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ナミブ西部。暗黒要塞エンリル正門前。
「……?星……?流れ星か?……まぁどうでもいいか」
空に突然現れた黄金の輝きを放つ流れ星の正体がまさかサーヴァントの宝具だとは予想できず、砂漠の中ヴェンジャーは空を見上げて物思いに耽っていた。
武器商人という仕事柄上、何度もこのアフリカの地に降り立った彼は本来ナミブ砂漠の上にはこのような悪趣味な要塞が建っていなかったと。
観測されたのは1ヶ月前。
それから彼が武器商人・科学者・発明家という立場でありながら聖杯戦争の存在を知り、自身も参加しようと歩を進めるまでそれ程時間は掛からなかった。
理由は確か、話題になるとかそんなものだった。
彼が拠点を置くアメリカ。自由の名の元欲望が渦巻くその国でも、『魔術的戦争を乗り越えて聖杯を得た有名人』が現れたという報道を目にしたことはない。つまり前例が無い。即ち人々の注目が集まる。
目立ちがりやのヴェンジャーにとって、人々の黄色い視線を浴びるというのは何より得難い娯楽であった。その為なら聖杯戦争などという詳細がほぼ不明な未知の戦争に挑むでしまう程。
実際問題、公共の電波に乗せて魔術世界の戦争に勝利したと宣言しても誰も信じる訳が無いし、最悪の場合神秘の秘匿を重んじる機関が動く可能性すら危ういのだが、魔術世界に身を置かないヴェンジャーには知ったとことではない。
基本的には自分が愉しければ、人にどれだけ迷惑が掛かろうと気にしない男なのだ。
それはヴェンジャー自身、自分のどうしようもない性だと理解しており、今現在彼の携帯に送られてくるメールの数々もそういった迷惑が元となっている。
「ったく。張り切って作った衛生電話がまさかこんな形で僕を虐めてくるなんて。
ヴェンジャーは愚痴を口にしながら着信音の鳴り止まない携帯型端末を地面に叩き付けると、そのまま靴底で踏み付けた。地面は柔かい砂漠の砂なので衝撃は吸収され、端末は壊れはしなかったが時価数億近くの最新型の機械は今後も拾われることなくこのアフリカの大地にて眠りにつくのだろう。
もしかすれば数百年先で
そうした古代の遺物、過去の遺産という物の中には後世にて聖遺物と名の付く分類に分けられる物もあるらしい。
過去の人物の遺産。つまりは由縁ある物体。
英霊召喚において、それらは目当ての英霊を呼び出す為の触媒となる。
聖杯戦争に参加する大概の魔術師は聖遺物を触媒として英霊を呼び出し聖杯戦争に赴く、というのが定石であり、ヴェンジャーもまたその法則は世界各地で起きている亜種聖杯戦争を調べた際に熟知していた。
聖剣の鞘によってブリテンの騎士王が。原初の蛇の抜け殻によってバビロニアの英雄王が。古びた布切れによってマケドニアの征服王が。
かつて上記の強力な英霊達を呼び出したのもまたそういった聖遺物達であった。
ならば絶対的な勝利を求めるヴェンジャーもまた聖遺物を用意しない手はない。
当初、金と時間と人脈を存分に使ってヴェンジャーは最強の英霊を呼び出す筈だった。
彼の英雄王の唯一無二の友人。神々の創り出した、恐るべき泥人形。その姿は千差万別。意のままにどんな姿にも変え、件の英雄王とも互角の戦いを行える程の戦闘力を有している『兵器』。
そう、兵器、という点がヴェンジャーが彼の泥人形を呼び出そうという結末に至った理由である。
科学者として近代的兵器を大量に生産し、また武器商人にとしてそれらを売り飛ばすヴェンジャーは、誰よりもその兵器の信頼性を知っているから。
下手な英雄、それこそいくら戦闘能力が規格外でも人間性に問題のある彼の英雄王なんかよりもよっぽど兵器の方が信用できる。
聖遺物は手に入れた。後は召喚するのみだと流石に意気込んだヴェンジャーに、悲劇は容赦無く降り掛かる。
本当はニューヨークにある自身の研究室で英霊召喚を行いたかったヴェンジャーであったが、どうやら霊脈やらなんやらの関係で、ナミブ砂漠近郊でしか英霊召喚は行えないのだと気が付く。
実際、令呪がはっきりと現れたのもアフリカの大地に降り立ってからであり、思ったよりも魔術というのは面倒なものだとヴェンジャーは心底溜息を吐いた。
しかし面倒だからといって輝かしい名誉の為。聖杯を獲得し、世間の目を再度奪う為に戦いをこんな田舎で終わらせる訳にはいかない。
ホテルに到着したヴェンジャーは早速覚えたての魔法陣を部屋に描き、英霊召喚に取り掛かる。
この時に悲劇は発覚した。
魔法陣が描き終わり、さて聖遺物を取り出そうとキャリーバッグを開いたのだがーー無い。
綺麗に畳んだ着替えを撒き散らし、仕事の資料も天井に投げて探したというのに、何処にも聖遺物が無い。
盗まれた?そう思い急いで地元の警察に連絡を取ろうと端末の電源を入れた際に、ヴェンジャーにとって恐らく生涯忘れられない光景が端末の画面に映し出されていた。
端末に画像添付のメールを送ってきたのは、いつもベットにて親密な関係を築いてくれる美女達の1人であり、彼女はアフリカの様子を短い文章で尋ねてきていた。
それ自体は何の問題も無いのだが、問題があったのは彼女が添付した画像の方。
自撮り調で撮影された写真。頬横でピースをして笑みを浮かべる美女の背後に、ヴェンジャーの探し者はあったのだ。
ベットの上に忘れ物として。
つまり、この画像を見た時点でヴェンジャーの運命を左右するシュレディンガーの猫の法則は、実質機能しないと確定してしまったのだ。
空輸で送ってもらう選択肢も思いついたが、どう考えても出遅れる。明確に定められている訳ではないが、聖杯戦争開催時間には間に合わないだろう。
ならばもう他に選択肢は2つしかない。
急いで他の聖遺物用意するか、それとも聖遺物無しで賭けの召喚を行うか。
理論を重んじる科学者であるヴェンジャーにとって後者はあまりに無謀に思えた。そんなものはソーシャルゲームで搾取されるよりもたちが悪い。
何故なら聖杯戦争の英霊召喚の機会は一度切り。いくら金を注ぎ込んだところで2回目は無い。
結局のところ、焦ったヴェンジャーが行ったのは賭けに違いなかった。
聖遺物として使用したのは、暇潰しとして研究室から持ってきたある本。購入時も酒に溺れて酔っていた為、何故自分がわざわざこんな物を通販で購入したかもよく覚えていない。
果たしてそれは何処ぞの英雄譚を書き記した蔵書であろうか。
否。そんな大層なものでは無いが、解釈によっては確かにそう見えるかもしれない。
形式としてやパフォーマンスとして祈ることはあるものの、無信教主義のヴェンジャーにとって絶対に必要の無い教典。
それは分厚く、唯一性が無く、しかしだからこそ広く教義されているという照明になる書物。
其処に記された何れかの誰がか彼女ということになる。
「まさか、あんなもので呼び出した、なんて言ったらアイツ怒るんだろうなぁ」
サングラスを掛け直しながら口を滑らせたのが悪かった。サングラスにばかり目が行って、背後に佇む二刀流の女剣士の気配に気が付かなったのだ。
「なんですか?」
「あ"っ!?な、なんでもないっ!!なんでもなぁいっ!!」
明らかな狼狽。
慌てふためくマスターに不信感を懐きつつも、サーヴァントである女剣士は別段気にも止めずに歩き去っていく。といっても目的はヴェンジャーと同じである為別行動を取っているわけでもなく、ただヴェンジャーの近くにいるのが嫌なだけで少し距離をおいているのかもしれないが。
その心を推測するのは乙女心を知るよりも簡単だ。数時間前の記憶を思い出せば。
「同盟?要塞侵入ぅ?」
昼間。剣を抜くことなく、言によって対話を求めてきた謎の魔剣士の提案にヴェンジャーは首を傾げていた。 頷きを返す魔剣士から殺気は全く感じられない。思い返してみれば、彼は元々ヴェンジャー達と闘うつもりは無かったのだろう。
そう言えば先に手を出したのは自分の短気なサーヴァントだと思い出して、取り敢えずヴェンジャーは話を訊くことにしたのだった。
「明日の日の出前に、私はマスターの命であの要塞の内部へと侵入する。その際に人手が必要だ。手を貸してくれ」
魔剣士の目的はこれ以上無いというほど簡潔且つ無駄無く説明され、疑心暗鬼の世界に身を置いてきたヴェンジャーですら思わず面をくらってしまった。
何しろ嘘の含まれていない真実だけを語った交渉など、生まれて初めてだったのだから。
魔剣士の愚直なまでの頼みにヴェンジャーは顎髭を触りながら訝しげな表情で言葉を返す。
「要塞に侵入って、あの要塞にはなんだ。防衛機能でも付いているのか?彼処は聖杯戦争の舞台の筈だろ?」
「肯定だ。聖杯戦争の参加者が舞台に入るのに邪魔をくらうというのは確かにおかしな話だ。それは重々承知している」
だが、と続けた魔剣士の視線はヴェンジャーから離れてその背後の二刀の女剣士に向けられる。
「其処の剣士はもう気が付いているのだろうが、要塞内部に繋がる唯一の出入り口の前で少々厄介な事態が起きている」
この場に魔剣士以外の剣士と呼ばれる部類の人間はヴェンジャーのサーヴァントの女剣士以外に他に居ない。故にヴェンジャーが視線を向けると、彼女はやや気不味そうに視線を外していた。
「気付いていながら主には黙っていたか。その思慮深さには同意しよう。マスターを危険から遠ざけようとするお前の行いは正しい」
「??」
沈黙を貫く女剣士に、勝手に納得したかのように話を続ける魔剣士。1人話題から取り残されたヴェンジャーがやや苛立ったような複雑な表情をしていると、魔剣士の方から疑問の答えは提示された。
「女剣士のマスターよ。彼女がお前に伝えなかった危険とは、『要塞の前で殺し合いを続ける2体のサーヴァント』のことだ」
「2体の、サーヴァント……?」
2体のサーヴァントの殺し合い。つまり、既に別の場所でも他のサーヴァント同士が接触し死合を始めたということだろうか。
だが、理由が判ってもヴェンジャーは腑に落ちない。
人知を超えたサーヴァント同士の闘いに巻き込まれるのがどれほど危険なのかは聖杯戦争に参加するマスターであれば誰もが理解している。理解しているが故に自分のサーヴァントがそれを隠すことに何の意味も無い筈なのだ。
まさか令呪を使ってその死合に乱入しろと命令するとでも思い違いをされているのだろうか。
「どうやら、今回の聖杯戦争では狂戦士が2体召喚されている模様だ」
口に出さずとも顔に出いた不穏な考えは、更に魔剣士に信じ難い言によって否定された。
「狂戦士が2体……?君が冗談を言えない堅物だってことぐらいは僕にでも判るが、その、それは可能なのか?聖杯戦争のルール的に」
聖杯戦争のルールをある程度知っている以上、ヴェンジャーの疑問は最もである。
大本の冬木の聖杯戦争において呼び出された英霊は7騎。そのどれもがそれぞれ別のクラスで呼び出された。
それが聖杯戦争のルールだからだ。性能の異なる7騎の英霊の殺し合い。表向きだけでも、クラスによって優位不利があるという『ゲーム性』を組み込まなければパフォーマンスとしては不十分になってしまう。
それこそ狂戦士なんて手綱の握りにくいサーヴァントが7騎召喚された聖杯戦争なんてものがあったとした、間違いなくその舞台となった土地は3日と持たず消失する。
「不明だ。しかし私のマスターの見立てでは城門近くで殺し合っているサーヴァント、そのどちらからも狂化の傾向がみられると」
「……失礼だが、そのマスターさんは?」
魔剣士の背中を覗くようにしてヴェンジャーが問い掛けると、意外にも魔剣士は少し申し訳なさそうに眉を下げて首を横に振る。
「謝罪しよう。此方から同盟を持ちかけておきながら不敬だとも理解している」
「あっ、いやそんなつもりでは」
下手なことを言えば斬られるのではないか。先程の女剣士との様子からサーヴァントという存在の戦闘機並の戦闘力を再認識したヴェンジャーは、魔剣士の一挙一動に対して過敏に反応していた。
といってもこれまでの会話で魔剣士が己のサーヴェントと同じ程真面目なのは伝わってきていた為、まさか本当にいきなり斬りかかって来るなんて事態は起こらないだろうと予想していたが━━次の瞬間、平然と魔剣を引き抜きヴェンジャーにその切っ先を向ける魔剣士の姿があった。
「ッ!?何を!?」
魔剣士の突然の暴挙に、主のすぐ背後で控えていた女剣士が驚き自らも剣を引き抜こうとしたのだが、何と絶賛襲われ中のヴェンジャーが片手で彼女の動きを制す。
自分のサーヴェントが魔剣士に斬りかかるよりも速く、魔剣士の腕ならば己の首を飛ばせる。そう理解したからこそ女剣士に下手な動きをさせる訳にはいかなかったのだ。
それでも出会って数日ばかりの美女が我が身を案じてくれるのを嬉しく思わない男は居ない。恐怖によって高鳴る鼓動、震える脚を根性で抑え付けながらヴェンジャーの顔面には商売用の笑みが浮かべられていた。
「は、はははっ。随分と強引なダイレクトマーケティングだ。僕としてはこんな物騒な物は閉まって1分前までの理性的な商談を行いたいものなんだが」
「勘違いをさせて申し訳ないが、私は君達との同盟を提案しているのではない。これは一種の脅迫だ」
「脅迫?」
魔剣士は素直に頷きを返し言葉も返す。
「あの狂戦士達は他のサーヴァントの気配に気が付けば否応なしにその猛威を奮って来るだろう。単騎では難しいが、同数以上の英霊で突っ込めば攪乱にもなって要塞への侵入は容易となる。その為にお前達には」
「狂戦士を引き付ける囮になれと?」
「そこまでは言っていない。双方が程よく狂戦士達の注意を惹きつけ、だからこその同盟だ」
何とも強引な手だとヴェンジャーは内心嘆息する。
要塞への侵入など、迫撃砲で壁をぶち破ればいいだけではないか。
そんな武器商人らしい民間的解決策が思いつくが、しかしそれもままならないのだろうと同時に理解もできる。第一に壁をぶち破る程の兵器の運用は目立って仕方が無いし、第ニに運搬に時間がかかる。
可能かもしればいが、手間がかかる。事の始まりは慎重に進めたいヴェンジャーには自陣の近代兵器使用はもう少し後まで取っておきたいところだ。
近代兵器で壁をぶち破るには時間も手間もかかる。では、違う観点から考えてみようと、自然とヴェンジャーの視線は自身の喉元に突き付けられた黒い刀剣に向けられていた。
「そんな面倒なことをしなくても君の剣から、こう、ビームとか出して壁をぶち破ればいいんじゃないか?全く非科学的で僕は信用していないんだが過去の聖杯戦争を記録した文献では剣から光の奔流を放出させる剣士も居たと聞いたぞ?」
「……」
冗談のつもりで言った筈の台詞が以外にも魔剣士の表情を曇らせる。恐らく、ヴェンジャーの問いかけの厭らしい含みに気が付いたのだろう。
「どう答えても私の宝具の痕跡を辿れる問いかけだな、魔術師」
「いや単純にそうじゃないかなという疑問を口にしたまでだよ。……ふむ、そうだな。判った」
大人の男性2人の会話にすっかり置いてけぼりにされていた女剣士が動いたのは、諦めたようにヴェンジャーが頷いたその時だった。
「なっ!?ま、マスター!?判ったって、もしかして本当に同盟を組む気なのですか!?この剣士と!?」
「そーだと言ったろ能無しサーヴァント。お前はもう少し場の空気を読め、空気を」
「し、しかし!この英霊が一体どんな逸話を持った英霊かも不確かなのですよ」
ポニーテールの黒髪を揺らして必死にマスターを説得しようとする女剣士の言い分も最もであったのだが、その心配は魔剣士の聖杯戦争のルールをものともしない軽率な発言によって一蹴に干される。
「それなら心配いらない」
「……え?」
何が心配いらないと言うのか。首に掛けた十字架に祈るときとは全く別人のような表情で女剣士が訝しげに魔剣士を睨むと、魔剣士は次いで己の魔剣を地面に突き刺して堂々と宣言した。
「我が真名はシグルド。シグムンドの息子にして、彼の悪竜の腹を裂きその心の臓を喰らったただの卑しき剣士だ」
この時、ヴェンジャーは気が動転しそうになったことを今でも覚えている。
英霊という生き物は皆これほど真っ直ぐで、馬鹿な偉人様なのかと。
「……来た」
ヴェンジャーには感じ取れないサーヴァント特有の気配を感じ取ったのだろう。女剣士は己がマスターの前に守護するように立ち位置を変える。
すると程なくして彼女の視線の先に青い光の粒子が集まって、1つの個体を造る。
ややハネっ毛のある銀の毛髪に涼やかな瞳。
その姿が見えたからといって此処ですぐさま戦闘が始まるわけではない。何しろヴェンジャー達と彼は今現在狂戦士達の死闘を切り抜け、素通りする為の同盟関係下にあるのだから。
緊張感を持って魔剣士と対峙する己のサーヴァントとは対象的に、腕時計で何やら時間を確認していたヴェンジャーは魔剣士の姿を見るなり肩を落とす。
「なんだ。やっぱり君のマスターは連れてきてくれないのか」
「気に障ったのなら主に代わって謝罪するが?」
「いいや結構。しかしもし君の主が美人だったとしたらとても残念ってだけさ」
苦笑を浮かべたヴェンジャーが次に視線向けたのは、まだ随分と距離がある筈なのにその巨大さを見せつけてくる、黒き要塞。
「あの中に入ったら次に会うチャンスは随分と先になりそうだからね」
黒き要塞は聖杯戦争の主催者側が用意した舞台。内部は十中八九、聖杯戦争の為に異界として造られている。
ならば何が出てきてもおかしくは無い。何しろ魔術師が造り出した異界なのだから、その頭の中と変わりはあるまい。どんな妄想の具現、悪趣味極まりない仕掛けの数々が聖杯戦争の盛り上げる余興の1つとして組み込まれているに違いない。
魔導とは何ら関係の無い科学の力で人工的に魔術回路を造り出し、後付できてしまう程の才能を持つヴェンジャーですら内部の構造を予想すれば嫌気で溜息は抑えられない。
彼の戦争の価値観を語れば少数精鋭での戦場への突入は愚の骨頂に近しい。
近代の戦争において何より重要なのは威力と物量だ。
威力においては一体につき戦闘機一機分と比喩されるサーヴァントは申し分無い。
しかし物量に関してはヴェンジャーの手駒は傍らに立つ双剣の剣士のみ。
本来であれば無人戦闘機数十機を引き連れて此処ら一帯を焦土に変えても良かったのだが、それは叶わなかったのだ。
暗黒要塞に近付いた無人機は悉く原因不明で音信不通となってしまうのだ。
「そういえば、何故魔術師が『近代兵器に対する』対策をしているのか……僕以外にも近代兵器を扱うような輩が居る?しかも運営側が望まぬ立場の人間で……?」
これからいざ暗黒要塞の内部へと足を踏み入れるという時にまで何やら訳の分からないことに頭を悩ませている主を見て、双剣の女剣士はジト目になり、すぐに何かに気が付いたように西に目を向ける。
それは少し離れた場所で狂戦士達の動きを監視していた魔剣士も同じで、剣士二人はほぼ同時に察知した異変を口にしたのだった。
「サーヴァントが……狂戦士達に近づいて行く?」
CCCイベント。BBが配布だなんて……運営は神か何かですか。