「……きのねえ! 有希乃姉っ!」
「えっ?」
ボーっとしていた私を誰かが呼んでる。誰?
「有希乃姉ってば! も~、どうしたのよ、急に」
声の方を見ると、セミロングの綺麗な黒髪を左右二箇所で可愛らしいリボンを使って縛った、私より少し背の低い女の子が、パッチリとして少しつりあがったお目々で可愛らしく私を睨んでいる。
この子、誰? 見覚えはあるんだけど。……ダメだ、名前が思い出せない。
「えっと……アンタ、誰?」
「はあ? それ、本気で言ってんの? 有美乃(ゆみの)よ有美乃。アンタの姉妹艦の有・美・乃!」
「ユミノ?」
あれ? この子、そんな名前だったっけ? なんかもっと違う名前だったような……
「はあ~。まったく。こんなのがアタシの姉だなんて信じらんない。妹の顔忘れる、普通?」
「ゴ、ゴメン……」
「ダメ! 許さない!」
私の妹(?)らしい有美乃は、ほっぺをプクッと膨らませて顔を背ける。
それを見て、何かが私の頭を過ぎろうとするが、思い出せない。
おっとダメだ。まずはこっちが先か。
「ほんとにゴメンね」
「ダメッ! 絶対許さない! 『真・間宮』さんのとこで、デラックススーパースペシャルジャンボパフェ(赤木バージョン)のフルーツ鬼増しおごってくんなきゃ許さない」
「わ、分かった。何でもおごるから」
「ほんと!」
私がおごると言った途端に、有美乃がこっちを向いて顔を輝かせる。意外に現金な性格のようだ。
「ところで有美乃、一つ聞いていい?」
「ん~、な~に?」
「ここ、どこ?」
「はあ? ちょっとお姉、ほんとに大丈夫? どっかバグッたんじゃないの?」
「えっ? いや、大丈夫だと思うんだけど……」
「ハア~~。まあいいや。一時的なものかもしれないし、本格的にやばかったら運営の方で何とかするでしょ」
「? 運営?」
「ハア~。しょうがないなぁ。一時的にボケてるお姉に一から教えてあげる。ここは、『艦隊これくしょんEX』、通称艦これEXっていう十八歳以上推奨のブラウザーゲームの世界で、私達は提督と呼ばれるプレイヤーの指示に従って、深海棲艦って敵と戦う娘、通称艦娘。まあ、ぶっちゃけオタクどもを喜ばせるために作られたゲームの駒ってところかしら」
「…………」
「でも、ただのブラウザーゲームと見縊っちゃあダメよ! なんとこのゲームは五十年以上の歴史を持つ伝説のブラウザーゲームなんだから」
「はあ、五十年ね……」
「そう。最初は史実にあった艦艇とかを美少女化してたんだけど、あっという間に人気に火がついて、今や世界中で艦これの名を知らない人はいないくらいになっちゃったの!」
「ふ、ふ~ん……」
「それでゲームもどんどんグレードアップされていって、今じゃ近年開発された水陸両用の機動戦艦までモチーフにしちゃったわけ」
「ほ、ほう……」
「んで、アタシ達はその最新鋭艦。今度アップデートされる予定の艦娘、機動戦艦有希乃と有美乃なわけですよ」
「な、なるほど……でも、ただのプログラムのわりに、私達には普通に意思があるみたいだけど」
「あったりまえじゃん! 初めてこのゲームができてから何年経ってると思ってんの! 今やこのゲームは劇的に進化し、当初は決められた台詞しか喋ることができなかった状態から、自らの意思を持って考え、喋ることができるまでに進化したわ。まあ、とは言っても、提督の指示には従わなくちゃだけど」
「…………」
「そんでもって、今アタシ達は全世界の提督にお披露目前の最終チェックって場面だったんだけど……どしたの、お姉? やっぱり変だよ。どっか不具合があるんだったら、アップデートは延期になっちゃうけど……」
「いや、それは大丈夫だと思う。ちょっとね、寝ぼけてたみたい。夢を見てた……みたいな」
「はあ? 夢を見てたぁ? アタシ達プログラムだよ。そりゃ提督にお休みとかお風呂入ります(入渠します)とかは言うけど、そんなのほんとにするわけないじゃん。ほんと、大丈夫?」
「うん、大丈夫だって! ところでさ、もう一つだけ聞いてもいいかな?」
「ん? なぁに?」
「今のこのゲームにはさ、その……ゲームが始まった当初からいる艦娘達も全員いるの?」
私の言葉に、有美乃は不思議そうに首を傾げた後、ゆっくりと口を開いた。
「そんなの、あったりまえじゃん!」
完
どもども~
ポンタローです~
これにて艦これif ~ポンタローバージョン~完結とさせていただきます~
最後までお付き合いくださった方、本当にありがとうございました~
これからもポンタローは、もっと皆さまに喜んでいただける作品を書けるよう精進してまいります~
それではまた次回作でお会いしましょ~
ではでは~