ハイスクールD×S   作:超人類DX

10 / 17
新章です。
あれだな、ラスボスですねイッセーは。

※些細な箇所の修正


集える同類達
報復が報復を……


 報復は報復を呼び、下手な情を挟めばそれが禍根を残す。

 それくらい俺にだって分かっている。

 というか、それを承知で奴等を潰した。

 

 故に俺は殺るのさ。

 

 

「白音? 誰だそりゃあ?」

 

「嫌でも思い出させるつもりだよ……地獄でね」

 

 

 誰だろうと、何であろうと蚊であるのなら潰して殺す。

 それが俺の生き続ける為に必要な今の流れだから。

 

 

 

 

 その日、一誠は何時もの通りそれなりに学業に励み、放課後となればゼノヴィアとイリナと共に帰るつもりだった。

 しかしこの日の一誠は少し違う道を辿った。

 

 

「しまった、先生に呼ばれてたの忘れてたわ。悪いけど先に帰ってて」

 

「む……」

 

「呼ばれた、ね」

 

 

 正門を出るや否や、まるで今思い出したかの様にそう言って家の鍵を渡した一誠に、イリナとゼノヴィアは若干目を細めて数秒程一誠を見つめた。

 

 

「……わかったが、頼むからちゃんと帰って来てくれよ?」

 

「ご飯作って待ってるから」

 

 

 だが敢えて二人は『何も知らないフリ』をして一誠の言葉を信じた様に振る舞って鍵を受け取ると、まるで世話を焼く姉か何かみたいな台詞を残して一足早く帰宅していく。

 

 

「あぁ、直ぐに帰るさ」

 

 

 そんな二人の背を穏やかな表情で見ながら、小さくそれだけを呟くと、正門に回れ右――をでは無く二人とは正反対の道を一人で歩き始める。

 

 

『おい、殺るのか?』

 

(当然。寧ろ今まで来なかったのが不思議なくらいだったんだ……くくく)

 

 

 閑静な住宅街を通り抜け、人通りの少ない公園を横切り、郊外へと抜けて行く一誠は、己の中に宿る神器と会話をしながらひたすらに人通りの少ない道を歩き続ける。

 やがて人通りの少ない道も砂利の道となり、砂利の道は木々の集まる山道へとなり……そして獣道へと変わり――霊だなんだと騒がれて全く人が近寄らない、一誠達が最近使用する修行場の山林地帯へと辿り着くと……。

 

 

「さてと、此処でなら死体も発見されにくい。

俺を殺りたければとっとと来な」

 

 

 半径数十メートル範囲で木の生えていない……やり合うのなら絶好の場所にて一誠はやっと、声を出した。

 

 

「……」

 

「おいおい、わざと隙晒してやったのに首も跳ねやしなかったんだ。今更かくれんぼなんて止めようぜ」

 

 

 何故一人でこの場所に? それは、今朝から感じる殺意が、一誠の中で『己を報復か何かで殺しに来た悪魔の手先』と思わせ、それを一人で片付ける為に此処まで誘い込んだに他ならず、両手を広げながらニヤつくという一誠のあからさまな挑発に対し、殺意を更に膨らましたその気配の主は、一誠の立つ場所から二十メートル程先にある大木の影からぬっと姿を現した。

 

 

「……」

 

「へぇ、何だ……女かよ」

 

 

 姿を現した気配の主に対し、一誠は別段驚くでも無くただ思った事をそのまま、ゆっくりと殺意を研ぎ澄ませ、眼光鋭くさせて近づいてくる女性に対し言う。

 

 

「さてと、そんな殺気丸出しでほんわか会話って訳でもねーだろ? くく、どこぞの悪魔の命でやってきた殺し屋」

 

 

 こうなる事は最初からわかっていた。

 大貴族のグレモリー一族を再起不能にしてやった時点で、悪魔達が大人しく引き下がる訳も無いことを。

 だからこそ、口や表情ではヘラヘラしている一誠だが、内面は既に目の前の女を始末する為に感覚をより研ぎ澄ませている。

 

 

「違う。悪魔(アイツラ)は関係ない」

 

「は?」

 

 

 だが、殺意をより鋭く、憎悪する様な眼光で睨み付けてくる黒髪の女は一誠にとって研ぎ澄ませた感覚を一瞬ながら削ぐ言葉を低い声で言った。

 

 

「あ? テメーは感覚的に転生悪魔だろ? 一応元転生クソ悪魔であったからそれと同じクソみてーな感覚をテメーから感じるんだが? おいおい、悪魔にご迷惑でもお掛けしたくございませんってか? 忠義心に泣けるなぁ?」

 

 

 だが一誠はそんな戯言を信じるつもりは無い。奴隷の如く尊厳を踏みにじられていた転生悪魔時代に己の中を浸透していた転生悪魔としての感覚と、今嘯いた黒髪の女から感じる気配は同じなのだ。

 一誠にしてみれば見え透いた嘘でしか無い。

 

 

「まあ、どっちでも良いぜ。

どうせやることは決まってるんだからよ!」

 

「……!」

 

 

 故に時間も掛けない。

 約束通りにスパッと終わらせ、スパッと家に帰ってゼノヴィアとイリナとご飯を食べる。

 その為にはこの邪魔で、何処か憎悪を煽る容姿をする転生悪魔の女を始末する為に、引っ込めていた殺意を剥き出しにする。

 

 

「その力で白音を傷付けた……! そんな力で私の妹をっ!」

 

 

 果てしない憎悪から湧き出る果てしない一誠の殺意。

 その圧力は周囲に居た様々な鳥達やら動物達を本能的な危険を感じさせ、ギャアギャアという鳴き声と共に散らせていく。

 それは、転生悪魔である上でとある種族でもある女に対してもその本能を刺激しているのだが、それでも女は自分以上に荒れ狂う殺意を剥き出しにした一誠の威圧に飲み込まれて堪るかと叫び内包していた全ての力を捻り出す。

 

 

「……白音? 誰だそりゃ?」

 

「嫌でも思い出させるつもりだよ……地獄でね!!」

 

 

 聞き覚えが無いとばかりに首を傾げる一誠に更なる殺意を孕ませた怒声と共に飛びかかる。

 

 

「思い出させるねぇ? ククク、どうでも良いな。

だってテメーが死ねば思い出す必要も無いだろう? ぐげげげげ!!」

 

 

 それが、背景を知らないまま始まる殺し合いのコングだった。

 

 

 

 

 

 

「おいアルビオン、ここら辺で確かに間違いないんだよな?」

 

『間違いない。

その証拠に山であっただろう場所が更地になっているだろう?』

 

 

 堕天使に育てられしハーフ悪魔。

 名をヴァーリであるこの少年は、現在の白龍皇である。

 暗めの銀髪と碧眼……とある血族の遺伝を受け継いだ容姿を持つこの少年は今、己の中に宿す白い龍に導かれる形で人間界のとある山――だった場所に居た。

 

 

「更地となった範囲は小規模だが、残留している力は確かに奴のものだな」

 

『うむ、間違いなく赤いのの宿主のだ』

 

 

 自然に囲まれていた筈だったろう場所に降り立ったヴァーリは、白い龍ことアルビオンと意識のやり取りをしつつ、先程まで誰かとやりあっていただろう宿敵が残した残留思念とも云うべき力を調査しようと、そこら辺を歩き回ってみる。

 

 

「例の夜の時にハイになってた兵藤一誠が『自分が壊したものは何であろうと二度と修復しない』等と、宣っていたが――――なるほどな、この更地となった場所からまるで生命力を感じられない」

 

『デタラメでは無いということか。

チッ、面倒な奴を宿主にしたものだぞ赤いのも』

 

 

 範囲としては50メートル程だが、その範囲内全てが緑すら失われた屍の大地と化しており、テクテクと軽く目を閉じながら生命の一つでも無いかと探るヴァーリは、文字通り更地となった場所が『壊されてしまった』事に戦慄が止まらない。

 

 

「確かに厄介。

しかし、それでこそ心踊るという奴だ。

…………。おめおめと逃げ帰った奴が口にする台詞では無いが」

 

『寧ろ英断だろ。あの宿主の小僧は俺ですらおぞましさを覚えたのだからな』

 

「だからといって尻尾を巻いて逃げ帰った時点で俺は腰抜けだよアルビオン――む?」

 

 

 力を取り戻した直後で、色々とハイになっていた一誠を見て、戦う事への楽しみよりも恐怖が勝り、おめおめと逃げ帰った時の屈辱は今でもヴァーリの中に残っていた。

 圧倒的な暴力、圧倒的な力、圧倒的な殺意。

 

 その全てが元主であるリアス・グレモリーやその仲間達に向けられ勝手に腕に出現した赤龍帝の籠手の元ことドライグが私とイリナに声だけながら礼を言ってくる。

ていたからこそ、鮮明にあのおぞましさと極悪さをキャッチ出来たのはある意味幸運ともいうべきものなのかもしれない。

 

 そしてその幸運を後押しする更なる幸運もまたヴァーリへと振り向くのだ。

 

 

「ぁ……う……く……!」

 

「む……何だこの女――――っ、転生悪魔かっ……!?」

 

『虫の息だが、まさか赤いのの宿主とやりあったのか?』

 

 

 それは唐突だった。

 破壊された更地を調査している内にヴァーリの目の前に現れた、ボロボロとなった女性。

 アルビオンの言うとおり、身体中が傷だらけで虫の息状態で倒れているその女性を目にして一瞬で転生悪魔と――そしてこの更地となった場所の当事者の一人である事を見抜いたヴァーリは、うつ伏せに倒れる女性の容態を見ようとまずは仰向けにさせる。

 

 

「手酷いな……だがおかしいぞ。

手酷いのは事実だが、何故この程度で済んでいる? 奴は悪魔というだけで即殺す程憎悪を募らせてる筈なのに……」

 

「ぅ……くぅ……!」

 

 

 至るところが傷だらけ、顔まで腫れている。

 男女関係なく悪魔であるなら容赦しない一誠なら納得出来る女性の状態。

 しかしそれでも直接悪魔を破壊していた姿を見ていたヴァーリは解せない――この程度で済んでるどころか、生きてまでいることに。

 

 

「し、ろ……ね……!」

 

「む、おい何を言っている?」

 

 

 しかし生きているとはいえ死にかけている事に変わりは無く、事情を聞こうにも、苦しそうに顔を歪ませながら同じ言葉をつぎはぎに発している女性にヴァーリは――

 

 

「チッ、仕方ない、生きているなら出来るか解らんが回復させて話を聞くか。

もしかしたら赤龍帝の攻略に繋がる情報が得られるかもしれないし……」

 

『ほう?』

 

「それに……多分コカビエルだったら間違いなく助けるだろうしな」

 

『それが本命だろ。お前はコカビエルばっかりだからな』

 

「うるさいぞアルビオン」

 

 

 苦しそうに呻く黒髪の女性を横抱きに抱え、アルビオンにからかわれながらもその場を後にした。

 ………。これが運命的な事へと繋がるとは知らずに。

 

 

 

 

 

 妹を壊した男。

 その男に報いを受けさせる為に私は挑んだ。

 

 

『くく、くはははっ!

テメーはそういう事だったのか! なるほど、だからさっきからイライラが止まらねぇ筈だぜ! あの白髪クソガキの姉なんだからよぉ!!』

 

 

 けど待っていたのは……只の絶望。

 

 

『そういえば言ってたぜあのガキ。

私には姉が居て、色々あって疎遠になってたってよ。

そして、今なら姉と向かい合えるなんてともなぁ……!』

 

 

 知りたくなかった現実。

 

 

『俺から力を吸い取って随分と自信を付けてた様だぜあのガキは。

くく、弱りきって抵抗しても無駄だった当時の俺を無理矢理犯しまくってたからそりゃあ自信も付くわなぁ!!』

 

 

 信じたくもない話。

 

 

『嘘だって?

くく、じゃあその妹とお揃いに同じ箇所をぶち壊してから冥界に送りつけてやるから、続きはあのガキに聞くんだな!』

 

 

 そして暴力的なまでの差。

 私の力をフルにぶつけても平然とその遥か上から叩き潰すかの如く極悪な何かは、絶望と同時に悔しさを募らせていく。

 

 

『はぐれ悪魔だからと同情してやれるか? 答えはNOだぜクソボケ!』

 

『ぐぅっ!?』

 

 

 だからこそ私は自分でもわからかい奇跡を起こしてしまった。

 

 

(一撃も当てられてないのに……こんな所で死んで堪るか!!)

 

 

 本能的に傷付けばその時点で二度と直らない攻撃を受けるその間際、私は自分の中で何かしらの奇跡を起こした。

 

 

「むっ!?」

 

「うぅっ!」

 

 

 それが何かなのかは私にだってわからない。

 でも確かに私はボロボロになったけど生きている。

 

 それも、再起可能な生還を――

 

 

「う……ぅ……?」

 

「……。む、気が付いたか?」

 

「こ、ここは? アナタは……?」

 

 

 私はしてやったんだ……白音の仇であるあの男に対して。

 

 

 

 驚いたどころじゃない。

 確実に赤龍帝と戦闘を行い、その上で生きているというだけでも驚くに値するというのにだ……。

 

 

「傷が……」

 

「見事なまでにボロボロだったのでな。下手なりの応急処置だ」

 

 

 意識を取り戻し、身体を起こして自分の身を確認しているこの女の傷が治療できる傷であった事に、俺とアルビオンは何よりも驚いた。

 

「アナタが助けてくれたの?」

 

「助けたか……。

結果的にはそうなるのかもしれないが、理由はちゃんとある」

 

 

 まさに奇跡。そしてそれ以上に不可解。

 この女が戦い、更地と化したあの場所は二度と元には戻らないだろうダメージが残されていたというのに肝心のこの女の受けた傷はちゃんと癒す事が可能。

 

 だからこそ女の質問に肯定だけしつつ、聞かなければならない。

 

 

「お前はどうやら転生悪魔である様だが、その身で赤龍帝と戦って何故生き延びられた?」

 

 

 この女の持つ経験が、対赤龍帝の役に立つ。

 それは最早疑いようも無い事であり、俺は率直に聞いた。

 

 

「………。さぁ」

 

「さ、さぁ?」

 

 

 しかし、返ってきた言葉は落胆してしまうものだった。

 

 

「さぁ……って事は無いだろう? そもそも戦いを挑んだ時点でお前だって奴の実力を事前に知っていた筈だ」

 

「うん、それは知ってたよ。

でも私にもよくわからないにゃん。こうして生きてられてるのも」

 

「にゃ、にゃんって……」

 

 

 顔色を見る限り嘘じゃないのだろう。

 だからこそ余計に落胆してしまうというか……。

 

 

「そんな事より助けてくれてありがとう。

あのままだったら死んでたと思うから……」

「別にそんな礼は要らん。

元々目的はお前から赤龍帝との戦闘状況を聞きたかったからだし……くそ」

 

 

 いや、八つ当たりしても仕方ないか。

 この女だってまさか自分が生きてるとは思っても無かっただろうしな。

 

 

「しかし不思議だ。

確かに悪魔は手酷く兵藤一誠にやられはしたが、報復するならもう少し数多くの兵隊でもぶつけると思っていた」

 

「………」

 

「お前、一体誰の眷属だ?」

 

 

 結局分からないというままのオチだったと少々ガッカリしたが、現状の兵藤一誠に挑むにはあまりにも無謀である事を改めて思い知らされたってだけでも良しとしよう……と、ポジティブに考えようと努める事にして、俺はあの更地から数キロ程離れた場所にポツンと立っていた小屋まで運んで治療をしてやった長い黒髪の女の身元を何となく聞いてみる。

 

 何分、奴を知ってるのであれば一人で挑むなんて輩は余程の自信家か何かとしか思えないけど、この女から感じるのはそういった類いのものでは無いのだ。

 

 

「居ない。私、はぐれ悪魔だもん」

 

「ほう……」

 

 

 狭苦しい小屋の隅で、壁に背を預けて座る俺から若干目を逸らしながらの女の言葉に俺は何となくそんな声が自然と出てしまう。

 

 

「はぐれ悪魔か……なるほどな。だから一人で無謀に挑んだわけだ。

しかし解せないな……俺が誰かも分からないのに、はぐれ悪魔である事を話してしまうのが」

 

「アナタがはぐれ狩りをしてる人なら、わざわざ助けて治療なんかしないと思ったから……」

 

「わからんぞ? 治療をしたのはお前から情報だけを聞き出し、その後始末する為かもしれない」

 

「それは――うん、無いよ。

キミにはずっと殺気を感じない。私はそういうのき鼻が利くにゃ」

 

 

 フッと笑みを見せる女を見て肩の力が抜けてしまう。

 何と言うか、あの男に挑んで生還したにしては肩透かしを食らう気分と言うか何と言うか。

 

 

「それにアナタも悪魔みたいだけど、悪魔達(アイツラ)とは気配が全然違うにゃ」

 

「……。烏合の衆共とは一緒にしないで貰いたいね」

 

 

 はぐれか。

 主に対してやらかしたからか、それとも力に溺れただけか。

 勘でしか無いが、この女は恐らく前者に当たるだろうな……なんてぼんやり考えながら、次にこんな質問をしてみた。

 

 

「お前は何故赤龍帝に挑んだ?」

 

 

 ある意味知りたい挑んだ理由。

 兵藤一誠に一人で挑んだ理由が助けてやったついでに聞いてみたくなる訳で。

 

 

「まさか知らないで、只何と無く挑みましたなんて台詞は言わせないぞ?」

 

「………」

 

 

 何か理由があるからこそ、死を覚悟で挑んだに違いない。

 そう思ったからこその俺の質問に対し、女は掛けてやった俺の上着の端を思いきり握り締めながら、恐怖――では無く悔しさに震えて俯き、怒りを堪えるような声で言った。

 

 

「アイツが妹を壊したから……」

 

「妹?」

 

 

 ……。なるほど、結構まともな理由だな。

 しかしコイツ、妹と言ったが一体誰の姉だ? 転生悪魔ということは元の種族を聞けば分かるかもしれないが……。

 

 

「少し前にリアス・グレモリーが眷属達ごと壊されたって話は知ってる?」

 

「…………………。納得したよ、そういう事か」

 

 

 コカビエルとアザゼル曰く、兵藤一誠は少し前まではリアス・グレモリーの支配下に置かれ、更に言えば元々あったあの力まで無理矢理抑制されていた。

 それに加えて随分と『可愛がられた』らしく、憎悪をより膨れ上がらせてしまった結果があの夜の惨劇に繋がったという、聞けば自業自得な末路なのだが……なるほど、そのリアス・グレモリーの眷属の中にこの女の妹が居た訳だ。

 

 ふむ、確かあの場に居たのはリアス・グレモリー、騎士の少年、バラキエルの娘、戦車の少女の四人。

 妹という時点で騎士の少年、純血一族であるリアス・グレモリーは無いとして、残るはバラキエルの娘と戦車だが、この場合行き着くのはバラキエルは一人娘しかいないという事を踏まえて戦車の……確か相当に兵藤一誠から痛め付けられたあの猫妖怪しか考えられん。

 

 

「妹の仇を取る為に挑んだ。けど、結果は何にも出来なかった。私の持つ全ての力を使い果たしても傷の一つすら付けられなかった……!」

 

 

 猫妖怪の姉か。

 兵藤一誠の報復が、更なる報復を呼び寄せた結果がこの女。

 中々どうして……世知辛いな。

 

 

「理由はわかったが、どうするつもりだ? ハッキリ言ってしまえば今のお前じゃあ逆立ちしても奴には勝てないぞ? ……………。まあ俺もだけど」

 

「わかってるよ……でも、それでも仇を取りたいにゃ」

 

「兵藤一誠が何故お前の妹を壊したのかという理由を知ってもか?」

 

「っ!? な、何でキミがそれを……!」

 

 

 ……。この反応はどうやら奴から直接聞いたらしいな。

 兵藤一誠も無意味に破壊した訳じゃあ無い……と、コカビエルとアザゼル経由で聞いていた俺としても、聞いてて吐き気のする話だったからな。

 ……。とはいえ、身内がそんな真似をしていたなんて姉としては信じられないだろうが。

 

 

「っ……あ、あんなの……あんな奴の言葉なんて信じられない! 白音がそんな事するなんて……!」

 

「はぐれ悪魔という事から察するに、妹とは随分会ってなかった様だが?」

 

「っ……そ、それは……色々あって……! くっ、キミはさっきから何が言いたいの?」

 

「いや別に? ただ、そんな事をしない筈の妹をそこまで壊したからには、相当な恨みでも奴にはあったんだろうよとね。

いずれにせよ、お前の妹は生きてはいる様だし、その記憶を覗けば本当か嘘かは直ぐわかる事だ」

 

「そ、それは……」

 

「できないか?」

 

 

 ぐっと唇を噛み締めながら再びうつ向いてしまう女。

 ……。多分、女も自分の妹を信じたいんだろう。

 けど、奴から受けた言葉もまた心の何処かで嘘だとハッキリ否定できる材料が無い。

 だからこそ今迷いが生じている。

 

 

「迷うくらいなら赤龍帝を倒した後にでもゆっくり真実を探るね。俺だったら」

 

「………」

 

 

 他人でしか無い俺が言った所で、それは他人だからこその意見だ。

 故にこの言葉に意味なんてのは無い。

 無いが……。

 

 

「悔しいよ……。アイツに勝ちたいにゃん……」

 

 

 砕けそうな心を持ち直させるには恐らく十分。

 

 

「勝って、アイツを這いつくばらせて、それが真実だとしても私は妹を――白音を壊した仇を討ちたい!」

 

「そうかい。そうか……」

 

 

 コカビエルは言っていた。

 

 『一度決定的な挫折を味わった者が進む道は二つ。一つはそのまま腐り果てるか。もう一つはその屈辱を受け入れた上で這い上がろうとするか』

 

 かつて俺が教えられた精神の一つ。

 挫折したまま終わるか、挫折をバネに這い上がるかの二つに一つ。

 

 俺はその言葉を何時でも忘れない。

 ハーフ悪魔だから、白龍皇だから……ルシファーの血を持つ者だからと何処に居ても腫れ物扱いされ、父親に毎日殴られ続けた挙げ句、あの男に殺されて腐りかけていた俺に手を差し伸べてくれた師の言葉を。

 

 

『小僧、強くなれ。

お前の流れる血なんかまるで関係ないと胸張って言える強さを持て。

その時までは、俺がお前の師だ』

 

 

 挫折から這い上がり、超越した尊敬する男……。

 

 

「俺は赤龍帝と宿命の繋がりを持つ者、だから何れは戦うつもりだ。

だが、今のままではどう足掻いても勝てない。どう足掻いても捻り潰される。

けど、そんな差を知った所で俺は元々諦めが悪い性格でね。『はいそうですか』なんて言えやしない」

 

「え……?」

 

 

 その師から教えは守る。

 そして、今俺に見せた這い上がりの精神を示したこの女には敬意を払わなければならない。

 だから……。

 

 

「赤龍帝は同類の仲間を二人持つ。

となれば、俺としても一人で挑むのは無謀だし、赤龍帝の強さを知った上で尚リベンジしたがる無謀な輩が必要だ。

故に俺は言う………お前、俺と強くなって赤龍帝をぶち倒さないか?」

 

 

 コカビエルが背を預けられる種族を越えた仲間を作った様に、俺も……今以上に強くなれる確信を持てる仲間を作る。

 形だけじゃない最強のチームを。

 

 

「えっと………これってナンパにゃ?」

 

「……………」

 

『ぶふぅっ! クハハハハ!! ナンパだってよヴァーリ? お前は肝心な所で何時も締まらんなぁ!』

 

(うるさい!!)

 

 

 …………。まだまだ師の様にはいかないみたいけど。

 

 

「うん良いよ。どうせアナタに拾われた命だし、この際アイツをぶちのめせるのなら何でも良い。

私は黒歌、アナタは?」

 

「ヴァーリ。白龍皇」

 

「え!? あ、宿命ってそういう事だったんだにゃ」

 

 

 この女には恐らく、俺に足りない何かがある。

 

 

「言っておくがさっきの口上はナンパじゃないからな? 勘違いするなよ」

 

「冗談で言ったのに何でそんなムキになってるんだにゃ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 小猫の姉の襲撃をぶち壊した一誠。

 しかし、その表情はとてつもなく難しい顔であり、家に帰って出迎えられたゼノヴィアとイリナにも一発で見抜かれてしまった。

 

 

「………。確かに後腐れ無くトドメを刺したつもりだった。けど、その瞬間俺は完全に見逃してしまった」

 

「手心を加えたつもりとはでは無いんだな?」

 

「うん……ドライグにも言われたが、それは無い」

 

「じゃあどうして……」

 

 

 小猫の姉を確かに始末しようとした。

 しかし失敗した。

 この話を受けた二人は驚きつつも、一誠の話を聞いていく。

 すると、聞かされたのは最も驚く事実。

 

 

「トドメを刺そうと……いや、その前からだった。

あの女に加えた攻撃の半分程に手応えが無くて、『まるですり抜ける様に』避けられた。

それだけなら何かしらの能力で片付けられけど、俺は確かにあの時一瞬だけあの女から感じた……」

 

 

 

 

 

 

 

「俺やイリナやゼノヴィアと『同じ』感覚を」

 

 

 小猫の姉……黒歌と名乗った女から自分達と同じものを感じた。

 一誠のこの言葉にイリナとゼノヴィアは目を見開いた。

 

 

「間違いないのか?」

 

「うん」

 

「や、やっぱり私達だけじゃないんだね……この力って」

 

 

 神器でもない、種族としての力でもない。

 言うなれば能力(スキル)であり、精神をそのまま具体的にしたもの。

 その力を自分達以外の者で持つ者が居たという話に、イリナとゼノヴィアは楽観するのを止めた。

 

 

「イッセーよ、目標はやはり遠いみたいだ。

だからこそ強くなろう」

 

「私もゼノヴィアもこれまで以上に頑張るから、イッセーくんも一緒に……ね?」

 

「おう、二人に言われると頑張れちゃうぜ……!」

 

 

 より強くなる。

 三人の心はより一つとなり、その証だとばかりに部屋の真ん中でガッチリと包容を交わすのだった。

 




補足

ヴァーリきゅん、お師匠さんの精神性に影響されてるのか、中々素直で良い子だったりする。

口では何とでも言うが、困ってる人を割りと助けてしまうのもその影響。

 その2
破壊される刹那で、スキルを無自覚に覚醒させた猫姉。

内容は鳥猫を知る方ならお馴染み……。

 安察願望(キラーサイン)

 何でもかんでも『すり抜けさせる』スキル。
 簡単に言えば、某大当たり万華鏡能力・神威

ただし、無自覚なので自分でもよくわかってない。

ちなみにヴァーリきゅんなんですが、実は生徒会長イッセーっぽい精神性に近いのかもしれない



にしても、評価下がるねー
ま、それ解ってて突き抜けた展開にしてるんで良いんですけど。
ムズいっすねアンチ話って
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。