじて皮一枚で繋がる部分もあるが、鋼のような肉体は最早使い物にならないだろう。耳をつんざくような咆哮が、その苦痛の様を表していた。

 

 後方へと押し退けられたヘレティックは、どう、と音をたてて倒れ伏した。だがこれほどまでに肉体を損傷してなお、その敵意は衰えていないらしい。ヘレティックは尚も立ち上がろうと足掻き、唸り声をあげる。(もや)のように漂っていた黒い気が濃さを増し、焼け焦げ、裂傷の数々を帯びた肉体を瞬く間に再生していく。

 

 驚異的な再生能力――僅かに動きを止めたフォルセは、それを見て柔らかく目を細め、後方へと飛び退いた。

 

 青く光る陣がフォルセの足元に築かれ、体内のリージャを集束していく。大気は震え、渦巻く風が彼の髪や服を舞い上げていく。

 

 

光明(こうみょう)導く眩耀(げんよう)の使徒……」

 

 

 神の代行者の唇から詠唱が紡がれる。翡翠の瞳が、慈悲深き“無慈悲”に開かれた。

 

 

「――レイ!」

 

 

 高らかに告げられた言葉と共に、ヘレティックの頭上に眩いほどに輝く光の球が出現した。フォルセが腕を降り下ろす。それを合図に光球から幾本もの光線が放たれ、ヘレティックを貫き消滅させていく。

 

 

 怒りに満ちた咆哮が、清浄な大気へと溶け、生と共に消えていった。

 

 

 

***

 

 

 断末魔の余韻が消え、光球が霧散した頃、漸く辺りに静寂が戻った。

 

 戦闘によって僅かに昂った精神を愚かしく思いながら、フォルセは己の頬に手をやった。岩の欠片によって血の滲んだ部分を、簡易な治癒術によって癒す。血を拭いながら視線を向ければ、ヘレティックの死体が徐々に粒子となって消えていく様子が見えた。

 

 が、そこに見慣れぬ物体を見つけ、フォルセは小さく首を傾げた。消えゆく死体に近付き身を屈め、“それ”を注意深く拾い上げる。

 

 拾ったそれは、禍々しい色を帯びた小石大の宝石だった。

 

 

「ん? これは――っう!?」

 

 

 深淵を思わせる妖しげな赤と黒、生きているかのように渦巻く内部は酷く薄気味悪い。だがその宝石は、触れた部分から何故か白く、そして透明になっていった。フォルセは驚き、思わずそれを手放した。暫し硬直。後、地に落ちた宝石をまじまじと見つめる。この妖しい存在は何なのだろうか。まるで己のリージャが震えているようだと、フォルセは疑問に思う。

 

 

「ヘレティックからこんなものが出るなんて。今まで見たことの無い宝石だ……報告、した方が良いかもしれないな」

 

 

 言うものの、触れて変化するそれをどう持ち帰るべきか。何か反応が起きて本来の性質が失われでもしたら、持ち帰る意味をも無くしてしまうやも知れない。顎に手をやり、フォルセは思考の海に沈み、考える。

 

 

(何か袋…………あぁ思い付いた、いや思い付かないな。他に方法は無いかな)

 

 

 暫く考え、フォルセはある一つの方法を思い付き、そして否定した。思考の海に再び沈む。浮かぶ。退ける。沈む。浮かぶ。退ける。沈む。沈む。沈む。沈む。

 

 どれほど沈んでも、思い付くのはただ一つの方法だけだった。

 

 

「…………仕方ない、荷を少なくしたのは僕だ。今度からは空袋も用意しよう」

 

 

 思考終わり。フォルセはとうとう観念し、深く深く息を吐き出した。

 

 

「ああ、女神フレイヤよ。創造物を無駄にすることを御許しください……」

 

 

 できるだけ美味しく頂きますから、と沈痛な面持ちで呟くと、フォルセは腰の荷物袋を手に取り、中のグミを全て取り出した。僅かに躊躇し、意を決し一口にそれらを食べる。二種――アップルとオレンジ味――のグミを食べても市場で売られるミックス味とは違うのだと、フォルセは不本意ながら初めて知った。

 

 

(この食感、圧迫感……やっぱり、好きになれない……んぐっ、うぅ……)

 

 

 今にも泣き出しそうな顔で口をもごもごさせつつ、フォルセは落とした宝石を素早く拾い空にした袋へと放り込んだ。苦肉の策、少々グミ臭くなってしまいそうだが手で持っていくよりは大丈夫だろう。でなければ己もグミも報われない――そんな悲痛な叫びが心中で木霊する。

 

 

「…………早く戻って美味しいものが食べたい」

 

 

 少々目的を見失いつつも、フォルセはすっくと立ち上がった。

 

 進もうとした矢先、木々が薙ぎ倒されたことで拓けた光景が映る。偶然にも太陽が雲に隠れたその瞬間、遠い先、彼方の向こうに、フォルセが向かう地、フラン=ヴェルニカ総本山グラツィオの雄々しき影が見えた。豆粒ほどの大きさだ。雲が退き、日の眩しさゆえにその影を見ることはすぐに叶わなくなってしまったが、それでも柔らかな懐かしさが、フォルセの心を癒していく。

 

 

 フォルセはおもむろに手を(かざ)し、己のリージャを最大限に奮った。暖かな治癒の光が森に降り注ぐ。倒れた木々からは青々とした新たな命が生まれ、荒れた地面からは何もかも受け入れると言いたげな強い包容力が感じられる。

 

 

「さて……行こう」

 

 

 この地はマナも豊かだ、程無くして戻るだろう――蘇る兆しを見届けて微かに笑い、フォルセは予定通りグラツィオに向けて歩き出したのであった。

 

 

 




2013/12/01
2014/04/09:加筆
2014/09/06:修正
2016/11/09:フォルセの戦い方ちょっと修正
2016/11/13:ハーメルン引越し
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