俺は耳を疑った。
「…お前今なんて言った!?」
「だーかーらー、刈谷支那美を生き返してあげるって言ってるのー」
何度も言わせないでよ、と可愛げのない女性の声が聞こえる。
「嘘、ついてねぇだろうな?」
「まぁ嘘ついてもいいんだけどねぇ、今回は私にも関係してくるし、うちの生徒だしねぇ…
それに関しては、あの子の事でだいたい分かってるだろう?」
あの子…か…
「あの子はもう魂の離脱が長すぎたせいで蘇らせることは残念ながら出来ない。
だが、彼女ならまだ間に合う。早めに運んでくれればそれを長引かせることも可能だ。
さぁ、どうする?」
正直こんなやつの話は信用出来ない。
だが、可能性がないわけでもない。彼女を生き返らせることが出来るのなら。俺はそのちっぽけな可能性だって試してやる。
「…分かった。水原連れてそっちに行く」
「はいはーい。じゃあこっちは容器の用意でもしてるね〜
ばいばーい」
通話は切れた。
水原は自分の名前が出たのか、電話が切れるとこちらに話しかけてきた。
「…俺は誰と会うんだ」
「今から言う場所を聞けばわかる」
「なら早く場所を言え」
「あんたの学校の校長室」
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「いやー暇だねぇ…」
20代の女性が室内から窓を覗き面白いものがないか、と探している。
とは言ってもここは1階。そんなに遠くを見渡せるわけでもなくすぐに窓から目を離し客人用のソファに腰をかけた。
「あーひまひまー!早く来てよー!」
何故だろうか。隼人が会った時とはうってかわって子供のようである。
いや、これが本来の彼女の姿なのか。この光景を書き、見ていた編集者でさえ
『この人こんな人だったっけ…?』
と、頭にクエスチョンマークを浮かべる程である。
その時。なにか大きなものがこちらに向かってくる音がする。
「ほほう、ようやく来たか…」
彼女はわかっているようなのかソファで寛いでいた。
そして。
ガッシャァァァァァァァ!!!!!
と、大きな音を立てて窓から車が突っ込んでくる。
助手席側から人が降りてくる。
「いやはや、随分ダイナミックな入店だねぇ」
「悪いか?丁度刺激が欲しいと思っていると思ったんだが」
「いやいや、センスがいいよ。君、私の愛人にならない?」
「残念ながらお断りだ。大切な人がおるんでね」
「ありゃまほんとに残念
にしても水原先生もなかなかぶっ飛んでるけどねぇ」
「す、すいません!中村がやれって言うんで…」
「いやいや気にしてないよ。中村君がおかしいだけさ」
「悪かったね。それで?
早く話を始めようじゃないか」
「はいはい」
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「じゃあまず、刈谷支那美の身体を預かってもいいかな?」
「…分かった」
俺は素直に支那美の身体を渡す。
「分かってる。私も真面目だ。まずは彼女の身体を修復しなければ魂を戻しても意味が無い」
支那美が校長の手に委ねられると彼女はそのまま奥の部屋へと運ばれる。
すぐに校長が帰ってきた。
「…さて、彼女の蘇らせ方なんだが…
はっきりと一言で言おう。
蘇らせることは無理だ」
「…は?」
蘇らせることは…不可能…?
「どういう事だよっ…!!出来るんじゃなかったのか!?」
「少し語弊があったかな。
正確には魂の『時を戻す』という事」
…?
「まぁ簡単に言えば…部分的に時間をいじるってことだ」
尚更意味がわからない…
一体何が言いたいんだこいつは…
「これでも分からないのか…
もっと簡単に言うなら彼女の身体に限定して時を戻す、ってことさ」
「…!なるほど…!刈谷の身体に絞る事で刈谷の魂だけを過去に戻すことが出来る、と!」
水原がわかったかのように言った。
俺だってそのぐらいの理屈はわかっている。
だが…
「俺が言いたいのはそういうことじゃない…
どうやって戻すんだ…?」
「それに関しては当てがあってね」
「ほう、それなら今すぐできるのか?」
「いや、それは君達次第だね」
…俺達次第?なのに当てがあるのか…
「まぁ種明かしするとね
ヤイカルに取りに行ってもらおうかなと」
………
「それはさ…組織に行けってことか?」
「そゆことー♪ちょっと前に言った時に時空間干渉装置があったからねー。
取りに行ってもらおうかなーって」
「そんなのは当てとは言わねぇ!」