↓ ↓ ↓ ↓ ↓
「ーーそうか。貴様が【バーサーカー】を倒した人間か」
月光が照らす高き塔の頂上。
穏やかに流れ消えて征く夜風の中、黒を纏う皇帝は目の前の宿敵を黄金の瞳で睨む。
敵に対して皇帝は怒りも恨みも抱かない。
何故ならそれは皇帝にとって『有り得ない』ことだから。
彼女は美しい物を愛した。
何よりも、誰よりも、世界の美しさを愛した。
ならば美しい宿敵を、どうして恨むことができようか。
それ故に皇帝は剣を取る。
赤く燃え盛ったかつての姿からして、今は見る影も無くなった自慢の一振りであったが、それもまた皇帝の中では美の1つの在り方である。
滅びは美しい。
人間は死ぬ時こそ最高に美しいのだと、何処ぞの芸術家が言っていた。
文明は滅ぶことにこそ意味があると、何処ぞの大王は言い放っていた。
滅びとは在るべきもの逃れられない終着点にして、そして美の境地。
ならばそれは自分が与えるべきものだと、漆黒の皇帝は迷う事なく確信する。
剣を振り上げる。
燃え盛る炎は果たして何色であるか。
かつての彼女の出で立ち同じ赤であろうか。
それとも、今の彼女を顕す黒であろうか。
どちらにしても同じこと。以前からして皇帝は暴君であった。
赤であろうか、黒であろうが、他の者達がそれをどう思うが関係のないこと。
美しさとは『彼女』が決める理。
ならばその理に、他の者が付け入る隙間など無い。
「醜いのね」
宿敵である人間の小娘は小さく呟いた。
皇帝が何よりも聞きたくなかった、自分以外が口にしてはいけない言葉を冷ややかに、冷淡に。
凍りついてしまった皇帝の心に火が灯る。
熱く滾る情熱の炎ではなく、否定し侮蔑し認めない怨嗟の炎。
それが今、形となって皇帝の剣に纏わり付いていく。
「とく
そして振り下ろされる刃。
まもなく少女の身体は真っ二つに分断され、その身体は魂ごとこの世から姿を消すことだろう。
紛いなりにも英霊である皇帝の一撃に、ただの人間である少女が耐えられる筈も無い。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
ーーそうお思いですか?
確かに、避けられる筈はありません。防げる筈がありません。
ただの人間が英霊の一撃を止めてみせるなど、そんなことが許容されてしまっては今まで人類が積み上げてきた人類史が焼却されかねない。
しかし、この世には三竦みの法則があります。
人は化物に殺され、化物は英雄に殺され、そして英雄は人に殺される、
全く理不尽で身勝手で醜悪な真理ではありますが、これは否定できない真理。
⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒×
⇓ ⇒⇒⇒○
「きさ、ま……」
冷え切った筈の皇帝の顔に浮かぶ焦燥の念。
振り下ろした筈の刃は止められていた。
宿敵にではない。ならば刃を止めたのは誰か。
それは『世界』である。或いは、『理』であり、旧世代の人々が言う神である。
目の先で動きを止めた刃を見据えながら、宿敵は笑いもせず冗談のような言葉を口にした。
「だけど貴女のことは嫌いじゃない」
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
これより始まるは外典の聖杯戦争。
呼び出された英霊の霊基は皆不安定。もしくは半英霊とも呼べない、紛い物ばかり。
何処の記録にも残らない、枠から外れた延長線の物語。
終わりは既に決まっている残酷な英雄譚である。
〇後書き
真に勝手ながら、今回で一度投稿ペースを緩めようと思います。来年はどうにも多忙で今のままでの投稿スタイルだと不安定にも程があるので、定めた日数で一気に投稿する、というスタイルに変えようと思っております。
予定としては2月~3月までにいっきに20話程。
ネタ切れというわけではなく、現在進行形でネタのストックは溜まっておりますのでご心配なく。(実際、FGОのクリスマスやら7章やら最終章の魔神柱狩りやらで書いてる暇がなかったのも事実。すいません)
書きたいことはまだまだ山ほどありますので、こんな二次創作をお情けで読んで頂いている読者様方には申し訳ない気持ちでいっぱいです。
それではよいお年を。