平凡な男と白髪の少女   作:ふれあすたー

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分かる、変わる

「だろうな。そうとしか考えられない」

それならば説明もつく。手を出さないのではなく手が出せない。

時の観測者に力は無い。権力、という力はあっても所詮その程度じゃ歴史を動かすなんてことは出来やしないのだから無いのに等しいのだ。

それにこの歴史上で起こる誰かの死。これに干渉してくる一番の敵は間違いなく影魔だ。その影魔を時の観測者は放置している。それは即ち時の観測者という立場で何を言ったって歴史は変わらないということなのだろう。先程も言った通り権力以外の力はないわけなのだから権力という力を失った今正面切って影魔に勝てる見込みなどあるはずもない。

「…委ねられてるってことか」

「そんな所だろう。傍観主義者ではないと自分で言っていたしな」

俺らがこの未来を変えるしかないってのか?

また随分な…まぁいいか。

「いいさ。その程度の未来、変えられないようじゃシナを守るなんて到底出来ないしな」

「強いな」

「そうでもねぇよ。あいつがいるから強くなってるだけ」

実際ドーピングみたいなもんだ。これが愛の力ってやつか。そんなんアニメの世界だけだと思ってたが。

 

 

 

ピリリリリ…

突如その音は鳴る。

「…電話?」

「こんな時間帯にか?」

どうやら俺の携帯からのようだ。

充電してないからそんなに残ってないんだがな…

「…校長からじゃん」

電話の主を見て若干驚いてしまった。まさかあいつから電話をかけるなんて。

またなんか変なこと言われんのかな。

「もしもし」

「…もしもし」

「なんだよこんな時間に。もう深夜だぜ?」

「あぁ、悪かったね。ちょっと聞きたいことがあってさ」

「…朝で折り返しでいいか?眠いんだが」

「いやいや、今知りたいんだよ。寝たら忘れちゃうかもだしね」

「めんどくせぇ…で、何?」

 

 

 

 

 

 

「今支那美ちゃんは何処にいる?」

「何処って…普通に家だけど」

「…そうか」

「え、何?ほんと何キモイんだけど」

「今すぐ支那美ちゃんの所に行って確認しにいけ!今すぐに!」

「はぁ…?何を言って…」

「急げ!私が時間を」

 

 

 

 

 

 

ブツン…

「…切れた」

「なんて?」

「…ちょっとシナの所行くぞ」

「おい!」

________________

「シナ!」

思いっきり扉を開けた。

校長の様子がおかしかったから。それが一番だろう。あいつが意味なく俺らを撹乱するとは思えない。

…だが、様子がおかしかったのは校長だけではなかったらしい。

「…っ!」

「おい中村、何や…って…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺がシナを寝かせてた部屋は、惨劇を物語っていた。

「楓花…!」

部屋は血で染まり、床には血溜まりが出来ていた。その血の元は、楓花のものであった。

急いで駆け寄り脈拍をとる。

「…クソっ!」

もう既に楓花は息絶えていた。腹は裂かれ五体満足、という訳でもない。こんなんで生きているほうが不思議である。

「…いつ入られた」

「俺らが話してたのは10分ちょい…その時間だけでこんな事が…」

…可能な奴がいる。影魔だ。

先程の電話の時にもきっと、影魔が居たんだろうか。

「ふざけんな…」

俺らにここまでして何が楽しい?もう嫌だ。もう…

「しっかりしろ!」

ふと我に返る。水原がこちらを見ながら声をかけてくれたようだ。

「…きついかもしれんがこの状況に呑まれるな。それよりも今は刈谷の方も気にしろ」

「…そうだ、シナは…シナは何処に…?」

…殺したいならここで殺せばよかった話だ。なのにここにはシナの死体がない。

「連れ去った…のか?」

「そう考えるのが妥当だろうな。何故かはわからんが」

連れ去る理由がわからない。あいつとしては邪魔者は即刻消し去るのが効率的だろう。

実際楓花はここで殺された。ならばシナをここで殺したって死体が1つ増えるだけだ。あいつにとってそんな事どうだっていいはず。

「…逃げたという線は?」

「無くはないだろうが…多分それはハズレだな。ならばそもそも悲鳴なりなんなりあげればいい。助けを乞う声が聞こえなかった以上、眠っていた時に襲撃されこいつを殺害、刈谷を連れ出すというのが一番有り得そうではあるがな」

「そう、だよな…」

ならばどこに連れ去られたというのか。

「…待てよ?」

そういえばあいつは…

「なぁ、コスモスはどこ行ったんだ?」

「知るわけねぇだろ。俺だって気付いたらいなくなってたんだから…」

…まさかとは思うが。

立ち上がりすぐさま玄関に向かう。

「おい!どこ行くんだ!」

「シナん所に決まってんだろ!」

後ろから水原が追いかけてくる。

「場所はわかってんのかよ!」

「…場所はわからないがな、校長の所にならなんかあんだろ」

「なんで学校なんかに…」

「ヒント漁り、って言えばいいか」

玄関で靴を履く。

「…何言ってんだが全くわからんのだが」

「わかんなくていい、とりあえず俺は校長の所まで言ってくる。お前は家族の人達ビビらせんように色々始末しとけ」

「始末ってお前あいつの事丸投げかよ」

「じゃ、任せるから」

「おい待て!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

玄関の扉を閉め、ゆっくりと学校まで歩き出す。

「…犠牲を無駄にしねぇ為にも必ず成果を取ってこんとな」

 

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