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6月4日誤字修正と描写追加
朝練のある日、私、岳羽ゆかりの朝は早い。いつもより早く起きて、ゆったりと或いはばたばたと学校に向かう。まぁ、ほとんどはゆっくりできる日なんて無いのだけど。
特に最近はシャドウの動きも活発になってきており、真田や鹿島程ではないが夜遅くまで起きていることが増えた。寝不足ではないが疲れが取りきれていない、そんな日も多くなって来た。
だからだろうか、こういう場面に出くわす事も多い。
「おはよう、桐条さん」
「おはよう、今日も早いのだな」
階段を下りてきた桐条先輩と隣に座っている鹿島先輩が挨拶を交わすのを横目に見て、それに倣うように桐条先輩に挨拶をする。そして食べかけのトーストを少し急いで食べ進める。急いでといっても失礼じゃない程度にだけれど。
私は桐条先輩が苦手だ。…苦手、とは少し違うのだがあまり仲良く話す気になれない。
だから、朝の時間はあまり会話が続かない。嫌な沈黙が流れる。だから前は耐えきれずにさっさと学校へと出掛けていたのだけど。
桐条先輩が席に座るのを確認してか鹿島先輩が声をかけた。
「トーストを焼こうかと思うけど、桐条さんはどう?」
そう言って立ち上がろうとする鹿島先輩に、いただこう。と桐条先輩が答えるのを聞いてなんとも言えない複雑な気分になる。
時間はまだ余裕があるし朝食も食べきれて居ないので席をたつのはあまりよくない。けれど二人きりというのは歓迎しがたい。…だからって何か言える訳じゃないのは私が一番わかってる。
「了解。目玉焼きかチーズか乗せようか?」
「いや、結構だ」
じゃあ、新しいの焼いてくるからちょっと待っててね。と言って居なくなる鹿島先輩を少し恨めしげに睨む。おそらくは100%の善意で行ってくれているのだろう。皿の上に残された食べかけのトーストを見ると余計にそう思ってしまう。
あの先輩はお人好しなのだろう。いや、10日足らずとはいえ一緒に生活してきたのだから大体の性格はわかっているつもりだ。孤児院の出身だと聞いたからそれも関係があるのかもしれないけど、うん。
だからか桐条先輩が鹿島先輩に仕事を押し付けているような、風に見えてしまう。勿論先輩達にそんな考えがないというのはわかってても、つい考えてしまう。なんかいやな子だな、私。
そうやって勝手に一人で悩んで据わりの悪い気持ちになるのがここ何日かの朝の私の日常。
「はいどうぞ。飲み物は牛乳かオレンジジュースで勘弁してね」
「あぁ、ありがとう」
先輩たちのお互いに特に気にしてないだろう姿を見ると、余計に自己嫌悪が進む。桐条先輩だって本当は悪い人じゃない、私の勝手な考えだ。
「鹿島、学校には慣れたか?」
「んー、ぼちぼちって所ですかね。なんか転校生とも言えない妙な立ち位置なので馴染むのはもう少ししてからかな。」
「そうか。何か不都合があれば言ってくるといい。できる限り力になろう」
「あはは、春休みまでは一先ず頑張ってみるよ。ありがとね桐条さん」
結局、いたたまれなくなってさっさと出て行くことにした。荷物は用意してあるのでグラスに入った牛乳で残ったトーストを流し込んで席を立つ。今日は朝練もあるし、急いで出ていってもおかしくないよね。
「じゃあ、すみませんが私、先行きますね!」
「うん、部活頑張ってね。気を付けて行ってらっしゃい」
そういって手を振って見送ってくれる鹿島先輩に、心の中で謝りながら扉から外にでる。
最初は妙な先輩が増えたと思っていたけど、今では一番お世話になってるんだから、我ながら現金な話である。
「いってきまーす」
こういう人の触れ合いって悪くないと思う。何となく、今日も一日頑張れそうだ。
憂鬱だ。
憂鬱だ、憂鬱だと言っていても事態が好転するわけではない。ないけれど言わずにはいられない。もっとも聞かれてもあれなので心の中で呟くに留めてはいるが。
「身体の方は大丈夫か?」
それでも感情が表に出てしまったのだろうか、少し心配そうに尋ねてくる真田君に大丈夫だと告げる。夜のパトロールに殆ど無理矢理着いてきたのだから文句は言えない。
実際は大丈夫ではなくとも、やると決めた以上、弱音は吐けない。
「そうか、無理はするなよ」
そう言って気にしないように振る舞う真田君は好い人だと思う。こんな境遇になってハードモードだ何だと言っていたが、交流関係は確実にイージーな気がする。後輩の岳羽さんは優しくて良い子だし、真田くんも桐条さんも頼りになる。
まぁ、シャドウだ戦闘だと、やってることはハードなのは変わらないのだが。
だがいきなり不測の事態に陥って、ぶっつけ本番で戦えるほど自分は強くないし戦闘慣れもしていない。だから真田君のやっているパトロールに着いてきたのだが、あまり気分は優れない。
「シャドウだ!気を付けろ!」
その言葉に思考を切り替えて身構える。無意識に召喚器を握る右手に力が入る。
視線の先に得たいの知れないものが映り込む。
…戦闘だ。
ゲームで言えば初エンカウントになる敵は何やら黒いヘドロに仮面のついた化け物だった。
これがシャドウ、そう考えながらも心に有るのはこいつらが俺の記憶を奪ったのだという憤りで、でも埒外の存在への恐怖や手にした物、いろんな事への嫌悪感から目を背け、右手に握った召喚器に神経を集中させる。
銃口を自分の顎に当てて脳天目掛けて打ち出す。
ガチンという撃鉄の落ちる音を認識すると同時、体が軽くなったような妙な感覚を覚えながら大きな声で名前を叫ぶ。
「やるぞ!ザ・ニンジャ!!」
言うが早いか、ホログラフのように自分の背後に現れるザ・ニンジャを身に纏うと、ホルスターに召喚器をしまって腰に差した小太刀を抜く。
そして先手必勝とばかりにシャドウに斬りかかる。
「あまり前に出すぎるな!初めは戦闘に慣れる事を優先しろ!」
後ろから聞こえる真田君の言葉にシャドウへの攻撃の勢いを少し緩める。浅くだが感じた手応えに反撃を喰らう前に後ろに引く。
素早くバックステップで距離を取って相手を見やると、真田君には目もくれずこちらに突っ込んでくる様子がはっきりと見えた。大したダメージは入っていないようだが、ヘイトは稼げたらしい。
その隙を突いて真田君が雷撃を打ち出し、それにシャドウが痺れたところを仮面目掛けて小太刀を降り下ろした。
粘土を貫いたような感触を味わいながら、断末魔を上げてシャドウは地面に溶けるように消えていった。
「よし、殲滅完了だ。初めてにしては上出来だな」
その言葉に、肺にたまった空気をゆっくりと吐き出してペルソナを解除する。するとまるで全身を蝕むかのように緩く疲労が纏わり付くのを感じて、これが勝利の感覚かと馬鹿な思考を巡らせる。
「元々今日は早めに引き上げるつもりだったからな。無理そうだったらいつでも言ってくれていい。」
確かに疲労は感じているがまだかなり余裕があるので折角の提案だが遠慮させてもらう。続ける意思を真田くんに伝えると了承の意と、何やら嬉しそうな様子が見てとれる。
次に進もうと前を歩く真田くんに着いていきながら、自身のペルソナである『ザ・ニンジャ』について考える。戦ってみて思うにザ・ニンジャは原作同様スピードとテクニックで押すタイプのペルソナらしく火力はそれなりで手数で戦うのがいいようだ。所謂ヒットアンドウェイというやつだ。慣れてくれば強硬偵察や奇襲なんかもできるようになるかもしれない。
その事を追加で伝えると真田君は、どこか嬉しそうにそうか、と返してくれた。
岳羽さん曰く、「バトルジャンキー」らしいのでこういう会話が楽しいのかもしれない。男同士だから楽しめる事ってあるよね。今はそんな余裕ないけどな!
「では散策の続きといこう」
真田君の先導に従って散策を再開する。戦闘前にあった負の感情は大分薄れていた。
夜はまだ長い。
ということで、今回は寮のメンツとの関係性についてのお話でした。
桐条先輩だけ内容が薄いので次回のメインは桐条先輩になると思います。主人公の身に起こったことについてはまぁ、そのうち。
そういや春休みってどれくらいの期間なんだろうか。
思ったよりお気に入り登録が多くてびっくりしました。ありがとうございます。
投稿ペースはかなり遅いですが、最後までお付き合いいただければ幸いです。
『ペルソナ』
ジョジョでいうスタンド。
『召喚器』
ピストル型。自分の頭に向かって撃つとペルソナが召喚できる空砲。ペルソナ3だけの要素。作者的には4のタロットが好き。
『ホルスター』
召喚器ってどこにしまってるのかな?と思ったので主人公には持たせてみた。
『小太刀』
本当は忍者らしく忍刀(直刀)にしようと思ったけど需要無さすぎて桐条グループでも準備できなさそうだったので大人しく小太刀にした。
戦闘スタイル的にコロマルと被りそうだけど、スキルで差別化できる、はず。手裏剣とか使わせたい。
『戦闘スタイル』
流石に素人に徒手空拳で戦わせるのは無理と判断したので小太刀で戦います。
テイルズのすずとかDoAのハヤブサとかそんな立ち回りができたらいいな。
『ペルソナを身に纏う』
普通できない。けど、何故かできてしまう。
理由はあるので想像してみてくだされば、作者はとっても嬉しいなって。