Fate/ragnarok Change   作:フーリン式

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交易弾丸(通算17話)

 

 

 彼曰く、成功者というのは本当の意味で賢しい者である。

 

 相手がどんな言葉を求め、どんなことをされたら悦び、どんな未来を望むのか。

 それを相手が口にするよりも早く予測し準備できる者こそが未来の成功者に成り得るのだ。

 故に、自称成功者である彼はこんな辺境の地でも自分の成功の為に笑う。

 そうすればする程、相手は好意的に接されると思って安心するからだ。

 

「いやぁ、ミスターヴェンジャー。貴方がこんな所に来てくださるとは思わなかった」

 

 昼下がり。壁の無いテントの下でずっと来訪者を待ち続けていたガタイの良い傭兵は、目の前に座するサングラスの男に好意的に接する。

 つい10分前に交渉を始めた2人の男の周りには常に5名程の銃を持った傭兵が取り囲んでおり、明らかに陣営としてはガタイの良い方の男の配下だと判断できる。

 すぐに殺し合いが起きそうにはないが、それでも傍から見る者からすれば物騒なことこの上ない。

 

「いえ、所要がありましてね。そのついでで此処に立ち寄ったんですよ」

 

 サングラスを掛けた男は中東アジアの高気温の中全身をスーツで固めており、それでも涼やかな笑みで『お客様』と対話する。長い脚を組み爽やかとも不敵とも取れる笑みを浮かべるその姿は何処ぞの映画俳優さながらだ。

 勿論、彼は本当に映画俳優という職業に付いている人間ではない。

 最も、彼の職業自体は映画の題材にされることは多いのではあるが。

 サングラスを掛けた男は不意に地面に置いてあったスーツケースを持ち上げる。身体を動かした瞬間、周りの傭兵達から銃口を一斉に向けられたが、頭と思われる対面している傭兵が制してくれた。

 そんな対応にも、自分の職業を考えれば仕方のないことだとサングラスの男は不快感さえ覚えず納得し、やがて小さなテーブルの上に置いたスーツケースを慣れた手付きで開いた。

 周りの人間全員の目に触れるように開かれたそれの中に入っていたのは、何十枚かの契約書である。

 

「対空砲に戦車、戦闘機……ご注文頂いた商品は全てご用意致しましたよ。集めるのにはそれなりに苦労しましたがね。私もこの内戦に心を痛める1人だ、勿論協力させて貰いますとも」

 

 心にもない事を大仰な素振りで言って見せ、天才科学者でありながら武器商人であるヴェンジャーは片手間といった調子で契約書の束を取り出し傭兵に投げる。

 

「ご確認下さい」

「……」

 

 傭兵もヴェンジャーのことを知らない訳ではなかった。

 天才の次に変人と呼ばれる目の前の男は、米国では連日ニュースに出るような有名人。技術分野のカリスマにして、また八枚舌で人を惹き付ける別の意味でのカリスマでもある。

 下手な言葉を交わしてしまえばそれを言質に此方が損をする状況を作られるかもしれない。

 そう危惧したガタイの良い傭兵は、まずは何も言わずに契約書に目を通し、終わった頃に何も不備がないことを確認してまずは息を吐いた。間違いなく安堵の溜息だ。

 

「確かに確認しました」

「フフッ。随分と肩に力が入りながら熟読されていましたが、私はビジネスについて嘘は憑きませんよ。女性と同じで、仕事も嘘が嫌いですから」

 

 振る舞われた温い珈琲を口に啜りながら軽い冗談を言う武器商人の姿に肩の力を抜きながら、憲兵は纏めた書類をテーブルの上に置き直す。

 

「それで商品は今何処に?」

「海路で輸送中です。今頃港に着いている頃でしょう。私の電話1つで1時間以内に運ばせることが可能ですよ」

「それはそれは仕事が早い。流石は今最も勢いのある武器商ですな」

「その肩書はあまり好きではありません。今最も勢いのある美男子、とかどうです?」

 

 談笑を続ける2人の男達の様子は、これから夕食でも一緒に取りそうな友人のそれだ。

 実際、何事もなければ2人はそうしたことだろう。

 そんな和やかな雰囲気を変えてしまったのは思い付いたかのような武器商人の1言が原因だった。

 

「で、あの黒い要塞はいつからあるんです?」

 

 ヴェンジャーの問の後、場は長い静寂に包まれた。

 それまで殺気立っていた傭兵達も一瞬の内にまるで抜け殻のように肩から力が抜けてしまい、ヴェンジャーの目の前に座る傭兵もまた常時ならざる焦点の合わない双眸で首を傾げる。

 

「……はて?なんのことですかな?」

「……」

 

 

 ヴェンジャーは予測する。今現在起きている事実を、己の有している情報を元にして。

 傭兵達は惚けているわけではない。恐らく、魔術による認識錯誤の術を受けているのだろう。

 聖杯戦争に参加していながら化学側に立つヴェンジャーが何故それを見破れたかというと、要因は傭兵達の眼に在る。

 そう、眼の色が変わっていたのだ。元が何色であろうと関係無しに要塞の話をしてからすぐ光を反射させない紫色に。

 何者かは判らないが、傭兵達がヴェンジャーと会うよりも前に他の聖杯戦争参加者に何らかの魔術を付与をされているのは明らかで、故に此処が既に敵の術中であるのも明確。

 早々にこの場を離れなければならない。

 そう思って立ち上がった武器商人の背中に、直ぐ様悪寒が走る。

 

 

 その場にいる誰もが異変に気付くよりも早く、武器商人の背後に立つ傭兵が両手に持っていたサブマシンガンの銃口を無防備な背中に向けていたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

「ぐぁっ!!?」

 

 

 悲鳴を上げたのは武器商人ではなかった。

 サブマシンガンを握ってきた腕を剣の鞘で打たれ、苦悶に顔を歪めていたのは、ヴェンジャーに銃口を向けていた傭兵だったのだ。

 目前で起こった異変に気が付き、ヴェンジャーの目の前にいるガタイの良い傭兵も含め、傭兵達の重厚が一斉にある一点に向けられる。

 手首を抑えている傭兵の傍らに立つその存在は、武器商人と同じく新品の黒のスーツを着た、銀髪細目の二刀の女剣士であった。

 

「……」

 

 刀に付着した、傭兵のものかと思われる血を拭いながら少女は無言である。

 金のメッシュが入った銀髪に大きさや形が全く違う二刀の使い手。その姿はまるでフィクションの存在のようで、更に彼女の登場の仕方を思い出してみればそれもあながち否定できないようにも思える。

 

 ━━女剣士は一瞬にしてこの場に現れた。

 

 元々は何も無かった空間に、突如として現れ、傭兵の手首を流れるような手付きで強打した。

 幽霊。怪物。そのどれとも取れないような出で立ちの女に傭兵のうちの1人が構わず銃弾を発射しようとしたその瞬間、1人慌てず沈黙を保ち続けていた武器商人が漸く口を開く。

 

「ストップぅ。ストップストップストップっ。止まれ。君達1回止まれ。深呼吸をしろ、深呼吸を」

 

 手を叩き、ただ落ち着けとこの場を諭す。

 異常度で言えばこの男こそが誰よりもそうなのではないか。傭兵達の誰もがそう思い冷や汗を掛かざる負えない状況に陥ってる中、商談を受け持っていたガタイの良い傭兵が銃口を下げないまま武器商人に問い掛ける。

 

「ヴェンジャー殿っ!これはどういうことだ!?どういう状況なのだ!?」

 

 この場で最も慌てふためていたのは意外なことに訓練において強靭な精神を持っていそうなガタイの良い傭兵だった。否、強靭な精神を持っているからこそそれが砕かれた今誰よりも取り乱してしまったのかもしれないが。

 とにかく極度に混乱しており今にもその銃口はヴェンジャーにも向けられそうであったが、スーツの女の一瞥がその行為を許さない。

 ただ睨みつけるなんてものじゃない。

 ハイライトの薄い金の瞳が、見据えている。 

 一歩でもその男に手を出せば、この地に伏した傭兵よりももっと報いを受けることになると。

 

「ッ!!?」

 

 認めたくはなかったが傭兵は自らの恐怖を認め、ただ銃を手から落とすしかなかった。

 他の傭兵達もまた同じである。

 下手に動けば殺される。しかしだからといって今更降伏したところで何になるというのか。

 敵の目的はわからないし、正体も掴めていない。

 ならばどう命乞いをすれば見逃してもらえるのかとガタイの良い傭兵が必死に無い頭をフル稼働していると、武器商人は不意に立ち上がりーー女の頭を軽く小突いた。

 

「っっ!?いっだぁっ!?な、何するんですかマスターッ!?」

 

 小突かれた瞬間にそれまでのキリッとしていた表情は女剣士の顔からは一切消え去ってしまい、代わりに泣きべそをかいた少女の表情(それ)が現れる。

 斬られる。あの武器商人は間違いなく殺されると誰もが思っていたが、いつまで待ってもヴェンジャーが女剣士に殺されることは無かった。

 それどころか武器商人ヴェンジャーは更に2、3発といわず5、6発女剣士の頭にチョップをかましていく。

 

「お前は、僕の、商談を、パーに、する、つもり、か」

「いだぁっ!?いだぁぁっ!?やめてくださいっ!!あ"だま、割れるっますぅ!!」 

「1回割れろ。特別に僕が作り直してやる。セラミック製でな」

 

 ヴェンジャーと少女の会話は2人以外には判らない。

 何しろ2人は『英語以外の言葉』で話しているのだ。しかも女の方には相当の訛がある。

 誰か早くこの状況の解説、あわよくばどうにかこの状況を解決して欲しい。

 そう中心人物のガタイの良い傭兵が胸の内で願っているところに、ヴェンジャーは腕時計を一度確認してから笑みを返す。

 

「あぁー、えぇっと、その、なんだ。えぇっとだな、皆さん。つまり僕が、何を言いたいかと言うとですね……」

 

 魔術世界の存在を知らない傭兵達に対し、必死に何かを上手く伝えようと身振り手振りを行うヴェンジャーだったが、やがて諦めたように肩を竦めたのだった。

 

「命が惜しかったら逃げた方がいい」

 

 

 ーーヴェンジャーの忠告も虚しく、天空から飛来した何者かによって傭兵達の野営キャンプ地は、次の瞬間更地と化した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ますたぁっっ!!」

 

 凄まじい衝撃波の中、呼ばずとも此方に向かって駆け込んで来る影。確認せずともそれが自身のサーヴァントだと理解し、ヴェンジャーは躊躇うことなく手を伸ばし、その身体は衝撃波から退避するように上空へと投げ上げられた。

 

 

「うぉっ!?」

「すぐ落ちますっ!舌噛まないでくださいっ!!」

 

 やけに丁寧な言葉で忠告を口にしながら、二刀の女剣士はヴェンジャーの身体を抱えて空を跳び、地面に姿勢を低くして着地する。

 ほぼ滑り込むようにして成功した着地の後、両腕で抱き抱えていたヴェンジャーを容赦なく地面に放り投げると、女剣士は直ぐ様両腰に下げていた2刀を抜き、振り被り様に薙ぎ払う。

 

 女剣士の一撃は神速とまではいかなくても並以上の剣捌きではあったのだが、それでも天空から飛来し、ヴェンジャー達を強襲した襲撃者は軽々とその一撃をいなす。

 その右手に持った紫の輝きを放つ黒き魔剣によって。

 

「ーー」

「ーー」

 

 一瞬、両者の間に沈黙が保たれる。 

 その間にヴェンジャーのサーヴァントである女剣士は確かに目にした。己が敵の姿を。

 氷を連想させる白き髪に、緩むことのない冷めきった表情。茨の巻き付いた魔銀の鎧は見るからに強固な一品であり、彼女は即座に自分の剣では傷1つ付けられないと確信する。

 神話の英雄。その姿が、その出で立ちが、手にしているその魔剣が語らずとも敵の素性をそう告げている。

 サーヴァント。一目目にした時から、そんなことは判っていた。

 

「マスター!!其処から動かないでください!!」

 

 女剣士は再度己の主に静止を言い渡し、両手に持った2刀で斬りかかる。

 辺りはもはや更地だ。地の利を活かすともなれば、もはや衝撃波で噴出した砂塵を使う他ないのだが、女剣士はお構い無しに真っ向から斬りかかる。

 正々堂々、小細工無しで、女剣士は初のサーヴァント戦に挑もうとしているのだ。

 その在り方に勇者なら誉有りと微笑を浮かべるだろう。

 強者であれば愚かと鼻で笑うこともあるだろう。

 しかし彼女の敵の反応はどちらでもなかった。

 ただ、冷え切った赤色の瞳で敵を見据えるのみ。現れた時から、魔剣の騎士は一度たりとも表情に機微の変化も見せていないのだから。

 

「見事な打ち込みだ」

「ッ!!」

「しかし、本領を発揮しなくては私には届かないぞ」

 

 決して卑下している訳ではない。しかし冷血なる魔剣士の言葉は、結果的に英霊である女剣士を馬鹿にしているとも取られる言であった。

 それを挑発と取った女剣士は握り締めた2刀に更に力を込める。

 

「これ、でもーーッ!!?」

 

 有り余る限りの膂力を尽くして女剣士は魔剣士を刀で押す。

 押して、いるのだが。

 Dランクというサーヴァントとしては低い筋力ランクではあるが、それでも人間を超越した英霊の一撃だ。受ければ誰であろうとたじろぐなり、反撃するなり行動を起こすものだろう。

 しかし、動かない。

 魔剣士は現れた時から凍てついた表情を何1つ動かさないで、片手で握った魔剣で難なく女剣士の2刀を抑えているのだ。

 その事実に、女剣士は同様を隠せない。

 

「な、なんで……」

 

 防御されるのはいい。防がれるのもいい。生命体である以上、個体差が出るのは仕方のない事実だ。

 

 ーーしかし、何故反撃して来ない?

 

 そんなことは学のない頭でも、軽々と押し返してくる剣捌きを見ればすぐに理解できる。

 単純に追いついていないのだ。女剣士の刀が、魔剣士の魔剣の域に。

 故に、反撃すらしてもらえない。

 

「なめ……なめるなぁぁぁぁあああアアアッ!!」

 

 スキルではない、半ば無理矢理の魔力放出。言い換えれば、体内に循環している魔力のリソースを筋力へと転移させたただの筋力増加である。

 大凡ランクC+、並の英霊以上の筋力で再度振り被り放たれた2刀の一撃は、

 

「ーー」

 

 蝿叩きで蝿を叩くかのような気楽さで、結局相手の息1つ乱せずに打ち払われてしまった。

 それは魔剣の力でも、魔力によるバックアップで押し負けた訳ではない。何しろ襲撃者と思われし魔剣士はこの場に来てから一度も神秘の力を発揮してはいないのだから。

 単純に、技術で、技量で、腕力で押し負けてしまっただけなのだ。

 

「ぐ、くそぉおおおおおおおおっ!!!!」

 

 出血を引き起こしてしまうほど歯を食いしばって再度2刀が振り被られる。もはや女剣士の攻撃は怨敵を目にするような尋常ならざる殺気を放つ一撃であり、その瞳には数刻前まで確かに宿っていた冷静さは微塵も宿っていない。

 抱くのは英霊としての誇りか。詰まらぬ自尊心か。

 女剣士自身も含めて誰にも正しい判断は付かぬまま、歪んだ憤怒を纏った一撃は見事魔剣士の腕に激突する。

 

 と言っても、魔剣士が自ら腕を差し出して2刀を防いだ形であり、その光景を目にして女剣士は今度こそ動きを止めたのだが。

 

「謝罪する。何が気に触ったかは判断しかねるが、こう私の身体はどうにも頑丈でな。詫びとして腕の1本も差し出してやろうにもできんのだ」

 

 冷血で、冷徹な、真面目な表情。

 しかしこれは冗談だ。

 そう判断して益々今の状況が判らなくなり後退する女剣士に入れ替わりで、恐れ知らずにもそのマスター・ヴェンジャーが臆することなく前に出る。

 

「やぁやぁ。うちのへなちょこ剣士がとんだご無礼を働いたようだね。是非、詫びがしたい。君、名前は?」

「不可解な男だ。率直に言って、答えられる筈がないだろう」

「確かに。これはそういう戦争だ」 

 

 理性を半ば失って刀を打ち付けていたサーヴァントとは打って変わって至って冷静に、商売時の笑顔で人外と会話を始めるヴェンジャー。その姿に彼のサーヴァントである女剣士が誰よりも驚いており、この中で誰よりも騒ぎ立てている。

 

「ま、マスターっ!?前に出過ぎです!危ないですよ!?」

「五月蝿いぞ役立たずサーヴァントめ。お前こそ後ろに下がっていろ。此処からは大人と大人の会話だ。小娘は黙って今日の晩御飯のことでも考えておけ。好きなものを食わせてやる」

 

 流石は大企業の社長であり、日夜フライデーに追い掛け回される色男、女の扱いには慣れているのだろう。言葉と人差し指で喚く自身のサーヴァントを黙らせると、続いて襟を正し、流石に緊張を懐きながら目の前の『存在』を目にする。

 今までの人生で、ヴェンジャーは『大物』と呼ばれる人物達と何度も巡り合ってきた。有名メジャーリーガーやハリウッド女優、同業者の大老達に至るまで、様々な人種と職業のプロフェッショナルと邂逅を果たしてきたが、今日程の緊張を味わったことがない。

 銀色の装甲を身に纏う、現実感の無い魔剣士。

 映画などのフィクションの世界でしか恐らく見る機会の無い相手が目の前に居るというのは、何とも心震える。

 それでも商売柄舐められる訳にもいかない。

 ヴェンジャーは軽く自身の頬を抓って気合を入れてから目の前の人外へ声を掛けた。

 

「あー、そうだな。まずは自己紹介をしよう。僕はヴェンジャー。アメリカ……えぇっと、此処よりももっと遠くの大都会で武器を売っている。好きなものは女、嫌いなものは面倒な仕事。これ以上何か訊きたいことは?」

 

 英霊に対してもこの対応。大凡の魔術師が聞けば卒倒しかねない質問内容であり、ヴェンジャーのサーヴァントである女剣士も唖然としていたが、魔剣士の方とはいうと別段驚いた様子も無く淡々と頷いている。

 

「遠慮しておこう。丁寧な自己紹介痛み入るが何分時間もないのでな。質問をさせて貰うのは此方の要件が聞き入れられた後でも遅くはないだろう」

 

 魔剣士の言い分からしてどうやら戦いに来た雰囲気でも無い。その証拠に女剣士の攻撃を片手で止めたあの魔剣を彼はもう鞘に収めており、対話の準備を進めている。

 女剣士は魔剣士のその行動を侮辱と捉えて襲い掛かりそうであったが、其処はマスターが抑えるのが仕事。ヴェンジャーは女剣士の動きを片手で制するとなるべく相手の機嫌を損ねないように細心の注意と敬意を払って声を掛ける。

 

「要件、とはなんだ?降伏なら受け入れられないんだが」

「勿論。戦いとは雌雄を決して定められるものだ。私もそれは望まない。我がマスターがお前達に望む要件は其処には無い」

 

 首を振ってから、魔剣士の視線はこの場より少し先に聳え立つ黒き要塞に向けられる。

 

 

「今現在、我がマスターは同盟者を募っている。目的は、あの黒き要塞への侵入だ」

 

 






次回の投稿は3月23日です。
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