中央にそびえ立つ木を囲むようにして造られた、そのベンチに。
音ノ木坂の制服を纏った少女が2人。
……しばしの沈黙。
普通なら話題を展開しなきゃ、と。大なり小なり焦燥感や不安感に駆られるものかもしれないが…。
______そこには対極の安堵感と安心感。
……ずっと今まで隣にいたから。
言葉にしなくても…いや。
言葉にしないからこそ伝わるものがある。
冷たい風は日を重ねるごとに暖を増し、その風は咲き始めの桜の花びらをふわりと宙に舞わせる。
「はぁ〜。何で卒業なんてあるのかにゃ〜…」
足をぱたつかせながら凛ちゃんがそう呟く。
「あはは…しょうがないよ。確かに卒業はちょっぴり……ううん。ものすごく悲しい…。けど、私は今までも。そして、この先もずっと凛ちゃんと一緒だよ」
「けど毎日は会えなくなるにゃ」
頬をぷくーっと膨らませ、ふと、何かを思いついたかのように続ける。
「……にこちゃんや穂乃果ちゃんもこんな気持ちだったのかな」
「うん。きっとそうだと思う」
別れは辛い。今までずっと一緒だったから、尚更。
「凛ちゃんはやり残したことはない?」
私の急な質問に「うん」と短く答えて「かよちんは?」と逆に返してきた。
「私は……。凛ちゃんは運動が得意で、それに対して私は何もできなくて…。いつも遠くから凛ちゃんのことを応援してるだけだったけど、1年間μ'sとして凛ちゃんと同じステージに立てて。……すごく嬉しかった。大好きなアイドルを、大好きな凛ちゃんとできて。最高のメンバーとできて。それだけでもう、十分すぎた。すごく幸せな時間だった。だけど……」
一息ついて。
「だけど、もう一回だけ……あの9人でやりたいな。スクールアイドル」
真剣な表情で私の話を聞いてくれる凛ちゃん。
空いていた距離を詰めてピタッと密着してきた。
そして、ゆっくりと。
「凛も…やりたいな。えへへ、2年前にちゃんと割り切ったはずだけどなぁ…」
その目からは涙が溢れ出していた。自然と私の頬にも涙がつたう。
________少しずつ。
少しずつだけど、色々なことが変化を繰り返して新しくなっている。
世の移りとして、それは当然で必然なことだと思う。だけど。
変わってほしくないものもある。
未来永劫、私たちの中で生き続けるであろうこと。
……これが青春なのかな?
♪♪♪♪♪♪♪♪♪
「本当にこれで最後だね」
校門を前に、手には黒い筒をもって。
「あの時はかよちんが急に部室に帰っちゃって」
遠くを見つめて凛ちゃんが言葉を紡ぐ。
「それからアメリカに行っちゃって、μ'sがすーっごく有名になって。……あれから2年かぁ」
不思議と笑みが溢れる。
「またメールが入ったりして?」
「そ、そんな事あるわけないよぉ…」
そう言う私をよそに、ふふん♪と楽しげな凛ちゃん。
「また9人で…かよちんと一緒にやりたいなと思うけど、今が最高だもんね!」
一歩、また一歩。私に詰め寄ってくる。
「かよちん、これからはもっと。もっと、もぉーっと!よろしくにゃ!」
……また泣きそうになっちゃうよ。
けど、最後はちゃんと笑顔で終わろう。
「うん!よろしくね!凛ちゃん!!」
そして2人の少女は校門を出た。
________2年前に始まった2人でひとつの青春は、静かに幕を閉じた......。