これは一冊の本を読んだことにより変わった英雄のお話
「いったぁ!…あれ?ここは……」
ここに1人、紅目で白髪の少年がある場所に落ちた。
その場所は家の地下だった。だが、少年は拾われてから1度も地下があるなんて聞いたことがなかった。
まだ幼い少年は、今まで来たことがなかった地下という空間に興味を持ったが、あたり一面が暗い事から恐怖心が勝り、とても泣きそうになった。
少年は恐怖感に襲われながらも、誰かの助けを呼ぼうとしたが、いつも一緒にいる祖父や村の大人達は今日は用事があると言って出て行ってしまっている事を思い出した。
なのでなんとか脱出を試みた…が、落ちた床までは5mという高い距離にあり、結局届かなかった。
もしかしたら周りの物を使えば上に届くかもしれない。
少年は頭の隅にそんな考えをしていたが、穴が開いた床から覗く光のみしか光源と言える場所がなく、怖くてその場所にうずくまっていた。
どれだけの時間が経っただろうか。
少年はいつの間にか寝ていたのだが、ふと目が覚めた。
陽も結構落ちているのだろう。光源の位置が斜めに変わっていた 。
すると、まるで見て欲しいと言わんばかりに、光源の先に1冊の本があった。
少年は恐る恐るその本を手に取った。
その本は見ただけでもわかるくらいにとても大量の埃をかぶっていた。
少年はすぐさまその埃を払って、その本を読もうとした。
なぜかは知らないが、それを読まなければならない気がしたからだ。
埃を払うと、少し掠れた表紙が見えてきた。そしてそこにはこう書かれていた。
ーーせいぎのみかたのものがたりーー
少年は題名を見て、自分の好きな英雄譚だと思い、目を輝かせてすぐに読み始めた。
だがそれは、少年がいつも読んでいたのと違う、悲しい英雄譚だった。
むかしむかし、あるところにふたりのおやこがいました。
そのうち、おとうさんはいえからみえるおつきさまをみながらこういいました。
ぼくは“せいぎのみかた”にあこがれてたんだ…と。
でも、おとうさんはせいぎのみかたをあきらめてしまったと。
おとこのこはそれをきいて、「じゃあぼくがせいぎのみかたになってやる!」といいました。
そしてすこしして、おとうさんはそのことばをきいたあとになくなってしまいました。
おとこのこはかなしみましたが、そんなひまはないと、すぐに“せいぎのみかた”になるためにとっくんをはじめました。
だけど、まったくといっていいほど、つよくなりませんでした。
それでもしょうねんはあきらめずにつづけていきました。
それからすうねんたち、しょうねんは“コウコウ”というまなびやにいきました。
そこでひとりのおんなのこにあいました。
そのおんなのこに「あなたはまちがえている」といわれてきづきました。ぼくのやりかたはまちがっていたのだと。
そのあとしょうねんはおんなのこにしどうしてもらい、だんだんとせいちょうしていきました。
しょうねんはそれからせいねんになり、もっとせいちょうするために、いこくへいきました。
そこでせいねんはもっともっとつよくなりました。
ついに“せいぎのみかた”になるじゅんびができて、せいねんはせんじょうへいきました。
せいねんはなんにんものひとをすくうため、なんどもなんどもたたかいました。するとせいねんは、かみはまっしろになり、はだはこげちゃいろになっていました。
そしてせいねんはいつしか“えいゆう”といわれるようになりました。
せいねんはそれをうれしくおもい、そのままたたかいつづけました。
だけどじかんがたつうちに、せいねんはみんなからおそれられるようになりました。
せいねんはみんなをすくうためにたたかいつづけましたが、みんなはなんのためにたたかっているのかわからなかったからです。
それでもせいねんはなんにんものひとをすくうためたたかいつづけました。なんどもせんそうをとめ、せかいをすくっていきました。
そしてあるとき、ひとつのあらそいがおきました。
せいねんはそれをとめるためにちゅうさいにはいりました。
するとぎゃくに「おまえのせいだ!」といわれてつかまってしまいました。
せいねんはなにがおこっているのかわからないまま、しょけいだいへとつれていかれました。
せいねんはけっきょくなにもしていないのに、ころされることがきまり、そのままころされてしまいました。
まわりのひとは、なんのみかえりもなくたすけるせいねんがおそろしかったので、しんだことにあんどしました。
けっきょく、せいねんはみんなにつかわれていたそんざいでした。
でもせいねんはそれでもいいとおもっていました。
だれかをすくえたのなら、じぶんのじんせいはじゅうじつしたものだとおもっていました。
それにせいねんはーーー“せいぎのみかた”になれたのだから。
おしまい。
少年はこれを読んでいると、いつの間にか泣いていた。
いつもの英雄譚と違い、とても悲しい話だった。
それでも少年は少し違う感じにも捉えていた。
少年が最初に思ったのは“悲しみ”。
正義の味方であろうとした青年の儚く虚しい物語。
何千人もの命を救うために戦ったのに、最期は自分を恐れられた人による嘘により、命を断たれた悲しい話だと思った。
そして次に思ったのが“後悔”。
“英雄譚”。
それは英雄の活躍を描いた本。
子供の頃は誰もが憧れ、誰もがなりたいと思っただろう。
だが、少年は現実を知ってしまった。
英雄になるには、時に非情にならなければならないということを。
英雄譚のように、全てが都合よくいくわけではないということを。
だから少年は“後悔”した。そして思った。
ーーーこれが真の英雄なのだと。
これこそが真の英雄。英雄譚のような綺麗なところだけ描かれている英雄とは違い、時には血みどろに
少年は、これが自分のなりたかったものと思うと、不安もあったが、最後に思ったある想いがその不安を塗り潰していた。
それは
ーーー“憧れ”だった。
そう。ーーー“憧れ”。
どんな時でも救おうとした。
どんなに貶されても救おうとした。
たとえ無理だとわかっていても諦めなかった。
どんなピンチがきても義父との
たとえ自分がボロボロになろうとも
その全てに少年は憧れた。自分もそんな風になりたいと思った。
そう。
その瞬間、本が光り輝くほどの光を発し、少年にはとんでもないほどの頭痛が起こった。
まるで
「あああぁぁぁぁぁあああ!!!!!」
少年は痛みにより叫びに叫び続けた。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!
痛みがそのまま強くなっていき、気絶するかと思ったが、突然世界が反転した。
**********
そこは戦場だった。
多くの人が死に、何人もの人が血と涙を流していた。
少年は何かを叫ぼうとしたが、叫べなかった。
すると、その戦場に1人の紅い服を着た騎士が来た。
その騎士は、両手に黒と白の双剣をもち、戦場を暴れまわった。
そしてその騎士が来たことによりその戦いは終わった。誰がどう見てもその騎士がいたお陰で勝ったと言える戦いだった。
だが、周りは無情にもその騎士を罵倒した。
ーーーなぜもっと早く来てくれなかったのか。
ーーーなぜ救ってくれなかったのか。
ーーーなぜ見捨てたのか。と
少年はなぜ罵倒させられると今度こそ叫んだ。
どう見てもその騎士は悪くなかった。
実際に何人もの人を救い、何人もの人を守った。
なのにその騎士は責められた。そしてその騎士はその罵詈雑言をそのまま聞き、終わるとゆっくりと立ち去った。
少年は思った。これが僕が憧れ、なりたいと思ったモノか…と。
その後もそれは続き、何度も何度も戦い、助けては罵倒され続けた。
それが理不尽だとはわかっている。だがそれでも、助けられた側もどこかに鬱憤を晴らさなければ生きていけないのだろう。少年は幼いながらもそれを理解した。
それだけこの
少年はそれを見ながらも、やはり憧れを抱いていた。
罵倒され続けても助けるその姿。
どんな英雄譚よりも、悲しく虚しいものだが、どんな英雄譚よりも心に響いた。
そして誰かを助けるということが綺麗だと思った。
それを見て誰にも傷ついて欲しくないと願った。
だからこそ僕は思った。
ーーー正義の味方になりたいと。
推薦で大学決まったノリで書いたもの。たぶーん続かない
強い要望あったら書くかも