舞台は惑星タトゥイーン。
重いし、暗いです・・・。
<補足>
この小説、実は10数年前に書いたものです。しかし、9割方完成していたもののタイトルもつけず、その上、運営していたSWサイトに投稿するわけでもなく。書いていたことさえ忘れていました。
この度、PCを漁っていたら発見し、そういえばこんな話も書いていたな・・・と、完成させてついに日の目を見た次第です。投稿できた機会に感謝!!
舞台は惑星タトゥイーン。
重いし、暗いです・・・。
<補足>
この小説、実は10数年前に書いたものです。しかし、9割方完成していたもののタイトルもつけず、その上、運営していたSWサイトに投稿するわけでもなく。書いていたことさえ忘れていました。
この度、PCを漁っていたら発見し、そういえばこんな話も書いていたな・・・と、完成させてついに日の目を見た次第です。投稿できた機会に感謝!!
空が白み始めた。
やがて地平線を縁取るように光の帯が現れ、一際輝く稜線から眩い二つの太陽が顔を見せる。
固く腕を組み、彼はその様子を身動ぎもせずに見つめていた。光が闇を徐々に凌駕する、この瞬間が好きだった。まだ、希望がある。そう思えるからだ。
二つの太陽はゆっくりと砂漠を照らし始め、そのうちに彼の右横に広がる荒地を覆っている暗闇を追い払ってしまう。
彼は、汚れて裾のボロボロになった茶褐色のローブを翻し向きなおると、目を細めて荒地を見やった。
ここから遠く、しかし、そう遠くでもない場所に存在するオアシスへ。砂漠の民サンドピープル、別名をタスケン・レイダーと呼ばれる彼らの聖地に。
顔を曇らせ悲嘆を露わにしつつ、彼は青緑色の瞳を伏せて静かに黙祷を捧げた。
それは彼がこの惑星に住みついてから毎日行っている儀式とも言うべきものだった。
粗末で質素な家に戻って簡単な食事を済ませた後、彼は再び家の外に出た。
白髪の混じる髪の上からフードを目深に被り、これから熱くなるであろう砂漠の温度を防ぐべく、節くれだつ指でローブの前をかきあわせると、ゆっくりと家のある高台を下り始める。
目指すはタスケン・レイダーのオアシス。否、そのオアシスの周辺だった。
ゴースト・オアシスと呼ばれる聖地。
かつてそこで、タスケン・レイダー一部族の虐殺があったという。彼らは怒った幽霊に切り刻まれ、無残な死体となって発見されたのだと、タスケン・レイダーに信じられていた。そして今では、タスケン・レイダーの聖地と崇められ、砂漠を住処とするタスケン達はこの地に寄ると、贈り物か、もしくは幽霊に生贄を捧げるという習慣が出来上がっていた。
彼は重い溜め息を一つ吐いた。
幽霊の正体を知っていたからだ。
傍にいれば、絶対に防いでいたはずだ。全身全霊をもってその暴挙を。
しかし、悲しいかな。彼は遠い場所にいた。あまつさえ囚われの身となっていた。止めようがなかったのだ。
だが ――
本当に止めようがなかったのか?自分の教え方が、育て方が間違っていたため怒りに囚われ、呑み込まれるような暴挙を許してしまったのではないか?
考えれば考えるほど、取りとめもなく思いは浮かんでは消え、しかし、納得いく結論を導き出すことはできなかった。
そして、感情に呑み込まれて支配されてしまった彼の弟子は銀河に牙を剥いた。
彼は自問自答し続ける。
自分に弟子を止める術は本当になかったのだろうか。ほとんどの仲間が死に絶えてしまった今、彼に生きている意味があるのだろうか。と。
罪悪感は日に日に増し、彼を押し潰さんばかりだった。
それでも彼は生きている。
生きている意味を自らに問い質したとしても、生きて自らが犯した罪を償おうとして。弟子を闇に囚われてしまった罪を。銀河を暗黒に呑み込ませてしまった罪を。
彼は長い間歩き、ゴースト・オアシスに近づいた。まだ午前中とは言え、二つの太陽に照らされ反射する砂漠の熱さは並大抵ではない。
しかし、休むでもなく彼はオアシスの周りを巡回し始めた。タスケン・レイダーが住むオアシスに寄る訳ではなく。ただ、距離を保って周囲を歩き始める。
これも、彼がこの惑星に住みついてからの日課となっていた。
何故に?
贖罪ゆえに。
彼はゴースト・オアシスの周囲を巡回し、道に迷ってオアシスに近づいてしまった哀れな人々をタスケン・レイダーよりも早く見つけ助け出そうとしていたのだ。人間を生贄にしようとするタスケン・レイダーの習慣は彼の弟子が作ってしまった悪しき習慣。タスケン達にも彼らなりの生活があり、無闇にその習慣に干渉する訳にはいかない。ゆえに、彼は人々がタスケンの手に落ちる前に、人々を助けようとして日々、この一帯を歩き回っているのだった。
これも贖罪の一部。
贖って消えるものではないのだけれども。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
その日も彼は容赦なく照りつける陽射しの中、足場の悪い岩場を黙々と歩いていた。
これは自然の厳しさにもへこたれない自制心と強い精神力を作り上げる絶好の機会だ。
と、彼は皮肉っぽく笑みを浮かべた。
それに、タスケン・レイダーを追い払うに格好な手段も見つけていた。砂漠に棲息するクレイト・ドラゴンの鳴き声を真似れば良いのだ。
おかげで当のクレイト・ドラゴンでさえも聴き間違えるほどの完璧な鳴き声を修得できた。
と、これまた彼は微笑み、口の端を上げた。
ふと、周囲の様子を慎重に覗っていたフォースが何かを捉える。
タスケン・レイダー?いや、違う。これは人間だ。
どうやらまた迷い人らしい。タスケン・レイダーに見つかる前に保護してあげなくては。
彼はごつごつとした岩場をできるだけ早く歩き、フォースで感知した人間の元へ急いだ。
やがて目的の場所に着くまでには、迷い人の正体が予測できるまでになっていた。
岩陰に座り込む人間の影を見とめ、彼は優しい口調で脅かさないように声をかける。
「どうしたんだい?迷ったのかな?」
途端に弾かれたように顔を上げる二人の少年。
しかし、そこにいたのが、ボロボロのローブを纏い優しそうな笑みを浮かべた初老の人間だったため、彼らの警戒心は目に見えて薄れていった。
「うん、迷ったみたい。帰り道がわからなくなっちゃったんだ」
柔らかな亜麻色の髪をし、青い目の少年があどけない口調で答えた。
その眼差し、その表情に彼の人の面影を見出し、急に胸が詰まる。それでも彼は声を振り絞った。
「では、わしが家まで送ってあげよう。ここら辺りは危険でな。どれ、そっちの坊やは怪我でもしたのかな?」
「ううん、歩き疲れただけ」
彼はローブの懐から水筒を取り出した。
「これを呑むがいい。少し休んだら出発しよう」
日差しが容赦なく降りそそぐ砂漠を、彼は二人の少年を気づかいつつ歩いていく。
「坊やたちはいくつかな?」
「ええっと・・・13標準歳だよ」
「坊や二人でこんなに遠い所まで来たのかい?」
「うん。ジャワのサンドクローラーを探していたんだ。ちらっと見かけたんだけど、見失って」
答えを聞き、彼は驚きの表情を浮かべた。
「また、どうしてジャワに会おうとしたのかな?」
「・・・実はね、スウープ・バイクを乗りまわしていたら岩にぶつけて壊しちゃったんだ。で、直すためには部品が必要なんだけど、おじさんにはバイクが壊れたなんて言えないし。だって、こっそり乗っていたんだ。おじさん、いつも危ないから乗るなって、言ってるから。だけど、ダメって言われると乗りたくなるんだ。わかる?」
「あぁ、わかるよ」
無邪気な言いように思わず顔がほころぶ。
青い目の少年は悪びれもせずに言葉を続けた。
「だからね、おじさんに壊したのがバレる前にジャワから部品を買おうと思ったんだ」
理由がわかり微笑ましく思ったが、だからと言って釘を刺すのは忘れない。
「お前さん達、この砂漠は見た目以上に苛酷な場所なんだよ。子供二人が出歩いて良い場所じゃない」
「・・・ごめんなさい」
素直に謝る。彼は軽く溜め息をついて苦笑いを浮かべた。
「まぁ、わしが見つけたから良かったものの、今後は気をつけるんだよ」
「はぁい」
しばし無言で歩いた後、今度はもう一人の少年が口を開いた。
「おじさんって、この近くの人?あまり見かけないね」
「そうかね?」
「でも、おじさんこそ武器も持ってなくて危険じゃないの?タスケン・レイダーなんて、すっごく凶暴だって聞くし」
心配そうに言いやる少年たちに、つい笑みを誘われる。彼は安心させるように言った。
「わしは大丈夫だよ。砂漠を知り尽くしておるから、タスケン・レイダーに会うことはそうそうない。それに会ったとしても、クレイト・ドラゴンの鳴き声を聞かせれば、彼らはすぐに逃げてしまうよ」
途端に二人の少年たちは顔を輝かせ、口々に叫んだ。
「クレイト・ドラゴンの鳴き声!?」
「聞きたい。やってみせて!!」
まんざらでもなさそうに彼はニッコリして口横に手を当てると、ドラゴンの鳴き声を発した。遠吠えのようなそれは、砂漠の中を恐ろし気な音をともない響き渡っていく。
しばらく呆然としていた青い目の少年が勢いよく言った。
「すごい、本物みたい。僕にも教えてよ」
彼は目を丸くする。
「覚えてどうするんだい?」
「おじさんとおばさんを驚かせるんだ」
苦笑いを浮かべ、彼は少し溜め息をついた。
「悪ふざけもほどほどにするんだよ」
「だって・・・ここって何もないし。近くのトシステーションに遊びに行きたいと言っても、おじさんはいいよって言ってくれないんだ」
それには答えず、無言のまま彼は少年たちを先導していたが、不意に柔らかく言った。
「ほら、着いたよ」
目の前には地下に掘り下げられた空間にできた、この惑星特有の家が存在していた。確かに青い目の少年の家だ。
「あ、本当だ。でも、どうして、ここが僕のうちってわかったの?」
「わしにはみんなわかるんだよ」
その家から突然、男の人が現れて足音荒く向かってきた。
青い目の少年が慌てて叫ぶ。
「あ、おじさん!!おじさん、あのね、僕たち ――」
すると現れた男は、何故かものすごい剣幕でまくしたてた。
「ベン・ケノービ!!何度言ったらわかるんだ。ここには来ないでくれと言ったはずだぞ?」
少年たちは目を丸くし、それからカッとなって彼の代わりに言い返した。
「オーウェンおじさん、そんな言い方しないでよ。あの人は僕たちを ――」
それには構わず、男は言葉を吐き捨てた。
「さっさと行ってくれ。二度と来るんじゃない、わかったな?」
彼は傷ついたとしても、そんな素振りは一切見せず、悲しそうな笑みを湛えたままお辞儀をし、踵を返した。
オーウェンの気持ちも充分にわかる。彼に罵倒されるほどの罪を犯したのだから。
実際、アナキンがダークサイドに墜ちてからは、銀河中の誰もが自分を罵倒しているのではないかと思えたぐらいだ。耳には届かずとも。
そして、アナキンがあのようなことになったのを悲しんでいるのは自分だけではない。オーウェンも義理の兄弟が誰もが恐れるダース・ヴェイダーになってしまったことを酷く悲しんでいた。だから、あの少年が父親のようになってしまうのを本当に恐れているのだろう。あの少年を愛するがゆえに。
背後ではまだ少年とオーウェンが争っている声が途切れ途切れに聞こえてくる。
じわじわと悲しみが広がる。だが、これは自分の罪なのだ。自分の罪ゆえに。
アナキン、お前の息子はお前に似てやんちゃでフォースが強いな・・・。
思わず空を見上げた。熱く燃え盛る二つの太陽が青緑色の瞳を射る。
彼は目をしばたかせた。
いつか・・・そう、いつか。あの少年が大人になったら、あの少年をジェダイとして育て上げ、この闇に包まれた銀河を光で満たしたら、自分の罪も幾分か軽くなるだろうか。しかし、時が来るまであの少年を巻き込む訳にはいかない。
また、犯した罪は消えはしない。あの少年に全てを押しつける訳にはいかない。自分で償うべきことは自分でやるしかないのだ。
何万回とも言い聞かせた言葉をまたもや心に刻みつけ、彼はフードを被りゆっくりと歩き始めた。
いつか光が来ることを信じ。
ただひたすら歩き続ける。
いつか自分の罪を贖えることを願って。
広大な砂漠に歩を進める。罪悪感を身に纏いながら。
いつか救われることを信じて。
自分も。そして弟子も。
いつかこの呪縛から解き放たれることを信じて。
End
(2003年頃執筆)
*タスケン・レイダーの聖地については、確かスピンオフやらで記述があったはずです(10数年前の記憶なので曖昧ですみません)。
*彼の儀式や日課については捏造です。おそらく。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
スピンオフか公式の本で、少年の頃のルーク・スカイウォーカーが友達とともに惑星タトゥイーンの砂漠で迷子になったときに、ベン・ケノービに助けられたことがあるという、一行ぐらいのエピソードを読みました。そこから話を膨らませたものです。
・・・重いですね(汗)