ポンタローと申します~
この度、初めてハーメルンさんに、大人気の艦これ二次創作作品を投稿させていただきます~
もう完結している作品なので、毎週土曜、日曜の午前零時に更新させていただきます~
ちなみにこの作品は、2015年9月25日のアップデート前に書いた作品です~
この作品は、ピクシブさんにも載せさせていただいております~
どうぞよろしくです~
ではでは~
艦隊これくしょん。通称艦これ。
第二次世界大戦時の艦艇を萌えキャラクターに擬人化した『艦娘(かんむす)』と呼ばれる娘達を集め、謎の敵『深海棲艦(しんかいせいかん)』と戦うカードゲームとシミュレーションゲームを組み合わせたようなブラウザーゲーム。
2013年から配信が開始され、2015年、その人気は絶頂へと達していた。
しかし、私は思う。
はっきり言ってこのゲーム……つまんない。
だって、出てくるのみんな萌えキャラじゃん。女の子じゃん。
そりゃ私にとってはつまんないですよ。だって私、女の子だもん。
私の名前は有希乃。最初に言っとくけど、私、腐った女子じゃありません。
別に腐ってるわけでも特にゲーム好きでもない私にとっては、この萌えゲーはつまらない以外何物でもなく……
だああ! 分かってます! 分かってますよ!
ゴチャゴチャ言わずにさっさと行けってんでしょ!
行きます! 行きますってば!
ったく、何で私がこんな……
と、言いたいことは山ほどあるし、不満も無茶苦茶あるけど……
結局のところ行くしかないのよね。
だって、私は……
ザザッ……ザッ……
ザザザ……………
ザザザザザザザザザザ…………
ザザザ…………………………
ザッ…………………………
ザァァァァァァァぁァァぁ……
ザザッ……ザザザザザザッ……ブツン!
そこで唐突に私の意識は途切れた。
まるで電源をオフにしたテレビのように……
第一章 邂逅
「……いとく、提督! 起きてください、提督!」
「えっ?」
困ったような声よりも、肩を揺さぶる強い力で私は目を覚ました。
そして開けた私の視界に、一人の女性の顔がどアップで広がっている。
とても、綺麗な女性だった。愛用のゴーグルを通してもはっきりと分かる。どこかで見たような気もするな。どんな男でもクラリときてしまいそうなほど綺麗で整った顔立ち。ほっそりとした肢体に、さらさらの流れるような銀髪。
けど、生憎と私は男じゃない。
「……近い」
私は、まだぼやけた頭でそう呟いた。
その言葉に、目の前の女性はホッとした表情になる。
「よかった。急に立ったまま眠ってしまわれたので、どうしたのかと思ってしまいました」
「た、立ったまま寝るって……そんな通勤に疲れたサラリーマンじゃないんだから」
「さらりーまん? あの、提督……一体何を仰っているのですか?」
「いや、ちょっと現代社会の厳しさを……って、アンタ……ひょっとして翔鶴?」
そう、目の前に立っていたのは、艦これでおなじみ、翔鶴型一番艦、正規空母翔鶴だった。
「はい。そうですよ。先ほどご挨拶させていただいた、翔鶴型一番艦翔鶴です。いきなりどうされたのですか?」
「いや、どうって……」
な、何で翔鶴が普通に喋ってんの? っていうか、何で私、ゲームのキャラと普通に会話してんの? っていうかそれ以前にここ……
そこで私はふと気付く。ここって……
今、私の立っている場所。そこは古びたドックだった。
オイルの匂いが染み付いたその場所には、資材と思しき物が乱雑に置かれている。
ここどこ? 何で私、こんなところにいるの?
「提督、どうされたのですか? 本当に大丈夫ですか?」
「えっ? ……うん。大丈夫……なはず」
「ちょっと翔鶴姉、そいつほんとに使えんの?」
違う方向から声が聞こえてきた。
声の方に顔を向けると、そこにはまたも知った顔が(と言ってもゲームの中でだけど)。
瑞鶴だ。翔鶴型二番艦、正規空母瑞鶴。翔鶴と同じほっそりとした肢体だが、お胸は翔鶴よりちょっと(というかかなり)控えめ。セミロングの髪を左右で二つに縛り、少しつりあがった目でこちらを睨んでいる。
「いくら指揮官が必要とは言っても、そんな奴が本当に役に立つわけ? っていうか、それ以前に、そんな奴、信用できるの?」
カチン。言ってくれるじゃない。
「瑞鶴、提督はこんな状況下に置かれたわたし達を救うために立ち上がってくださった勇気のある方よ。もっと敬意を払いなさい」
「本国が送り込んできたスパイって可能性もあるじゃない」
「瑞鶴、いい加減にしなさい」
「だってぇ」
諭すように語り掛ける翔鶴に、少し頬を膨らませる瑞鶴。ゲーム同様、仲のいい姉妹だった。
って、そんなこと言ってる場合じゃないし。そもそもスパイって何?
っていうか、何ここ? 一体どういうこと? 何で私、艦娘達と普通に会話してるの? っていうか、何でこの子達、普通に喋ってるの?
『艦娘(かんむす)』。それは、大人気ブラウザーゲーム『艦隊これくしょん』に登場する、昔使われていた艦艇を擬人化した娘達だ。
彼女達が、艤装(ぎそう)と呼ばれる装備を身に纏い、謎の敵『深海棲艦(しんかいせいかん)』と戦うところからゲームは始まる。
「まあ、誰もいないよりはいた方がいいに決まってマース!」
また別の方向から声がする。
なんか妙な箇所にアクセントのついたくせのある日本語。これは……
「ヘイ、提督~! 金剛型高速戦艦の一番艦、英国で生まれた帰国子女の金剛デース! よっろしくお願いシマース!」
やっぱり、そこにいたのは紛れもなく金剛だった。スレンダーな肢体に、少し茶色がかった髪。ゲームの中と全く同じ喋り方の金剛がいる。ほんと、どうなってんの?
「あの提督、これからよろしくお願いします」
金剛の横から、控えめに一人の少女が挨拶してくる。金剛によく似たその容姿。けどこちらの髪は真っ黒で、まさしく大和撫子を連装させる。榛名だ。
金剛型三番艦榛名。私、この子割と好きなのよね。
よく見ると、他にもたくさんの艦娘達が、私を囲んでこちらを見つめている。
おっ! 電もいる。その隣にいるのは、帽子を被ってるから暁か響――じゃない、雷だ。
雷が、暁や響の被っているような帽子を被ってる。
い、一瞬誰だか分からなかったわ。
それに、あそこにいるのは大井か。な、何かすごい殺気みたいなの発してるし。わ、私にじゃないわよね。ま、まさかね、アハハ……
おまけに私の上空には、身長三十センチくらいの小人が何人もフヨフヨ浮いてるし。なるほど、あれが妖精さんか。
「ねえ、翔鶴。とりあえず状況を説明してくれる?」
「えっ? 状況と言われましても、今まさに新しい提督の着任挨拶という場面なだけなのですが……」
「はあ……新しい提督ね。で、その提督はどこにいるの?」
そこで、周りにいた子達が一斉に私を指差す。
「えっ? 私?」
先ほど指差したみんなが大きく頷いた。
「そうです。あなたこそ、絶望に陥っていたわたし達の前に現れた一筋の光明。わたし達の新しい……いいえ、わたし達にとって最後の提督なのです」
はあ~~~~?
何? 何言ってんの、この子? どっか頭おかしいんじゃ……
ということはできなかった。
だって、私の周りにいる艦娘達の瞳があまりにも真剣だったから。
真剣で、そして悲哀に満ちた、そんな瞳をしていたから。
「……フウ」
隣にいた翔鶴がこれ見よがしに大きくため息を吐いた。
「分かりました。どうやら提督は、まだ着任したばかりで現状に戸惑っているご様子。そんな提督に、現在の状況をざっとご説明させていただきます」
「……よろしく」
「二年ほど前から、世界各地の領海に突如現れた深海棲艦。通常兵器では倒すことのできない、目的もどこから現れたのかすら分からない存在。わたし達艦娘は、その深海棲艦に唯一抵抗できる存在として集められた者達です」
「うん。それは知ってる」
「わたし達を戦場に投入することにより戦況は拮抗。そして現在に至るわけですが、最近になって突如そのバランスが崩れました。ある存在の出現によって」
「何よ、ある存在って?」
「……分かりません」
「はあ? 分かりませんって、何それ?」
「本当に分からないんです。わたし達の前に突然現れた存在。わたし達が『虚無』と呼称するその存在の出現によって、わたし達は一気に窮地へと陥りました」
「そ、そんなに強いの?」
「いえ、強いというより……」
「言うより?」
「何もできないんです」
「えっ?」
「わたし達は艦娘。深海棲艦に対抗するための唯一の手段にして、奴らを倒すために集められた者達。しかし、わたし達の攻撃は何をもってしても虚無には通じない。何をもってしても倒すことができない」
「…………」
何それ? 何のチートよ? ちょっと運営さん、えらいモン作ってんじゃないわよ。
「そして、何より恐ろしいのは、虚無がわたし達艦娘を呑み込んでしまうことです」
「呑み込む?」
「そう。こちらの攻撃は一切通じず、わたし達を丸呑みにしてしまう存在。それが虚無」
「なっ!」
「何をしても倒すことのできない虚無の前に、仲間達は一人、また一人と呑み込まれ、残っているのはもうわたし達二十人だけ。そして、圧倒的な戦力差の前に、すでに本拠地であるブイン基地は壊滅。わたし達は、まだ敵の勢力が及んでいない前進基地を転々として逃げ延びてきた」
「…………」
「このまま世界滅亡かと思われましたが、そこで一つ不思議なことに気付きました」
「何よ、その不思議なことって?」
「虚無も、そして深海棲艦も、人間を襲う気配が全くないこと、です」
「えっ?」
「もちろん深海棲艦が現れた当初は、争いがありました。ただしそれは、こちらから深海棲艦という未知の存在に向かって先に攻撃した際に、向こうが抗戦してきたというだけのことだったのです。それにこちら……というか政府や上層部が過敏に反応して戦争に突入したというだけ。深海棲艦の方から人間、もしくは領土に侵攻してくるといったことは一切ありませんでした。当初のことを除けば、奴らはただ突然どこかの国の領海に現れ、その近辺にある資源を奪って去っていく、ただそれだけの存在だったのです。人間にとっては……ね」
「しかし、その深海棲艦が執拗に狙ってくる存在がいました。それが……」
「ひょっとして、艦娘?」
「……そうです。深海棲艦は、どういうわけか執拗にわたし達だけは狙ってくるのです。原因は分かっていません。自分達を傷つけることのできる唯一の存在だからなのか、はたまた別の理由からか。とにかく、深海棲艦は、艦娘だけは執拗に攻撃してくる」
「…………」
「わたし達は、深海棲艦が自分達に脅威を及ぼすと思っていた人達によって集められた存在。しかし、その事実を明らかになった時、自国の領海の資源を一部提供することで、深海棲艦との共生が可能だと分かった政府の上層部は、一斉にわたし達を切り捨て、見捨てました。ある日突然、本国からの補給は途絶え、通信すらできず、前任の提督はわたし達に何も告げず姿を消した」
「なっ!」
「まあ、無理もありませんよね。だって、自分達を攻撃してくるわけではないのだから。何を好き好んで、わざわざ敵のターゲットを保有する必要がありますか。そんなもの捨ててしまえばいい。だって、そうすれば狙われることはないのだから」
「…………」
「そして、切り捨てられ、見捨てられたわたし達は、あっさりと残った前進基地と共に放棄された。結局、彼らにとってわたし達は、ただの道具でしかなかったのです」
「…………」
「ですから、現在のわたし達は、別に国を守るための戦いでも人々を守るために戦っているわけではないんです。ただ、わたし達が深海棲艦から生き延びるためにサバイバルをしているだけなんですよ」
……ほんとどうなってんの? ここはリアル艦これの世界ってこと?
艦これってただのブラウザーゲームでしょ? なのに、何でこんなにリアルかつシリアスな展開になってんのよ。
艦娘は普通に喋ってるし、ほっぺ抓っても痛いだけだし……ほんとどうなってんの?
そもそも何よ、この重すぎる設定は……
「提督、大丈夫ですか?」
翔鶴が心配そうに私の顔を覗き込む。
しかし、私は翔鶴の質問には答えずに、とりあえず翔鶴のスカートを掴んで、捲りあげた。
「キャア!」
翔鶴が可愛い悲鳴を上げる。あっ、白なんだ。
ゲームだと紐しか見えないから分からなかった。
「て、提督! いきなり何を……」
「いや、ちょっと翔鶴のパンツが見たくなって」
この反応、とてもブラウザーゲームのプログラムとは思えない。
「ちょっとアンタ! 何勝手に翔鶴姉のスカート捲ってんの! 翔鶴姉のスカートを捲っていいのはアタシだけよ!」
「瑞鶴、何バカなこと言ってるの! て、提督も、早くスカートを下ろしてください!」
「あっ、ゴメン」
私は、謝って素直にスカートを下ろす。
ふ~む。どういうことだ?
状況が全然分からない。アニメやマンガじゃあるまいし、「ある日突然ゲームの中に入っちゃいました、キャハ☆」(←自称艦隊のアイドルと名乗る艦娘、軽巡洋艦那珂ちゃん風に)ってのは勘弁してほしいんだけど。
でも、実際私はゲームの中にいるわけで……う~む。
あ、そうか! 夢か! これは夢オチか!
……と思ってはみたものの(というか現実逃避してみたものの)、さっきほっぺた抓っても痛かったし、さすがにそれはないな。
っていうか、もしそうだとしたら、私どれだけ艦これ好きなのよ。
まあ、状況がはっきりと分かるまでは、とりあえず話を合わせとくしかないか。そのうち帰れるかもしれないしね。超希望的観測だけど……
けど、実際(?)の艦これの世界は、ゲームとはえらく違うな。
「まあいいわ。とりあえず現状戦力の把握から始めましょうか。一人ずつ、順番に自己紹介してくれる? あと、現状の装備なんかも」
もちろん私も艦これはやってるから、今周りにいるメンバーの顔ぐらいは知っている。
けど、ステータスや装備の確認はしておかないと。だって、ゲームみたいに画面もコマンドもないから、調べられないんだもん。
「分かりました」
私の言葉に、まず声を上げたのは翔鶴だった。
「改めて自己紹介させていただきます。私は翔鶴型一番艦翔鶴。正規空母で、練度は九十九.一度改造を施されています。装備は……」
翔鶴を皮切りに、私は一人ずつ順番に名乗らせ、現在の状況を説明させた。
それによると、生き残ったメンバーは、
正規空母、翔鶴、瑞鶴。
軽空母、瑞鳳。
戦艦、大和、陸奥、金剛、榛名。
航空巡洋艦、利根、筑摩。
重巡洋艦、高雄、愛宕、羽黒。
軽巡洋艦、川内、神通、大淀。
重雷装巡洋艦、大井。
駆逐艦、雷、電、睦月、島風。
フム。練度というのは、どうやらレベルのことみたいね。装備はまあ分かるとして、改造の回数ってのも、そのまま改一か改二かってことみたい。
フムフム。ざっと整理すると、みんなレベル九十九で、装備は最高の物。そして、大規模改装も近代化改修(合成)も全て最後まで済んでいるってとこか。
なるほど。相当場数を踏んでるみたいだから、最初からチマチマキス島周回してレベルを上げる必要はないってことね。まあ、強いて言うなら……
「アンタ達、一人も指輪してないの? ってことは、誰もケッコンカッコカリしてないわけ?」
「はっ?」
私の言葉に、翔鶴が首を捻る。
「指輪? けっこんかっこかり? 何ですか、それは?」
「いや、指輪ってのは、アンタ達のレベル……じゃなかった、練度の上限を上げるためのアイテムで、ケッコンカッコカリっていうのは、まあ、提督がアンタ達に指輪を贈ることで成立する結婚みたいなもんよ」
それを聞いた全員が、サーッと私から距離を取る。
「あの……提督、一応聞いておきますが、提督は女性ですよね?」
「……翔鶴、アンタ、ひょっとして私にケンカ売ってんの?」
「とんでもない。ただ艦娘は全員、その名の通り女性ですので、女性同士で結婚というのはちょっと。それに複数の女性と結婚するというのは……」
どうやらとても心外な勘違いをされたらしい。
「そんなこたぁ分かってるわよ! 私だってそっちのケは全然ないわよ! ただゲームにそういうシステムがあるってだけで……」
「? ゲーム……ですか?」
っと、これは言っても分からないか。
まあいいわ。とにかくケッコンカッコカリシステムはないと考えた方がよさそうね。
「分かったわ。それじゃあ次に――」
「あの、提督……」
翔鶴が控えめに手を挙げる。
「何?」
「あの、提督のお名前をまだ窺っていないのですが……」
あっ! 私、まだ名乗ってなかったんだ。
「えと、コホン。私の名前は有希乃よ。字は……こう書くわ。ちなみにこのゴーグルがトレードマークよ。これからアンタ達の提督を務めさせてもらいます。え~と、年齢は……」
あれ? 年齢が出てこない。じゃあ、血液型……あれ? 血液型もだ。
性別は女として(違ったら悪夢だけど)……ヤバイ! 名前以外出てこない。
一時的に記憶障害を起こしてるのかも。しょうがない。
「え~、これからみんなの提督として頑張っていきますので、よろしくお願いします」